「正しい答え」   作:はい

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第9話

 

 

 

ミッドナイトの姿が、廊下の向こうへ消えていく。

 

松葉杖の音も少しずつ遠ざかり、やがて聞こえなくなった。

 

その場に残っていた者達も、少しずつ散っていく。

 

緑谷と爆豪は何か言い合いながら歩いていき、飯田がそれを注意している。上鳴と瀬呂はその後ろで笑い、耳郎が呆れたようについていく。

 

葉隠は。

 

しばらく、その場に残っていた。

 

零無のいる部屋の扉を見る。

 

防音。

 

中の様子は分からない。

 

先程。

 

ミッドナイトが言っていた。

 

昔、自分は零無を助けたことがある。

 

だから零無は、戦いの中で彼女を助けたことを「恩返し」だと思っていた。

 

自分が死ぬ危険まで含めて。

 

それを当然のように。

 

「……」

 

葉隠は自分の手を見る。

 

透明な指。

 

その向こうに床が見える。

 

「どうしたん?」

 

隣に残っていた麗日が聞いた。

 

「……ちょっと考えてた」

 

「何を?」

 

葉隠はすぐには答えなかった。

 

やがて。

 

「ミッドナイト先生は、零無を助けたんだよね」

 

「うん」

 

「だから零無は、恩があるって思ってた」

 

「そうみたいやね」

 

「じゃあ」

 

葉隠は少しだけ眉を寄せる。

 

「私は?」

 

麗日が見る。

 

「透ちゃん?」

 

「私、零無に何かしてあげたっけ」

 

「……」

 

「命を助けたことなんてないし。何か大きいことしてあげた覚えもないし」

 

葉隠は閉じた扉を見る。

 

「なのに零無は、私のためなら全部失ってもいいみたいなこと言った」

 

ミッドナイトの場合は。

 

少なくとも零無の中では。

 

救われた。

 

だから返す。

 

そういう形になっていた。

 

では。

 

自分は。

 

「私、何したんだろ」

 

麗日は少し考えた。

 

けれど。

 

答えなかった。

 

代わりに。

 

「それ、本人に聞きたい?」

 

葉隠はすぐに頷きかけて。

 

止まった。

 

「……うん」

 

「じゃあ聞く?」

 

「今はやめとく」

 

「そっか」

 

「今聞いたら、多分それだけじゃ済まないから」

 

「うん?」

 

「先生とのことも。昔のことも。何があったのかも。全部聞きたくなる」

 

少しだけ笑う。

 

「めちゃくちゃ気になるし」

 

麗日も小さく笑った。

 

「そりゃ気になるよな」

 

「でも」

 

葉隠はもう一度、扉を見る。

 

「勝手に知るのは嫌」

 

ミッドナイトも言っていた。

 

具体的なことは、本人から聞いて。

 

零無が自分で話すかどうかを決めるべきことまで、自分が代わりに話すつもりはない、と。

 

だから。

 

待つ。

 

聞かないのではなく。

 

聞ける時まで。

 

「でも、いつか聞く」

 

「うん」

 

「本人から」

 

麗日は柔らかく笑った。

 

「それがええと思う」

 

葉隠は頷く。

 

その時にはまだ。

 

自分が何を聞くのか。

 

はっきりとは決めていなかった。

 

ただ。

 

一つだけ。

 

数日経っても消えなかった疑問がある。

 

ミッドナイトには。

 

恩があった。

 

では。

 

自分は。

 

零無にとって。

 

何なのだろう。

 

     ◇

 

数日後。

 

葉隠は、零無のいる部屋を訪れた。

 

監視付き。

 

面会時間には、まだ制限がある。

 

扉の外には職員がいる。

 

拘束も完全には解かれていない。

 

それでも。

 

二人で話すには十分だった。

 

扉を開ける。

 

零無は以前と同じ簡素な椅子に座り、本を読んでいた。

 

手元の拘束は以前より幾分緩い。

 

とはいえ、自由とは程遠い。

 

葉隠が入ってくると、ページを追っていた目が上がった。

 

「また来たのか」

 

「その言い方やめて」

 

「事実だろう」

 

「嫌?」

 

「別に」

 

「じゃあいいじゃん」

 

「そうだな」

 

葉隠は向かいの椅子へ座る。

 

それから、しばらく何も言わなかった。

 

以前なら。

 

多分、自分から適当な話題を探した。

 

今日のご飯とか。

 

授業とか。

 

誰が何をしたとか。

 

沈黙が気まずくなる前に、何かを話していた。

 

今は。

 

少し待てる。

 

零無も本へ視線を戻さなかった。

 

数十秒ほどして、先に口を開いたのは彼だった。

 

「今日は何を聞きに来た?」

 

「何でそう思うの」

 

「顔」

 

「見えないけど」

 

