ようこそ喫茶パンドラへ! 作:とくめい
プロローグ
辺り1面砂の世界。建物も何も無いそこを1人の少女が歩いていた。
「ハァ⋯ハァ⋯」
足元はおぼつかず、目の焦点もあっていない。それでも歩みを止めずに懸命に歩き続けている。
「あっ!」
砂に足を取られ、そのまま倒れ込んでしまった。
「痛てて⋯あれ、立てない⋯」
立つ気力はもう残されていない。彼女の歩みもここで終わりだ。
「嫌だなぁ」
掠れた声で呟く。
「やりたいことも、やらなきゃいけないこともまだいっぱいあるのに⋯!」
「死にたく、ないよぉ...」
涙すらもう流せない。
「ごめんね、ホシノちゃん⋯」
この瞬間梔子ユメは死亡した。
「⋯間に合わなかったかぁ」
そこには誰もいないはずだったそこにはいつの間にか二人の男が立っていた。
どこか後悔しているような、そんな声を出したのは1人の少年だ。仮面をつけているため顔の判別はできない。背や声からしておそらく高校生ぐらいであろうことはかろうじて分かる。
「おや、それは申し訳ありません。私がもっと早く繋げれば助かっていたかもしれません」
「いやいや黒服さんのせいじゃないですよ。それにもう助からないって訳でもありませんから」
黒服と呼ばれた彼はその名の通り黒いスーツを身にまとっている。こちらも顔は分からない。ただし少年のように仮面をつけている訳ではない。顔は真っ黒であり、左目に当たる部分がひび割れ中から白い光が漏れ出している。少なくとも人間と言える容姿ではない。
「あなたのそれは死者の蘇生すら可能だと?」
「もちろん!ま、あんま使いたくないですけどね—」
「さてさて、タクシー代です。面白いもの見せてあげますよ」
△▼△▼△▼△
――神様、仏様、名も無き神々様。生涯、名を残さないと誓います。
△▼△▼△▼△
『梔子ユメが死んでいるはずがない。彼女は私たちに救出され、一命を取り留めた』
「か、ハッ」
「ゲホッ、ゲホッ!」
たった一言。それだけで死んでいたはずの彼女は生き返った。
「ククッ、これは素晴らしい!」
まるで笑っているかのように、口元のヒビが広がっていく。
「ほらほら、そんなこと言ってないで。さっさと帰って治療しましょ。死にかけなのは変わらないんですから。」
少年の態度は軽い。死者の蘇生という奇跡を起こしたとはまるで思えない。
「おや?それもあなたの力で直せば良いのでは?」
「制限があるんですよ。」
「なるほど⋯でしたら急がなければいけませんね」
突如、黒服の前に黒いゲートが現れた。おそらく、彼らはこれを通って来たのだろう。
「彼女は私が運びましょう。荷物は任せても?」
「あー」
確かにそこにはバッグと少年の身長程ある盾が落ちている。1人で持ち運ぶことは少々難しい。
「いや置いていきましょう。俺はさっきのでちょっと疲れて運べそうにないんで」
「でしたら私が往復すれば良いでしょう。」
「いやいやいやいや、そこまで迷惑かけられませんって!」
何か都合の悪いことでもあるのか、大袈裟にブンブンと手を振りながら告げる。
「大した手間でもないですが?」
「まじで大丈夫ですから!ほらほら急いで!この子死んじゃいますよ!」
グイグイと黒服をゲートに押し込むように背を押す。
「ふむ⋯まあそこまで言うのなら」
特段重要なことでもない、と判断した黒服は、そう言い残しゲートの奥へと消えていった。
「さーて俺もさっさと」
続いて少年もゲートに入る、
「っと、念の為」
直前くるりと反転した。
何かを思い出したのかバッグへと向かい、ゴソゴソ中身を漁り始める。
「うーんやっぱ無いかなー」
「んー?あれ、残ってんじゃん」
取り出したのは日記帳だった。バナナのシールが貼られていて随分とかわいらしい。少なくとも年頃の男子が興味を持つようには思えない。
「危ない危ない。これは回収しとかないと」
しかしこれが目的だったようで、自分のポケットへとしまった。
「死んだ時には持ってたのか⋯?うーん、じゃあいつ無くしたのかわかんないよなぁ。」
「ま、いっか!俺も帰ろ」
今度こそ少年はゲートの奥へと消えていった。
辺りに静寂が戻る。
そこには持ち主を無くした、バッグと盾だけが残っていた。
△▼△▼△▼△で挟まれている文は原作のものを少し変えたやつです。ご了承ください。