眩しい君とおててな私だよッ!?   作:筋子とふきのとう味噌

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第一話 前世ちゃんを捨てて異世界とらんでぶーするよー

 

 長い前置きは無しにして、本題に入ろうと思う。

 まず私は死んだ、らしい…。

 所謂、巷に云う、異世界転生だ。

 理由はわかってる。

 なぜ転生したかはさっきあった先ほど【神っぽい人】に聞けたからだ。

 でも記憶にございません。

 ん。

 …は?

 

 もう一度言おう。

 記憶にございません。

 手帳にそう書いてあったので、その通りに認識するしかない。それでもそもそも私はいつ書いたんこれ?と言う疑念は健在である。

 まったくに身に覚えがないのだから、もう…こう言うしかない。

 “記憶にございません”

 …WHY?

 

 …まずは一旦、冷静に自己紹介をしようか。

 こんな時に?こんなときにこそ落ち着くべきなのさ。

 

 私こと澪は、健全な学生としてそこそこの勤勉さで学業に励んでいた。

 しかしこの澪には一つ、致命的な弱点を抱えていた。

 記憶力がとてつもなく、あまりにも弱い。

 例え一度覚えられたものでも、ふとした瞬間にパーである。

 だから日々、私という人間は手帳という物を肌見離さずいた。

 異世界に転生した後も、この手帳を見た瞬間安堵し笑みが不意に溢れたほどだ。

 それほどまでに、手帳なくしては人間関係や学校生活でのスケジュールに支障をきたす弱々クソザコ脳みそをもった女。

 それが藤崎澪という人間の生涯だ。

 

 そーしーてぇ?!

 こ↑こ↑で目を覚ましたる私の体は!なんとなんと!

 指5つにちょっとの腕!

 なんの説明かって?私事だよ!

 詰まるところ転生先のことですねー。

 …ナンダヨ、聞きたいのはコッチの方だよ。

 

 目が覚めたら身体が縮んだ上に大部分が行方不明になっていた!

 こんな転生アリなんですか。

 あぁ…有ってしまったからこれからはそういうのもアリになっていく?。そうですか。さいですか。死にたまえ神よ。

 神は死んで欲しい。マジで。

 それか責任を取れ。

 『邪神しちゃってごめんなさい』するまでこの怒りは治らん。

 呪われよ。呪あれ。地獄に落ちちまえ!ぺっぺっ!!

 

 ああ、私は何も悪いことしてないのに。

 強いて言うならば、知らん事を知ったかぶりしたことだろうか。

 しかしこの世には優しい嘘というものもある。

 神如きには到底理解出来る事のない、人独自の善良な心遣い。それを重ね過ぎて人間関係が色々拗れ始めたからなんだと言うのだ。

 私は悪ではない。悪いのは私に理想を、『お前は俺の理解してくれるよな(キラッ)』な感情を向ける人達の方だ。神というならば、愚民どもに今直ぐ叡智を授かるがいい。そして私にちゃんとした身体をよこせ。カッコいい180オーバーの長身イケメンか、なんなら勝ち組チケット持ちウルトラガールでも良い。

 贅沢など敵。だから異世界らしいこの世界で生きる為の必要最低限を私に寄越しかやがれ下さいゴ゛ラ゛ァ。

 

《こーんにーちワァーーッ》

 

 しゃべれねー。てか喉ないんだった。

 言論の自由すらも無しか。とんだ不良物件。クソ肉体オブザイヤー優勝は私のものだなガハハ!

 今直ぐ作った自称神の神さんにはクレーム入れたい。中指立ててやる。せい!ヤッ!トゥース!

 

《異世界生活1日目にて絶望死  DEAD END》

 

 マズイな不味いぞ。私のメンタルが気落ちして滑空しているのを感じるぞ。もう助からないぞ。

 なにか、なにかこの心身ともに危機的状況を打開する、すンばらしィアイディアはないか!?プリーズギブミィ!あいらいくごっとぉ!

