FF14で現代ダンジョン 作:黒蓮華
【ダンジョン】第1回『山の家』抽選発表スレ Part32【雲海ダイブ】
14: 名無しの探索者
あああああああああっ!! Lサイズ外れたあああ!!
俺の雲海スローライフがああああ!!
28: 名無しのギルドマスター
Mサイズ当選しました!
これでギルドメンバー全員で、第八層の雲海を見ながら露天風呂に入れます!
職人神様、マジでありがとうございます!!
45: 名無しの探索者
クソッ……Sサイズすら倍率1000倍超えとか頭おかしいだろ!
世界中の金持ち、どんだけ金余らせてんだよ!
60: 名無しの探索者
またギルドの資金がすっからかんだわ……。
まあいい、またダンジョン潜って素材売って金貯めるわ。
73: 名無しのBランク探索者
当選確率エグい、ガチャのSSレア当てるより圧倒的に難易度高くて草。
88: 名無しのギャザラー
【朗報】『森の家』の再抽選枠、一気に爆増!!
『山の家』のLサイズ(15億)当たったトップギルドたちが、今まで住んでた森の家の土地を即座に手放したから、旧エリアの空きが大量に出てるぞ!!
102: 名無しの一般人
>>88
うおおおおマジか!!
山の家は落選したけど、流れてきた森の家のSサイズ(5000万)ならD口座の残高でギリギリ買える!!
そっちの一次抽選に速攻で切り替えるわ!!
115: 名無しの不動産関係者
流れるような住宅流動化で草。
富裕層とSランクが『山の家』に繰り上がり、空いた『森の家』に中堅層がなだれ込む……。
D口座の決済機能が完璧すぎて、何兆円単位の資金移動が発生してるのに金融市場がびくともしてないの凄すぎるだろ。
129: 名無しのAランク探索者
当選した友達の『山の家』区画に見学行ってきたけど、言葉を失ったわ。
庭のフェンスのすぐ下が一面の白い雲海で、夕方になると茜色の光が雲を染めてマジで天上人の世界。
15億円払ってでも手に入れたくなる理由が痛いほど分かった。
141: 名無しのCランク探索者
>>129
庭でうっかり足滑らせたらどうなるの?
やっぱり『森の家』の時みたいに安全結界で「ふわっ」て庭に戻されるんか?
155: 名無しの探索者
>>141
当選者がさっそく度胸試しで雲海に向かって飛び降りてたけど、崖下5メートルくらいで透明な膜にフニッて受け止められて、そのまま庭のプライベートエーテライト横にポイってテレポート返還されてたぞwww
168: 名無しの一般人
>>155
安全設計完璧すぎて草www
これなら高所恐怖症の奴でも安心して天空生活楽しめるな。
182: 名無しのギルド関係者
それにしても、今回もD口座からの即時デジタル引き落としが狂ったようにスムーズだったな。
前回の『森の家』の時に現金引き出しでパニック起こしてた銀行窓口も、今回は拍子抜けするくらい静まり返ってたらしい。
195: 名無しの金融アナリスト
市場に溢れかえっていた数兆円レベルの過剰な現金が、一瞬にしてダンジョンの『山の家』購入代金として吸い上げられて消滅したからな。
金銀の価値が暴落した今、このハウジングシステムがなかったら確実に日本経済はハイパーインフレで爆発してた。
210: 名無しの生産職
当選した幸運な奴らに告ぐ!
早く職人神のレシピにあったゴシックな家具とか「絶景露天風呂」を注文してくれ!!
俺たちクラフターに製作依頼を回すんだよオオオ!!
224: 名無しのSランク探索者
Lサイズ落選したショックで今日のダンジョン探索手につかんわ……。
だが、次回第2期の抽選発表までにまた素材売りまくって、D口座の残高をさらに積んでおく。
天空のマイホーム、絶対に諦めねぇぞ!!