「雰囲気だ」

 

「何それ」

 

葉隠は少し笑う。

 

零無も、ほんの僅かに口元を緩めた。

 

だが、葉隠の声はすぐに真面目なものへ戻った。

 

「ねえ」

 

「ああ」

 

「ミッドナイト先生に」

 

零無の目が僅かに動く。

 

「何だ」

 

「助けてもらったこと」

 

一拍。

 

「どう思ってる?」

 

零無は黙った。

 

葉隠は続きを急がなかった。

 

沈黙を埋めようともしない。

 

しばらくして、零無が言う。

 

「随分と曖昧な質問だな」

 

「分かってる」

 

「何について答えればいい」

 

「助けてもらって、嬉しかったとか、嫌だったとか、ありがたかったとか。今はどう思ってるのかなって」

 

「……」

 

「昔何があったとか、そういうのを無理に聞きたいんじゃないから」

 

零無が彼女を見る。

 

「聞きたくないのか?」

 

「聞きたいよ」

 

即答だった。

 

「……」

 

「めちゃくちゃ気になる」

 

「正直だな」

 

「でも、話したくないなら聞かない」

 

少しだけ間を置く。

 

「先生も、零無が話してないことを勝手に話すつもりはないって言ってたし」

 

零無が少し黙った。

 

それから。

 

「そうか」

 

「うん」

 

葉隠は改めて聞く。

 

「で、助けてもらったこと。どう思ってる?」

 

また、沈黙。

 

零無は少し考えた。

 

「感謝している」

 

「うん」

 

「非常に」

 

「うん」

 

「だから、借りがあると思っていた」

 

「それは聞いた」

 

葉隠の声が少し険しくなる。

 

「先生、怒ってたよ」

 

「知っている」

 

「なんて言われた?」

 

「命で返すような恩を売った覚えはない、と」

 

葉隠が頷く。

 

「それ」

 

「うん」

 

「どう思った?」

 

零無は少し眉を寄せた。

 

「言いたいことは理解出来る」

 

「納得は?」

 

「別だ」

 

「やっぱり」

 

「何が?」

 

「してないと思った」

 

零無は葉隠を数秒見た。

 

「君も随分と僕の扱いに慣れてきたな」

 

「嬉しくない」

 

「何故」

 

「慣れたくないから」

 

「理不尽だな」

 

「誰のせい」

 

「少なくとも僕だけの責任ではないと思うが」

 

「そういうとこだよ」

 

零無の口元が僅かに緩む。

 

葉隠はそれを見てから、話を戻した。

 

「それで、助けてもらったこと自体は?」

 

「どう、とは?」

 

「……良かった?」

 

零無が止まった。

 

葉隠は静かに待つ。

 

「難しいな」

 

「そう?」

 

「当時は、良かったと思う余裕はなかった」

 

「うん」

 

「状況を処理することで精一杯だった。誰に連絡するか。どこへ行くか。何を準備するか。学校をどうするか。生活をどう継続するか」

 

淡々と並べられる。

 

けれど。

 

葉隠は、その一つ一つに引っ掛かった。

 

「それ」

 

「何だ」

 

「子供が考えることじゃなくない?」

 

零無の返答は早かった。

 

「必要だった」

 

「でも」

 

「必要だったんだ」

 

先程より、少しだけ強い。

 

葉隠は黙った。

 

零無も、自分の声に気付いたらしい。

 

数秒後。

 

「……すまない」

 

「謝らなくていい」

 

「少し語気が強かった」

 

「うん」

 

少し間を置いて。

 

「珍しいね」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

零無は僅かに目を逸らした。

 

「当時のことを話すのは……面倒なのかもしれない」

 

「じゃあ話さなくていい」

 

葉隠は即座に答えた。

 

「いや」

 

「いいって」

 

「君が聞いたからではない」

 

葉隠が止まる。

 

零無は、いつものように言葉を選ぶ。

 

ただ。

 

今回は。

 

逃げるために言葉を整えているのではなかった。

 

「僕が、少し話してもいいと思った」

 

葉隠は何も言わなかった。

 

喜んだ顔をするのも。

 

続きを急かすのも。

 

違うと思った。

 

ただ。

 

「うん」

 

とだけ答えた。

 

     ◇

 

「母は、精神的にかなり不安定だった」

 

葉隠は静かに聞く。

 

「常にそうだった訳じゃない。普通に生活出来る時もあった」

 

零無は少し視線を落とす。

 

「食事を作ることもあったし、僕を気遣うこともあった。僕が学校から戻る時間に合わせて、菓子を買って待っていたこともある」

 

「……」

 

「僕が体調を崩せば、自分の方が不安定なのに、夜中まで起きていたこともあった」

 

葉隠は何も挟まない。

 

「ただ、駄目な時はかなり駄目だった」

 

「……うん」

 

