負けない愛が無かったなら作ってしまえ~いれぎゅらぁC~ 作:シロツメクサ
零空間も深くまで潜ってきた。
ウィルスの濃度も酷くこんな場所に長時間居てはマズい。
電磁障害も酷い、マトモな通信なんて出来やしない……
「……正直、私はあのゼロを目の当たりにして勝ち目が無いと確信してます」
「簡単に止められないと思うよ……でも諦めては居ないんだろう?」
「えぇ、私は……この命に替えても止めて、ベースに連れて変えるつもりです」
肩を並べて駆けるエックスを見れば絶句している。
そりゃそうですよね、私は常々口に出していた信条に反する事です。
命を粗末に扱うな
私が反乱に加わったレプリロイドをブチのめした時に常々言っていた言葉。
ここで散らす覚悟があると言ったらそりゃ絶句もしますか。
「っと……危ないですよ、エックス」
「っ、ありがとう……じゃなくて、クロエ!!キミはっ……」
「ロボットには誰しも製造理由ってものがあると思います、人の手によって作り出された物はすべてそうです」
「いきなり何を……」
「私の宿望を果たす為ならこれも必要な対価です」
そう、貴方にもゼロにも……なによりアイリスに平穏に生きて欲しいが為です。
こうなってしまっては刺し違えてでも止めてゼロの心を取り戻さねば……
必死に考えた結果の私の策はあります……見る限りこのゼロウィルスに汚染されたメカニロイド達のパターンは……
一応ですがいくつかの指向性を確認できた……エックスに対する病的な殺意だ。
これから逆算して中和プログラムは時間をかければ組み立てられるでしょう……何にしてもそう、ゼロを止めなければならない。
ベースコードがロボットインフルエンザのコードに近くなっているから余計に分かりやすい……
シグマウィルス程解析に手間取る事はない。
私が死んだとしてもウィルス関係のデータは端末に残している……それをドップラー博士に委ねれば良い。
それに、私は元来居ないはずのイレギュラーであり何十年も前に死に絶えている人間だ。
命が惜しくないと言えば嘘になりますが……対価としてベットするのはなんら惜しくない。
ゼロの待つ最奥に近づいていっている、機械の身体になってなお感じる悪寒が肌を突き刺す。
圧倒的なパワーの奔流が空間を支配していっている。
「エックス、エネルギー補給は十分ですか?」
「……あぁ、サブタンクの方も十分ある」
「なら良いんですが……私が出来ることなんてたかが知れています、エックス……貴方が要です」
私に出来ることなんていくつかの攻撃を防ぐ事くらいでしょうよ。
攻撃を加える事は絶対に叶わない、平素からパワーは劣っていたんですから。
フィジカルで絶対に敵わないのはどう足掻いてもひっくり返せない。
エックスも……戦闘するとなればガイアアーマーか……
「……すまない、すこしこっちに」
「?……あぁ、なるほど。呼んでいますね」
考えていたらほんのりと感じるシグナル……私はほんのり程度ですがエックスは確信している。
それほど強く感じるのはエックスだから、でしょうかね?
不自然なまでに脅威が排除された片隅があった。
ひっそりと隠れるように切り取られた安全地帯……そこにカプセルがあった。
装着中は無防備になるから、ですかね。
「博士、これは……」
『エックス……それにクロエ君か、大変な戦いになると思う。エックス、戦いを終わらせるための力、アルティメットアーマーを授けよう』
「アルティメット……アーマー……」
『このアーマーを装着すればお前の能力を最大限発揮させられるハズじゃ……だが、同時にお前に多大な負荷がかかることも意味する』
エックスの設計上の上限を引っ張り出すアーマー……ライト博士のエックスへの最後の餞別。
同時に博士が嫌っていたロボットへの無理な負荷を課す諸刃の剣……
鎧でありながら刃である、ある意味エックスの存在を体現するアーマー。
『その面持ち、辛い戦いが待っているのだろう……こんな物を残してやるしか出来ん不甲斐ないワシを許して欲しい』
「そんな、博士にはいつも感謝しています……俺は……この力で争いのない世界を掴み取ってみせます!」
『そうか……エックス、ワシはお前なら出来ると信じておるよ』
「はい!……その前にゼロを何とか止めないと……」
なにか知っている顔だ、悟られ無いように努めていますけどエックスの視線が外れた瞬間の苦々しい顔は……
戦う相手が何であるか、この空間が何であるか……それはおそらく十分に理解している。
それでも……あくまでも傍観者であるつもりですか。
『そちらのクロエ君は……身体の大部分は分かるがコアがわからない、部分的にアーマーを作ってあげられそうだが……』
「良いです、エックスに注力してあげてください……トーマス・ライト博士」
『そうか……だが、授けようと思う物がある。エックスのアーマー装着が終わったら入ってほしい』
「……分かりました」
私に授けるもの、ですか……ふむ。
……念入りに脅威が入りこまないようにしたのか……それとも何処からかシグマウィルスのデータを拝借して独自に組み上げたアンチウィルスがあるのか……
この場での受け渡しが叶うのはそんな所……ですかね?
