ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
GWまでの期間はわずか。
非常にタイトなスケジュール管理が必要になってくる、というわけで。
平日の夕方、前回と同じくシャツ&ジーパンスタイルでショッピングモールに到着。
シンク、マリン、カグヤを待つ。
俺が転生した世界が、魔法少女系アニメであるフェアリーテイル・マジカルストライカー的なものだとすれば、二連続で襲撃イベントはないはず。
ロキも魔法少女だけでなく、ごく一般的なお約束は守ると切に願いたいところだ。
そんなことを考えていると、朝に見送った制服姿の三人が近づいてくる。
「お姉さん、お待たせ。待った?」
「全然、さっき着いたところだよ」
これまた前回と似た挨拶をシンクと交し、視線を左右に動かす。
今回はマリンとカグヤもいる。
前回とは流れが違う、日常回。
「やっぱり師匠は遠目から見てもめっちゃキレーで目立つよね。ナンパされなかった?」
「昨今、ナンパする御仁は創作の中くらいで、現実では滅多に見られないと思いますが……実際、どうでしたの?」
クー太郎と契約したことで代償として女性の姿に変身しているとはいえ、褒められるのは悪い気はしない。
チョロいお姉さんの自覚はあるけど。
「されてないよ。着いたばかりだし、されたとしても断るからな」
ホッと三人が
俺の心配をしてくれたらしい、いい子たちだ。
「まずは私服から選ぶんだよな?」
朝に軽く話した時はそのような流れだったはず。
「うん。マリンたちが協議に協議を重ねて、入念な熟考を経て導き出したアイテムだから、期待していーよ」
「
「もちろん、嫁様の希望があればじゃんじゃん言ってくださって構いませんわ」
女性に変身して数週の俺にとって、頼もしい子たちでもある。
「ありがとう。一応、自分なりに雑誌とかサイトとか見て見たけど、ピンときたのはなかったからさ。よろしくお願いします」
なので微笑み、軽く頭を下げる。
「がぶりょー! マリンたちに任せてよ! それじゃお目当てのお宝を見つけにしゅっぱーつ!」
マリンが率先して動き始める。
「お宝がなくなる前に急ごっか」
「嫁様の新たな装い。期待に胸が膨らみますわ」
二人も笑って歩き出す。
俺も後に続く。
こうしてみると本当に、どこにでもいる普通の女の子。
ウルフカット、ツインテール、ポニーテール――好みのヘアスタイルをバッチリ決めた今時の女子高生だ。
そういうわけで頼りになる、先輩女子高生の三人によるコーディネートが始まった。
◆
連れて行かれたのはアウトドア系のセレクトショップ。
下着を買いに来た時よりはアウェイ感も薄く、まだ平気な雰囲気だ。
「師匠、三人セレクションのアイテムだよ。大船に乗ったような気持ちでドーンと構えてオッケーだし。転覆して鮫に襲われることはないからねっ」
「うん。頼りにしてます」
なにより今回は三人の先輩の付き添い付きなので、試着室に安心して
姿見を前にし、三人が選んでくれた服を身体に当ててみる。
ベースは軽い登山にも着ていける真っ白なワンピース。
インナーに速乾性のネイビーの長袖シャツとタイツ。
黄みのうすい灰色カーディガンに、麦わら帽子を添えて。
さらにはトレッキングシューズまで。
三人が言うにはレイヤードでアウトドア系のスタイルとかやらで、想像よりもシンプルで抵抗感はない。
渓流とは言え、危険は一杯。
例えばマダニ、蜂、
さらには魔災、敵性生命体オルケプス。
渓流合宿には保護者の一人として参加するのだ。
頼れるお姉さんとして、また新米魔法少女としても、危険対策しっかりしておかないといけない。
これは三人から期待を込めたられた
脱! 危機管理力のない、ずぼらな世話のかかる鈍感ダメお姉さん!
試着室のカーテンを開き、
「お待たせ。似合ってるかな?」
麦わら帽子に片手を当て、自信に満ちた笑みで頼れるお姉さんの雰囲気を醸し出す。
「おお……なんと」
「あ……うん」
「まあ……これはまた」
あれ?
なんか反応がいまいちのような?
