ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「もうすぐGWだけど、みんなはなにか予定ある?」
夕食後、世間やニュースなんかで話題が多くなってきた季節イベントについて、シンク、マリン、カグヤに尋ねてみる。
終末厄災布教会の幹部も現れていない。
敵もGW休暇、そうでなくても戦略や戦術の練り直しをしているのかもしれない。
仮初めでも平和なのはいいことだし、今は少しでも情報収集の時間があった方がいい。
もちろん、零でも起きる可能性は俺自身で体験している。
それでも三人は魔法少女である前に女子高生、青春を
「あたしは特に予定ないかな。お母さんにも顔見せしたばっかりだし」
「私もいつもと変わらならいルーティンですわ」
シンクとカグヤは当たり前に言った。
「うーん、そっか。言い出しっぺの俺も違うことをするかと聞かれたら、せいぜい大掃除するくらいだしなあ」
これなら日帰りでもいいから、三人をどこかに遊びに連れて行ってあげてもいいな。
「ふっふっふっ……」
金髪ツインテール、いつでも明るく元気なマリンが、可愛らしい不敵な声をあげている。
そういう楽しい遊びが得意で、お出かけスポットに詳しそうなマリンだけは反応が違う。
「マリンはGW後半にアクアリウム部のみんなと一泊二日の
おおーと三人で感嘆の声を上げる。
渓流、つまり谷川付近でキャンプ……一瞬、薪原がちらついたけど記憶の彼方に消し飛ばす。
「渓流合宿か。
「うん。涼しそうで気持ちよさだね」
「青々とした森林に渓流、せせらぎの音色、澄んだ空気。
揃ってその情景を思い浮かべ、ほのぼのと和む。
「だから、提案があります」
逆にマリンだけがなぜか深刻な顔を浮かべる。
「渓流合宿を無事に迎えるために、GW後に控える中間テストの勉強会を提案します」
「ああ……そうだよな。テスト、あるよな」
現実に引き戻される。
魔防専門高校を卒業し、テストに終われる日々から解放された俺でもテンションが下がる。
偏差値も高く、勉強も難解だ。
リビングで行われている学校の宿題でも、たまに謎の言語が飛び交っている。
俺に教えられることがあったとしても、せいぜい家庭科くらいだ。
「みんなは……テストの方は大丈夫そう?」
今の俺は三人の保護者みたいなもの。
勉学も
「あたしはまあまあかな。予習復習くらいはしてるから」
シンクは平然とした顔で淡々と言ってのけた。
試験勉強は大してしてないと言いながら、まあまあが高得点のタイプな気がする。
「私はもちろん学年一位、ナンバーワンですわ。
カグヤは難解な言語が飛び交う宿題でも二人の質問に答え、教えている。
FMSのミーティングでも進行役を率先して買って出て、必要な情報は全て頭に叩き込んでスムーズに進めてくれている。
普段の才媛っぷりを見たら当然、一位を目指せる実力は確かだ。
「マリンは平均オールラウンダーオブ……オール平均をせめて狙いたい、一夜漬け系深海鮫のラブカが如し。決して中間テスト? よゆーよゆーなんてメガマウスは言えないし」
提案者であるマリンだけはテーブルに顔をのせ、沈んだ声で呟く。
鮫らしからぬもちもちしたほっぺはアザラシ、ラッコ、ペンギンを思わせる。
「だから、安心して渓流合宿ができるように、前もって試験勉強をやっておきたいじゃん?」
そう言っている間にも口から魂が抜け出そうだ。
「勉強も大事だしな。二人が問題ないならいいんじゃないか?」
「あたしは構わないよ。みんなで勉強した方がはかどるし」
「ええ、魔法少女として赤点は回避すべきですわ。しっかり勉強しましょう」
シンクとカグヤは頼もしい笑顔で答えてくれた。
「二人ともありがとー! 感謝! じゃ、採用ということで。さらに提案があります」
マリンは喜びを見せたかと思えば、キリッとした表情に引き締めなおす。
「まだなにかあるのか?」
「うん。次は魔法少女合宿も提案します! 師匠も魔法少女として、女の子として、慣れてきたと思いますが!」
「それなりには……慣れてきたかな」
クー太郎との契約で男性から女性に変身している今、身体の動かし方の違和感も減ってきている。
長い髪のお手入れやヘアアレンジ、下着の付け方に、まあ……トイレなんかも。
といっても、大半は男性の時と変わっていない気もする。
「師匠もこう言っているので、四人揃ってのフェアマジ決めポーズが決めたいと思います!」
「その話があったな」
「なので、マリンは魔法少女合宿を提案します! 大事なことなのでもう一度言いました!」
マリンは先ほどと違い、力強く宣言した。
この場合は二人に委ねるだけでなく、俺自身も答える。
「いい機会だし、助かるよ。色々確認していこう」
ミリしら魔法少女系世界において、途中加入と言っていい俺にはありがたい提案だ。
ぜひ勉強させてもらおう。
「あたしも異論ないから。お姉さんの魔法少女フォームを一度、しっかり確認する機会は必要だったからね。お姉さんが延長しちゃうのはしょうがないけど……」
「それは致し方ないですが、私も賛成ですわ。今後を考えれば、敵も強大になっていきますわ。結束を強めるに相応しく妥当な提案ですわ」
今度は満場一致で可決された。
「みんなありがとー! では、魔法少女合宿も採用と言うことで! そして……最後の提案があります」
「まだあるとは凄いな。マリンは企画プランナーだな」
「えへへ……師匠が褒めてくれるのは嬉しいけど、今度はちょっと鮫肌がちがくて。ごめんなさいって感じで……はあ」
マリンはここにきて一気にテンションが低くなってしまった。
鮫尻尾があれば、だらんと床に垂れているのが目に浮かぶ。
急にどうしてしまったんだろうか。
二人もマリンの落ち込み具合を見て、心配そうに黙ってしまうくらいだ。
重い空気……それこそ深海に沈んでしまったような雰囲気で、マリンは最後の提案を発表する。
「実はマリン……恥ずかしながら、ぶっちゃけるとね。ハンマーヘッドシャークハンマーな女の子でして」
最後の提案だけ謎かけみたいだった。
ぶっちゃけた
「ハンマーヘッドシャーク……シュモクザメ……種目。つまり、多趣味な鮫として、色んなチャレンジをしたいということでしょうか?」
「チャレンジ? つまり、シャー子でやってみた動画の撮影?」
カグヤとシンクの半信半疑の呟きには納得できた。
マリンはアルティメットトルネードシャー子というVで配信もしている。
動画撮影の協力、自分がメインになるから申し訳なく提案した。
そう考えたけど、本人は首を横に振って否定した。
「マリンは楽しくて面白いことはチャレンジしてみる性格だし。いつか、みんなでコラボしたら楽しいなーとは思うけど。でも、今回はハズレ。もっとシンプルに……その、考えてみてほしーなって、ところでして」
マリンがここまではぐらかすなんて、そんなに言いづらいことなんだろうか。
シンプル――ハンマーヘッドシャークハンマーをシンプルに。
鮫だけとって特に強調している部分を口ずさんでみる。
「ハンマー……ハンマー……トンカチ……カナヅチ? え? まさか……」
さすがにありえないと思い、言葉が途切れる。
それでもまさかと思いながら口に出す。
「もしかして、マリン……泳げないのか?」