「僕を必要以上に手元へ置こうとすることもあった。逆に、顔を見るだけで取り乱すこともあった」

 

少し間を置く。

 

「父に似ていると言って泣いたこともある」

 

葉隠の指先が僅かに動いた。

 

零無は気付いていた。

 

けれど、止めない。

 

「愛していると言った翌日に、僕を見たくないと言うこともあった」

 

「……」

 

「それでも、僕は母が僕を愛していなかったとは思っていない」

 

葉隠が小さく聞く。

 

「傷つけられても?」

 

「それとこれは別だ」

 

迷いはなかった。

 

「愛情があったことと、その関係が健全だったことは同義じゃない。母に傷つけられたこともある」

 

一拍。

 

「嫌いだと思ったこともある」

 

「……」

 

「逃げたいと思ったことも……あったと思う」

 

それでも。

 

「嫌いだった時があったからといって、愛していなかったことにはならないだろう」

 

葉隠は何も言わない。

 

これは。

 

ミッドナイトから聞いた話ではない。

 

零無自身が、自分から話している。

 

だから、ただ受け止めた。

 

「それで、出来ることは僕がやった」

 

「家事?」

 

「それも。買い物。支払い。必要な連絡。母の様子を見ること」

 

一つずつ。

 

「薬を飲んだか。食事をしたか。眠れているか。一人にして問題ない状態か。外へ出して問題がないか」

 

葉隠の声が小さくなる。

 

「何歳くらい?」

 

零無が少し見る。

 

葉隠はすぐに。

 

「ごめん。詮索しないって言ったのに――」

 

「いや。構わない」

 

少し考え。

 

「今の君が想像しているよりは、若かったと思う」

 

葉隠は黙る。

 

具体的な年齢を、零無は言わなかった。

 

葉隠も、それ以上は聞かなかった。

 

「先生は、そういう家の状態に気付いた」

 

「うん」

 

「僕は問題ないと言った」

 

葉隠が顔を上げる。

 

「……やっぱり」

 

「何が?」

 

「ミッドナイト先生が言ってた。昔から、自分が我慢出来ることを問題に数えないって」

 

沈黙。

 

「余計なことを」

 

「怒った?」

 

「怒ってはいない」

 

「じゃあ?」

 

「非常に正確で不愉快だ」

 

葉隠が少し笑う。

 

「多分、もうみんな気付いてるよ」

 

「何を」

 

「零無、本当に嫌なところ突かれると、ちょっと黙るもん」

 

零無が眉を寄せる。

 

「……そんなに分かりやすいか?」

 

「最近はね」

 

「困ったな」

 

「困って」

 

「何故?」

 

「困った方がいいから」

 

「随分と雑な理屈だな」

 

「零無にはこれくらいでいいの」

 

零無は小さく息を吐いた。

 

「話を戻そう」

 

「うん」

 

     ◇

 

「母が亡くなる前の日から、状態は良くなかった」

 

葉隠の身体が僅かに固くなる。

 

零無は、以前ならそこで止めたかもしれない。

 

今は続けた。

 

「ほとんど眠れていなかった。夜中も何度か起きていた。僕も、その度に確認していた」

 

「……」

 

「明け方になって、ようやく静かになった」

 

葉隠は息を詰める。

 

「学校へ行く前、寝ていると思った。呼吸はしていた。水と薬を置いた。昼に食べられるものも準備した」

 

淡々とした声。

 

「行ってきます、と言った。返事はなかった」

 

「……」

 

「それ自体は珍しくなかった」

 

葉隠は何も言えなかった。

 

「帰ったら、朝置いたものがそのままだった。食事も、薬も」

 

零無の声は変わらない。

 

「寝室へ行った。呼んだ。返事がなかった」

 

少しだけ間が空く。

 

「最初は、また反応出来ない状態なのだと思った。それも以前にあったから」

 

「……」

 

「だから、その時点では慌てていなかった」

 

葉隠には、その言葉の方が辛かった。

 

慌てるべき異常が、日常の中に紛れていた。

 

「肩に触れた」

 

一拍。

 

「冷たかった」

 

葉隠の手が強く握られる。

 

「救急へ連絡した。呼吸と脈を確認した。蘇生した」

 

「……どれくらい?」

 

「覚えてはいるが、正確な時間に意味はないだろう」

 

葉隠が彼を見る。

 

「救急の人間が来て、止められるまで続けた」

 

「……うん」

 

「もう戻らないと言われた」

 

少しだけ。

 

零無の声が低くなる。

 

「僕は、他に何かすることはないのか、一度聞いた」

 

「……」

 

「ないと言われた」

 

だから。

 

次に必要なことを考えた。

 

誰に連絡するか。

 

学校はどうするか。

 

家は。

 

金は。

 

これからの生活は。

 

「先生が来た」

 

