FF14で現代ダンジョン 作:黒蓮
雲を切り裂き、巨大な怪鳥ズーの背に乗って山頂の切り立った断崖へと降り立った四人。
眼下に広がるのは、見渡す限りの白い雲の海だった。そしてその上空、陽光を反射して 神々しく光り輝く壮大な光景が四人の目を奪う。
遙か上空の天空に、悠然と浮かび上がる巨大な浮遊島――雲海エリア
第七層の完全攻略を阻む最奥にして、未知なる第八層への入口となる未踏の領域である。
「うわぁ……すごい……! 天空に島が浮いてる……!」
ズーから降り立ち、手すりのない断崖の縁まで走っていったエリカが、子供のように目を輝かせて歓声を上げた。朱赤のコートが、山頂の激しい上層風にたなびく。
「綺麗ですね。ですが……あの空気に混ざる魔力の質、これまでの層とはまるで別次元です」
ルトラが優雅に角を揺らし、険しい眼差しで空を見上げた。その隣でミエルも猫耳をピクピクと動かし、フサフサの尾を警戒するように揺らしている。
「あそこにいるボスを倒せば第八層にいけるにゃ……でも道中も一筋縄ではいかなそうだにゃ。マスター、あそこに見える浮島同士を繋ぐ細い岩の橋、なんだか嫌な予感がするにゃん」
「ああ。あそこを進めばボスがいるわけだな」
ジャージ姿の閃は、風に髪を揺らせながら淡々と前方の浮遊島群を観察していた。
四人は再びズーを召喚し、低空を保ちながら最初の浮遊島へと飛び移った。着地した瞬間、ずしりと重い魔圧が四人の身体を打つ。
地面は神秘的な青白い結晶と、見たこともない高山植物に覆われていた。だが、その静寂はすぐに破られる。
『ルァァァァァン!!!』
咆哮とともに、青白い雲を割りながら現れたのは、巨大な翼と鋭利な結晶の鱗を纏ったモンスター――『クラウド・ワイバーン』の群れだった。しかも一匹ではない。周囲の空間が歪み、空間そのものが牙を剥くように、次々と凶暴な魔獣たちが姿を現す。
「今の探索者のレベルなら、一匹出会っただけで全滅ものだな」
閃が呟く間もなく、エリカが迷いなく前へ躍り出た。
「閃くんには指一本触れさせないわ! ――『ヴァルサンダー』!」
Lv60へと到達したエリカのレイピアから、鮮烈な魔力の奔流が解き放たれる。真紅と漆黒の閃光が空を穿ち、襲い掛かってきた一頭を容赦なく撃ち抜いた。爆炎が雲海を赤く染め上げる。
「見事な詠唱速度です、エリカさん! 左翼の群れは私が引き受けます!」
ルトラが槍を構え、影のように滑らかな動きでドラゴンたちの死角へと潜り込む。アウラ族特有のしなやかで力強い動きで、ドラゴンの急所を的確に断ち切っていく。
「右側の空中から来る奴らは任せるにゃー!」
ミエルが両手で杖を掲げると、その先端から目も眩むような神聖な魔力が膨れ上がった。
「——『ホーリー』にゃー!!」
周囲の空気を震わせて弾けた圧倒的な聖なる光輝が、右側から迫るワイバーン群を直撃して激しく麻痺させ、一瞬で上空から叩き落としていく。白魔法の清らかな光と高い魔法威力が、雲海の魔獣たちを瞬く間に圧倒していった。
かつては最前線の探索者たちが総力を挙げて挑むレベルの強敵が、完全に三人の美闘士たちによって圧倒されていく。
「ふぅ……! 閃くん、怪我はない!?」
クラウド・ワイバーンの群れを綺麗に片付け、息一つ乱さずに振り返るエリカ。その瞳は、閃に褒められたい一心でキラキラと輝いている。
「ああ、問題無い。……それにしても、三人とも本当に息がピッタリだな」
閃が微笑むと、エリカは頬を染めて照れ笑いを浮かべ、ルトラとミエルも誇らしげに胸を張った。
四人はさらに奥へと進み、浮かぶ島々を渡り歩いていく。
道中には、植物が立ち上がったようなモンスターや、子供のような小さなドラゴンなど、見た目に反して強力な敵が次々と立ちはだかったが、閃の的確な指示と三人の圧倒的な連携の前には露払いと同義だった。
やがて、雲海エリアの最深部――空に佇む巨大な古代遺跡の門前に辿り着く。
その門の奥からは、これまでのモンスターとは比べ物にならない、あまりにも強大で禍々しい気配が重く漂い出ていた。第七層の階層主が、あの奥で眠っているのだ。
「……ここが、ボスの部屋の前だな」
閃が足を止めると、ルトラが周囲の空間を検知するように静かに目を閉じた。
「はい。この門のすぐ手前に、未知のエーテライト反応を確認しました」
「よし。じゃあ今日はここまでにして、エーテライトの開通だけ済ませておこう」
閃の言葉に、エリカが少し意外そうに目を丸くした。
「えっ、閃くん? ボスは倒さないの?」