◆
「……相変わらず、物凄い熱狂ぶりだな」
ミスト・ヴィレッジの豪邸のリビング。
ノートパソコンの画面をスクロールしながら、閃は呆れたように小さく息を吐いた。
第七層の攻略に伴って解放された『山の家』の抽選発表日は、予想通り、あるいは予想を遥かに超える世界的な狂乱を引き起こしていた。
窓の外に広がる青い海を眺めながら、閃は伸びをする。
「さて……俺も、たまには地上の『家』の様子を見に行かないとな」
閃が言う「地上の家」とは、高校を卒業した際に契約した、家賃数万円のボロアパートのことだ。
もちろん、ダンジョン内にこれほど快適な豪邸がある以上、あのアパートには全く住んでいない。完全にミスト・ヴィレッジの隠蔽と、郵便物を受け取るための「ダミーの住所」である。
「あ、閃くん! 地上のアパートに行くの?」
立ち上がった閃に気づき、エリカがパタパタと駆け寄ってきた。
「ああ。郵便受けの確認と、適当に換気と掃除をしにな」
「じゃあ、私も一緒に行くわ! 私宛の郵便も届いてるはずだし」
ミスト・ヴィレッジに住み着いたエリカの書類上の住所もいつの間にか変わっており、ちゃっかりそのボロアパートの部屋になっていた。
「お、その服にしたんだな、似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう! この前閃くんが作ってくれた装備よ」
エリカがくるりと一回転してみせる。
それは以前、閃が持っていた私服風の装備をミラプリして贈ったもので、前世のゲームでも人気の高かったカジュアルな街着コーデだった。一見するとセンスの良いオシャレな普段着にしか見えないが、しっかり防具としての性能も備わっている優れものだ。
「よし、それなら街中でも浮かないな。じゃあ行こうか」
二人は転移門をくぐり、ダンジョンのロビーを経由して地上のアパートへと向かった。
◆
都内某所。築四十年の木造アパートの二階。
「お兄ちゃん! いるんでしょ!!」
サビついた鉄の扉の前で、中学二年生の舞は、力任せにチャイムのボタンを連打していた。
今日、彼女がわざわざ抜き打ちで兄のアパートに突撃してきたのには理由がある。
学校の昼休みに親友に見せられた、大バズり中の『ガンブレイカー』の戦闘動画。あの中で巨大なクマを圧倒していた黒いジャケットの男が、どうにも自分の兄である閃にしか見えなかったのだ。
(絶対にお兄ちゃんだと思う……でも、あの万年Dランクだったお兄ちゃんが、あんな大活躍してるなんて信じられないし……。直接問い詰めてやるんだから!)
しかし、いくらドアノブをガチャガチャと回しても、鍵はかかったままだ。
「ちょっと、ほんとにいないの……?」
舞が諦めかけてドアから手を離した、その時だった。
「――おい。近所迷惑だろ、何やってんだお前」
背後の階段から、呆れたような、聞き慣れた男の声が降ってきた。
「お兄ちゃ――」
舞は勢いよく振り返り、文句を言ってやろうと口を開きかけた。
だが、その声は喉の奥でヒュッと凍りついた。
階段を上ってきたのは、間違いなく兄の閃だった。
しかし、その服装はいつものダサいあずき色のジャージではない。漆黒の革で作られた、洗練された半袖のレザージャケット。
それはまさに、昼休みに動画で見たあの「謎の凄腕ガンブレイカー」と、一寸の狂いもなく全く同じ服装だったのだ。
(えっ……えっ……!? 嘘、やっぱりお兄ちゃんだったの!?)
