ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海TMT
みんなの奮戦のおかげで日常が戻ってきた。
……魔法管理局に投降した俺は、魔防強化ガラスで四方を囲まれたプライバシーゼロの監禁部屋に閉じ込められているけど。
監禁部屋って実在するんだなあ、と一人ソファーに座ってくつろぐ。
クロウ・クルワッハは魔法管理局に引き渡し済みだ。
あいつと契約する時点で、投降も引き渡しも考えていた。
「おい、イツキ! オレ様を売るのか!?」
むしろ、クロウ・クルワッハが予想外だったのか、恨み言を言って運ばれていった。
魔防強化ガラスにうっすらと映る自分の姿を確認する。
変身を解いたら邪竜を思わせる角、翼、尻尾は消えているけど、今も女性の姿のまま。
ドヤ顔を決める。
何度見ても自分とは思えない、透明感のあるめっちゃ美少女だ。
男性の時から顔が良いとは思ったけど、さらにレベルアップしてる。
「あったりめーだろ! オレ様の契約だぜ! 絶世の美少女じゃなき、絶望も苦痛も悲鳴も物足りなくなるだろーが! ま、契約初回サービスで、女性の姿は一時間限定だ、コラ! 今後は一日、二日――変身する度に延びていくからな! せいぜい慣れておくんだな……ククク!」
クロウ・クルワッハは口が悪いくせして契約を律儀に守ろうとしたり、ちょっと甘さがあったり、自分が手がける造形にこだわりが強い。
ちょろい奴なのは確信に変わりつつある。
俺と契約したことで影を経由していつでも召喚できるので、あいつも逃げられない。
またソファーに座り、お淑やかに足を閉じて、軽くまた胸に触れる。
やはり……柔らかい。
自分の物とは思えない、柔らかさ、ハリ、大きさだ。
C……Dはあるか?
比較対象がないので、詳細は不明だ。
いや、別に俺は変態じゃないけど。
そして別に俺自身に対する執着が希薄というわけでもない。
ただ女性に変身しても嫌悪感はない。
契約の代償なのでクロウ・クルワッハの前では、そういう素振りを見せないとダメだけど。
二度目の人生だから開き直って、前向き思考が強いおかげかな。
まあそれでも、俺の処遇がどうなるか気になる。
さすがに『劇場版フェアリーテイル・マジカルストライカー! 影倉伊月を処刑せよ!?』みたいな感じにはならないとも思うけど。
ずうずうしいけど、三食分のご飯くらいはお願いしたい。
あとトイレとかも覚えないとなあ。
最悪、封印も考えられるけど、仕方がない。
と、監禁部屋の入り口が開き、男女のペアが近づいてきた。
夜目が利くのは変わらずで、二人とも顔は知っている。
一人はスーツ姿の黒髪サラサラヘアーの糸目のイケメンで。
「どうも初めまして。僕は
一人は白衣を羽織った小柄な可愛らしい女性で。
「魔法管理局局長にして、魔法少女課広報大使にして、FMS司令のミレニオ・フラメルおじさんだ」
機動応援課の採用試験に向けて調べていた時、ニュースや魔法管理局のホームページで見た顔。
御籠市のナンバーワンとナンバーツーと言える存在だ。
「初めまして。僕は影倉伊月です」
「性別が変わって大変ですが、元気そうでなによりです」
「信じてくれるんですか?」
「はい。裏はとれていますから、安心してください。機動応援課第十班の皆さんの熱意は相変わらずで凄かったですから。それに小さな女の子の笑顔を曇らせたくないですからね」
「ありがとうございます」
そっか……みんなが証言してくれたのか。
頭を下げる。
「お礼を言うのはこちらですから、頭を上げてください。今回の魔災で後手に回ったのは我々の責任です」
