ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「さすが師匠! 正解! マリンのことよく分かってるじゃん! そうです、マリンは泳げないんです!」
「あ、ありがとう」
マリンがテーブルに身を乗り出し、俺を指さして喜んだ。
空元気に見えて、今度は俺が反応に困ってしまった。
シンクやカグヤも同じで、俺より一緒にいた時間が長い分困惑している。
「嘘……そんな。だってマリンはリヴァイアサン・アクアマリンだよ? 海竜で鮫で、海の宝石だよ? 水魔法、平気でバンバン使ってたよね?」
「え、ええ……そうですわ。しかも本名、
「定番で考えれば水属性の魔法少女なら、泳ぎも上手だよな。ジョーズだけに」
どうにか空気を和らげようと、ジョークも添えて言ってみるけど。
「そーだよね! ジョーズが大好きなマリンなら、泳ぎジョーズなシャー子さんって思うよねえー!」
俺たちが困惑するだけ、マリンはテーブルにうつぶせになって伸びていく。
いつか干からびてしまうんじゃないかと思えるほどに伸びて、マリンは続ける。
「冗談でもなんでもなく、本当です、事実です。マリンは泳げない、ダメなシャー子です。鮫世界から海岸に打ち上げられた雑魚なのです」
そこまで言わなくてもと思うけど。
「そうなのか、茶化してごめん。じゃあ、最後の提案って言うのは、もしかしなくても水泳合宿……いや、水泳教室?」
「師匠、正解です。
鮫だけでなく、海やそこで暮らす生き物が大好きなマリンにとってはとても辛い告白だと分かる。
気持ちを切り替え、マリンに話しかける。
「そういうことなら分かったよ。試験勉強は教えられないけど、泳ぎだったら任せてくれ。体育は得意だったからさ」
だてに魔防専門学校でしごかれたわけじゃない。
「なら、マリンに泳ぎを教えるのはお姉さんに任せるよ。試験科目はいっぱいある分、それぞれで教えあえるけど。三人全員で教えたら、マリンがキャパオーバーになりそうだから」
「一理ありますわ。
シンクとカグヤも同意し、一任してくれる。
「最後の提案も採用ってことで、マリンはいいかな?」
「もちろんオッケーです。みんな、ありがと。よろしくお願いします」
マリンも元に戻り、姿勢を正して言った。
「こちらこそ。まとめると勉強会&魔法少女合宿&マリンスイミングスクール――魔法少女総合合宿って感じになるのかな」
「そーなんだけど。あと一つだけ。もし、みんながよければ渓流合宿も一緒にどーかなって? 部の二人や顧問の
さらなる提案がなされた。
もしかしたら本命は渓流合宿だったのかな。
「二人はともかく、部外者の俺は迷惑じゃないかな?」
保護者枠としてはありだけど、鳳先生がいるなら必要ない気も。
しかし、
現状、GW中の魔災予報の発生率が零と言っても、絶対ではない。
そうすると一人はここに残った方がとも――色々考えながら、シンクとカグヤに話をふる。
「二人はどうする?」
「んー……あたしはどうしようかな」
「私も招待とあれば断るのはやぶさかではありませんが」
二人も総合合宿の話と違って歯切れが悪い。
アクアリウム部でないことが引っかかっている感じだ。
「遠慮しないでいーよ! クリオネっちとクラゲッソーのスケスケシースルーコンビも大歓迎って言ってるし! ヒトデキャラはいないけど、人出が多いにこしたことはないし! おねがーい!」
スケスケシースルーコンビなのにキャラが濃そうな部員さんが出てきた。
まあ、ここまで来たらとことん付き合うのも一つかな。
「鳳先生の許可が下りたら付き合うよ」
「あたしもそれでよければいいよ」
「乗りかかった船ですもの。最後まで相乗りしますわ」
少しだけ困ったように、それでいながら優しそうに笑って答えた。
マリンも優しい声にほだされ、いつもの元気な笑みを浮かべてくれる。
「みんな、ありがとう。マリンのわがまま聞いてくれて、感謝だよ」
「わがままとは思ってないよ。じゃあ、フラメル司令の方には俺から話を通してみるよ。また一度、ミーティングしたかったしな」
「師匠、よろしくお願いします。では、マリンからの話は以上です!」
話に一区切りが付き、緩んだ空気を吸ってリラックスする。
「トリプルからクアトロ総合合宿か。中々にハードスケジュールな気もしてきたけど、楽しみだな」
GW予定が一気に埋まってしまった。
三人のいい思い出になってくれたらいいな。
なら、大掃除の予定を前倒しにしないとな。
ついでにクー太郎と約束したカビ駆逐タイムにも付き合ってやろう。
カグヤの部屋の掃除も本格的にしてあげたいけど。
……そういえば試験前って無性に掃除がしたくなる人がいるよな。
カグヤもそういうタイプだったら助かるけど、焦りは禁物、ゆっくり慣らしていこう。
「んー……めちゃ脳使った感じで疲れたー」
マリンが椅子にもたれかり、背伸びをする。
「……脳がDHCを求めて……DHC? なにか忘れてるよーな、あ、そだ。お断りのDM入れておかないと」
「DM? 他にもなにか予定があったのか?」
スマホを取り出した手を止め、マリンが話してくれる。
「えっとね。マリンの配信チャンネル――アルティメットトルネードシャー子を見て、DMでコラボの打診をしてくれた人がいたんだ」
「コラボ……断っちゃうのか?」
マリンの性格ならノリノリでコラボしそうな気もしたけど、断る理由がちゃんとあるんだろう。
また困った……いや、曇ったようなあいまいな笑みになってしまうくらいだ。
「実際にどんな人か動画を見てみたんだ。マッドデビル研究室てチャンネル名で、ドクター・レヴィって竜の被り物した人だった。それこそさっき言ってたやってみた――実験系の動画をメインにしてて、アシスタントの人でかなり危険な実験してた。たまに生き物なんかでもエグいのやってて。でも、平気で笑ってるのがなんだか怖かったし」
「それはまた……でも、そういう危険行為ってコンプライアンス違反で配信停止されたりしない?」
「うーん。すれすれって感じかな。それが好きな人って確かにいるし、人気もあるんだ。たまに炎上気味にもなるのも込みで。マリンだってたまに熱くなって際どい発言もするから、あんまり強くは言えないけど」
嫌悪とまではいかないまでも、不快感を覚えている雰囲気にまでなった。
「マリンやリスシャーのみんなと水が合わないかなって。マリンなんてまだまだ弱小、稚魚みたいな配信者だし。もの凄く目立って有名人になりたい! ってわけじゃないし。マリンの
「そっか。マリンが嫌と思ったなら断るべきだよ」
「だよねー。そーいうわけでDMでお断りのメールを入れておきまーす。ポチポチとー」
マリンは気軽なノリでスマホの操作を始める。
シンクは今の話を聞いてうんざりとした顔でため息を吐いた。
「炎上に干上がりはしばらくいいからね。じゃあ、お姉さん。フラメル司令の許可がとれたらお出かけコーデに、水着も買いに行かないとね。みんなで」
「ええ、嫁様の下着選びに参加できなかった分、お出かけコーデに水着選びはぜひとも参加したいですわ」
カグヤもはつらつとした様子で語った。
また沈みがちなマリンを励まそうとしているのが分かった。
「いつまでもTシャツ&ジーパン系じゃ味気ないもんな……って、ああ、そっか。水着もいるよな?」