 

《オープン!ザ・プロパティ》

 

 おおう…テキトゥーコメントにまさかの大反響。どれどれぇ。

 なんか来た。めっちゃ文字出た。ああ私の勝ちだ。

 

 …うぇーと。んんーん?

 出た出ました出ましたけぇども。

 

《スキルゼロ。拳のみ。敗者あり。》

 

 何処のアリーナ会場だコレ。ふざけて書いてるよね。ちゃんとした文考えるの飽きて書いたヤツだよね。気持ちは分かる。だが許さん。私の心を裏切ったな!

 くっ…。殴る拳があっても殴る相手が居ない。

 居たとしても善良な一般市民の私は法を犯すことなどする筈も無いのだが。

 ああ゛ーぶっ飛ばしたいよ、何もかもをよォ…。

 

 

――ザザッ――

 

 

《こんにちア◯ダケダブラ!!》

 

 くっ…。善良過ぎて威力不足か。

 いやそもそもの私スキルゼロだから魔法使いになれないのか。

 ヤバイよヤバイよ…。敗者な謎生物に態々御足労するとか碌な相手じゃないだろぉがよぉ。

 どうしよどないしましょ。草むらから出てきて良いのはか弱い野ウサギまでだってのに。猫は駄目だ、アイツらすぐ手ぇだすし。犬はクレイジードッグだった場合こちら格好のネギしょいカモだもの。伊達に平和ボケジャパンピーポーやらしてもらってないからな!

 

 

――ザザッ……スジャッ――

 

 

 待たれぇ待たれよ待ってくれょ。

 やけに親切な効果音鳴らして迫ってくる誰かさんや。こちら新規転生の身上、色々と準備が足りないのだ。まだ始まりの町にも顔出してないしぃ?ギルド受付の女の子にトンデモステータス見せびらかしてからのオーバーリアクションに戸惑う主人公ムーブが出来てない…。

 そ、そうだ!こうしよう。草むらから出てくるはげに美しき亡国のお姫様!よしコレで行こう!?

 だぁーめそうだ…。甘えんな?いやぁそうだけどそうじゃ夢も魔法もないじゃないの。夢見る権利は大人も子供も分別なく分け隔てなんてないよ。

 だからさ、野ウサギでご勘弁して?!お願いします!?

 

 

――ベト……ベタ……ヌチャァ――

 

 

 ……酷い話だ。醜い鏡を見せられている。

 5本の指にちょっとの腕。

 体表を覆うように生臭い泥を被ったソレ。

 見てくれが完全にマ◯ハンドな彼は草むらから躍り出る。

 目(?)が合い互いに動く事が出来ず硬直。若干の間を開け此方を仲間かと思ったのか、先程まで張り詰めていた空気が『学食を食べ終え満足感の悦に浸りつつ過ごす残こりのお昼休み』レベルにまで緩和する。

 

 …いや、なんなんだコレ。

 本当に分からん。

 私はてっきりモンスターに鉢合わせするのかと身構えたんだよね?

 目の前にいるのはどう見ても仲間想いな一般マ◯ハンドだ。

 私が呼び込んだ?いや確かにヒロインに出会えればなぁ、とは考えたけどさー。えぇ私のヒロインってマ◯ハンドなの?

 却下です。来て早々に悪いけど即刻チェンジです。

 転生の関係上、種という括りではお仲間かも知れない。けど、私は下等なモンスとらんらんるー出来るほど聖人じゃない。

 だからお帰り願おうか。それ、しっしっ!

 

 …おや?マ◯ハンドの様子がおかしいぞ。

 

《おいおい来るなよ?ぜっったいに来る、ナア゛ヨォオ!!?》

 

 ふ、ふざけた真似をしやがってぇ!?

 この私にだ、だ、抱き付くだとッ?!

