負けない愛が無かったなら作ってしまえ~いれぎゅらぁC~ 作:シロツメクサ
カタカタと慣れ親しんだキーボードを叩いていく。
師は教えることはもう無いと言い俺のデザインしたロボットの躯体を……クローバーを遺して旅立った。
与えられたこの研究室も随分とさみしくなったものだ。
嘗ては感情を有したロボットが数を少なくしながらも存在していた。
しかし、その記憶も十年と続かなかった……国際条約として締結されたロボット規制条例により高度思考するロボットの生産、維持が違法となった。
それが現実のモノになって師……ミハイル・セルゲイビッチ・コサックは抗った。
トーマス・ライトとは別なアプローチで抗った……しかし、社会の風潮は変わることなかった。
風潮を作ったワイリーもまた鳴りを潜めた。
人類の為に尽力してくれた青い英雄、ロックマンすら……恩を仇で返す形で処分したと聞いた。
他とは違うと言わんばかりにご大層な墓標を建てて……!
ロボットに生活の基礎を……製造・農業・土木を依存しているまであるというのに……!
「それに……ゴホッ……あの3人が優れすぎていたんだ……!」
誰も理解しきれない、理解するには年月が……人間社会が幼すぎる……
いや、根底にある恐怖に……取って代わられるという強迫観念に打ち勝つことが出来ないんだ!
死に物狂いで食らいついた俺でも追いかけきれない。
師であるコサック博士のモノなら理解しきれる部分が多い……だが、同じ高みに居るライト、ワイリーの二人は……解明しきれるものかね。
できたとして少なくとも、俺にもまだ時間が必要だった。
そして死に物狂いで研究をした結果……俺からはその時間というものが急速に削れていった。
師事を乞うべく転がり込んだのが20代……今は50代後半という所。
死ぬには早いとは思うが……今まさに、俺の命は消え去ろうとしている。
師が俺の理想を……遺して逝ってから5年……最後の仕上げとして大事な盾と翼を組み上げて……
システム面も完成させたのは良い……ここまで、俺の命が保ってくれたのが幸いだった。
DCN:■
今し方完成したクローバーの製造番号……俺はこう、打刻した。
コサック博士はもう居ない、遺作になるこのロボットはどうあがいても世に出せない。
AIを組み立てるのも禁じられている、それ用のプログラム機器は全部規制されて夜に残っていない。
あの二人ならばそんなの自作してどうにでもしてしまうだろうが……俺には無理だった。
元よりそのつもりだったが、俺は変わりの策を用意していた。
これも師と生前に協議して形に持ち込んだモノ……無論反対はされた。
『そんな事をするなんて……キミはどうするつもりなんだね?』
『こうでもしないとロボットの核はつくれませんよ、ロックみたいな心あるのは特に』
『……キミ自身を材料にするようなシステムは作るべきではないよ、止めなさい』
ロボットに俺の魂とも言える脳の情報を移植する……AIを組めない、あくまでもロボット工学を0から叩き込まれた人間だ。
死にかけている今だからではない……元より、俺はこのクローバーを……俺自身を材料に焚べる事で完成させるつもりだった。
事はすべて……これよりずっと未来、二人の天才の最高傑作が悲運に見舞われる事を……
何より、俺が愛した推しを……悲劇から救い出す為に、俺はすべてを捧げる。
俺自身の脳の中身を移設する……狂気と評されたプログラムだ。
インスパイア元はパルストランスミッション……ヘルメット式にしたが、コレで良かったな。
座ってるのもきつい、それだけもう身体はボロボロだ。
「これを被って……プログラムを実行させれば……俺という人間は死に、クローバーは完成し……70年は眠り続ける」
コサック研究所も……直に全部の電気が落ちるだろう。
残る稼働品はこのクローバーが眠る製造カプセルだけ……幾つも繋げた発電系統が稼働させ続けてくれることだろう。
「……行ってきます……コサック先生」
目を瞑ったまま眠るクローバー……俺が愛情、推しへの熱、勢いそのままにアイリスそのものな顔にデザインしてしまったロボを一瞥し……
何度も俺に正気ではない、別な手段を考えろと……人の道を踏み外さないように忠言してくれた先生を思い出す。
先生の娘は美人に育ち、嫁いで……もう、何年だ……ククッ俺がこうしてくたばりかけるのも道理だな。
ふふっ……あぁ……意識が、遠のく……さようなら、世界……
『これは……キミが設計図を引いたんだね?』
『えぇ、後年に残すべき救護ロボです』
『……ふむ……この子を作りたいが為にキミは私の所に転がり込んできたのか』
『……はい、これも俺のこの人生を賭しててでも叶えたい夢の形なんですよ、その為の鍵と言ってもいいですね』
『なるほど……随分と可愛らしい女の子にしたんだね?』
『ははっ、それは俺の……一生忘れられない推しなので』
脳裏に浮かぶロボットの整備を通じて勉学を励み……研究していく日々で設計したクローバーのブループリント……
この後速攻でダメだしを食らって意気消沈したっけか。
色々と研究していく中で手直しをしつつ……勉強して……
最後の最後に遺していってくれた最高のプレゼント。
『帰りなさい、もうロボット研究は……手遅れなんだ』
『そこを何とか……お願いします……!!』
『……帰りなさい』
あぁ最初はそう……こんな、正体不明の若いのなんて……
軒先で3日土下座し続けてたら根気に負けて教鞭を取ってくれたんだった。
俺にとっての……第二の父……結局、人間の身で後継者を名乗る事は、出来ませんでしたね……
そこは本当に……申し訳ない。
「ん……ぅ……」
微睡みから目覚めるかのように目を開ける。
薄闇の中静かに動き続ける機械音……少し視線を動かせば……隣には白骨化した研究者の姿。
かつての俺の姿だ……クローバーの製造は成功はした……同時に、自分は人間であることを捨てた。
このクローバーとなって……成すべきことを……叶えたい欲望の為に……
製造ポッドのシーリングを解除、起き上がってみる……問題なく動く。
「全システムチェック……フラットグリーン、よし」
さて、外の世界を見てみよう……西暦は21XXになっている……計算上ではこの頃にエックスは掘り起こされてレプリロイド達が一気に普及しているはず。
システムチェックも兼ねて……社会全体を観察してみようじゃないか。
あれ、この時期にもうレプリフォースが形成されてる?究極のレプリロイド計画もある可能性がある……
あ、やっべぇ、アイリスの顔そのまんまじゃマズい、急いで偽装のフェイスパーツ作らないと……バカだねぇ私は。
うーん……そそっかしい弟子だって草葉の陰から怒られそうだ……
これも勿論捏造妄想の塊ですよ。
でも実際どうなんでしょうね、コサック博士の晩年の最高傑作ってあったりしないかなって
ロックマン時代からなんで何も引き継がれなかったのかっていうのも……まぁ私の解釈ではこんな所かなっていう
それぞれのロックワールドがあって良い、これが私の解釈というモノですよん