鳥のさえずり
風が耳のそばを通り過ぎる。
地面が硬い。
眩しい。
うるさい。
うーんと声が無意識に出る。
ようやくの思いで、目が開く。
できれば起きたくないし、面倒くさい。
でも、起きるしか手がない。
……あたりに、深い緑の木々が生い茂っている。
ここは丘になっているようで、森の中でも比較的遠くを見れそうだ。
待てよ、なぜここにいる?
頭の中がクリアになっていく。
前のことを思い出そう、と………
「ぅ…おぇ…」
視界が狭くなる。暗くなる。
なぜだ?死んだはずじゃなかったのか?地面が、点字ブロックの凹凸に落ちたはずじゃなかったのか?
そんな考えが頭の中に響き渡る。
吐瀉物が土と混ざる。
知らず知らずのうちに、呼吸が荒くなる。
必死に抑え込もうとした。
こんなことをしても無駄だと。
…止まることはなかった。
何時間、留まっているのだろうか。
日が沈みかけているのを、見る。
空が赤みがかっている。
ずっと見ていたい。
ただ、ずっと。
これだけ。でも、心が落ち着いたような気がした。
今、冷静になって辺りを見渡す。
一面、空の赤を反射しているように、森が広がっている。
日本じゃ、あまり見れない光景だ。
こんなに広いのに、山が一つも見当たらない。
右の方を見る。
一つ、煙が見えた。
「煙?」
人が住んでいるのだろうか?
さっきまでなかった煙だから、家主が帰ったのだろうか?
それともキャンプ?
いずれにしても、孤独な暗黒の空間に、人に会える希望の光が射し込んだのは確かだった。
ようやく、1歩歩ける。
1歩1歩が重い。
木々が相対的に後ろに下がっていく。
草や細かい石に少し、時間が取られる。
歩きづらいったらありゃしない。
トカゲが木に張り付いている。
蚊がまとわりついてくる。
「あぁ、もう!うっとうしいなぁ……」
独り言を呟く。
虫の声やカラスの鳴き声。
それらが1つの曲になったかのように感じられるほど、一体感や立体感を感じた。
何歩歩いただろう。
足が棒になるとはこのことなのか?
足裏とふくらはぎがとにかく痛い。
もう、辺りは暗い。
地面すら見えづらい。
あの、煙の場所だけが、ほんのりとした明かりを放っていた。
煙は、はじめに見たときとは比べ物にならないほど、近い。
あと、もう少しだ!頑張れ!
そう自分に言い聞かせた。
でも、きつい。
喉が渇いた。ひんやりとしたお茶が飲みたい。
その場に、座り込んでしまった。
地面はもう見えない。
土の感触が気持ち悪い。虫の声だけが、耳に入る。足の痛みと喉の渇きがより、鮮明に感じられる。でも……
少ししたら休もう。
そう言い聞かせて、何分が経った?
もう、大丈夫。行こう。
また、歩き始めた。
木々の隙間からも光が見える。
それほど、近くなったのだろう。
そう思う。
水の流れる音。たき火の音。
それを聞いて、心が癒されるように思えた。
光が強くなって、火が見えた。
辺りは粒の大きい石ころ。
食べられた焼き魚の残骸。
そして、簡易な布で作られた、テントがあった。
もうほとんど動かない足で向かう、もうほとんど出ない声で呼ぶ
「すみません、誰かいますか?」
ほぼ声がかすれている。
でも、声は届いたのだろう。
中から男が驚いたような顔をして弓を構えたまま出てきた。
だが、男は丸腰なのをみて、弓をおろしてくれたようだ。
男がめくり上げた入り口の隙間の中から剣や地図などが見える。
探検家か?でも、一人なはずは……そう考えている内に、
男は心配そうに口を開けた。
「Qan Jam un unbiermoy?」
………
「…え?」
言語は、違ったようだ。