【チラ裏】ダンジョンに十字軍が攻めるのは間違っているだろうか   作:d_chan

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第20話 聖地を守れ

 最初に集まったのは、軍ではなかった。巡礼者だった。

 

 アレクシオス王国がオラリオの領有権を要求したという噂が西方へ広がってから一か月も経たないうちに、各地から人々が聖地へ向かい始めた。農民、職人、商人、元冒険者、下級騎士。彼らは武器を持たない者も多く、当初はただ「聖地が奪われる前に一度見ておきたい」「自分たちがここにいることで、渡してはならないという意思を示したい」と話していた。オラリオ行政院も、それを普通の巡礼の増加として扱った。

 

 ところが二か月目には、様子が変わった。十字架を縫い付けた外套を着た集団が現れたのである。彼らは自らを《聖地守護団》と名乗った。正式な騎士団ではなく、教皇庁の認可も受けていない。それにもかかわらず、その数は急速に膨れ上がった。地方の司祭が祝福を与え、貴族が馬や武器を寄進し、商人が食料を提供する。誰か一人が組織したわけではない。各地で同じような集団が勝手に生まれ、それがオラリオへ集まってきた。

 

『何人いるの』

 

「確認できているだけで一万二千ほどです。うち武装している者がおよそ四千。戦闘経験のある者は、その半分程度と思われます」

 

『誰が集めた』

 

「誰も、と申し上げるべきかもしれません。各地方で聖地防衛を訴える説教が自然発生的に行われました。正式な教会命令ではありません。司教が禁じた地域もございますが、それでも集まった者がおります」

 

『止めてるよね?』

 

「はい。ただし、難しい状況です。彼らは『主の聖地を守りたいだけであり、まだ誰も攻めていない』と主張しております」

 

『それ、軍隊になる一歩手前じゃん』

 

「その通りです」

 

 神聖四文字は嫌な予感を覚えた。五百年前、聖地と呼ぶことをためらった理由が、そのまま目の前に現れている。

 

 オラリオ南門の外には、仮設の野営地が広がっていた。最初は巡礼者用だった場所に旗が立ち、武器が積まれ、簡単な隊列訓練まで始まっている。街の警備隊は彼らを敵とは扱えなかった。大半が十字教徒であり、暴動を起こしているわけでもない。宿泊料を払い、食料を買い、礼拝にも参加する。ただし、口々に同じことを言った。

 

「聖地を異教徒へ渡すな」

 

 行政院から派遣された官吏が代表者たちを集め、何度も説明した。

 

「オラリオが明日アレクシオス王国へ引き渡されるという話ではありません。現在は外交交渉中です。先方も軍を動かしていません」

 

 一人の下級騎士が答えた。

 

「今動かなければ、手遅れになる」

 

「何が手遅れになるのです」

 

「王が聖地を欲している。それだけで十分だ。譲歩を重ねれば、いずれ街を奪われる」

 

「領有権を主張することと、軍で奪うことは別です」

 

「だが、異教の王が主の聖地を要求した。それを黙って見ていろと?」

 

 官吏は少し黙ってから、静かに言った。

 

「主ご自身は交渉を命じておられます」

 

「それでも我々には、守る義務がある」

 

「主の命令よりも、あなたの考える義務の方が上なのですか」

 

 騎士の顔が強張った。

 

「……そのような意味ではない」

 

「なら、武器を置いてください」

 

「攻められてからでは遅い」

 

「まだ攻められていません」

 

 対話はそこで止まった。彼らは反乱者ではない。しかし、解散するつもりもなかった。

 

 一方で、アレクシオス王国との外交交渉そのものは、むしろ順調だった。王国側が本当に欲していたのは、オラリオ全体の統治というより、迷宮資源への優先的なアクセスと東方商人に課せられる税負担の軽減だった。領有権要求は、交渉を有利に進めるための最大限の主張に近い。

 

