ハイキュー世界でハイキューの漫画を描いちゃった話   作:テン吉

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日向視点

 

 

その漫画を知ったのは俺が中学に上がる前……小さな巨人を見る前だった。見る前と言っても数ヶ月前後の差だったけれど。

なんとその作品___ハイキューは俺の人生を大きく変える未来の漫画だった。

 

……恥ずかしいけど自分にそっくりなんだよな。

 

初めて見たのは、イズミンとコージーに誘われて本屋さん。イズミンは小さい頃から週刊少年漫画は特にお気に入りで俺もたまに見せられていた。

そんなイズミンが俺に見せたいし買わせたい漫画があるという。

 

「なあ、翔陽〜!!これお前にそっくりじゃね?」

 

ってイズミンに渡されたのは、本屋さんのど真ん中に飾られていた分厚い漫画。週刊少年漫画はイズミン曰く色んな人が描いた色んな話が混じっているらしい。れんさい?って言って、1週間に1回だけ、それも1話だけ漫画になるのだとか。そして話がいくつか溜まると、『たんこうぼん』になるらしい。

俺はイズミンから渡された漫画の、とあるページを見た。

『異例の新人現る!!』というピックアップと共に、そこに描いてあったのは1人の少年。カラスの羽が舞っているダークな1枚かと思えば、小さな巨人に憧れて中学からバレーボールを練習する小さい背の男の子という青春漫画。イズミン曰く、顔も似てるらしい。

 

主人公は日向太陽くんという。

俺は日向翔陽。最初は名前が似てるなって思った。次に似てると思ったのは……時間が掛かったけれど数ヶ月後のことだった。商店街で見た、烏とついた名前のユニフォームを着た高校生が飛び回る姿。

 

____あ、、、シンクロする。

 

テレビの実況が『まさに小さな巨人!!!!!』と言ったもので、後ろにいたイズミンが「漫画みたい……」とポツリと呟いた。

 

うん、俺も思った。

そしてバレーボールを『より』やりたくなった。

 

また次に似てるなと思ったのが、中学生になった時。バレーボール部が無くて先生に「女子に混ざるかぁ?」と言われた時、またシンクロした。

 

もしかして……俺のこと描いてくれてる?

 

俺はその日急いで本屋に向かった。

あの時は名前が似てるなって思っただけですぐ読むのを諦めちゃったから。だけど今は違う。

 

『あの漫画を超えたい』

 

あの漫画通りじゃなくて、俺がその先を進みたい。

漫画を一冊購入すると、すぐに家に持ち帰って何回も何十回も何百回も読んだ。妹はそんな俺にとても驚いていた。

 

中学に上がって3年になった頃、ハイキューは単行本15巻を迎えていた。俺にはまだずっと先の春高予選の話で盛り上がっている。

 

俺は、新刊ではなく初めての1冊目を手に取った。あの日初めて買った週刊少年漫画。何百回と見た話。それを読み返す。

 

やっとようやく来た。

 

ページには、俺が飛ぶことが描いてあった。中総体で、あの強豪相手に。

 

____ああ、この影村ってやつ何度見てもムカつく。

 

コート上の王様、影村飛雄。俺のライバル。そして後の俺と同じ高校のセッターとなる相手。

 

 

*

 

 

「本当に現実になるなんて……」

 

そう言ったのはイズミンかコージーか、はたまた新入りか。俺が緊張に弱くて腹痛なのもピッタリ。

相手コートを見上げた。身長も経験もなにもかも違う、大きな壁。そして酷くこちらを____特に俺を睨んでくる黒髪の男。

 

「「お前が影村/太陽か」」

 

どうやら相手も俺と同じくあの漫画を見ていたらしい。他のみんなは、『たかが漫画』と思っているけどコイツだけは違った。

 

コイツだけは俺を見た。

 

試合開始。

俺は仲間を元気づけずつ、「まだ負けてないよ」「俺はもっと飛べる」と言った。無意識だった。その言葉、セリフで影村じゃなくて影山飛雄は焦った顔をする。

壁。漫画よりももっとずっと大きく見える。2.3m(中学サイズ)のネット越しに合う壁。

 

____でも漫画のおかげて相手コートがよく見える。

 

漫画の中の影村は1人で戦っていた。俺は3年間環境に恵まれなかった。それは、いくら漫画と違う行動がしたくても離れたくても覆せない状況だった。

 