「……うん」

 

「僕を保護した」

 

葉隠は慎重に聞く。

 

「その時、怖かった?」

 

零無は少し考える。

 

「どうだろうな」

 

「またそれ?」

 

「本当に分からない」

 

「……」

 

「少なくとも、恐怖として認識した記憶はない」

 

「悲しくなかった?」

 

「違う」

 

返答は速かった。

 

「悲しかった」

 

今度は曖昧にしなかった。

 

葉隠が黙る。

 

「ただ、それを悲しいと認識して、悲しむことに時間を使っていた記憶がない」

 

「……」

 

「次に何をするべきかを考えていた。それだけだ」

 

そして、少し間を置く。

 

「母がいなくなった家へ、もう戻らなくてもいいと分かった時」

 

言葉が止まった。

 

「……安心した」

 

葉隠が僅かに息を止める。

 

零無はすぐに付け足した。

 

「少なくとも、安心した部分はあった」

 

「……」

 

「それを、当時は非常に不快に思った」

 

「どうして?」

 

「死んだばかりの母に対して、安堵するのは」

 

少し眉を寄せる。

 

「裏切りのように思えたからだ」

 

葉隠は静かに言う。

 

「でも、辛かったんでしょ」

 

零無は少し黙る。

 

以前なら。

 

必要だった。

 

耐えられた。

 

問題ではない。

 

そう答えただろう。

 

「……そうだな」

 

葉隠が僅かに顔を上げる。

 

零無自身も、言った後に少しだけ黙った。

 

「辛かったと思う」

 

「うん」

 

「なら」

 

葉隠は言葉を探す。

 

「安心しても、よかったんじゃない?」

 

零無はすぐには答えなかった。

 

「今なら、その可能性は認められる。当時は無理だった」

 

「……うん」

 

「悲しかったことと、もう戻らなくていいことに安心したことは、別に矛盾しない」

 

一拍。

 

「今なら、そう思える」

 

葉隠は少しだけ笑った。

 

「うん」

 

「何だ」

 

「いや。それ、前よりちゃんと自分の気持ちの話してるなって」

 

零無が僅かに眉を寄せる。

 

「評価されるようなことか?」

 

「私はする」

 

「そうか」

 

「うん」

 

少しだけ、部屋の重さが緩んだ。

 

     ◇

 

しばらくして。

 

葉隠が小さく聞いた。

 

「そのお母さん以外は?」

 

零無が目を上げる。

 

「……何が?」

 

「前に、お母さん“達”って言ってたことあったから」

 

「……」

 

「嫌なら答えなくていい」

 

零無はしばらく黙った。

 

「実母のことか」

 

「うん」

 

「僕には、ほとんど記憶がない」

 

「……そうなの?」

 

「ああ。僕がまだ乳児の頃に亡くなっている」

 

葉隠は何も言わず、続きを待った。

 

「個性の影響で、身体にはかなり大きな負担があったらしい」

 

「個性で?」

 

「ああ」

 

零無はそこで少しだけ視線を落とす。

 

「強い個性だった、と聞いている」

 

「でも」

 

葉隠が慎重に言う。

 

「本人は、それで苦しかった?」

 

零無が一度だけ彼女を見る。

 

「ああ」

 

短い返答だった。

 

「僕が彼女について知っていることは、大半が後から聞いたものだ。だから」

 

少し言葉を選ぶ。

 

「彼女自身を知っているとは言えない」

 

「……うん」

 

「好きだったのか、嫌いだったのかと聞かれても、答えようがない」

 

葉隠は静かに聞いている。

 

「ただ」

 

零無の声が僅かに低くなる。

 

「彼女が苦しんだことを、個性が強かったから仕方がない、運が悪かった。それだけで処理する気はない」

 

「……」

 

それ以上。

 

零無は説明しなかった。

 

どんな個性だったのか。

 

何があったのか。

 

どんな人生を送ったのか。

 

葉隠も聞かなかった。

 

今の零無が。

 

そこまでを話すつもりはないことくらい。

 

分かったからだ。

 

少しして。

 

「お父さんは?」

 

今度こそ、葉隠は少し迷った。

 

「……聞いていい?」

 

零無はしばらく彼女を見る。

 

そして。

 

「ああ」

 

と答えた。

 

「父は、ヴィランだった」

 

それ自体は。

 

葉隠も知っている。

 

けれど。

 

本人の口から聞くのは。

 

やはり違った。

 

「最初から?」

 

零無は僅かに目を細めた。

 

「いや」

 

一拍。

 

「少なくとも、最初からそうだった訳ではない」

 

葉隠は続きを待つ。

 

零無は少し考えてから。

 

「昔は、人を助けようとする側の人間だった」

 

それだけ言った。

 

「……じゃあ、何で」

 

葉隠が途中まで聞いて。

 