「我が王も、今すぐ十数万の住民を抱える都市を接収できるなどとは考えておりません」

 

 アレクシオス側の外交官は、非公式の席で苦笑した。

 

「それなら最初から領有権など持ち出さないでいただきたい」

 

 パチカン側の外交官も遠慮しなかった。

 

「交渉とは、欲しいものより大きく言うものです」

 

「おかげで一万二千人集まりました」

 

「……それについては、我々も困っております」

 

「そちらも?」

 

「我が国では、『西方の十字教徒が聖戦の準備をしている』という噂が広がっております。国境都市では民兵の招集を求める声まで出ています」

 

 双方が黙った。実態は奇妙だった。パチカンは戦争を望んでいない。アレクシオス王国も戦争を望んでいない。しかし、双方の民衆が「相手は戦争を始めようとしている」と考え始めている。

 

「先に武装解除を」

 

「そちらこそ」

 

 二人の外交官は同時に言い、そして顔を見合わせた。

 

「……まずは噂を止めましょう」

 

「同意します」

 

 ようやく話がまとまり始めた、その日の夕方。オラリオ南方で事件が起きた。

 

 アレクシオス王国から来た商隊が、街道で襲撃されたのである。死者十一名。荷物はほとんど奪われず、荷車だけが燃やされていた。そして現場には、木製の十字架が一本残されていた。

 

 報告を受けた神聖四文字は、しばらく何も言わなかった。

 

『……誰がやった』

 

「現在調査中です」

 

 教皇の横には、イスカリオテのアンデルセンが立っていた。

 

『聖地守護団?』

 

「可能性はあります。しかし、断定はできません」

 

『十字架置いてるのに?』

 

「だからこそでございます。十字教徒が犯行を誇示した可能性もある。逆に、十字教徒へ罪を被せるために置いた可能性もございます」

 

『またそれか』

 

「宗教対立では、分かりやすい証拠ほど疑うべきでしょう」

 

『調べて。それと、守護団には絶対に報復させないで』

 

「承知しております」

 

 神聖四文字は少し黙ってから付け加えた。

 

『アレクシオスの商人の遺体は、向こうのやり方で弔って。十字教式にはしないで』

 

「御意」

 

 教皇が頷いた。しかし、外ではすでに別の話が広がっていた。

 

 ――アレクシオスの間者が、十字架を侮辱するため仲間を殺した。

 

 ――いや、守護団が異教徒を粛清した。

 

 ――王国軍が国境を越えた。

 

 ――オラリオの異教徒が武器を隠している。

 

 どれも確認されていない。それでも人は、事実より先に怒った。

 

 事件の夜、オラリオ東区で小さな暴動が起きた。アレクシオス系住民が集まる宿屋へ、十数人の男が押しかけたのである。窓が割られ、火が投げ込まれた。幸い、近くにいたギルド職員と冒険者がすぐ消火し、死者は出なかった。

 

 問題は、その後だった。宿屋から出てきた若い冒険者が、襲撃者の一人を斬った。一人が死んだ。誰かが「異教徒が十字教徒を殺した」と叫び、さらに人が集まった。警備隊が到着したときには、百人近くが睨み合っていた。

 

「全員、武器を下ろせ!」

 

 隊長が叫んだ。

 

「先にあいつらを捕まえろ!」

 

「宿を焼いたのはそっちだ!」

 

「十字教徒を殺した!」

 

「殺される前に守っただけだ!」

 

 双方が叫び、誰も相手の言葉を聞いていなかった。そのとき、群衆の中央へ白い影が降りた。

 

 翼が開く。

 

 ソフィアだった。

 

 五百年以上を経ても、その姿は少女のままである。彼女が公衆の前へ姿を見せることは今では稀だった。それゆえ、群衆は一瞬で静まった。

 

「武器を置いてください」

 

 柔らかい声だった。それでも、誰も逆らわなかった。

 