「おぉ……」
「……先に行く、慣らすのもあるけれど……巻き込みたくない」
カプセルから出てきたエックスは……見るからに力に溢れたいっそ神々しいまで感じる姿だった。
少しばかり刺々しいのはそれだけ余裕がないから、でしょうかね。
さて、では私には何を齎されるのやら……翼が邪魔か、格納してっと……
ちゃっちゃか行かないとエックスに置いていかれます。
『ワシから授けるのは……エックスのアーマーに関する知識じゃ』
「……プロテクトが掛かってますが」
『宿題みたいなものだ、キミは……随分と人間染みている、コサック君が晩年ワシにボヤいていたが……』
「……ボディ構造だけじゃなくて中身までお見通しですか」
『ワシは何もしてやれん……だが、キミは……人を捨てる覚悟を持っていたキミは違う、コサック君の弟子であればこれくらいは解いてみせてくれ』
カーッ……これ、暗にお前も生きろって事ですかね。
見抜かれているし先生の教え子の程度を推し量られてる感じがする……癪ですけどね。
「……本当、いい性格してますよトーマス・ライト?」
『すまないね、エックス達をどうか……平和に導いてやってくれ』
「……保証はできかねますね」
静かに首肯だけしてエックスの後を追う……私に出来る事はやってやろうじゃないですか。
エックスに追いつこうと全速力を出しましたが……なんてことでしょう、アルティメットアーマーを入手したエックスはそれ以上に早い。
障害になるメカニロイドは全部なぎ倒している、ウィルスは残っていても文字通りのぺんぺん草も生えないような有様。
これが戦闘能力を開花させたエックス……同等と思われる覚醒したゼロはどうなることか。
私のシールド、耐えますかね……先生が開発したこのボディに一切の不安はありませんが……
自分が設計開発をした盾には不安が残る、こんなのは想定していたか?
ロックマンとフォルテの戦闘データやキングとの戦闘データは取っていてもここまで……なんてのは……どうだった?
ロボットが担ぐ事を前提にかなり頑丈にに作ったし翼も妥協しなかったが為に大型化したが……
「……先に戦闘が始まってますかっ」
地響きがするレベルでドンパチと戦闘が……割って入るなんて自殺行為ですよ、えぇ……
普通ならこんな状況に入り込むなんてアホのやることですよ。
「死ねぇぇっ!!エックスゥゥゥウ!!」
「ゼロォォォオオ!!!」
全力での殴り合い……というのがコレでしょうよ。
余波だけで空間が揺れている。
双方攻撃の応酬で均衡を保っている……エックスはチャージショットをバスバスと連発……ハイパーチャージが稼働しているみたい。
ゼロはといえばバスターも合わせた斬撃を高速で飛ばしては……あ、あの構えはっ……!!
「ッ早――――え、エネルギー緊急放出!!」
滅閃光!なんて早さで伝播して……一発もかなり重い。
シールドで吸収できるエネルギー量の8割に一気に達するじゃないか!
装甲がある部分で受けても3発耐えられたら良い方ですか……
エックス達の方に視線を向けると……回避しようとして姿勢を崩されたエックスにゼロが肉薄している。
僅かな崩れ、それを逃すほどゼロは甘くない。
バスターからブレードを展開して鍔迫り合いをしていますが……!!
「くたばれェッ!!」
「ぐわっ……!」
ならばとゼロが先に動く……全力で蹴りを腹に叩き込んで……って、マズい!
追撃に移ろうとしている!!
「させませんっ……ぐ、ぅ、重い……」
「邪魔だ、失せろ!!」
「引くものですかッ!!」
シールドは耐えてくれる、危惧したセイバーに抵抗出来ず両断なんて事は無さそうです!
ですが、私のボディの方がやはり……荷が重い!!
電刃零……電磁場で斬撃を形作って飛ばしてくるなんて芸当をしてきたのを防いだのはまだ良いです。
これだけなら受け流すべきでしたが……猛ダッシュしてきたゼロの追撃を受ける必要が見えた。
セイバーの連撃を受けるとジリジリと押される……!ボディ出力の差が如実に出る!!
