ハイキュー世界でハイキューの漫画を描いちゃった話 作:テン吉
この話は……。
非常におバカなことに、2次元と3次元の顔が全く違ったので気づかなかった私の話である。
私が中学3年の頃。まだ担当が赤葦じゃなかった頃。
丁度、春高でカラスVSオイナリを描いている時にスランプに陥った。なんせ生まれてから15年。ハイキューのシーンは忘れかけつつある。かろうじて小学生の頃に描きためていたネームによって沈みかけた舟が助かっている状態だ。
だけど打った鉄が熱いかと言われれば少し冷めている状況に近い。
これは非常に不味い。
ファンアートたるもの、熱が無くては描けぬ、愛に欠ける。
このことを担当に連絡したら「じゃあ先生が好きそうな高校の文化祭行きましょうよ」と言われた。
好きそうな高校ってなに???え?飛行機で東京から兵庫まで行くの???てかなんて名前の高校???
私が色んな質問をすると、担当はいいからいいからと誤魔化す。
のちに完結したあとで教えられたが____実はオイナリ高校のモデル本当にあったんですよと言ったら私が筆を折るのを予想したため、慮って内緒にしていたらしい。
だから校門の「稲荷崎高等学校」をじっと見ていた私にスタッフが「ああそれ、イネ科ざきって読みます」って大嘘を付いたのも今なら頷ける。てかなんだよイネ科崎って。
どおりで「イネ科ザキの文化祭かあ」と独り言を言ったら、在校生たちや父兄からなんだコイツという顔で見られたはずだ。
「ここはバレーと吹奏楽部が有名な高校でして。あ、モブさんが大好きな北信介に似てる人物も居ますよ」
「え!!本当にですか!?!?」
唐突だが私は北信介が箱推しの中で他よりちょっとだけ好きだ。
前世の頃、テレビで試合中継を見た時にdボタンってやつがあるだろ。あれをONにしてるとテレビの左上にちょっとしたバレーボール情報が表示されるのだ。そしてプロフィールも見れちゃう。その中で多かった文章が『バレーボール日本代表選手がハイキューの中で1番好きなキャラクターは誰ですか?』という質問だ。そして質問の中で1番多かったのが北さんだった。プロバレーボール選手いわく、「ちゃんと」が好きらしい。私も好きだ。ちなみに他は影山とかノヤっさんが多い。宮侑は……あれ、居たっけ。
てことで、やってきました文化祭。
はぁぁぁぁぁ。
すぅぅぅぅぅ。
「高校生の匂いがする」
「先生、言葉がアウトです」
「なんで!?」
休日に付き合ってくれた担当に突っ込まれつつ、探索を進めていく。私は身長が小さいので担当さんの服を掴むことに。
「先生、教室どこ行きますか? 誰に似てるところがいいですか? レフト(宮兄弟)かライト(北信介)か」
「まずはレフトで」
二次創作ブログを知っている皆様ご存知、二次創作には夢の絵も、腐った絵もある。ちなみにオープンにはしておらず、絶対に二次創作の暗黙の了解を知っている人しか解けない難問を解いた先に、私が何ヶ月かじっくり見て許可したフォロワーしか見えないようにしてあるパス制だ。そしてこの担当はその難関を突破した猛者である。つまり腐っている。最カプは宮北推しらしい。私は顔カプ以外は全然OKなので推しが描ければ最高として描く。
話はズレたが、担当曰く宮侑に似ている高校生に会わせてくれるらしい。
ちょうど「やかましブタが」描きたかったから助かった〜
あーあ。なんで原作キャラ居ないんだろ。
バレーボール盛んなのに。テレビの中継も野球や相撲よりバレーボールだし。
そんなことを思いながら、歩いてると担当がふと止まる。1年生の教室だ。
「先生、ここみたいです」
担当が確信を持った声で言うものだから、私は首を傾げる。
「ちなみになんで分かるんですか?」
「高校生に聞きました」
「え!?!?なんて!?」
なんて聞いたの!?もしかして宮兄弟に似てる人いますかって!?!?まさか言ってないだろうな!?