「主は、まだ誰も敵と定めておられません」

 

 一人の男が震える声で言った。

 

「しかし、天使様。異教徒が我らの仲間を――」

 

「最初に宿へ火を放ったのは誰ですか」

 

 男は黙った。

 

「誰が何をしたのか、これから調べます。信仰ではなく、行為を調べます。五百年前から、主はそう命じておられます」

 

 ソフィアは群衆を見回した。

 

「あなた方は、主の名を守ろうとしているのですか」

 

 十字教徒側の何人かが頷いた。

 

「ならば、主が禁じたことを、主のために行わないでください」

 

 誰も答えなかった。その夜、暴動はそこで終わった。

 

 襲撃犯が判明したのは二日後だった。

 

 十字教徒だった。

 

 聖地守護団の正式な構成員ではない。だが、野営地へ出入りしていた若者たちで、説教や演説を聞くうちに「異教徒がオラリオを奪う前に恐怖を与えるべきだ」と考えるようになった。商隊を襲ったのは、その延長だった。

 

 命令した者はいなかった。

 

 金銭的な目的もなかった。

 

 純粋に。

 

 正しいことをしたつもりだった。

 

 それが、神聖四文字には何より重かった。

 

『会いたい』

 

 捕らえられた首謀者は二十四歳の男だった。地方の鍛冶師の息子で、名をレオンという。洗礼を受けたのは幼児のころ。神学校へは行っていないが、毎週教会へ通う、ごく普通の信徒だった。

 

 神聖四文字の前へ連れてこられると、レオンは泣きながら跪いた。

 

「主よ……お許しください」

 

『何を許してほしいの』

 

「異教徒を殺したことを」

 

『なんで殺した?』

 

「聖地を守るためです」

 

『商人がオラリオを攻めたの?』

 

「いいえ」

 

『兵士だった?』

 

「いいえ」

 

『じゃあ、何から守ったの』

 

 レオンは答えられなかった。

 

「王国が……聖地を奪おうとしていました。皆が言っていました。異教徒へ渡せば、教会が壊され、主の御心が踏みにじられると」

 

『俺はそんなこと言った?』

 

「いいえ」

 

『教皇は?』

 

「いいえ」

 

『誰が言ったの』

 

「……司祭や、騎士や、巡礼者が」

 

『その人たちは、俺より正しいの?』

 

 レオンの肩が震えた。

 

「違います」

 

『じゃあ、どうして俺に聞かなかった』

 

「主に……私のような者が、直接お尋ねできるとは思いませんでした」

 

 神聖四文字は言葉を失った。

 

 それは、思っていなかった答えだった。五百年以上のあいだ、彼は「自分の名を勝手に使うな」と何度も言ってきた。しかし同時に、巨大になった教会の頂点へ自分自身が遠ざかっていた。普通の信徒にとって、唯一神はあまりに遠い。日常で聞くのは司祭の言葉であり、読むのは何世代もの神学者がまとめた教義である。

 

『……そっか』

 

 神聖四文字は小さく呟いた。

 

「主よ、私は地獄へ落ちますか」

 

『分からない』

 

 レオンが顔を上げた。

 

『死んだ後どうなるか、俺にも分からない。でも、生きてる間の責任は取ってもらう。十一人を殺した。そのことは、信仰がどうであっても消えない』

 

「はい」

 

『ただ、一つだけ覚えておいて。俺は、異教徒を殺してほしいなんて頼んでない』

 

 レオンは泣いた。その後、彼は公開裁判にかけられた。

 

 事件を受けて、神聖四文字は聖地守護団の代表者を全員オラリオへ集めた。百人近い。騎士もいれば、司祭もいる。地方貴族もいた。神聖四文字は彼らを大広間に立たせた。

 

『最初に確認するけど、オラリオを守りたい?』

 

「はい」

 

 ほぼ全員が答えた。

 

『俺のために?』

 

「主と聖地のために」

 

