負けない愛が無かったなら作ってしまえ~いれぎゅらぁC~ 作:シロツメクサ
ロックマン、ロックマンX……長い歴史を持つ横スクロールアクションゲームの名作。
優しさという強さを持った家庭用お手伝いロボット、ロックを祖とするロボット達の物語。
特にその中でも私はロックマンXを愛していた。
ロックマンXにてハイスピードに駆け回り、壁を蹴り上がり戦うスタイリッシュなエックスの姿に幼い自分はときめいた。
ゼロという紅いハンター……エックスの親友にして頼りになる先輩の存在もまた同じ……
そして、X4で登場したアイリスという少女に私は脳を焼かれた。
ストーリーで割とポンをやらかすハンター本部、頑固が過ぎて要らない被害を出したレプリフォース……
カーネルとゼロの対決……そしてその後のアイリスとの死闘という物を見て……何度涙を流したことか。
回避出来るものなら回避してる、ゼロとアイリスだけでもどうにか幸せになれなかったのか?と妄想した。
XDiVEというアプリで幾つかの救いは見れたが……それでも、渇望してしまっていた。
X4の悲劇を最小限にとどめてゼロ、アイリスが結ばれ……それを後方兄貴ヅラで見守るカーネルというクソ幸せビジョンを……!
エックスにももっと仲間が……友が出来ていても良いだろう……
エックスもゼロもその後が救いが無さすぎる……ライト博士もワイリー博士もどうしてそんなどん底に突き放していくんだ……
そう、思わざるを得なかった……
転機が訪れたのはそんな妄想をしながらアルバイト生活を続けていたある日だ。
少しばかり疲れて泥のように眠って目が覚めたら見知らぬ都市のど真ん中で寝ていた。
どこか見覚えがあるデザインの都市にまさかと思ったが……西暦20xx年……ロックマンの世界に迷い込んでいた。
即座に夢を疑ったが五感のすべてが現実であることを如実に示す。
居ても立ってもいられずそのままライト博士やワイリー博士の所在というのを探した。
しかし……ロボットというものが危険視されていた。
ワイリー博士による世界各地への襲撃が何度もあったが為にそんな世論になってしまったのだ。
ライト博士はその世の中を憂いて身を隠し、ワイリーもまた同じ……
ワイリーは十中八九ゼロを製作している……ロボット破壊ウィルスも完成させているだろう。
マズい、マズい……このまま何か手を打てないものか……必死に考える最中まだ到達可能なロボット研究所があった。
コサック博士の研究所……ロックマン4にてワイリーに脅されて矢面に立たされた博士。
その後も幾度か名前はあがっているロボット学の権威の一人……ここに転がり込んだ。
そこで恥も何もかも捨て去って必死になって弟子入りし勉強しイチからロボット学を貪欲に学んだ。
偏に……アイリスという電子上ではあったが脳をこんがり焼いてくれやがった美少女を助けたいが為だけに。
エックス、ゼロの二人が戦闘に特化しているというのなら……私が作り出すべきは守るロボット。
戦闘力は必要かもしれない、しかし……真に必要なのは人をレプリロイドを守る絶対的な守護。
そのためにはボディは頑強、堅牢でありながら救助対象を威圧しない柔らかな印象を与えなければならない。
救助対象は何も陸地に限った話ではない、陸海空と全天候対応しなければならない。
研究、設計開発は難航したが……コサック博士の助けを大いに借りれた私はついに完成させるに至った。
設計の段階で私の理想と愛情と熱が突き抜けたが為に顔立ちは完全にアイリスになってしまったが……そこは良い。
いや良くなかったが、それは置いておいて。
救護ロボ クローバー……私が描いた理想の形であり、コサック博士の技術を継承した最高傑作。
完全にコサック博士の作品ではない為正式なDCNは無いが……コサック博士の傑作だ。
ボディは完全にコサック博士、武装・システム面は私が設計開発した。
いや、根幹を成す分析解読システムREACTを完成させたのは博士だったな。
私がやったのはその後の細かい部分……イレギュラー無力化を想定した改造。
天使の様なデザインに落とし込んだ翼、医療装備を内包した盾……
理論から必死になって実現させた装備を量子化格納可能なバックパック……一番苦労したのはコイツかもしれない。
ただ、これをしっかりと動かす回路を設計し積むことは出来ず、変わりに回路になるのは……私自身だった。
人間としての限界はどうしても来る、生身で到達は不可能……ロボットに託して逝くのはあの二人の天才と同じ穴の狢になる。
そもそも規制が原因でAIが作れない……だから私自身が人の身を捨てて百年近い年月を封印されて過ごす事を選んだ。
ロボットは危険であるとしてその技術の大半は規制され廃棄されていく……ライト博士のノウハウもワイリー博士のノウハウも……
コサック博士の技術も本来ならば失われて消えていく運命だった。
そんなの……クソくらえだ。
たった一人だけれども、身体は人間を捨ててしまっても……私はその一端を宿して引き継いでやる。
その上で……エックスの時代の悲劇を少しでも軽減してやる……!
