大手企業に就職したと思ってたのに、何故かアイドル事務所に送られました【ドリブリ!】 作:爆裂おいしい君
途中で視点が変わります。ご容赦ください。
「さーてと、今日も頑張るぞー……!」
僕の名前は
「〜♪」
オフィスのデスクにもそろそろ慣れてきた。椅子に座ろうとしたそんな時に、上司から名前を呼ばれた。
「枕木!……ちょっといいか」
「あ、はい」
彼から手渡されたのはある1枚の書類。何が書いてあるのかソワソワしながら読むと、そこには世にも奇妙で凄まじく恐ろしい内容が書き記されていた。
「そ?そそそそそ、そそそ、そ、そんな!!」
漏れ出た声は室内に響き渡ってしまったようで、その場にいた全員が僕の方を向いた。だがそんなのは微塵も怖くもないし恥ずかしくもない。だって、目の前の文字が一番恐ろしいのだから。
その内容を簡単に表現するなら、『出ていけ!』だ。
この書類にはそんなヤバいことが書かれている。何かをしでかしてしまった覚えはない。
「ちょっと待ってください!これ、どういうことですか!?」
「さぁ、私にもよく分からん……。何をやらかしたんだ?」
「それは僕が聞きたいんです!うぅ……!」
彼に当たったとて何か変わるわけでもない。そう自分を落ち着かせると、その紙をクシャッと握る。
……握ったところの近くに何か書いてある。
指示だ。『3階に来い』という指示。詳しい事情はそこで聞け、ということだろうか。僕はカバンを背負い、服装の乱れを正すのも忘れたままエレベーターに飛び乗った。
(こんなの、何かの間違いだ……!)
☆―――――☆―――――☆
(こんなの、何かの間違いだ……!)
どうやら僕は本当にこの会社から追い出されるようだ。先程の上司よりも偉いであろう、秘書のような女の人が、そう僕に言ったのだ。
「じゃ、じゃあ僕はこれからどうすればっ!」
「それについては、こちらで用意しております」
「え……?」
案内されたのは、同じくビルの3階のとある部屋の前。階によってフロアの間取りは全然違うので、扉の向こうがどうなっているのかとか、中に何があるのかなんて分からない。
「では、これを」
彼女が僕に渡したのは割と分厚めのバインダー。中に何が入っているのかは分からない。とにかくそれを渡すと、扉を開けろと言わんばかりに僕に目配せして、そのバインダーを指さした。
「そこに大抵の事は書いてあります。困ったら読んでください」
「え、ちょっと……!」
「1ページ目」
「はぁ……」
彼女は角を曲がって、その姿はもう見えない。バインダーの中身を確認するか……?それとも、扉の向こうを確認するか……?
いや、ここはもう扉を開けてしまおう。この中身は中に入ってゆっくり確認すればいい。
「失礼しま……す…………」
その瞬間、判断が間違っていたことを理解した。絶対に先に読んでおくべきだった。
「は……」
扉の向こうで待っていたのは、名前も顔も知らない、何人もの女の子だった。
☆―――――☆―――――☆
「なんだこれはーーっ!!」
……部屋に入ってまず諒がしたことといえば、大きな声で叫ぶことだった。
その後、ハッと我に返って、手元にあるバインダーの中身を急いで確認する。その中の数枚の書類を見て気付く。
(これは彼女らの資料だ……!)
パラパラパラパラとページをめくる中で視界に入った顔写真が、目の前の彼女らのものと一致している。落ち着きながら、諒は資料の1枚目へ戻ってくる。そして近くにあった椅子に座り、その近くの机にバインダーを置いて熟読する。
「おい!……あ!もしかしてあんたがプロデューサーか!?」
長いピンク髪の少女が言う。だが資料に集中している諒に声は届いていないのか、彼の反応はない。
(なるほど、なるほど……。なんとなく、今の状況が分かってきた)
人差し指を側頭部に当て、ゆっくりトントンと叩く。彼が頭の中で状況を整理する際に出る癖だ。
(どうやら、僕はこの7人のアイドルたちをプロデュースする『プロデューサー』とやらに指名されたらしい。……なんで僕が)
「ね〜え〜!」
「えっ、何?」
熱中していた諒が現実に引き戻される。状況が理解出来ずに、逆に彼女に聞き返した。
――この長髪の少女の名前は
「だーかーらー、あんたがプロデューサーなの?」
「え、え、いや!……え〜と、うん、そう……なるね」
「ふーん。なんか思ってたのと違うね」
「さ、咲蘭ちゃん……し、失礼だよ!」
――今、櫟本さんに声をかけたのが……
何ページかめくる。弱気に見える焦げ茶色の髪の彼女の資料ももちろんあった。
――
前髪の隙間から見える額が、照明の光を反射している。
(なるほど……この2人はそういう性格か)
話しているのはその2人だけで、あとの5人はスマホを見たり漫画を読んだりしていて比較的静か。2人も静かになると、諒は小さく安堵のため息をつく。
……そのため息が、いつの間にか安堵ゆえのものでなくなっていく。
(どうして僕がこんなこと……)
そうは思いつつも、資料をめくりながら顔と名前を一致させていく。
(奥から熱い視線を僕に送ってきてるあの女の子……あの空色の髪は、えーと……
ページをひとつめくると同時に、彼女の横にいるゲーム機をいじくっている少女に目線を向ける。
(
目が合うと、キッと睨んできた後に再びゲーム機へと視線を移す。困惑しつつも、諒は資料をまためくる。
「ほぉ〜……」
小さく呟く少女。横向きのスマホを見ながら、目を輝かせている。耳にはイヤホンをつけていて、何やら動画を見ているようだ。
(
その隣に美しい佇まいの大人びた女性。自身とあまり歳が離れていないように見える彼女を見つけて、諒はどこか安心感を覚えた。
(この人は……いた、
そして最後の1人。部屋の隅、壁にもたれかかっている少女に諒が目をやると、彼女は彼の視線に気付き、会釈をする。
(
資料の下の方に何か書かれている。そこには『歌唱力高め』と綴られていた。
(なるほど、歌……。ってあれ、おかしいな。
不思議に思ったその瞬間、ドタドタと部屋の外から大きな足音が聞こえた。イヤホンをつけていた詩絵以外の視線が音の方向にギュンッと集まった瞬間、扉が勢いよくガララッと開かれた。
「すみませ〜ん!おっくれましたー!!あー!ごめんなさ〜いっ!」
――
お読み頂きどうもありがとうございます。長ったらしいタイトルですが、どうぞドリブリとお呼びください。
次回の更新、12月3日です!お気に入りの隅っこにでも追加していただけたら幸いです。