止めた。

 

零無はそれに気付く。

 

「色々あった」

 

「すごい誤魔化し方」

 

「事実だ」

 

「そうだろうけど」

 

「今は、それ以上を上手く説明出来る気がしない」

 

葉隠が止まった。

 

そして。

 

「そっか」

 

それ以上は聞かなかった。

 

零無も、少しだけ力を抜く。

 

「最後には、ヴィランとして死んだ」

 

「……うん」

 

「人を傷つけた。犯罪も犯した」

 

声は淡々としていた。

 

「そうなった理由が何もなかったとは思っていない」

 

一拍。

 

「でも、理由があったことと、父がしたことへの責任は別だ」

 

葉隠が静かに聞く。

 

「零無は、お父さんのこと嫌い?」

 

「嫌いな部分は多い」

 

返答は早かった。

 

「したことも。考え方の一部も」

 

「……」

 

少しだけ間が空く。

 

「それでも、父だった」

 

葉隠は、それ以上聞かなかった。

 

零無も話さなかった。

 

実母については。

 

ほとんど記憶がない。

 

父についても。

 

まだ話していないことの方が多い。

 

それでも。

 

今の葉隠には。

 

その輪郭だけで十分だった。

 

     ◇

 

しばらく、二人の間に沈黙が落ちた。

 

葉隠は、さっきまで聞いたことを頭の中でゆっくり並べていた。

 

一番長く零無が話したのは。

 

やはり。

 

自分を育てた母のことだった。

 

愛していた。

 

愛されてもいた。

 

でも、傷つけられた。

 

怖いと思ったこともあった。

 

逃げたいと思ったこともあった。

 

嫌いだった時間もあった。

 

それでも。

 

「母だった」と零無は言った。

 

愛していることと。

 

傷つけないことは、同じではない。

 

傷つけられたことと。

 

愛していなかったことも、同じではない。

 

一つの感情だけで。

 

一人の人間全部を説明することは出来ない。

 

実母についても。

 

父についても。

 

零無は一つの言葉だけでは終わらせなかった。

 

でも。

 

それ以上を。

 

今ここで全部説明しようともしなかった。

 

「……そっか」

 

零無が見る。

 

「何が?」

 

「零無が、人のこと一個だけで決めたがらない理由」

 

「一個だけ?」

 

「善人とか、悪人とか。被害者とか、加害者とか」

 

零無は少し黙る。

 

「それだけが理由ではないが」

 

「うん」

 

「全く関係がないとも言わない」

 

「そっか」

 

葉隠は、それ以上まとめようとはしなかった。

 

零無の家族を。

 

たった今聞いた話だけで。

 

自分が理解したことにしたくなかった。

 

     ◇

 

やがて。

 

葉隠が小さく聞く。

 

「ミッドナイト先生は?」

 

「何だ」

 

「その人達とは、違う?」

 

零無はすぐに答えた。

 

「ああ」

 

「母親みたい?」

 

「違う」

 

これも即答。

 

「全く?」

 

「全くとは言わないが。少なくとも、僕は先生を母親の代わりだと思ったことはない」

 

「じゃあ」

 

「何?」

 

零無は、ほんの少しだけ目を伏せる。

 

「最初に」

 

一拍。

 

「僕が『大丈夫だ』と言ったことを、大丈夫だという証拠として扱わなかった大人だ」

 

葉隠が止まる。

 

「……」

 

「僕は問題ないと言った。実際、家事も出来ていた。学校にも通っていた。食事も最低限は取っていた。生活そのものは維持出来ていた」

 

「うん」

 

「それでも、先生はそれを、子供一人で生活を維持出来ている証拠ではなく」

 

一拍。

 

「子供一人に生活を維持させている証拠だと考えた」

 

葉隠は何も言えなかった。

 

「だから、僕をそこから出した」

 

その言葉は短い。

 

けれど。

 

それが零無にとってどれほど大きな出来事だったのか。

 

今なら少し分かる。

 

「それで」

 

葉隠は聞く。

 

「やっぱり、助けられてよかったと思う?」

 

また、沈黙。

 

今度は先程より長かった。

 

零無は目を伏せる。

 

「数日前、先生ともこの話をした」

 

葉隠は黙って待つ。

 

「その時、僕は先生に救われたことを後悔していない、と言った」

 

「……うん」

 

「それは今も変わらない」

 

「じゃあ」

 

葉隠は少しだけ身を乗り出す。

 

「良かった?」

 

零無が眉を寄せる。

 

「言葉を変えただけだろう」

 

「違うよ」

 

「どこが」

 

「後悔してない、と、良かった、は違う」

 

「……」

 

零無が黙った。

 

葉隠は逃がさなかった。

 

ただし。

 

急かしもしなかった。

 

長い沈黙の後。

 

零無が言う。

 