言われたとおり頭を上げると、今度は阿部市長が服装を正し、深々と頭を下げる。
「影倉伊月さん。自らを犠牲にし、市民を助けてくれた貴方には、市を代表して多大な感謝を申し上げます。ありがとうございます」
「機動応援課第十班として、当然の責務を果たしたまですから」
俺もまた頭を下げて応える。
「機動応援課……そうですね。さて、早速ですが、影倉伊月さん。貴方に二つ、お願い――辞令があります」
姿勢を正す。
「一つ目は機動応援課から魔法少女課に転属し――平時は『FMS』の専属マネージャーとして活動してもらいます」
俺をここまで連行した三人の魔法少女。
結局、ろくな会話もなく連行されてしまったけど。
彼女達のスケジュール管理や戦闘後のケア、お世話をするということだろう。
「二つ目は魔法少女クロウ・クルワッハ・オニキスとして活動してほしいのです」
魔法少女の本当の名前、素性は知らない。
知っているのはごく一部の人間のみで、個人情報は伏せられている。
とはいえ、見た感じ三人とも年下に見えた。
多感なお年頃で、時に男性であり、時に女性に変身する俺がうまくやっていけるかは分からないけど。
「分かりました」
辞令とあれば、受けるしかない。
「ま、急に言われても困るよな。って、あっさり受け入れすぎだろ」
ここまで黙っていたフラメル……司令でいいかな。
驚いた顔で俺を見る。
「処刑や封印よりはましと思ったので」
「一応、法治国家の公的機関なんだぞ? そんなヤベー処遇はいきなりしないよ。だから、拒否権もある。まずは、おじさんがちゃんと情報開示してあげるから。TS仲間のよしみでな」
フラメル司令が胸を張って言った。
TS仲間のよしみ?
どういう意味だろうか?
ただ今はその疑問よりも、フラメル司令の話を聞こう。
「まず始めにこの世界――っつーか、御籠市はな。一度、終わりかけたんだよ」
「え?」
授業でも情報サイトでも聞いたことのない話に、つい声がもれた。
「反転結界ってあるよな? あの白黒の世界だ。あれ、元は表の世界なんだよ。今の御籠市は本来裏側の存在。昔は魔法を認知できる者達の隠れ家みたいなもんだった。でも、ある日、悪い魔法使いが率いる組織との戦で、負けに等しい引き分けに持ち込まれてな。おじさんと天晴で最終手段をとった」
いきなり俺が転生した世界の根本を聞かされて驚かされる。
「御籠市を反転させて、魔法が一般人にも認知されている世界に
一言一句、聞き逃さないようにしないと。
「でも、世界を騙すにも色々手順が必要でな。
「それが魔法少女ですか?」
「察しがいいな。夢と希望に満ちた、みんな大好き魔法少女。魔法が表世界で認知される前から存在していた偶像で鍵を作った。実現するには時間がかかったが、間に合った」
だから、中学生の頃に魔法少女の募集の話題が出てたのか。
転生した俺でさえ、魔法や魔法少女が当たり前だと思っていたのだから、見事に騙されたわけだ。
「ええ、錬金術師は詐欺師の側面もありますからね。世界を騙すことだって造作もないでしょう。そもそも敵の
「うるせー、少なくともおじさんはまともだ。そっちだって弟子がネットミームになってるじゃないか、陰陽師」
「ははは、耳が痛い。もはや我々の星読みでは予測できない電脳の極みですね」
と思っていると阿部市長とフラメル司令が軽口を叩き合う。
俺がよっぽど真面目な顔をしていたのか、リラックスさせる意図があったんだろうか。
って、阿部市長が陰陽師で、フラメル司令が錬金術師?