「ッ!しま……ぐぁッ……!!!」
「その顔で囀るな!!苛立たしい!!邪魔をするなら……貴様からっ……!!」
シールドを抜けないと見たんでしょう、切り上げでシールドを掬い上げられた!
マズいと思った次の瞬間には豪速の回し蹴りが腹にっ……!
標的が私に向いたかっ……空中で翼を用いて体勢を立て直すが……!
「ッ、本当っ……おっかないですね!!」
「消えてなくなれ!!」
追撃のダブルチャージショット……バスターも交えて肉薄してくるとは!
龍炎刃に断地炎……表面を熱して硬度を落とすつもりですか!
四肢で受けたらまずタダじゃすまない……さっきの蹴りでもそこそこダメージが入ってますし……!
戦闘用じゃない私は一撃もらったらかなり……重い!!
蹴りをボディにくらい続ければ4発で活動に支障がっ……!
「むっ!?」
「ゼロッ!キミの相手は俺だろう!?」
ゼロの横からかっ飛んできた炎の帯……グランドファイアのチャージショットがゼロに掠る。
直撃コースだったんですが……寸前でゼロが勘づいて避けた……なんて反応速度。
私から意識が逸れた……!
「ガッ!?」
「邪魔だと言っている!!」
組み付いて止めてやる……と思ったらそれも読まれていた!?
首を掴まれたと思ったら……あ、マズい……機能停止に追い込まれ……
「ぜ……ろ……」
「……フンッ、エックスの次は貴様を破壊してやる」
だめ、だ……こんな……どうしたらいい、どうしたら……
放り投げられて床に這いつくばるしか……できない……
首を圧迫されてエネルギー回路が損傷した、か……お、応急修理は出来る?
自己診断はどう?ボディ構造は平気だけど……自己修復に回すエネルギーが多すぎる、戦闘機動は無理が出るか。
対ゼロの分析結果は……圧倒的なパワー不足でどう足掻いても止められない……ですか……推定パワーが倍も違っていたらそりゃ勝てませんか
戦闘技術は向こうが圧倒的に上、反応速度とパワーも上……出力が圧倒的に足りない……分析しても私の分析速度よりもゼロのラーニングが早い。
ハハッ、どこも詰みじゃないですか。
分かっちゃいましたけど……これは本当に酷いったら無いですよ。
「お願いだ、ゼロ……目を覚ましてくれ!……波動拳ッ!」
「俺はもう目覚めている!!貴様は零に還れ!!」
波動拳を使いだしている……セイバーで弾かれてますけど……
まずい、大技の打ち合いになっている……もう、こうなったら私が割り込むなんてのはできない?
エネルギーカートリッジを直刺ししてからエネルギーを供給……動くには動けますけど……
重大:破壊のリスク大、直ちに退避すべし
R.E.A.C.T:Target-ZERO Process...20%
はっ……死ぬリスクは承知の上。
パワーが足りないのも覚悟の上……装備が壊れるのも……覚悟の上!!
「ディストーション、Gコントロール……アクティブ、オーバーブースト」
私自身のエネルギーをありったけ……翼に盾に注ぎ込む。
回路が焼けようが……爆発しようがそれでもいい!!
「幻夢ぜ……ぐぅっ!?貴様っ!!」
「クロエ!?無茶だ!!」
全速力でタックル、しがみつく。
形成された刃の近くにいるだけでジリジリと焼かれてる。
アルマージのシールド、バグホールを応用したアシストを150%の出力で稼働させても付け焼き刃。
エネルギー危険領域突入、予備エネルギー放出、兵装アンロック
私がやるのは……ただ一つ、一瞬でも無力化できりゃいいんですよ!!
ここまで披露するのは貴方が最初で最後でしょうよ、ゼロ……
予備エネルギーも……一度限りのこのスタンも!!
両腕の装甲が展開して内部の工具がスパークしながら飛び出す。
オーバーチャージ!!