 年配の騎士が代表して答えた。

 

『じゃあ、命令する。解散して』

 

 誰もすぐには動かなかった。

 

「主よ。アレクシオス王国は、要求を取り下げておりません」

 

『交渉中だから』

 

「もし攻めてきたら」

 

『そのときは正規軍が守る。オラリオにも警備隊がいる。冒険者もいる。君たちが勝手に軍隊を作る必要はない』

 

「しかし、我々にも聖地を守る権利が――」

 

『権利はある。でも、自分で敵を決める権利まではない』

 

 騎士は黙った。

 

『今回、商人が十一人死んだ。やったのは守護団の正式な隊員じゃなかった。でも、君たちの集まりから出た言葉を聞いて、自分が正しいと思って殺した』

 

「我々は殺せとは申しておりません」

 

『分かってる。でも、「異教徒に奪われる」「聖地を守れ」「今こそ剣を取れ」って毎日言ってたら、誰かが本当に剣を取るよ』

 

 沈黙が広がった。

 

『だから解散。武器を置いて、帰って。残りたいなら普通の巡礼者として残っていい。本当に戦争になって人手が必要なら、そのとき正式に募集する』

 

 一人の若い司祭が尋ねた。

 

「主は、我々の信仰を否定なさるのですか」

 

『してない』

 

「では、主を愛するがゆえに聖地を守りたいという思いも?」

 

『それも否定しない』

 

「なら、なぜ」

 

『愛してるから何をしてもいい、にはしたくないから』

 

 若い司祭は言葉を失った。

 

『俺のために人を殺すなら、少なくとも俺が頼んでからにして』

 

 教皇が後ろで目を閉じた。

 

 後世、この言葉はかなり整えられて記録されることになる。

 

 聖地守護団は解散した。完全に納得した者ばかりではない。それでも、神聖四文字本人から直接命じられれば、従わない者はほとんどいなかった。

 

 だが、その思想まで消えたわけではない。

 

 ――聖地は守るべきものである。

 

 ――異教勢力に奪われたなら、取り戻すべきである。

 

 ――ただし、その時機を決めるのは主と教会である。

 

 最後の一文が付いたことで、危険は抑えられた。少なくとも、神聖四文字が直接命令できるあいだは。

 

 アレクシオス王国との交渉は、半年後に妥結した。王国はオラリオへの領有権主張を事実上棚上げする。代わりに東方商人への関税を一部引き下げ、迷宮資源の購入枠を拡大する。アレクシオス系住民の宗教施設も正式に認められた。

 

 戦争は起きなかった。

 

『よかった』

 

 神聖四文字が言うと、教皇も頷いた。

 

「はい」

 

『聖地って、やっぱり面倒だな』

 

「今さらお取り消しになりますか」

 

『できる?』

 

「信徒が納得しないでしょう」

 

『だよなあ』

 

 ヨハネスが隣で静かに言った。

 

「主は以前、聖地とは奪われたときに面倒になるものだと仰っておられました」

 

『覚えてるよ』

 

「まだ奪われてもいないのに、これでございます」

 

『言わないで』

 

 神聖四文字は、本気で頭を抱えたかった。

 

 その後、数百年間。オラリオを巡って、小規模な外交危機や国境紛争は何度も起きた。しかし、聖地そのものが失われることはなかった。パチカンが強かったからである。十二騎士団、聖騎士、オラリオの冒険者、そして表には出ないイスカリオテ。誰も、本気で奪おうとはしなかった。

 

 そのため、「聖地を奪われる」という恐怖は、次第に現実の危機ではなくなった。

 

 代わりに、物語になった。

 

 説教になった。

 

 騎士道物語になった。

 

 子供たちは、もし聖地が邪悪な者に奪われたなら、勇敢な騎士たちが十字架を掲げて取り戻す話を聞いて育った。

 

 神聖四文字は、その種の物語を禁止しなかった。

 

