ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった   作:春海とまと

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第28話 ハンマーヘッドシャークハンマーな女の子

「もうすぐGWだけど、みんなはなにか予定ある?」

 

 夕食後、世間やニュースなんかで話題が多くなってきた季節イベントについて、シンク、マリン、カグヤに尋ねてみる。

 

 陽乾(ひかわ)と黒波(くろなみ)の襲撃以降、魔災レベルも3までに落ち着き、頻度も減った。

 

 終末厄災布教会の幹部も現れていない。

 阿部(あべの)市長の星詠みでもGWは怖いくらいの発生率零予報。

 

 敵もGW休暇、そうでなくても戦略や戦術の練り直しをしているのかもしれない。

 仮初めでも平和なのはいいことだし、今は少しでも情報収集の時間があった方がいい。

 

 もちろん、零でも起きる可能性は俺自身で体験している。

 

 それでも三人は魔法少女である前に女子高生、青春を謳歌(おうか)する権利があると思っていたのだけど。

 

「あたしは特に予定ないかな。お母さんにも顔見せしたばっかりだし」

「私もいつもと変わらならいルーティンですわ」

 

 シンクとカグヤは当たり前に言った。

 

「うーん、そっか。言い出しっぺの俺も違うことをするかと聞かれたら、せいぜい大掃除するくらいだしなあ」

 

 これなら日帰りでもいいから、三人をどこかに遊びに連れて行ってあげてもいいな。

 

「ふっふっふっ……」

 

 金髪ツインテール、いつでも明るく元気なマリンが、可愛らしい不敵な声をあげている。

 

 そういう楽しい遊びが得意で、お出かけスポットに詳しそうなマリンだけは反応が違う。

 

「マリンはGW後半にアクアリウム部のみんなと一泊二日の渓流(けいりゅう)合宿をするんだ」

 

 おおーと三人で感嘆の声を上げる。

 

 渓流、つまり谷川付近でキャンプ……一瞬、薪原がちらついたけど記憶の彼方に消し飛ばす。

 

「渓流合宿か。風情(ふぜい)があってオシャレそうだな」

「うん。涼しそうで気持ちよさだね」

「青々とした森林に渓流、せせらぎの音色、澄んだ空気。風光明媚(ふうこうめいび)な景色に心が洗われますわね」

 

 揃ってその情景を思い浮かべ、ほのぼのと和む。

 

「だから、提案があります」

 

 逆にマリンだけがなぜか深刻な顔を浮かべる。

 

「渓流合宿を無事に迎えるために、GW後に控える中間テストの勉強会を提案します」

「ああ……そうだよな。テスト、あるよな」

 

 現実に引き戻される。

 

 魔防専門高校を卒業し、テストに終われる日々から解放された俺でもテンションが下がる。

 

 御籠(みかご)聖女(せいじょ)学園は才媛(さいえん)、ご令嬢が通う男子禁制の名門お嬢様学校。

 

 偏差値も高く、勉強も難解だ。

 リビングで行われている学校の宿題でも、たまに謎の言語が飛び交っている。

 俺に教えられることがあったとしても、せいぜい家庭科くらいだ。

 

「みんなは……テストの方は大丈夫そう?」

 

 今の俺は三人の保護者みたいなもの。

 勉学も疎(おろそ)かにさせてはいけないので、念のために確認をとる。

 

「あたしはまあまあかな。予習復習くらいはしてるから」

 

 シンクは平然とした顔で淡々と言ってのけた。

 試験勉強は大してしてないと言いながら、まあまあが高得点のタイプな気がする。

 

「私はもちろん学年一位、ナンバーワンですわ。天地(あまち)家の名に恥じない、頂点を目指すのみですわ」

 

 カグヤは難解な言語が飛び交う宿題でも二人の質問に答え、教えている。

 

 FMSのミーティングでも進行役を率先して買って出て、必要な情報は全て頭に叩き込んでスムーズに進めてくれている。

 

 普段の才媛っぷりを見たら当然、一位を目指せる実力は確かだ。

 

「マリンは平均オールラウンダーオブ……オール平均をせめて狙いたい、一夜漬け系深海鮫のラブカが如し。決して中間テスト? よゆーよゆーなんてメガマウスは言えないし」

 

 提案者であるマリンだけはテーブルに顔をのせ、沈んだ声で呟く。

 鮫らしからぬもちもちしたほっぺはアザラシ、ラッコ、ペンギンを思わせる。

 