 コイツまさか私に惚れたんじゃないだろうな…ッ。

 ヌメッた粘液――見た目ほどベタつかない泥――が触れた瞬間にこちらにも飛んで来るわ。異様に力が強いから抜け出す事も叶わん。

 

《ううう…キモいよキメェよ気持ち悪過ぎる…っ》

 

 あ、なんか段々と温かくなって来た。

 まるで泥パックを全身に浴びたみたいな感じだ。

 体の輪郭を沿うようにどんどん包み込まれて、埋れて――てぇ!これ捕食かもしや!?マジと書いて本気かこのクソモンスター!!

 なんて恐ろしい極悪モンスなんだ。なんか温和な空気出しといて油断したじゃんか!

 もう先っぽどころか半分めり込んじゃってるよ。出来の悪いモンスターの出来上がりだよ!絶対没データで見つかって本編じゃ日の目を浴びないヤツだよコレ。

 

 

――ズズ……ズズ……ドスッ――

 

 

 絶対絶滅のその瞬間、私の耳(?)が雑音を拾ってくる。

 明らかに先程とは違う足音。まずマ◯ハンドでは無いのは確か。

 異世界転生なのだから、初日にピンチと来れば後は救出か覚醒のどちらかと相場が決まっている。

 

《おいおいウソでしょ…?》

 

 ホントーにこの異世界はポンコツを極めてやがる。

 お約束を真っ向から殴り捨ててくスタイルは嫌いじゃないが、君みたいな無遠慮無配慮の自己中野郎にはお近付きになりたくない。絶対問題起すよ、私は知ってるのだ。

 

 …で、どうするよコレ(パート2)

 モンスって同じエリアに居たらどっちかが逃げるのでは?あれ縄張り争いを強行するんだったか…?嗚呼、最近のシリーズを知らないのが災いするとは思わなかった。

 でも私の青春は4Gなんだ。世代的に正しいのはXXなんだが、熱中してやりこんだのはあの4Gだ。クソみたいな強化形態に悪態つきながらソロで突っ込んで動きを読み切る爽快感を私は忘れんよ。…でもガラ亜種テメェは許さんぞ。

 

《プロパティぃい…ッ!!ナニか!?なにかなにかぁ!!》

 

 そんなこんなで私は絶賛死中に活を求め中である。

 文字通り手探りの抜け道探しに成果はまだない。

 声は焦ってる風を装ってはいるが、心の内は凪の如く穏やかである。

 なにせ相手が相手だからからね。誰だよリスポーン地点にボスモンスター配置するアホは。神か?またアイツやらかしたのか。マジで使えないじゃん。えんがちょしてやる。せい!

 

《スキルぅ!何故何もないのだスキルよ》

 

 ドロドロの泥んこに拘束されて、目の前にはとち狂ったデ◯モンみたいな合体モンスター。なんだろう… なにか合体進化に対する侮辱を感じます。

 熊のシルエットの上から何処からともなく垂れ流される泥の滝、その隅々から手のような何かがもがくように指先を開閉しては泥の中に沈み消えて行く。ジ◯リの腐れ神が特徴的に近いか。あっちは名のある神だが、こっちはどう見ても手遅れご愁傷様の腐れ神。千でもあれは流石にムリだと思う。

 

 ジリジリと近づく巨体は私が元より縮んだ為かより大きく、強く、そして凶悪に見えた。決して美しくはない。

 背丈は10メートルあるかぐらいか、…あ――見えなくなった。というよりもう食われるぞ。この場に及んでも尚掴んで離さないマ◯ハンドよ、お前は最期がコレで良いのか。私は死んで謎の復活に困惑したままだからかぶっちゃけ危機感浅いので良いのだが、お前は今回が初めてだろうに。

 

 これが弱肉強食の異世界かぁ。そんな感傷にしみじみしながら、私は特に痛みもなく真っ暗な泥の中に沈み込み、泥のように眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ん。生きてるぞ。

 ……んーあー、これあれだアレ。

 後藤に取り込まれたミギー状態だな!コレ。

 よっしゃ、ラッキー!

 

 

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