「助かった。その後も生きた。学校にも通った。先生にも会った。君達にも会った」

 

「……」

 

「その結果を、僕は失敗だったとは思っていない」

 

葉隠が首を傾げる。

 

「また逃げた」

 

「何が」

 

「良かった?」

 

「……」

 

零無が露骨に面倒そうな顔をした。

 

「君は随分しつこくなったな」

 

「誰のせい?」

 

「それを全て僕へ帰責するのは――」

 

「良かった?」

 

「……」

 

数秒。

 

零無は観念したように、小さく息を吐いた。

 

「良かったよ」

 

葉隠が少しだけ笑った。

 

「そっか」

 

「満足か」

 

「うん」

 

「そうか」

 

そして。

 

零無は、ほんの僅かに目を伏せる。

 

「慣れていないだけだ」

 

「何に?」

 

「自分が」

 

一度止まる。

 

「救われて良かった、と考えることに」

 

葉隠は何も言えなくなる。

 

「生きていること自体を、利益として評価したことがあまりない」

 

「……」

 

「必要だから生きる。目的があるから生きる。何かをするために生存が必要だから生きる。そういう理由なら理解出来る」

 

少し眉を寄せる。

 

「ただ、自分が生きたいから。生きていて良かったから、というのは」

 

一拍。

 

「どうにも扱いに困る」

 

葉隠は少し考えてから。

 

「じゃあ」

 

「うん」

 

数日前から。

 

頭の隅に残っていたことを。

 

ようやく口にした。

 

「私と会えたのは?」

 

零無が見る。

 

「……」

 

葉隠は逃げない。

 

「良かった?」

 

一拍。

 

零無が溜息をつく。

 

「質問の仕方が卑怯だな」

 

葉隠は少し笑う。

 

「答えて」

 

「……」

 

零無は小さく息を吐いた。

 

「良かったよ」

 

葉隠が止まる。

 

「普通に?」

 

「普通に」

 

「借りとか?」

 

「ない」

 

「恩とか?」

 

「ない」

 

「返さなきゃとか?」

 

零無が少し考える。

 

「……今のところは」

 

「今のところ!?」

 

「冗談だ」

 

「分かりにくい!」

 

「そうか」

 

「そうだよ!」

 

少しだけ。

 

二人とも笑った。

 

それが、この部屋では妙に普通のことに思えた。

 

     ◇

 

静かになって。

 

葉隠が聞く。

 

「じゃあ、私と一緒にいた時間って、返さなくていいの?」

 

「……」

 

零無は少し考える。

 

「その質問は、少し困るな」

 

「なんで?」

 

「君に対して何かをしたいと思うことまで、全て返済扱いされると困る」

 

葉隠が目を瞬いた。

 

零無は、まるで当然の事実を整理するように続ける。

 

「例えば、君が困っていれば助けたい。危険なら守りたい。君が喜ぶなら」

 

一度区切る。

 

「出来ることくらいはしたい」

 

「……」

 

「それは、借りを返している訳ではない」

 

葉隠が小さく聞く。

 

「じゃあ何?」

 

零無は黙る。

 

「……」

 

「言って」

 

「随分と要求が多いな」

 

「知ってる」

 

零無は、しばらく葉隠を見た。

 

「……好意だろう」

 

葉隠が止まる。

 

「それだけ?」

 

「十分だと思うが」

 

「……」

 

葉隠は少し俯く。

 

「そっか」

 

「何だ」

 

「いや」

 

小さく笑う。

 

「ちょっと嬉しい」

 

「そうか」

 

「それだけ?」

 

「何を言えばいい」

 

「そこは」

 

葉隠は少し身を乗り出す。

 

「僕も嬉しい、とか」

 

零無は一拍考えた。

 

「君が嬉しいなら、僕も嬉しい」

 

「うわ」

 

「何だ」

 

「今のちょっとズルい」

 

「君に言われたくない」

 

葉隠が笑う。

 

零無も。

 

今度は、分かる程度に笑った。

 

     ◇

 

少しして、また静かになる。

 

「ねえ」

 

「うん」

 

「ミッドナイト先生のこと」

 

「何だ」

 

「助けた時」

 

葉隠は、さっきより慎重に聞いた。

 

「死んでもいいと思ってた?」

 

「いいや」

 

即答だった。

 

葉隠が見る。

 

「死にたい訳ではなかった。ただ、死ぬ可能性を考慮しても、先生を救助する価値の方が高いと判断した」

 

葉隠の声が少し低くなる。

 

「それ、ほぼ同じだよ」

 

「違う」

 

「違わない」

 

「僕にとっては違う」

 

「でも」

 

葉隠は真っ直ぐ返す。

 

「私にとっては同じ」

 

零無が黙る。

 

「ミッドナイト先生が助けた零無が、その先生を助けるために死んだら、先生は嬉しくない」

 