それが”俺”だった私の反抗計画だった。
私、クローバーの偽りの名はクロエ。
救護レプリロイドのクロエというのを身分としてしれっと社会に混ざって居た。
無論、顔が割れないように来る日に備えて顔バレ防止のマスクを被って。
忍び……レプリロイドが生まれてからの世界を見続けた。
確かにエックスを参考に生み出されたレプリロイド達は在りし日のライト博士が望んだような関係性を築いていっていた。
対等なパートナー……とは強ち言い切れない微妙な立ち位置ではあった。
少なくとも法律的な所で権利はしっかりと明記される存在ではなかった……ある意味そこはワイリー博士が懸念した所だろう。
人間にとって都合の良い道具に過ぎない……と。
その側面もあるだろうが少なくとも最初の数カ月は平穏そのものだった。
イレギュラー……自らの意志でロボット3原則を破って社会秩序を乱す思考に至る者が出るまでは。
エックスがイレギュラーハンターに入り苦悩する日々が始まったのは言うまでもない。
ただ、処分と言っても本当に破壊し尽くす必要があるかと問われれば半々。
しがらみや止むなく反乱する者も居たりする……特にX1でのシグマの反乱ではシグマがまだ正気に近かったというのもある。
それ故にシグマの部下であったスパークマンドリラー、アーマーアルマージは情状酌量の余地あり。
ストームイーグリードもシグマとぶつかり武力で従わされているので……といった具合。
果たして本当に全員破壊しなければならなかったか?修理して更生を促す事は出来なかったのか?
その問はこの社会を見ている中で常に私の中で燻っていた。
出来るはず、出来なかったとしても鼻っ面をへし折って理解らせてやる……
その上で人間もレプリロイドも出来うる限り救って救って……その先に、アイリスを救ってやる。
私がそう結論付けたのはシグマの反乱が始まる数ヶ月前だった。
ロボットの修理を行う上で一番大事な事は何か……諸説あると思うけれど、私の場合は全体構造の理解だと思う。
全体を理解せず部分的に理解しそこだけ動くようにしてもバランスが遭わずエラーを吐くなんて事はありえる。
無論、理解できない場合は解析しても無駄というもだけれども……機械を構成する部品というのは大凡同じだ。
そこから推測することは可能というもの……思考ルーチンというのも同じ。
クローバーに組み込んだシステムはまさしくその解析に特化した物だ。
相手の行動、特殊能力、機械的な構造までもを動きから解析しデータにする。
「う、うーん……あれぇ、俺は……」
「おはようミスターマンドリラー、気分は?」
「うーん……身体のあちこちが痛いなぁ……」
「直近の記憶は思い出せますか?」
「うーん……あぁ、俺は……エックスに負けちまったかぁ……あれ、ならなんで俺は……?」
「破壊されたアナタを私が応急修理したから……不要だった?」
これまでに結構な数のレプリロイドを修理してきた、派手に壊れて動力炉まで損傷したのを修理するのは初だったけれど……
なんとか応急修理は出来た、本格的な修理となると話は違ってくるけれど……少なくとも救える命はある。
イレギュラー認定されたからと全部が処分されるべきではない……この信念に基づいて行動を起こせる。
「何だって……お前さんはエックスに敗れちまった俺を修理したんだい?」
「イレギュラー認定されたから……それだけでその背後関係を調べることもせず処分というのはあんまりだと反抗してるんですよ」
「そうかい?でもぉ……このまま捕まったらスクラップにされちまいそうだなぁ……」
