ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「魔法少女総合合宿に
翌日、フラメル司令に相談に行くと、あっさり許可が下りてしまった。
ありがとうございます、と頭を下げる。
ただ念には念を入れ、
「ただ許可をもらいにきてはなんなんですが、合宿中に襲撃や突発的な魔災が起こりうる可能性は零ではないですよね? その辺りの対策はしておくべきだと思うんですが」
「魔災も
「もちろん構いません。無理を承知でお願いしているのはこちらですから」
許可をもらいに来る前はどうなかると思ったけど、W合宿の話はトントン拍子で進んでいく。
フラメル司令は以前にも言っていたが、シンク、マリン、カグヤ――三人の魔法少女に対して、できることはなんでもしてあげたいというスタンスは本気だと伝わってくる。
「魔法少女総合合宿の件についてざっとこんなものか。他になにか用件はあるか? おじさんが答えられることはなんでも答えてあげるぞ」
気さくに笑い、おどけたように言ってくれるフラメル司令。
「ありがとうございます。じゃあ、一つだけ」
お言葉に甘えて、思い切って聞きたいことを打ち明ける。
みんなが――特にシンクがいない時に先に聞いて、把握しておきたいことを。
「ロキ――ヨハネス・ファウストについて、もう少し聞いてもいいですか?」
その名を口にした途端、フラメル司令の雰囲気が変わった。
顔から笑みが消え、真面目な雰囲気に。
俺も同じように姿勢を正す。
「まあ、そうだよな。気になるよな、バカ弟子のことは」
フラメル司令は陰のある笑みを浮かべ、俺より後ろ、遠くを見つめている。
「バカ弟子は魔法にしか興味がない天才……いや、超天才かな。人格、雰囲気、存在、全てが他人と隔絶しすぎて、魔法学院時代には人の心がないバケモノなんて陰口まで叩かれたくらいだ。まあ、バカ弟子も他人に興味がなかったからおあいこだったんだが。だから話が合う、対等に話せる奴はおじさんも含めて数人だけだったな」
遠い思い出を語るフラメル司令は不思議と穏やかに見えた。
昔は本当に世話の焼ける存在だと、言葉の端々から察せた。
そうでなければ今もバカ弟子なんて呼称は使わないと思うから。
しかし口を閉ざした瞬間、また苦虫をかみつぶしたような顔になってしまった。
「ただ悪い奴では……いや、今していることを考えたら全く説得力に欠けるんだが。何かがあって、終末厄災布教会なんて組織を立ち上げ、世界を一度を終わらせかけ、魔法少女が認知される世界を創ろうとした」
どんな理由があれ、許されない悪事なのはフラメル司令だって分かっている。
「おじさんでさえ手を焼くほど奴だったからな。すまない。偉そうに語っておいて、実際にバカ弟子の全てが分かったと言えるかと言えば嘘だ。本当に奴を理解できたとすれば……おじさんのもう一人の悪友かな」
「それは
「いや、天晴じゃない。そいつは……遠いところにいるよ」
「そう、なんですね」
遠い場所とはどこを指し示しているのか、とは聞けなかった。
シンクや茜さんが、父親であり夫である
勝手な予想だけど、世界が一度終わりかけた時の戦いで何かあったのかもしれない。
こういう時に、フェアマジの知識があれば上手く立ち回れたかもしれないけど。
うだうだしていてもしょうがないので、見て聞いて考えていくしかない。
「そんな男が一般人だった宗一さんと出会い、何かあったのは、やはり研究対象の絶滅種……終わり。死生観みたいなので共感する部分があったとかでしょうか? 終末厄災布教会なんて名乗っているくらいですから」
「そうかもしれないな。しかし、シンクの父親である宗一氏とバカ弟子の関わりがあったとは、知らなかった。おじさんの調査不足だ。本当に申し訳ない」
「頭を上げてください。僕に謝る必要なんてないですよ」
きっとシンクだって同じことを言って、困るはずだ。
