ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海TMT
「マリン、そっちの洗濯物は畳み終わった?」
「もー少しー。うむ……このデカさは間違いなくカグヤのだね」
「ちょ! 私の下着を恥じらいもなく押っ広げないでくださいまし!」
三人にはテーブル回りだけ片付けてもらって、夕ご飯のオーダーをしてもらうことにした。
夕ご飯は食べないと駄目だし、俺の歓迎会をしたい彼女達の希望を受け入れた
俺はフローリングワイパーで隅々まで綺麗にしていく。
キッチンの水回りや洗い物はご飯を食べた後にひっそりすませよう。
「ククク……イツキ。カビ野郎は、一つの残らず駆逐してやれよ」
俺の頭の上に乗ったクロウ・クルワッハが言った。
「やけに恨みがましいな。なにかあったのか?」
「カビとシミは本の天敵だろうが。手入れを
今はチビドラゴンの姿だけど、元は本だったな。
「オレ様が封印した蔵もとにかくジメジメでクソだったからな。ぜってー嫌がらせだぜ。だから、逃げ出してやったんだがな。ったく、オレ様のガワが汚れたらどーしてくれるってんだ」
「乙女のスキンケアみたいに言うな……って。もしかしなくても、今日の魔災ってお前が原因?」
「さて、どーだろな。事実だったとしたら返り討ちにしてくれて感謝するぜ、イツキ」
やっぱりこいつ、厄ネタっぽいな。
今後も悪さしないように目を光らせよう。
「お兄さん、こっちは終わったよ。お兄さんは何食べたい? FMS専用なんでもデリバリーで注文できるから、好きに言っていいよ」
綺麗になったテーブル回りを見せながら、シンクが聞いてきた。
「お疲れ様。俺は……寿司かな? 嫌いな物はないからネタはお任せするよ」
お祝いの席だし、無難に定番を言っておく。
三人に対して、僕と俺、どちらにするか考えた結果、境界線を敷かない方がいいと思った。
変に壁を作らず、普段の自分で接する。
「分かった。じゃあ、お兄さんの好物のいくらサーモン軍艦巻きも注文しとくね」
「お願いするよ」
……それはそれとして、なんで俺の好きなネタ知ってるんだ? 言ったっけ?
「マリンもお寿司食べよー。特上マグロにエビにフライドポテト。あとピザも頼もー」
「スイーツも必須ですわ」
片づけが終わった三人は、スマホのデリバリーサイトを見ながら和気あいあいとしている。
FMS専用なんでもデリバリーって言ってたから、経費で落ちるんだよな?
使いすぎは胃が痛くなる。
甘熊班長も浅葱さんに経費関連で詰められていたからな。
「そういえば、クロウ・クルワッハはなにか食べるのか?」
「オレ様はニンゲンの食べ物はいらねーよ。イツキの魔力でまかなわせてもらうぜ」
「なるほどな。じゃあ、俺が食えば、勝手に補充されるってわけだ」
止めていた手をまた動かす。
家が広いと、掃除するスペースも時間も増える。
いかに効率的にすませていくかの難題がついて回る。
魔法で一瞬で終わらせられればいいんだろうけど、万能ではない。
魔法は個人の才覚、血――遺伝に影響し、なんでも使えるわけじゃない。
俺もクロウ・クルワッハと契約したけど、相変わらず影魔法以外は使えないし。
もしも俺に魔法の才能がもっとあったのなら――そうだな。
床にホコリや汚れがたまらない、ピカピカのフローリング魔法とか。
排水溝に水垢ぬめりがつかない、キラキラのコーティング魔法とか。
エアコンに結露や黒カビが発生しない、サラサラのクリーニング魔法とか。
換気扇に油汚れがいっさい付着しない、ツルツルのフィルター魔法とか。
そういう魔法を極めたかったな……。
◆
「ようこそ、おとぎ荘へー!」
パリピサングラスを装備した三人がクラッカーを鳴らした。
「ありがとう。これからよろしくお願いします」
本日の主役タスキをかけられた俺の歓迎会が始まる。
「うん。これからよろしくね、お兄さん」
「これからよろー、師匠」
「はい。これからよろしくお願いしますわ、婿様」
まだいくつか疑問が残るけど、今は楽しもう。
「ククク……笑える姿だな、イツキ」
椅子に敷いた座布団の上でまるまるクロウ・クルワッハがほくそ笑む。
と、パリピサングラスをかけたままの三人が取り囲んだ。
「……クロウ・クルワッハ。お兄さんの契約書だから、多めに見るけど。これ以上悪さしたら凍らして、バラして、燃やして、消し炭にするから」
「うん。悪さしたら水責めしてぶった斬って破り捨てるから」
「はい。シュレッダーにぶち込んで断罪して、ゴミ処理場いきですわ」
パリピサングラスでも中和しきれない殺気だ。
そういえば三人からは今まで眼中にない、存在していないような扱いだったな、こいつ。
「ク、ククク……いいねえ。ヒ、ヒリつくじゃねえか。せいぜい楽しみにしておくぜ……」
偉そうなことを言うわりにビビり散らかして、俺の背後に隠れるな。
「じゃあ、気を取り直して。今日の主役はお兄さんだから。好きなだけ食べていいよ」
「うん。なにか食べたい物があればマリン達が取り分けるよ」
「ええ、遠慮せずにどんどんお願いして構いませんわ」
そういうわけで歓迎会。
ピザ、お寿司、フライドチキン、ケーキ――エトセトラ、テーブルにたくさんの料理が並ぶ。
全部食べきれるんだろうかと思いつつ、順調に減っていく。
魔法少女の燃費は激しいのか、食べるペースは一向に落ちない。
三人とも食べる物に
今後の参考に聞いておくかな。
「みんなの好きな食べ物ってなに?」
「あたしはお肉、かな」
シンクはステーキを刺したフォークを持ちながら言った。
「マリンは魚介ーシーフード」
マリンは海鮮マシマシ小鉢を支えながら言った。
「私は甘い物ですわ」
カグヤはクリームたっぷりロールケーキを載せた皿を眺めながら言った。
みんな喜んで教えてくれた。
実に分かりやすい。
「じゃあ、嫌いな食べ物はある?」
さっきまでの反応とは正反対になり、
「野菜……その、ピーマンとか」
「海藻……特にヌメヌメ系」
「辛い物……唐辛子ですわ」
恥ずかしそうに言った。
実に分かりやすい。
嫌いな物は誰にだってあるし、うまく調整していこう。
「ありがとう、参考にするよ」
三人は最後に不思議そうに首をかしげた。
注文した料理を綺麗に平らげ、歓迎会は終わりを――。
「それでは師匠の歓迎会二次会! おとぎ荘案内を始めるよ!」
迎えることなく続いた。