「……」

 

「私だって、私を守るために零無が死んだら嬉しくない」

 

「分かっている」

 

「本当に?」

 

「少なくとも、以前よりは」

 

葉隠が少し驚く。

 

「変わった?」

 

「何が?」

 

「自分を守ること」

 

零無は少し考える。

 

「分からない」

 

「……」

 

「ただ、自分を助けることが、他人を助けることと完全に独立した問題ではないのだろうとは」

 

一拍。

 

「考えている」

 

葉隠は何も言わなくなる。

 

以前の零無なら。

 

恐らく、ここまでさえ言わなかった。

 

「ミッドナイト先生に何か言われたんでしょ」

 

「何を」

 

「救われて良かったと思うなら、自分だけずっと救われる側から外すのは変じゃない、みたいな」

 

零無が葉隠を見る。

 

「……盗み聞きしたか?」

 

「してない!」

 

「では何故」

 

葉隠は彼の顔を指差した。

 

「零無の顔!」

 

零無が僅かに眉を寄せる。

 

「そんなに出ていたか?」

 

「出てた」

 

「困ったな」

 

「あと雰囲気」

 

「結局それか」

 

数秒。

 

零無が少し笑う。

 

「でも当たってる?」

 

「概ね」

 

「そっか」

 

葉隠は少しだけ嬉しそうになる。

 

「なら、今度から自分も守って」

 

「状況による」

 

「ほら!」

 

「透」

 

零無は少し困った顔をする。

 

「これは簡単な問題ではない」

 

「分かってる」

 

「なら」

 

「でも、簡単じゃないから」

 

零無が見る。

 

葉隠は、ゆっくり一つずつ言った。

 

「毎回考えて。今までみたいに、最初から自分は捨てていいって決めないで」

 

零無は何も言わない。

 

「相手を助ける方法の中に、自分が死ぬ方法だけじゃなくて、自分も生き残る方法をちゃんと入れて」

 

一拍。

 

「助ける人数に、自分も入れて」

 

数日前。

 

ミッドナイトにも。

 

ほとんど同じことを言われた。

 

零無は少し目を伏せた。

 

「先生にも言われた」

 

「やっぱり」

 

「何故分かる」

 

「先生も零無のこと知ってるから」

 

「答えになっていないだろう」

 

「いいの」

 

葉隠は続ける。

 

「約束して、ってまた言おうと思ったけど」

 

一度、言葉を止める。

 

「やめる」

 

零無が見る。

 

「何だ」

 

「前に約束したでしょ」

 

「……ああ」

 

「私の意思を無視して、零無一人で決めないって」

 

「そうだな」

 

「それと」

 

葉隠は少しだけ慎重に言う。

 

「誰かに話すことも、最初から選択肢から外さないように努力するって」

 

「……ああ」

 

「だから」

 

葉隠は零無を指差した。

 

「その中に、これも入れて」

 

「何を?」

 

「自分が生き残る方法も考えること」

 

「……」

 

「全部、同じ話だから」

 

零無は黙った。

 

葉隠は続ける。

 

「絶対死なないって言えとは言わない。そんなの無理なのも分かる」

 

少しだけ苦笑する。

 

「ヒーローだし。私達だって危ない時はあるし」

 

それでも。

 

「最初から、自分だけ消さないで」

 

長い沈黙。

 

零無は目を伏せたまま、何かを考えていた。

 

条件。

 

例外。

 

不可能な状況。

 

人命の数。

 

成功率。

 

恐らく。

 

反論はいくらでも思いつく。

 

それでも。

 

「……分かった」

 

葉隠が僅かに身を乗り出す。

 

「ほんと?」

 

「ああ」

 

「毎回?」

 

「合理的に検討可能な状況であれば――」

 

「零無」

 

「……」

 

「今すぐ例外作らない」

 

零無が黙る。

 

そして、小さく息を吐いた。

 

「努力する」

 

葉隠の肩が少し落ちる。

 

「またそれ?」

 

「無条件に約束出来ないものを、出来ると言う方が問題だろう」

 

「それはそうだけど!」

 

「だが」

 

零無は少しだけ真面目な顔へ戻った。

 

「君とした約束を忘れた訳ではない」

 

葉隠が止まる。

 

「……うん」

 

「だから、考えるよ」

 

一拍。

 

「自分が生き残る方法も、最初から除外はしない」

 

葉隠は今度こそ、少し笑った。

 

「うん」

 

「それでいい」

 

「随分と要求水準が下がったな」

 

「誰のせいだと思ってるの」

 

「少なくとも――」

 

「零無」

 

「……僕だな」

 

葉隠が笑った。

 

「分かればよろしい」

 

     ◇

 

やがて、面会時間が近付く。

 

葉隠が立ち上がった。

 