舞の脳内で処理が追いつかず、パニック警報が鳴り響く。
だが、彼女の思考を完全に停止させたのは、兄の服装だけではなかった。
「閃くん、この可愛い子、もしかして妹さん?」
兄の背中からひょっこりと顔を出したのは、モデルと見紛うほどスタイル抜群の美女だった。
彼女は、まるでそれが当たり前であるかのように、自然な動作で閃の腕にギュッと自分の腕を絡ませた。
「ああ、舞だ。なんでお前、アポ無しでこんなところに来てんだよ」
「はじめまして、舞ちゃん! 閃くんにはいつもお世話になってます!」
「あ…ど、どうも、はじめまして……」
しどろもどろで答える舞。
目の前にはニコリと天使のような笑顔を向ける女性。そして彼女の腕が自分の兄の腕にしっかりと密着しているという事実。さらに、このボロアパートの部屋に「二人で一緒に帰ってきた」という状況証拠。
ガンブレイカー。
黒い半袖のジャケット。
美女との同棲疑惑。
中学生の脳内キャパシティを遥かに超える情報量の濁流に呑み込まれ、舞の目はぐるぐると回り始めた。
「お、お兄ちゃん……?」
「ん?」
「お兄ちゃんが……動画のガンブレイカーで……しかも、こんな美人の女の人と……ボロアパートで同棲……!?」
舞はワナワナと震える指で、閃とエリカを交互に指差した。
「は? 動画? 何の話だ」
「ふふっ、どうも、閃くんの彼女のエリカです♪」
エリカが悪気なく投下した爆弾発言が、完全にトドメを刺した。
「う!!うそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!?」
閑静な住宅街のアパートの廊下に絶叫が木霊した。
中学生の脳髄に叩き込まれたその情報量は、完全に処理能力の上限を突破していた。
「か、帰るっ!! 私、今日はもう帰るから!」
舞は両手で耳を塞ぐと、パニックのまま脱兎のごとく階段を駆け下り、ものすごい勢いで去っていった。
◆
遠ざかっていくパタパタという激しい足音を見送りながら、閃は「おい、転ぶぞ……」と声をかけかけたが、すでに妹の姿は跡形もなく消えていた。
「行っちゃったわね……」
「ああ……。何だったんだ、一体」
閃はぽりぽりと頭をかいた。
実家にいた頃の自分といえば、家ではいつもヨレヨレのあずき色ジャージを着て、ダンジョンでの目立ちたくない立ち回りのせいで「万年Dランクの冴えない兄」として通っていたのだ。
妹の舞からすれば、兄の評価は「頼りなくてダサい兄貴」そのものだったはずである。それが突然、ネットを騒がせる黒ジャケットの凄腕探索者になり、おまけに絶世の美女を連れているのだから、脳の処理が追いつかずにパニックを起こすのも無理はない。
(まあ……あれだけギャップがあれば、そりゃあんな反応にもなるか)
苦笑交じりに心の中で納得しつつ、閃はポケットから鍵を取り出してアパートのドアを開けた。
「ふふっ、舞ちゃん、すごく可愛らしかったわね!」
「そうか? 昔から生意気で手がかかるやつだったけどな」
ぎこちなく室内に入り、換気のために窓を開ける。
数日間誰もいなかった部屋は少し埃っぽかったが、風が吹き抜けると途端に居心地の良い空間へと変わった。郵便受けから回収してきた大量のダイレクトメールや書類の束を、小さなローテーブルの上にポンと置く。
「どれどれ、私宛ての郵便物は……あ、あったわ! 探索者協会からの更新通知ね」
「俺のも来てるな。……よし、これで用事は済んだか」
エリカは通知書を大事そうにバッグへ仕舞うと、手持ち無沙汰そうに部屋の中を見回した。
「そろそろミスト・ヴィレッジに帰るか? ルトラが夕飯準備して待ってるだろ」
「それなら、あともう少しだけこうしててもいいかしら……?」
エリカは自然な動作で閃の肩に自分の頭をぽんと預けてきた。
その瞬間にふわっと漂う、甘く優しいハーブの香り。腕に伝わってくる柔らかくて温かな体温。
一人暮らし用の狭いワンルーム。小さなキッチンとローテーブル、そして畳まれた布団があるだけの質素な部屋だ。ミスト・ヴィレッジのあの広大で豪奢な邸宅と比べればあまりに狭く、飾り気もない。
だが、閉め切られた部屋の静寂の中、二人きりで肩を寄せ合っていると、不思議と胸の奥がキュッと熱くなるような高鳴りを覚えるのだった。豪華な我が家とはまた違う、この距離感だからこそ感じられる甘く密やかな空気。
「……まあ、少しならいいけどな」
閃が苦笑しながら言葉を返すと、エリカは幸せそうに「えへへ」と笑い、さらにギュッと腕を抱きしめてきた。
妹に目撃されたことで少しだけ波乱含みとなった地上の拠点。だが、静かな部屋の中に流れる二人の時間は、どこまでも穏やかで甘やかなものだった。