どうやらそれは影山も同じだったみたいで。

 

 

____アイツ、漫画みてぇに一人で戦ってる。

 

 

その日、試合は俺たちの負けで終了した。

俺は影山に向かって、気になってたことを聞いた。

 

「お前……なんで漫画と違わないんだ?」って。

 

それは自分にも刺さる言葉だった。

だっておかしいじゃん。

漫画が未来の漫画なら、違う行動を取ればいい。

だって俺は俺だ。その先を行って更に高みを目指す。

 

そしたら影山は俺に襲いかかってきた。襟首を掴まれて、「うるせぇ!!!!お前こそ3年間何してたんだよッ!!!!」と泣きそうな顔で叫ばれたものだから俺は言葉を失った。

 

俺たちは似てたんだって。

あの漫画に勝てないことを。

 

 

視界の奥で烏の文字が入ったジャージの3人組を見つける。そこまで似てるのかと絶望した。

 

 

*

 

 

俺は原作通り、烏野高校に入った。小さな巨人が居たってのも大きくあるけど……心の隅ではあの漫画のことを気にしていた。原作だと、カラス高校に入った太陽がもっと飛ぶから。

 

そしてやっぱり『居た』。

 

「影山……お前も来てたんだな」

「……あぁ」

 

お互いに睨み合う。俺たちの共通点は今の所、同じ高校なのとあの漫画に登場するってだけ。あとは俺の想像だけど______あの漫画通りにさせてたまるかって想いも一緒。

 

「お前、白鳥沢は行かなかったのかよ」

「……お前もあの漫画見てるなら知ってるだろ。落ちた」

「はぁ!?コート上の王様だから!?」

「うるせぇ!!日向ボケェ!!!」

 

 

やいのやいので騒いでいると原作通りに、烏野高校の3年がやってきて____。

 

 

それからはあっという間だった。

 

アオシロ高校もネコ高校にもフクロウ高校にもオイナリ高校にもカモメ高校にも出会った。

 

俺が体調を気をつけていても熱は出た。

悔しい思いをした。

 

漫画はどんどん進んでいくし、何より漫画の人気が高いせいで俺たちは注目されるようになった。注目ってのは悪い意味での注目だ。烏野高校の攻撃が全部バレてる。それは相手校も同じで俺たちは烏のごとく食い散らかした。確実に一つ一つ勝利を掴んでいった。

 

2020年、東京オリンピックが終わった日。

 

そして今_____俺にとってボーナスステージ(研磨が言ってた)が現れることになる。

 

「サイン……会?」

 

やっと悪夢のような、神様のような漫画が完結してから2年後の今日。週刊少年漫画にサイン会の応募ハガキがあることを知る。侑さんが何か騒いでいたと思ったら公式アカウントでもサイン会の発表があったらしい。

性別不明、年齢不明、正体不明の漫画家、『モブ』さん。

 

あれだけ世間で俺たちモンジェネ世代より騒がれた伝説の漫画。当然狙わない人間など居るはずもなく、ましてや俺の知り合いは全員襲いかかることになるだろう。

 

この人、一体何者なんだろう。

 

俺……この人に会いたい。会って、問い詰めて、それで俺は俺だって言って勝ちたい。

 

 

*

 

 

結論を言うと、サイン会は当選した。

お、面白くないメンバーも居るけど。影山とか影山とか。あとはかつての強豪たち。コネを使ったって人もいる。その気持ちすっげえ分かる。

 

俺はサイン会の先を見た。

机の前に佇む研磨みたいに猫背な女性。確か、漫画描いてる人は前に姿勢を崩すから猫背なんだっけ。

 

あ、こっち見た。

何も興味がない目が俺を見て大きく目を見開く。

なんだかそれが、神様がやっと俺を視界に入れた気がして、心臓が大きく跳ねた。

 

俺、こんな小さな人に負けてたんだ。

 

いつも先回りに予想されて、一度も原作とは違う行動になれたことがない。違う行動が唯一出来たのはキャラクターとの会話のみ。攻略が上手い研磨でさえもムカつくと言わせた作者モブさん。

 

1番前の1番手で並んでいた俺は笑顔で向かった。

 

「初めまして!!!日向翔陽です!」

 

絶対、負かす。

 

だから俺のために続き描いてよ。

 

 

 

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