「すまない。だが現状、シンクを魔法少女にする必要があったのか……おじさんにはいくら考えても分からない。改めてシンクも含めて宗一氏について調べているが、とても真っ当な人だ。バカ弟子との共通項、共感できる部分はまだ見つかっていない」
ただまあ、となぜか俺を見てフラメル司令は肩をすくめる。
「案外、自分とはほど遠い世界にいる人の方が分かり合えるのかもしれないな」
「そういうものですか?」
「そういうものだよ。実際、おじさんもイツキと話すのは楽しいからな。同じTS仲間でもあるし」
「僕もフラメル司令と話すのは楽しいですが」
あんまり理解できておらず、なんとなくで返事をしてしまう。
こういうところが感覚の違い、ってやつなのかな。
元のポジションを辿ればフラメル司令は物語の重要人物にして天才。
片や俺なんてモブで、本来表舞台にあがらない存在で、なんか知らない間に物語に介入してしまった流れ者。
立場を考えれば月とすっぽんみたいなものだ。
「そういうところが三人が気を許してる要因の一つだな」
「だと、いいんですが」
つい最近、危機管理力のない、ずぼらな世話のかかる鈍感ダメお姉さんと言われたばかりである。
「以上が、おじさんが簡潔に話せるバカ弟子についての話だ。長い思い出話になるとお茶
「ありがとうございます。自分としても理解が深まりました」
フラメル司令が表情を和らげ、いつもの余裕のある雰囲気に戻る。
ロキについては謎は深まるばかりだけど、一切の人間味がない人物でもなさそうに思える。
ただ先入観の持ちすぎもよくない。
今はこのくらいの認識に留めよう。
「改めてW合宿の件は了解した。こんな話をした上でなんだが、おじさんまで利用したからには、魔法少女的ルールは守る奴だとは思っている。もちろん裏切られるのは承知の上で、対策は講じておくさ。また追って連絡するよ」
しかし、とフラメル司令はまたふいに悲しい笑みを浮かべる。
「マリンが泳げなかったとは知らなかった。本当、おじさんは知らないことだらけだな。天才成金錬金術師の名が聞いて呆れる」
正直、俺なんかが励ましの言葉を言える立場じゃないとは分かっているけど。
先ほどの会話を思い出す。
俺と話すのは楽しいと言ってくれた。
「安心してください。僕なんて危機管理力のない、ずぼらな世話のかかる鈍感ダメお姉さん、ですから」
自分を指さし、ドヤ顔で改めて言ってのける。
フラメル司令は驚きから転じて真顔になり、最後は呆れたように笑い声をもらした。
「なるほど、やはり悪くない。もしかしたらこういう感覚なのかもな」
相変わらずどういう感覚なのかサッパリ分からないけど、良い方向に受け取ってもらえたようでなによりだ。
「さて話は変わるが、ご褒美タイムだ」
フラメル司令は今度こそいつもの雰囲気に戻り、指を鳴らした。
二冊のアポカリプス・グリモワールが召喚される。
「おお! オレ様のご褒美タイムってか!?」
シリアスムード中は一切口を挟まなかったクー太郎が、俺の影の中から飛び出してくる。
ここまで現金な奴だといっそ清々しい。
「落ち着けって。まずは話を聞きなさい」
クー太郎の首ねっこを掴んで待ての状態に持ち込む。
「おいこら、イツキ! ごちそうを前に我慢しろってのか!?」
「おやつのクロワッサン、食べさせないぞ」
「チッ! なんて卑怯で姑息な取引を持ち込みやがる! それでもニンゲンか!?」
荒い言葉のわりに、借りてきた猫みたいに黙る。
しつけ方法が分かりやすくて非常に助かる。
「クロウ・クルワッハとも仲良くなっているみたいだな。さて今回はニーズヘッグ・ドレッドノート、マーナガルム・パービリオンのアポカリプス・グリモワール。二冊一気食いをやってみようか」
「二冊一気食い……平気ですかね?」
「何事も実験に検証だ。失敗も成功も経験して、結果を創り出す」
「承知しました。ほら、クー太郎。食っていいぞ」
「待ってたぜ! それじゃあ遠慮なくいただくぜ!」
クー太郎が美味しそうにアポカリプス・グリモワールを食べ始める。