二人とも凄い偉人だ。
魔法少女系世界は奥深いな……。
「すみません、脱線させちゃいましたね。フラメル司令、続きをどうぞ」
「魔災ってのも略称だ。本来は
先ほどの魔災は確かに終わりを思わせるほどの火災ではあった。
終末厄災なんて常日頃から使われていたら、人々の気が休まらないのも分かる。
「オルケプスはその
「僕達の敵、というわけですか」
そんな名前は聞いたことがないし、やはり前世の記憶にも引っかからない。
「ああ。そうだ。で、対抗手段である魔法少女の力の源とすべく、パクって改良したのが、『フェアリーテイル・グリモワール』」
「え? パクったんですか?」
急にパクり発言が出たので言い返してしまった。
「ああ、パクった。かっこ良く言うなら、
フラメル司令はドヤ顔で言った。
言わんとすることは分かるけども。
「まあ、一から十――それこそ過去編まで話してもいいが、長くなりすぎるからな。ここら辺で質問はあるか?」
「はい。二つ、質問をしてもいいですか?」
「いいよ。言ってみな」
フラメル司令の許可を得て、発言する。
「一つ目は終末厄災布教会の目的はなんですか?」
「魔法使いが裏世界で息を潜めて生きていく生活に嫌気がさしたんじゃないか。だから、今度は全世界をひっくり返すべく、楔であるここを潰したい」
フラメル司令は面倒臭そうに、気に食わなそうに、呆れるように嘆いた。
「分かりました。二つ目は彼女達――魔法少女もこの事実を知って、契約したんですか?」
一番大事なことを聞いた。
今度はフラメル司令の顔つきが引き締まり、俺を真正面から見つめる。
「そうだよ。おじさんは世界も大人も騙すが、子供にはしない。全て話してある。だから、彼女達が望むことはなんだってするし、最大限の支援もするし、応援もする。その為ならおじさんは頑張るさ。たとえ人でなしのろくでなしと言われようともね」
これだけは嘘偽りのない言葉だと、なぜか分かった。
「それにイツキも知っているが、契約には適正がある者じゃないと慣れない。彼女達だからこそ、『フェアリーテイル・グリモワール』に選ばれた」
「……ありがとうございます。よく分かりました」
自分なりに今までの話を
「じゃあ、もう一度聞く。影倉伊月――今の話を聞いて、今回の辞令を受け入れるか?」
「やります」
「即答か。分かったよ。まあ……そもそもおじさん達が突っぱねても、あの子達が許さないからなあ」
はあ、となぜか疲れたような顔のフラメル司令。
あの子達から何を言われたんだろう。
「では、晴れて決定事項となりましたね」
「だなー……まあ、こうなることは分かりきっていたが」
フラメル司令が指を鳴らすと、俺を囲っていた魔防強化ガラスが床に収納されていった。
どうにか封印や処刑は回避できたみたいだ。
さらに阿部市長が手を叩くと、俺の頭の上になにか生暖かい物体が。
恐る恐る捕まえて目の前に持ってくると、黒いチビドラゴンが現れた。
もしかしなくても、こいつは。
「お前、クロウ・クルワッハか?」
「おうよ! だいぶシャバの空気にも慣れて、身体もなじんだからな!」
パタパタと可愛らしく翼を動かす、クロウ・クルワッハ。
どういう魔法か本から生物に変身していた。
「クロウ・クルワッハの言い分を完全に信じるわけではないですが、終末厄災布教会の首魁はやはりロキと名なる者。彼は確かに『アポカリプス・グリモワール』の原典。プロトタイプなのは間違いないでしょう」
「誰がプロトタイプだ! オリジナルと言え! オレ様以外はパチモンだぜ! なのにウザイからって封印しやがって!」
阿部市長に食ってかかるクロウ・クルワッハだけど、迫力はない。
むしろ声だけは変わらず渋いイケボだから、ちょっと面白い。
と、また一つ疑問が降って湧いた。
「あの、他のグリモワールも喋るんですか?」
「いや、喋らない。道具には必要ないだろ。だから、あっちも原典以降は自我を消した。その点だけは同意だ」
「そうですね。一々食ってかかられたら大変そうですし」
俺もフラメル司令に同意だ。
「ふざけんじゃねーぞ! オレ様にだって自由意志は必要なんだよ!」
本当に同意だ。
「ま、魔法少女には必要不可欠の使い魔――『FMS』のゆるキャラマスコット……をどうするか考えていたところだからな。ちょうどいい。どうにか調教してみてくれよ、イツキ」
「……努力します」
「調教!? バカ言え、するのはオレ様の方――ムググウ!?」
やかましいのでさっそく口を
「んじゃ、そろそろお開きってことで。長らく待たせたな」
またフラメル司令が指を鳴らすと、監禁部屋の壁が全て倒れた。
さらに高くなった天井の照明に照らされ、特設スタジオの
フラメル司令と阿部市長の背後に、真紅、青海、白銀の髪をした魔法少女達が立っていた。
「イツキは社会人だからな。子供じゃない。騙して悪いな。さあ、魔法少女――『FMS』とご対面だ」
マジか。
じゃあ、俺が自分の胸を揉んでいたり、壁に向かってドヤ顔していた奇行も見られていたのか……。
実質、公開処刑じゃん。