「だから、安心して渓流合宿ができるように、前もって試験勉強をやっておきたいじゃん?」

 

 そう言っている間にも口から魂が抜け出そうだ。

 

「勉強も大事だしな。二人が問題ないならいいんじゃないか?」

 

「あたしは構わないよ。みんなで勉強した方がはかどるし」

 

「ええ、魔法少女として赤点は回避すべきですわ。しっかり勉強しましょう」

 

 シンクとカグヤは頼もしい笑顔で答えてくれた。

 

「二人ともありがとー! 感謝! じゃ、採用ということで。さらに提案があります」

 

 マリンは喜びを見せたかと思えば、キリッとした表情に引き締めなおす。

 

「まだなにかあるのか?」

「うん。次は魔法少女合宿も提案します! 師匠も魔法少女として、女の子として、慣れてきたと思いますが!」

「それなりには……慣れてきたかな」

 

 クー太郎との契約で男性から女性に変身している今、身体の動かし方の違和感も減ってきている。

 

 長い髪のお手入れやヘアアレンジ、下着の付け方に、まあ……トイレなんかも。

 

 といっても、大半は男性の時と変わっていない気もする。

 

「師匠もこう言っているので、四人揃ってのフェアマジ決めポーズが決めたいと思います!」

「その話があったな」

「なので、マリンは魔法少女合宿を提案します! 大事なことなのでもう一度言いました!」

 

 マリンは先ほどと違い、力強く宣言した。

 この場合は二人に委ねるだけでなく、俺自身も答える。

 

「いい機会だし、助かるよ。色々確認していこう」

 

 ミリしら魔法少女系世界において、途中加入と言っていい俺にはありがたい提案だ。

 ぜひ勉強させてもらおう。

 

「あたしも異論ないから。お姉さんの魔法少女フォームを一度、しっかり確認する機会は必要だったからね。お姉さんが延長しちゃうのはしょうがないけど……」

「それは致し方ないですが、私も賛成ですわ。今後を考えれば、敵も強大になっていきますわ。結束を強めるに相応しく妥当な提案ですわ」

 

 今度は満場一致で可決された。

 

「みんなありがとー! では、魔法少女合宿も採用と言うことで! そして……最後の提案があります」

「まだあるとは凄いな。マリンは企画プランナーだな」

「えへへ……師匠が褒めてくれるのは嬉しいけど、今度はちょっと鮫肌がちがくて。ごめんなさいって感じで……はあ」

 

 マリンはここにきて一気にテンションが低くなってしまった。

 鮫尻尾があれば、だらんと床に垂れているのが目に浮かぶ。

 

 急にどうしてしまったんだろうか。

 二人もマリンの落ち込み具合を見て、心配そうに黙ってしまうくらいだ。

 

 重い空気……それこそ深海に沈んでしまったような雰囲気で、マリンは最後の提案を発表する。

 

「実はマリン……恥ずかしながら、ぶっちゃけるとね。ハンマーヘッドシャークハンマーな女の子でして」

 

 最後の提案だけ謎かけみたいだった。

 ぶっちゃけた意図(いと)が分からず、三人で悩んでしまう。

 

「ハンマーヘッドシャーク……シュモクザメ……種目。つまり、多趣味な鮫として、色んなチャレンジをしたいということでしょうか?」

「チャレンジ? つまり、シャー子でやってみた動画の撮影?」

 

 カグヤとシンクの半信半疑の呟きには納得できた。

 

 マリンはアルティメットトルネードシャー子というVで配信もしている。

 動画撮影の協力、自分がメインになるから申し訳なく提案した。

 

 そう考えたけど、本人は首を横に振って否定した。

 

「マリンは楽しくて面白いことはチャレンジしてみる性格だし。いつか、みんなでコラボしたら楽しいなーとは思うけど。でも、今回はハズレ。もっとシンプルに……その、考えてみてほしーなって、ところでして」

 

 マリンがここまではぐらかすなんて、そんなに言いづらいことなんだろうか。

 

 シンプル――ハンマーヘッドシャークハンマーをシンプルに。

 

 鮫だけとって特に強調している部分を口ずさんでみる。

 

「ハンマー……ハンマー……トンカチ……カナヅチ? え? まさか……」

 

 さすがにありえないと思い、言葉が途切れる。

 それでもまさかと思いながら口に出す。

 

「もしかして、マリン……泳げないのか?」

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