「今もシグマ隊長が正義と……思ってますか?」
「俺は難しいことは分からん、ただぁ……エックスが勝ったんだ、俺はもう何もするつもりはないなぁ」
「反抗意欲なしと見れば暫くの謹慎の後復帰も出来ますって……だから、諦めるのは時期尚早って物ですよ」
「そうかねぇ……うーん、とにかく今は眠いなぁ……」
これは私のエゴ、すこしでもエックスの精神的な負荷を和らげたいっていう思いと……
疲弊していくイレギュラーハンターという組織の寿命を伸ばしたい……それだけ。
その一歩目が……発電施設を占拠し、エックスにより打ち倒されたスパークマンドリラーの修理だった。
私はこうして……ひっそりと更生の余地があるイレギュラーを直し、命をつなぐという事をし始めた。
そもそも、処分だけが手ではない……拘束して更生する道だってあるんだ。
それを……私は諦めたくはなかった。
無論、マンドリラーの様に大人しくしてくれる者ばかりじゃなかった。
マンドリラー、アルマージ、イーグリードは大人しくしてくれた。
しかし……クワンガーはスペックへの興味が先行して大人しくはしてくれなかった。
何より面倒な事になったのは……オクトパルド。
「……美しく芸術として終わりを迎えられたハズだと言うのに、何という蛇足を!」
「芸術を大事にするのは良い、ですけど命も芸術と言うなら散らすのは止めましょう?」
「芸術的作戦の失敗という汚点を拭う有終の美だったのですよ!?」
独特の美意識があり、イレギュラーとして暴れていたのも芸術的な作戦だと宣っていたのが記憶にある。
そして、助けてみれば終始この調子……死というものを軽んじている。
問診してみればさらに……弱いものを守るという事に疑念を抱いている様子で……
「……フンッ!!」
「ぐぉっ、なんですかアナタ!?いきなりなぐ……グペッ!?」
「せっかく、修理してッ!!命を繋いだというのに……!!反省の一つもしてない!!」
「おやめなさいッ、美しくない!!……おのれ、兵装があればアナタごとき……!」
「おぉおぉ、言ったな?兵装もそこらに転がってるので修理してやる、その上でボコボコにしてやるよ」
「世迷言を……エネルギーを全部吸い尽くして差し上げます……楽に解体はさせませんよ?」
とまぁ……反省する気が無いヤツが居るものだからコイツらの扱いには少し考えさせられた。
命を散らす事が美学なんてのは……ナンセンス、なのでこいつらに施す処置は……そのバカみたいに伸び切った鼻っ面を粉砕骨折させること。
思わずと手が出たのが最初だったのですが……これが中々効果的で……
私が武器を使わず素手と盾だけで叩き潰すとプライドべきべきに折れて大人しくなったりですね……
戦闘用じゃない、ハンターですら無いと明かせば余計に効くらしく一部の連中はめちゃくちゃ大人しくなった。
ペンギーゴやカメリーオ等はそれでもダメだったので結果的に見捨てる判断をしましたけど……ね。
眠らせて、息の根を止める……嫌なもんですよ。
でも、悲しみの連鎖はどこかで誰かが止めなきゃ……いけないでしょう?
「……ゼロの応急修理はこれ……復帰させられるかな」
最初の難関はそう、VAVAのライドアーマーを壊すために自爆したゼロの修理。
応急修理すら困難を極めるとは……恐るべし、Drワイリー……敵わねぇ……
というかパーツが本当に派手に散らばってて……解析のしようがねぇじゃんよぉ……
とりあえず……偶然って体で回収、ベースに担ぎ込みますか。
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