相変わらず食欲旺盛だな、こいつ……って、思っている間に二冊のアポカリプス・グリモワールを食べきってしまう。
「ふぅー食ったぜ。またオレ様が最強の魔導書に近づいちまったぜ」
お腹をポンポンと叩くクー太郎。
満足にも見えるけど、なにやら不満げだ。
「なんだ、クー太郎。二冊一気食いでも食べ足りないのか?」
「あー……まあ、そうもな。魔力は十分だが、まだ食べ足りない感じもあるぜ」
「本当、食い意地張ってるなあ……お前は」
「うるせえ、オレ様は原典の魔導書なんだ。そんじょそこらの魔導書と違って、容量が桁違いなんだよ」
「そうか。確かに桁違いだな」
「そーだよ。なんだよ、分かってるじゃねーか」
売り言葉に買い言葉になってはいけない。
そもそもフラメル司令の前だ。
俺が大人な対応をして、違いを見せなければ。
危機管理力のない、ずぼらな世話のかかる鈍感ダメお姉さんにもプライドはあるのだ。
「イツキの方はどうだ。二冊一気食いの影響はなにか感じるか?」
フラメル司令に言われ、自分の身体――今は男性から女性に変化している姿に意識を向ける。
「スルト・バーンのアポカリプス・グリモワールを食べた時と同じ感覚ですね。特に変化はないです。魔力の増量もうーん……そこまでは感じません」
「やはり消化、クロウ・クルワッハのアポカリプス・グリモワールに複写する工程があるのかもしれないな。
「なるほど、とても為になります。スルト・バーンの魔法を使えた時、クー太郎から
仮に使えるようになったとしても、影魔法の俺とはあんまり相性よくなさそうな気もするんだよなあ。
ニーズヘッグ・ドレッドノートは弾幕……いや、自爆? マーナガルム・パービリオンは
それをいったらスルト・バーンの……ババババババババーン! イラプションもなんだが。
まあ、上手い使い方があったらやってみよう。
「ふぅー……とはいえ、二冊一気食いで眠くなってきたぜ。じゃあ、オレ様は一回寝るから、おやつになったら起こしてくれよ」
クー太郎はまた俺の影の中に潜り込み、眠り始めた。
……ほんとこいつ、自由だな。
そこだけはある意味、見習ってもいい。
しかし、実際のフェアマジの世界ではクー太郎どういうポジションだったんだろうな。
やはりキーアイテムを集めるマスコットポジション的な存在?
それにしては口が悪いし、自由すぎて扱いに困りそうな気も……いや。
あの三人なら十分しつけできちゃうよな。
「さてイツキ。今日、お互いに話したいことはこれくらいでいいかな」
「ありがとうございます。自分としても……あ。あと一つだけいいですか?」
GWにかけて行われるイベント、魔法少女総合合宿に渓流合宿。
束の間の休息だからこそ、きっと目の前の人は俺たちの分まで動いてくれる。
「時間がある時でいいので、フラメル司令も魔法少女総合合宿に顔を出しませんか?」
さすがに渓流合宿は誘いづらいと思い、そっちだけで誘ってみる。
「おじさんはいいよ。若人に紛れて青春を謳歌するほどのエネルギーはないからな」
あっさり断られてしまった。
なんだか一歩引かれ、線を引かれた感覚だった。
無理強いはよくないと思い、
「そうですか。じゃあ、お土産なにがいいですか? 阿部市長の分や機動応援課の皆さんの分も含めて」
そうだな……と、フラメル司令は首をかしげ、手をポンと叩いた。
「じゃあ、おまんじゅう、カステラあたりで。まあ、天晴は曲がりなりにも市長で、色々面倒だからおじさんの方でやっとくよ」
「承知しました。その辺で良さそうなお土産を見つけておきます」
「まあ、おじさんたちのことは気にせず、若い者たちで楽しんできな。まずはイツキの服と水着選びからな」
「あっ、はい。女性物の服に水着選び、ですね」
服は下着でまだ慣れてきてるとはいえ、基本シャツ&ジーパンスタイルだ。
渓流合宿でもそちらの方が機能的で動きやすいと思うけど。
問題は水着だ。
……いや、水着も同じだな。
マリンに泳ぎを教えるために身につけるのだ。
機能性重視、それこそ競泳用のやつだよな。