「今日は帰る」

 

「そうか」

 

「うん」

 

扉の前まで行って、止まる。

 

「零無」

 

「何だ」

 

「今日」

 

少しだけ躊躇って。

 

「話してくれてありがとう」

 

零無は少し黙った。

 

自分から話した。

 

今まで。

 

聞かれれば答えることはあった。

 

必要なら説明もした。

 

だが、これは少し違った。

 

必要だからではない。

 

責任を説明するためでもない。

 

相手を説得するためでもない。

 

ただ。

 

自分が話してもいいと思った。

 

「……どういたしまして」

 

葉隠は振り返る。

 

「あと」

 

「まだあるのか」

 

「ある」

 

「何だ」

 

「私と会えて良かったって言ったの」

 

「……」

 

「忘れないから」

 

零無の眉が僅かに寄る。

 

「忘れていい」

 

「嫌」

 

「透」

 

「嫌」

 

「君は」

 

「私の気持ちは私が決める」

 

零無が止まった。

 

それは何度も、彼女から突きつけられた言葉だった。

 

守るかどうか。

 

怒るかどうか。

 

許すかどうか。

 

好きでいるかどうか。

 

そして。

 

嬉しいと思った言葉を、覚えているかどうか。

 

それすら。

 

自分が代わりに決めることではない。

 

やがて。

 

零無は小さく息を吐いた。

 

「……そうだったな」

 

「うん」

 

葉隠は扉を開ける。

 

「またね」

 

「ああ」

 

一拍。

 

「また」

 

扉が閉まった。

 

     ◇

 

一人になった零無は、しばらく何も言わなかった。

 

机の上へ視線を落とす。

 

数日前。

 

自分はミッドナイトへ言った。

 

救われたことを。

 

後悔していない。

 

そして今日。

 

もう一段、先へ進んだ。

 

救われて。

 

良かった。

 

葉隠と会えて。

 

良かった。

 

借りではない。

 

恩でもない。

 

返済でもない。

 

ただ。

 

会えて良かった。

 

その言葉を、自分で口にした。

 

以前なら。

 

それをただの因果関係として処理しただろう。

 

保護された。

 

生活が続いた。

 

学校へ通った。

 

人と会った。

 

今へ至った。

 

そこに「良かった」という評価を加える必要はない。

 

そう考えていた。

 

だが。

 

生きていたから、会えた人間がいる。

 

生きていたから、失いたくないと思う人間が出来た。

 

生きていたから、自分が死ぬことを嫌がる人間まで出来た。

 

そして今日。

 

生きていたから、過去について誰かへ話してもいいと思えた。

 

ならば。

 

生き残ることそのものにも。

 

少なくとも、ゼロではない価値がある。

 

未来に存在し得る何かを、失わずに済む。

 

そういう価値が。

 

自分にもある。

 

そこまで考えて。

 

零無は僅かに眉を寄せた。

 

どうにも、慣れない。

 

他人が生き残ることなら。

 

当然のように価値として扱える。

 

透が生きる。

 

A組の誰かが生きる。

 

先生が生きる。

 

それを守るためなら。

 

危険も。

 

損失も。

 

計算へ入れられる。

 

だが。

 

自分についてだけ。

 

同じ計算をしてこなかった。

 

自分が失われることは、必要経費になり得る。

 

そういう前提で。

 

最初から扱っていた。

 

けれど。

 

彼女達が求めているのは、自分の命を何より優先しろという話ではない。

 

絶対に死ぬな、でもない。

 

状況によって、自己犠牲が最も合理的な場合は存在する。

 

一人の死によって複数人が確実に救われる状況も、理論上はある。

 

全員が生存出来る案など、最初から存在しない場合もある。

 

その可能性を否定することは、現実的ではない。

 

だが。

 

彼女達が言っているのは、そこではない。

 

最初から、自分を捨てるな。

 

自分が生き残る案も、他の案と同じ机の上へ置け。

 

検討する前から、一つだけ消すな。

 

それだけだ。

 

「……」

 

反論しようと思えば、まだ出来る。

 

それでも。

 

反論出来ることと。

 

相手が間違っていることは。

 

同じではない。

 

それくらいは。

 

零無自身が、誰より知っている。

 

救われたことを、良かったと思う。

 

その先には。

 

もう一度、救われる可能性のある自分まで認めなければならなくなる。

 

自分を助けることを、他人を助けることより常に上へ置く必要はない。

 

ただ。

 

常に下へ置く理由も、本来はない。

 

「……面倒だな」

 

小さく呟く。

 

それでも。

 

以前ほど、不愉快ではなかった。

 

零無は誰もいない部屋で、小さく息を吐いた。

 

「……最初から除外はしない、か」

 

自分の口で確認するように。

 

それから。

 

ほんの少しだけ。

 

笑った。

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