ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
魔法管理局の地下深くに広がる
最重要案件の容疑者、魔法犯罪者が投獄される区画である。
そして今、投獄されているのは終末厄災布教会の幹部達。
「おーう。こりゃ新顔だ。お務めご苦労さん」
「ちっ……よりによってキャンプバカの隣ですか」
フラメルの取り調べを終えた
「できるのなら爆砕して、チェンジをお願いしたいところですね」
「俺だってお前をキャンプファイヤーにしてやりたいが、仲良くしようぜ」
薪原は逆に黒波側の壁に寄り、
「で、誰にやられた?」
「貴方とはなにもかもが正反対の人物。
「漆黒……もしかしてオニキスか?」
薪原は黒波の言動に引っかかりを覚えながら口にした。
「ええ。そうですよ」
二人は目を瞑り、クロウ・クルワッハ・オニキスとの戦いを回想し、
「強く、熱く、骨のあるいい男だったぜ」
「流麗な太刀筋と独創的な魔法、真に素晴らしい戦乙女ですね」
感想を口にし、お互いに困惑した。
黒波は片メガネをかけ直し、呆れた声を上げる。
「キャンプバカ。ついにキャンプファイヤーに脳まで焼かれたんですか? オニキスが男? どう見ても美しい女性じゃないですか。あれが紛い物の詰め物とは思えない」
「こっちのセリフだよ、プラモバカ。プラモにフィギュアを愛ですぎて、現実にまで侵食してきたんじゃねえか? オニキスは男だ。魔法で変身してんだよ、魔法。どんな原理かは知らねえが、俺達と同じグリモワールの力でな」
薪原も呆れた声で返し、肩をすくめる。
イツキが男性から女性を経て、魔法少女に変身した事実は終末厄災布教会の幹部の中では薪原しか知らなかった。
他の者には影倉イツキ――女性と認識されている。
正しいのは薪原であり、間違っているのは黒波なのだが。
「はあ……理解できませんね。たとえ仮に可能だとして、男性から女性に変身する理由が分かりません」
「理由なんてどーだっていだろ。全部に理由を求めるんじゃねーよ。これだからプラモバカはロマンが分かってねえ」
この二人、同じ組織に所属しているが、出自から採用にいたる全てが違うせいでそりが合わず、仲がもの凄く悪い。
だからどちらが正しかろうが、間違っていようが聞く耳を持たないのである。
黒波は額に手を当て、うんざりとする。
「はあ……話になりませんね。オニキスは女性ですよ。粗野で粗暴なお嬢様にはぜひ、あのような大和撫子、清楚な乙女、
「女云々はともかく、オニキスが気高き魔法少女ってのは認めるぜ。常人じゃあそこまでの覚悟、男気は見せられねえ。さすが同じバーベキューコンロでバーベキューを食べた仲だぜ」
うんうんと誇らしげに頷き合う。
ここにきて珍しく意見が一致し始める。
「しかしなんだ、あの猛犬お嬢様も負けたのか。大方、スカーレットだろ。あの嬢ちゃんも一見クールに見えて、内には
「それには同意です。スカーレットも決して
「お前もなんであんな猛犬お嬢様になんちゃって執事やってんだ? もういいとこのお嬢様ってわけでもねーんだろ」
「あれでも現当主、前当主から承った遺言があるのですよ」
黒波はシンクとの戦いに敗れ、プライドも身体も
勝手に復活するまでの間に、少しは真っ当な淑女になってくれればと本気で考えていた。
「
「言うじゃねえか。てめェでキャンプファイヤーをしたっていいんだぜ」
「こちらのセリフです。子供たちの教育のためにキャンプバカを花火にして打ち上げたっていいんですよ」
それもすぐに
「できるもんならやってみやがれ。しかし、キャンプファイヤーに花火……もうすぐGWだな。その前に負けるとは残念だ」
「ええ、それだけは全くもって同意です。我らが終末厄災布教会もGW休暇に入りますからね。終末を思い、願っても、週末だけは休みたい」
またしても珍しく、年に一度もない意見の一致が起こるが。
「GWはキャンプ場で最高のキャンプファイヤーを楽しもうと思ったのによ」