「これ以上先は、世間の攻略チームが追いついてきてからでも遅くないからな。それに、いきなりボスを倒して第八層を開放しちゃうと、またネットが大騒ぎして面倒なことになる」
「あはは! 確かに『職人神がまた単独で階層主を消し飛ばした』って大炎上するにゃ!」
ミエルが可笑しそうに笑い、エリカも「なるほど、閃くんらしいわ」と納得したように微笑んだ。
閃は古代遺跡の門前に静かに佇む青いクリスタルへ歩み寄り、そっと手を触れてエーテライトを活性化させた。これで、いつでもこの雲海の最奥へと一瞬で転移できるようになった。
「よし、開通完了。……さて、長旅で腹も減ったし、ミスト・ヴィレッジに帰って夕飯にしようか」
「ふふ、賛成です。今日は美味しい魚料理を仕込んでありますよ」
ルトラが柔らかく微笑み、エリカが「わぁ! 私、手伝うわ!」と嬉しそうに声をあげる。
「マスター、帰りはまた飛んで風を感じながら帰りたいにゃー!」
ミエルが閃の腕に抱きつき、四人は夕暮れに染まり始めた神秘的な雲海を背に、温かな我が家へと引き返していくのだった。
◆
【朗報】『ズーホルン』成功報告が続々届く! 空中時代の開幕と職人神への圧倒的感謝【飛行マウント】
1:名無しの探索者
ズーの契約成功報告、かなり増えてきたな。
SNSで空飛んでる動画や写真が溢れてて壮観だわ。
4:名無しの探索者
トップギルドの精鋭チームが次々と山岳エリアの最奥に到着してるな。
徒歩で3日かかってた樹海をほんの数時間でスキップできるのは、やっぱり革命的すぎる。
12:名無しの探索者
最初は「空飛ぶマウントとか正気か?」って思ってたけど、実際に上空からの映像見たら感動したわ。
雲海を見下ろしながら悠々と飛んでるの、マジで羨ましい。
18:名無しの探索者
【悲報】粗悪品のホルン吹いてズーに突っつかれた件、実際にやらかした奴の動画上がってたけどマジで容赦なくて笑ったwww
死にはしなかったものの、半死半生で山下に叩き落とされてて草。
25:名無しの探索者
>>18
職人様が「怒って攻撃してくる」って書いてたのに、なんでワンチャン試そうとするのかね……。
警告通り最高品質のホルン準備したチームは、全員一発で契約成功してるのに。
33:名無しの探索者
素材集めとクラフトのハードルをちゃんとしてくれたおかげで、今のところ適正レベルと実力のある奴だけが空に行けてるのが良いな。
41:名無しの探索者
ていうか、追記にあった上空のワイバーン注意の警告もガチだったな。
調子乗って高度上げすぎたスカウトが速攻で威圧されて、慌てて下降したって報告上がってた。
52:名無しの探索者
あの上空の縄張り意識は異常だからな。
「ズーに乗ればどこでも行ける」って過信させないために、ちゃんとあの注意書きを残してくれた職人神の親心よ。
65:名無しの探索者
おかげで事故死者ゼロで移行できてるんだから大したものだよ。
もしあの追記がなかったら、浮かれて高高度飛んだ奴らが一斉に墜落死して大惨事になってたぞ。
78:名無しの探索者
山岳エリアの中腹にあるエーテライトも無事に解放されたみたいだし、補給線が完全に繋がったな。
89:名無しの探索者
これで第七層の攻略が一気に加速するな。
次の課題は山頂付近の踏破になりそうだけど、空からのルートができただけで疲労度が段違いだから期待できる。
104:名無しの探索者
職人様(@Craft_God_Unknown)は、今回も完全に探索者たちのボトルネックを見抜いて解消してくれたな。
本当にいつも最高のタイミングで助け船を出してくれるわ。
115:名無しの探索者
まずは自ギルドのクラフターに最高品質のホルン量産してもらって、自分も早く大空散歩と洒落込みたいわ。
118:名無しの探索者
【悲報】チョコボさん、地上移動の専門家として静かに涙を呑む。
125:名無しの探索者
>>118
まあ崖飛び越えられないからなwww
でも浅層の日常移動ではまだまだ現役だから元気出せwww
128:名無しの探索者
上空から広大な山岳エリアを見下ろす景色、マジで神々しくて鳥肌立ったわ……。
あの景色を一番最初に一人で見て、僕らのためにレシピと抜け道を置いていってくれた職人様には足を向けて寝られん。
141:名無しの探索者
マジで『大空開拓時代』が始まったな!
俺たちのギルドもクラフター総出で最高品質のズーホルン作って、絶対に大空に飛び立つぞおおおお!!
145:名無しの探索者
職人神様、いつも最高のソリューションをありがとうございます!!
俺もとりあえずワイバーンに叩き落されないように、大人しく高度下げて中腹のエーテライト解放を目指すわ!!