「スタニング・ライトボルトォォォ!!!」
「ぐぅっ……目がっ……!!」
「んぐっ、ああぁぁっ!!……あとは……頼みましたよ、エックス」
文字通り、全エネルギーを注ぎ込むワンチャン……ゼロを止められるかもしれない……過電流と私の首元のクリスタルに仕込んだフラッシュ。
耳までは奪えませんけど……戦闘用の目を数秒でも潰せたら……という悪足掻きですよ。
振りほどかれ、思い切り殴られて弾き飛ばされ……
これで、少しは……エックスと共倒れなんて……事には……ならないと……
くぅ、エネルギーが枯渇してもう立ち上がることすら出来ない、とは……
「……ゼロ……今終わらせるっ、ノヴァストライクッ!!」
「ぐぅっ……うぉぉぉおおおっっ……!!」
……決着かと、思ったのは私だけではないみたいで、エックスもこれで終わりと思ったんでしょう。
だから、苦し紛れに放った疾風に直撃してしまっているじゃないですか……!
マズい、マズい……エネルギーはまだ枯渇している!!
「くぅっ、さすがだね……ゼロ……油断してしまったよ……」
「エッ……クス……」
「引き分け……だね……」
エックスは気絶、あのアルティメットアーマーの外装がボロボロになるレベルだ……内部も相当損傷している。
ゼロはまだ意識があるみたいですし、修復していっている。
私が起き上がる事が出来るだけのエネルギーが出力されるのは……2分後……遅い、遅すぎる……!!
『ククッ、フアーッハッハッハッハッ!!共倒れは想定外だったが……ついにエックスめを始末するチャンスが巡ってきた』
漁夫の利をしようとした……いえ、ワイリーの差し金でしょう、絶対にエックスだけでも殺すという執念……!
エネルギーが足りない……いえ、捨て身ですがゼロもエックスも助ける一手はある!
身体が動かないだけだ……翼にはまだ……エネルギーが少しだけ残っている……!!
「死ねぃ、エックス!!!」
ごめんなさい、コサック先生。
貴方の技術を未来に持っていく事を諦めることになります……
我が身を盾に、爆弾にしてしまえば……良いんですよ……
『やはり、キミはその狂気の開発をやり遂げてしまったんだね。そして自分を顧みないで……誰かを救おうとしている』
『私はキミにロボット工学を教えたがそれは……技術継承の為だったんだよ?』
行動に移ろうとした瞬間に流れてくる先生の言葉。録音データ……?
『ジョンと名乗ったキミの本名は知らない……だが、私のすべてを教え込んだ……紛れもない弟子だよ』
『何年キミを見てきたと思う、キミの行動が見通せない訳じゃないよ』
『このメッセージが再生されない事を祈るが……キミは遅かれ早かれ聞くことだろう……』
『そんな愚直な弟子への私からのプレゼントだよ……キミ自身をもっと大事に、その上で誰かを救ってくれたまえ』
なに、が……リミット、オーバー……アセンション……?
は、ははははっ……なんだよコレ……ボディの自己修復が早まっていく……
「させるかぁぁっ!!」
「ぬぅっ!?ぐおおぉっっ!?!?ゼロ!?それに小娘までっ……!!」
パワーが溢れてくる……ボディにリミッターがかけられていたとは……
戦闘は不要だけれども救助に……私が想定していた厄災に対応する為に出力はかなり確保されていた……と。
全出力でシグマにタックルをかましてみる……ゼロとほぼ同じ出力が出ている……!
「……失せなさい、シグマ……ドクターの執念といっしょに恩讐の彼方へッ!」
「ぬぅ……ゼロ!貴様の敵は私ではない!!その小娘とエックスにほかならん!!」
「敵だと?フンッそんなのはお前以外にあるものか……シグマッ!」
ゼロは……倒された事で正気に戻った様子ですね。
本来の出力で動き出した私のボディは余剰エネルギーが出るほど。
有り余っていると言ってもいい……コアクロックも跳ね上がっていて……今の状態ならば即座に解析がデキそうですが……
この状態がいつまで続くかわからない以上脅しをかけるのが良いでしょうか。
「……分が悪いか、ここは退かせてもらおう」
「っ……はぁ、すまない……奴にまた良いように操られてしまったか……」
「……一先ず、ベースへ戻りましょう……貴方の帰りを待っている人が居ますから」
エックスを抱えてゼロも連れて……脱出です。
あぁ、やっぱりアセンション状態は長く続かなかった……でも……お陰で最悪は免れました……
私自身も大事に……かぁ……
あとゼロが無言で私を見てますが……帰った後色々質問攻めされそうです。
まぁ、ワイリー博士の事はゲロっちゃいましょうか……その上で解析を進めりゃどうにかなるかもしれないって事も……
アイリスとのイチャコラを見るためにも絶対に寝かせてなるものか……!!!
ご都合主義(強)かもしれない
あとエックスとゼロのドンパチシーン……もっとカッコよくってしたいですけど文字だと難しいですね
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