「GWは家で最高のプラモデルを組み立てようと楽しみにしていたのですが」
またすぐに崩壊し、火花を散らす。
「は! これだからインドアの片メガネかっこつけなんちゃって執事のプラモバカが! GWは外で熱く燃えて焼けるキャンプファイヤーだろうが! この楽しさが理解できねえとは日に当たらなすぎて根性ひねくれてんじゃねえか!?」
薪原はその火花でエアキャンプファイヤーを始める。
「そちらこそアウトドアの野蛮で野生のキャンプバカでしょうが! GWは家でアニソンを聞き、プラモやフィギュアに応援されながら、プラモを組み立てる! この楽しさを理解できないとは美的&知的センスを疑いますね!」
黒波はその火花でエアプラモデル焼き塗装を始める。
二人はとても、もの凄く、仲が悪い。
犬猿の仲、野生炎鬼と機械邪竜。
ちなみに二人の会話は当然監視カメラで筒抜け、たとえバカな会話でも情報にあてられる。
ここはプライバシーゼロ空間なのである。
だから看守たちも、なにやってんだこいつらと思いながら聞いていた。
◆
隔絶された空間にアジトを構える終末厄災布教会。
主を前に幹部達が円卓会議場に揃っていた。
「本格侵攻の
円卓会議場で一人の幹部が大仰な振る舞いで話を進める。
「ならば、次は我らレメゲトン派の番でございましょう。北欧のヴァイキングが如き野蛮な脳筋共と違う。悪魔の
「レヴィアンタン。そのやかましい顔、噛み砕くぞ」
その暴言をラグナロク派の筆頭幹部が聞き逃すわけもなく、脅しをかけた。
「おお、怖い怖い。これは失礼しました。
「そうだよ。ラグナロク返しをされた貴様の部下の不始末を我々レメゲトン派が尻拭いしてやると言ってるんだ。むしろ感謝してほしいものだな」
さらにレメゲトン派の筆頭幹部が口を挟んだ。
これ以上言ってもムダと呆れ、ラグナロク派の筆頭幹部は口を閉ざした。
「レヴィアンタン、好きにするがいい」
代わりに玉座に君臨していた終末厄災布教会の首魁――ロキが口を開いた。
円卓を冷め切った眼差しで見つめ、続ける。
「次はレメゲトン派に任せよう。くれぐれも魔法少女的ルールを逸脱しないように」
「ええ、レヴィアンタンなりの解釈でやらせていただきます。では、皆様におきましてはレヴィの布教動画を是非、ご視聴願います」
決まったと思ったレヴィアンタンだったが、ロキが思いつきの発言する。
「しかし、世間はもうすぐGWか。予定通り貴様達も週末くらいは休暇をとれ」
「あっ、はい。そうでございますね」
「どのみち戦略を練り直す必要があるだろう?」
「あっはい、そうで……ございますね」
レヴィアンタンが頭をどんどん下げ、円卓にこすりつける。
「しばらくは魔災、終末厄災は控えるとしよう。以上だ」
ロキの一存で円卓会議は終了を向かえる。
「終末厄災が満ちる世界に
宣誓を述べ、ロキを残して全員が円卓会議場から消えた。
◆
「……楽しんでくれているかな、彼女は。できているかな、私は。友の遺言、その行間に隠された真意をくみとれているだろうか」
ロキは玉座にもたれかかり、不幸な事故から、今に至るまでを回想し――途中で停止した。
目を開き、虚空を見つめる。
自ら出張った一度目の終末厄災の日。
(今回、前回の魔力、影魔法。あれは確かに一度目の時に感じた
さして関係ない、取るに足らない微弱なものと思い、見過ごしたちっぽけな何か。
それが今、謎の少女として彼女たちと行動を共にしている。
そして魔法少女――彼女には相応しくない、邪魔な自我をもったアポカリプス・グリモワール。
こちらも勝手に逃げ出したが、なにかのついでに
両方ともストーリーテラーである自分が書き記した物語には関係ないと思っていた。
ここまで関与し、表舞台に影響してくるとは。
その二つがまさか一つになり、見知らぬ魔法少女に至るとは。
予想外だった。
ロキは虚空を見つめ、興味なさげに呟く。
「……クロウ・クルワッハ・オニキス。君は何者だ?」