『物語ならいいんじゃない?』

 

 そう考えたからである。

 

 後になって、少し後悔することになる。

 

 人は、何百年も聞かされた物語を、現実が似た形になったとき、そのまま行動の型として使うことがある。

 

 そして時代は、さらに流れた。

 

 七百年。

 

 九百年。

 

 千二百年。

 

 西方世界の大半から、古い神々への信仰は宗教として姿を消した。十字教を国教としない地域は辺境へ追いやられ、教会の存在しない主要都市はほとんどなくなった。異教徒への法的寛容は残っていたが、そもそも異教徒そのものが少なくなっている。

 

 パチカンは世界を征服しなかった。

 

 それでも、西方世界は十字教世界になった。

 

 神聖四文字が恐れていた通り。

 

 強制ではなく。

 

 制度と文化と時間によって。

 

 そして、転移から千数百年を過ぎたころ。

 

 東方のさらに向こうで、奇妙な報告が上がり始めた。

 

 人の姿をした、正体不明の存在が現れた。

 

 異常な力を持つ。

 

 老化の様子がない。

 

 人間には不可能な現象を起こす。

 

 そして、自らを当然のように――神と名乗る。

 

 最初に報告書を読んだ神聖四文字は、長いこと何も言わなかった。

 

『……神?』

 

 教皇が慎重に頷いた。

 

「そのように名乗っているとのことです」

 

『宗教家とか、王様の称号じゃなくて?』

 

「現地の報告では、本人たちは文字通り、自らを神であると主張しているようです」

 

『一人?』

 

「いいえ」

 

 教皇は次の紙へ目を落とした。

 

「少なくとも、確認されているだけで十数名。地域ごとに別々に現れているとのことです」

 

『十数人?』

 

 神聖四文字は完全に困惑した。

 

『何それ』

 

「我々にも分かりません」

 

『強い人間とかじゃないの?』

 

「可能性はあります。ただ、既存の魔術体系では説明しにくい現象も報告されております」

 

『……天使みたいな存在?』

 

「それも不明です」

 

 神聖四文字は報告書を読み直した。

 

 酒を飲む。

 

 冗談を言う。

 

 人間と話す。

 

 奇跡を起こす。

 

 自分を神だと言う。

 

『変な人たちじゃなくて?』

 

「その可能性も含め、現在調査しております」

 

『絶対、先に調べて。誰も攻撃しないで』

 

 教皇は一瞬だけ沈黙した。

 

「相手が神を名乗っていても?」

 

『だからだよ。何者か分からないんだろ』

 

「十字教の教義上、神は唯一でございます」

 

『教義と正体不明の相手を殴るかどうかは別。もし本当にすごく強い何かだったら、喧嘩売るの危ないし』

 

「……主は、その者たちが本当に神である可能性もお考えになりますか」

 

『分からない』

 

 答えは率直だった。

 

『そもそも俺、俺以外の神が実在するなんて考えたことないし』

 

 教皇は黙った。

 

『だから確認する。話せるなら話す。何ができて、どこから来て、何で神って名乗ってるのか聞く。それから考える』

 

「もし、本当に神であると証明された場合は?」

 

 神聖四文字は、長いこと答えなかった。

 

『……そのとき考える』

 

 それしか言えなかった。

 

 しかし、その慎重さは教会全体には共有されなかった。

 

 西方の神学者たちにとって、話はもっと単純だった。

 

 神は唯一である。

 

 それは千年以上、疑う余地のない前提だった。

 

 ならば。

 

 自らを神と名乗る存在が現れたとき。

 

 彼らは何者なのか。

 

 答えは、すでに教義の中に用意されていた。

 

 ――偽神。

 

 ――邪神。

 

 神聖四文字自身がまだ何一つ結論を出していないにもかかわらず。

 

 その呼び名だけが。

 

 本人より先に、西方世界を走り始めていた。

 

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