ジト目で担当を見ると、担当は目を合わせてくれない。サッとそらす。これはアウトだ。
だけど、その担当の背後に現れた180センチの超大型巨人によって私はそっちに目が行くことになる。
_____金髪のツーブロ。前髪右分け。
そして好きなもの以外興味無さそうな顔。
「___ミャーツム!?」
「なんやそこのちっさいの。俺は宮あ____」
「うわああああああああ!!!!!!!」
担当が急に叫び出したので私と180センチが数センチ飛んでビビる。
担当は「名前を聞いたらダメです!!先生のイメージが絶対崩れますよ!!あれは脳内宮侑で!!」とこっそり耳打ちしてきた。どうやら私のためらしい。分かったぜ担当。
「名前は名乗るな、青年」
「なんかちっこいのが言っておる!?」
「青年、金髪いいな。似合ってる」
「急になに!?なんでこういう時アランくん居らへんの!?」
私と宮侑似の高校生がギャアギャアと騒ぐ。
担当は隣で感動していた。なんで?
そんな風に話してたら、今度は銀髪が___。
「ミャーサム!?!?」
「なんや。俺は宮お」
「だああああああああああああああ!!!!!」
担当がまたもや叫ぶ。世界の中心で叫び声を叫ぶ。意味がもう分からない。これも担当がさっき言ってた解釈違いが起こらないためか。
私は宮治似の高校生に「名前を名乗るな、青年」と先程同様言った。
「なんやねんこのちっさいの。ツム、知っとるやつか?」
「知らんわ!!!初っ端から人の自己紹介遮る阿呆と一緒におるやつなんて初めてだわ!!」
宮侑似の高校生がそう叫ぶと、宮治似の高校生がハッとした顔になる。
「ツムがまともなこと言うてる……」
と呟いて見せた。
ツム。それを聞いた途端に私は興奮する。本物みたいだと。
キャッキャッと喜ぶ私に担当はにこやかな笑顔を見せた。空間が既にカオスだった。
「とりあえず、教室の中入ってもらってもええですか?そこ、邪魔なんで」
宮治似の高校生に言われて、慌てて担当と共に教室内に入る。教室内に入れば、そこは縁日だった。スーパーボールを浮かべた小さなプールに、輪投げ、射的などなど。あーー懐かしい。私の頃も縁日だったなあ。3年はメイド喫茶とかお化け屋敷とか人気なもの取りがちだから自然と1年生は余った出し物になるんだよねー。
「先生、射的ありますよ。やってみます?」
「いや、私こういうの苦手で……」
と言うとニヤニヤした宮侑似の高校生が私の手を引っ張って射的コーナーへと連れていく。
「ほな俺がやったるわ」
宮侑似の高校生が銃を構えた。「金はあとで請求すんで」って言ってきたのでOKした。
「見とき。こういうのは力やなくて技術やで」
「…………」
パンッ。
景品が少し揺れる。うーん。なんだろう。
「あ」
「なんや?」
「今の、ブロックアウト狙えそう」
「…………は?」
「いや、壁際に当てて外に弾き出したら取れそうだなって」
と、ここまできてバレーの専門用語を言ったことに気づく。宮侑似の高校生はじっと私を見てきた。
「……おもろい女やん」
「えッッッッ」
なんか、おもしれぇ女をいただきました。
またもや宮侑似の高校生が同じ景品を狙う。
「そこ違いませんか?。もうちょい上」
「え?」
「今の角度だったらネットイン狙える」
「射的にネットないやろ」
「たとえ話です」
「……なんやねん」
「ボールだったら、今の軌道はネットインしそうだなって」
「銃の弾見てボールの軌道考えとるん?」
「……?」
「おもろい女やん」
さっきからなんでおもしれぇ女って言われるんだろう。
3度目の正直ってやつで、宮侑似の高校生がまたもや同じ商品を狙う。だけど。
「ちょっと待ってください」
「ん?」
「その構えだと打点低いです」
「…………」
「もうちょっと肘上げた方がいい」
「…………」
「あと身体の開きが早いから、右に逸れると思います」
「…………」
宮侑似の高校生がゆっくり銃を下ろす。
「なあ」
「はい?」
「これ、射的やで?」
「知ってますけど」
「なんで俺の射的見てサーブのフォーム指導しとん?」
「……あ」
「あ、ちゃうやろ」
宮侑似の高校生が笑い始める。
「おもろい女やんって言いそう」
「なんや、分かっとんかい」
「ていうかバレー用語分かるんですね」
「バカにしとんのかブタ」
「あ!!今のもう1回!!」
「はあ!?!?なんやねんこのブタ!!」
「やべぇ!!!担当さん興奮してきた!!」
うぉおおおおおおおお!!!!宮侑みたいな宮侑似の高校生!!!最高にハイってやつだぜぇ!!!