「……どこか変かな? 間違った着方してるとか? 表裏逆でタグが出てるとか?」
途端に自信がなくなり、試着した服のあらゆる箇所を確認してしまう。
クッ、やはりダメなのか。
俺は危機管理力のない、ずぼらな世話のかかる鈍感ダメお姉さんから抜け出せないのか。
「違うよ! キレーすぎて、さすが師匠だなと思っただけだし! ちょー似合ってるよ! 二人もそうだよね?」
マリンの問いかけに、シンクとカグヤもすぐに頷く。
「ごめん、お姉さん。マリンの言うとおり想像以上に似合っていたから驚いただけだから」
「そうですわ。どんなジャンルに出しても恥ずかしくない、麦わら帽子の白ワンピお姉さんで満場一致ですわ」
慌てた様子で感想を伝えてくれる。
うーん……急かしてしまった感じになってしまった。
頼れるお姉さんを目指すなら、もっと余裕を持つべきだと反省するとして。
「似合ってるなら嬉しいよ。三人で選んでくれてありがとう」
俺も笑ってお礼を伝える。
どういたしまして、と三人も笑顔で応えてくれた。
「じゃあ、師匠。次は本格的なトレッキングウェアも試着してみよっか」
マリンが新しい服を掲げて見せる。
「一着だけじゃ、もしもの時困るよな」
なにかあって森の奥に行く場合とかは、ワンピースだとヒラヒラしすぎて動きにくい。
その時は魔法少女に変身すればいいだけの話でもあるけど、備えあれば憂いなし。
掃除用具も汚れや場所によって使う物が変わってくるからな。
「陸海空、全地形対応、最新鋭軽量素材、PMCから軍隊まで御用達メーカーのセットアップだよ」
「本格的だな……その分、お高いんじゃ?」
「なんと! なぜか現品限り半額セール中のお買い得品です!」
マリンが店員さんよろしく力強く売り込んでくる。
最新鋭なのに、もう半額セールとは
「なるほどなあ。少し昔を思い出すよ。じゃあ、お借りして」
疑問と懐かしさを感じながら試着を続ける。
魔防専門高校時代は重装備行軍訓練とかしたかたらなあ……。
それが今では魔法少女に変身し、お姉さんに至るとはずいぶん遠くまで来てしまったものだ。
「怖いくらいにピッタリだったよ」
まるで俺のために作られたかのような着心地だ。
「うんうん。これも想像以上に似合ってて良き。川下りから山登りまでなんでもバッチこーいって感じじゃん」
「熟練の登山お姉さんって感じだね。雰囲気あるよ」
「おほほ、嫁様。本格的な装いもよく似合ってますわ」
なんだか三人の店員さんに接客されている気分になってきた。
VIP待遇というのは、こんな感じなのかな。
とはいえ、渓流合宿の私服は準備万端。
変に身構えていた自分がバカみたいだな。
「これも買わせてもらうよ。ところで、三人は買わなくて平気?」
自分のことばかり考えていたけど、渓流合宿に行くのは三人も一緒だ。
俺の疑問をよそに、三人は落ち着いた様子で答える。
「だいたいジャージでなっちゃうよねー」
「ジャージって便利だから」
「運動から勉強、レクリエーション……にお掃除。多種多様なシチュエーションに対応できる万能学生運動服ですわ」
納得の答えだった。
「でも、トレッキングウェアや寝袋とかは買っておくつもりだよ。まだまだ予定は詰まってるからー即ムーブッ」
マリンの号令の下、三人もトレッキングウェアを選び、寝袋やバックパック、必要な用具も購入する。
雑談を交えながら、店を出た。
「だいぶ手荷物が増えたけど……おーい、クー太郎。荷物をいれるから気をつけろよ」
しゃがみこみ、自分の影の中にいるクー太郎に声をかける。
影の家主は俺であり、間借りしているのはクー太郎だけど、言うだけ言っておく。
「おー、分かったぜ。相棒」
クー太郎が顔も出さずに、寝ぼけた声で返事をした。
そういうわけで遠慮なく影の中に購入した物を収納していく。
こういう時に俺の影魔法は便利だよなあ。
「よし。軽くなったなところで、次は水着だな」
俺が覚悟を決めて立ち上がると、なぜか三人が顔を見合わせて黙ってしまった。
また変なことを言ってしまったのか?