そうはしゃいでいると見かねた宮治似の高校生が「あかんあかんあかん!!!ツムそれ以上ブタ言うな!!!!」と止めに入る。なんでだ。ちなみに担当はこの世の終わりかってくらい青ざめていた。
「もーーアカン。調子狂うわ……次はサムやで」
「は?なんで俺が射的やらなあかんの」
「あのちっこいのがムカつくからや」
「……それは分かるな」
なんか目の前で悪口言われてるんですけど。
とりあえず宮治似の高校生が銃を構えることに。
景品を狙って撃った。
パンッと良い音が鳴るが、外れる。
「惜しい!」
「惜しくない」
「いや、今の惜しかったですよ」
「そうか?」
「コースが甘いです」
「…………」
「もう少し身体寄せて、インナー狙った方がいいです」
「…………」
「何?」
宮治似の高校生が隣の宮侑似の高校生を見る。
「ツム、なんやこれ」
「知らん」
「バレーの話しとる?」
いやしてないがな。
「射的の話です」
「余計おもろい女やん」
なんか宮治似の高校生にも、おもしれぇ女判定を頂いた!?!?!?
とビックリしてたら今度は私がやる番になった。宮兄弟似の高校生ら2人がニヤニヤして「俺らが教えたったんだから分かるよなあ?」と圧をかけてくる。くぅーー!!!そこもキャラに似てて愛せる!!!
*
「って、思いながら射的全部当ててみせたのを思い出しました」
「おん。せんせー、俺の事思い出してくれてほんまに嬉しいわあ」
棒読みで目の前の宮侑似の______ではなく宮侑選手がにこやかな顔で言う。
うわーーー(棒)サイン会以来だよチキショウ。
「ほな先生、今なら言えるやろ? 俺のフォームどこが悪いん?」
「すいませんでしたぁ!!!!」
「あの頃ちょうどオイナリ高校編描いてたやろ」
「すいませんでしたぁ!!!!」
「春高でオイナリ高校の俺モデルが負けるとこ描いてるのに文化祭にノコノコやってきた先生ほんまに好きやで」
「本当にすいませんでしたぁ!!!!」
くっ!!!!まさか赤葦に今後のサイン会を減らす代わりに絶対行けって言われたプライベート飲み会に、現役選手(宮侑だけ)がいるとは!!!!騙された!!!赤葦に!!!騙された!!!!
そこは木兎光太郎じゃないのかよ!!!
って、メールで打ったら「いえ、木兎さんと神が同じ空間に存在するのは宴会場を抑えてからで」と至極丁寧に言われた。なんでそうなるの……?披露宴や婚約式じゃないんだよ???
____唐突に頬を撫でられる。
あたたかくて大きくてゴツゴツした手のひら。
「ヒゥッ」
意識が目の前の宮侑に戻った。
ここが少女漫画の世界だったなら、私の目はとろんと宮侑を見ていることだろう。しかし相手の目を見ると180度変わる。目の奥に光がない。まるで底なし沼のように。
真っ暗闇だと思った。こんなにも明るい髪色をしているのに。
「先生。俺の事だけ見てや」
「いや無理!!!顔が良すぎてむり!!!」
「あ、やっぱり? 先生、俺のことかっこよく描いてくれるもんなあ?」
「あっっあっっ」
「喘いでて可愛ええなあ」
「あかえもーーーーん!!!!!」
私が叫ぶと、ドアがピシャン!!と開く。
トイレから帰ってきたあかえもん(赤葦)である。赤葦が「どうしたんだい、モブ太くん」と棒読みで言うものだから、目の前の宮侑が涙を浮かべてひぃひぃと笑う。た、助かった……。
だけど宮侑が目をすぅっと細めて、「まあ、"どこまで聞いてた"のか詳しく聞きたいけど俺は優しいから聞かんでおくわ」と赤葦に言ったのはビビったけど。
え、赤葦トイレから直帰じゃなかったの???
なんで私と宮侑の会話を聞く必要があったの?
なんて_____赤葦の眉間に皺を寄せた顔みてたら言えなくて。なんか、この箱をつついたら元には戻れない気がしてやめた。
ちなみに書けなかったけど文化祭ではスナと北さんに会ってます。