いやでも水着も今日買う話になっていたはずだし。
「お姉さん、なに言ってるの。渓流合宿の私服はマリンが主導だったけど。ここからは別だから。見たいショップを今日一日で回る予定だから」
「え? そうなの?」
ぼんやりとした答えに、シンクはさも当然に頷いた。
「そーだよ、師匠。可愛い服が一着だけじゃ足りるわけないじゃん? ほら、ゴーゴーだよ」
「あ……そう、なんだね」
背中に回ったマリンに押され、間延びした返事をする。
「嫁様。一着だけでは着回しもできませんわ。……私が言うのも色々問題ありといえばありですが。何着揃えてしまいましょう」
「それは、確かに、はい。おっしゃるとおりで……」
カグヤの進言を聞いて、ようやく理解を深め、納得する。
どうやら最初は慣らし運転みたいなものだった。
今回のアウトドア系一式だけでは、全部のイベントやシチュエーションに対応できないわけだ。
俺としてはシャツ&ジーパンスタイル――なんならジャージでも通用するとは思っているけど。
この世界があくまで魔法少女系であるとすれば。
ファッションにずぼらなお姉さんは、今時の女の子たちの共感や信頼を得られないわけである。
つまりこれは俺の女子力をあげ、
「分かったよ。そういうことならどんどん行こうか」
頼れるお姉さんにレベルアップするイベントであるわけだ。
◆
シンク、マリン、カグヤのオススメショップでカジュアル、ガーリー、モード系の私服も購入し、これまた影の中に収納していく。
頼れるお姉さん経験値をだいぶ積み、今度こそ最終イベント。
自信もそれなりにつき、水着を買いに来た。
「今回は泳げないマリンの特訓に付き合ってもらう用なので、遊びはなしにします。なので、師匠的にこれって水着はある?」
マリンが真面目な声で聞いてきた。
先ほどまでのウキウキハイテンションから一転して、かなりトーンダウンしている。
マリンは明るく元気な子だけど、分別はちゃんとしている。
もちろん、シンクやカグヤだってそうだ。
「そうだな。こっちも事前に確認はしておいたけど」
俺もそれを踏まえた上で、水着を見ながら考える。
下がスパッツのハーフスパッツタイプ。
上下が分かれているセパレートタイプ。
そしてワンピースタイプ。
足の付け根の食い込みが緩やかなミドルレグから、高く切れ上がったハイレグまで。
「俺が選ぶのはこれだ……!」
だから、今日付き合ってくれた三人に、俺が成長したことを見せて安心させてあげなければ。
「え? 師匠……マジでそれを選ぶの?」
「お姉さん、いきなりそれはチャレンジャーじゃ……」
「おほほ……嫁様。冗談、ですわよね?」
「いや、俺は本気だ。これこそ俺の覚悟の証だっ」
驚きの声を上げる三人に、選んだ水着を見せながら答えた。
ワンピースタイプ、それも食い込みが一際エグい、ハイレグタイプ。
「じゃあ早速、試着してみるよっ」
迷いが生まれる前に、下着の上から水着を試着してみる。
サイズはバッチリ、いいフィット感で、身が引き締まる。
食い込みも見た目以上に、エグい、エグすぎる。
素肌はもちろん、今日着てる下着がちょっと見えちゃうくらいに。
「どうかな?」
だが、それでも意気揚々とカーテンを開け、堂々と胸を張る。
動きやすさを追求し、泳ぐのに特化した故のカット率。
これならどんな状況、練習方法でも、マリンに泳ぎを教えてあげられる。
またしても三人は驚いた顔のままで口を開く。
「師匠、とても似合ってるけど……その水着はヤバいかも」
「お姉さん、その格好で、決して一人でプールや海に行かないでね」
「嫁様の
……想像よりも反応がよろしくなかった。
ようやく俺もちょっとは冷静になってきた。
またなにか間違ったのかな……?
自分としては悪くない着心地なのだけど。
やはり……エグいか?
「これは買わない方が……いいかな?」
思わず不安になり、胸の下で腕を組む。
生地も悪くないとは思うんだけどな。
「いや、買った方がいいと思います、マリンは。あくまでマリンの練習に付き合ってもらう水着なので」
「うん、あたしも購入自体は反対しないから。三人だけの秘密特訓で、密室で着るだけなら、いいんじゃないかな」
「ええ、私も異論はありませんわ。その、決してやましい気持ちではなく、嫁様の覚悟の証に
三人はなぜか顔を赤らめ、俺の覚悟を後押ししてくれた。
これは気を遣わせてしまったかな。
「ありがとう。じゃあ、この水着にするよ」
これ以上、情けない姿は見せないと即決する。
頼れるお姉さんの道は半ばにも至らず、踏み出したばかり。
まだまだ長く険しいのだと痛感させられた。
それでも一歩ずつ、着実に進んでいこう。
充実した気分でインナーショーツもこみこみで水着を購入し、
「三人は水着を買わなくても……平気か」
また疑問を口にして、途中で自己解決した。
マリンが苦笑しながらも頷いた。
「だねーマリンたちはスク水がありますしー……まあ、マリンは水泳の授業は選択してないから、あるだけだったんだけど」
「ええ、
「さすがに海とか公共プールで着るにはハードルが高いけどね。あたしたちは今日買う予定がないから、お姉さんのだけで終わりだよ」
なるほどな、と改めて水着売り場を見回す。
「みんなで海に行く時の水着は、また今度選びにこようか」
マリン、シンク、カグヤを見つめて言った。
「そーだねっ。海に行くならタイプの違う、もっと可愛い水着で」
「派手すぎず、清楚で落ち着いた感じで」
「大胆すぎず、エグくないバランスのを選びましょう」
おかしそうに笑って、楽しげに語る女の子たち。
……願わくば、海に行く頃には全てが解決していますように。
そうして前回のような襲撃もなく、楽しくショッピングを終えた。
「今日は長々と付き合ってもらって本当にありがとう。せっかくだし、外で食べに行こうか」
三人を連れてファミレスに向かおうとすると、クー太郎が顔を出した。
「お! やっと買い物は終わったのか! オレ様のクロワッサンも忘れるなよ!」
「ファミレスはペット禁止って言ってるだろ? 大人しくしてろよ」
「またオレ様、チビトカゲのクロワッサンちゃんにならならないとダメなのか……」
プラス一匹――ペットではないけど、ペット扱いされるだろうクー太郎も連れて、みんなで談笑しながら向かった。