ようこそ喫茶パンドラへ!   作:とくめい

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今更ではありますが、私はブルアカのメインストーリーしか読んでいません。ところどころキャラの違和感や公式様との設定の違いがあると思います。

「曇らせ」タグ追加しました。ご確認ください。


第四話

とうとうシャーレになりました。どうも俺です。

 

連邦生徒会の制服も届いたがこれに袖を通すことはないだろう。まあなってしまったものはしょうがない、深く考えるのはよそう。

 

それよりも今考えるべきことは…暇をつぶす方法についてである。

 

「ハァ…暇だ。ユメが居たらなぁ」

 

以前までは話相手のユメがいたが、これからは忙しくなる時間帯にしか来ない。俺がそう伝えたからだ。渋々ではあるが了承してくれた。理由はもちろんアビドスで過ごす時間を増やすため。その甲斐あってか、ホシノ以外の面々とも仲良くしているらしい。つまり客もいない今、ここにいるのは俺一人。

 

みんなはめっちゃ暇なのとめっちゃ忙しいのだったらどっちが好き?俺は後者

 

時計を見ると、長針は2時を指していた。学校が終わるまでは少々時間がある。何をしてこの時間潰そうか、なんて考えていたら突如ドン、という音を響かせながらドアが開けられた。

 

「ははっ、ホントにやってるよ」

 

「噂は本当だったってことか」

 

「いらっしゃいませ?」

 

入ってきたのは見るからに柄が悪そうな三人組。ヘルメットをかぶっているので、この世界ではよく見るヘルメット団の一員だろう。口ぶり的に俺に用があるっぽい

 

「よぉ~久しぶりだなぁ」

 

誰?

 

「えーっと?どこかで会ったことあるのかな」

 

「…チっ、随分と生意気になってんじゃねぇか」

 

やばい怒ってる…早いとこ思い出さないと。せめて顔ぐらいみせてくんないかな。

 

「まあいいだろ?どうせすぐに思い出すさ」

 

「…ああそうだなぁ」

 

にやにやと意地の悪い笑顔を浮かべる不良たち。

 

なんだか嫌な予感がするのは気のせいだ。きっと名前でも名乗ってくれるんだろう、そうに違いない。

 

「抵抗すんなよ」

 

「ちょ、痛い痛い

 

両腕が掴まれ、強制的に座らされる。

 

キレすぎじゃない?確かに、忘れたのは俺だけどさぁ…

 

「ずっと待ってたよ」

 

残った一人が俺を見下ろすように立つ。

 

銃口がこちらを向く。

 

「こうしてお前に会える日を」

 

ぱん、という音が聞こえた。撃たれたのは肩。

 

「ははっ、いきなりやりすぎだろ」

 

「いいんだよ今まで会えなかった分さ」

 

ゲラゲラという笑い声が響く。

 

ああ、身に覚えがある。

 

「なぁわかるかよ、私たちの気持ちが」

 

両腕が解放されると同時、髪をつかまれた。無理やり顔上げさせられる。

 

「勝手にいなくなっちまってよぉ。さみしかったんだぜ、私たちは」

 

昔の記憶がよみがえる。

 

「ほら、前みたいに一緒に楽しもうぜ?」

 

何度も何度も経験した。ああ、ようやく

 

「思い出した!」

 

「…は?」

 

そうだそうだ、小学校の時のクラスメイトだ!ああ、スッキリした。

 

「ごめんね忘れてて。なにせ最近いろいろあったらからさぁ、お詫びにサービスでもするよ」

 

はあ、生徒のことを忘れるなんて。先生なら絶対やらないことなのに…

 

「お前、何言ってんだ…」

 

「ん、何が?」

 

「ッこれだよ!」

 

撃ち抜かれた傷跡が蹴り飛ばされ、あたりには血が飛び散る。

 

痛い。でもそれだけだ。

 

「ほら昔みてぇにみっともなく泣けよ!」

 

「ああそういう…」

 

いじめていたのはそういう理由があったからだったっけ。だとしたら申し訳ない。

 

「そうだねぇ、できるならそうしたいんだけどできないんだ」

 

「期待を裏切ってごめんね」

 

残念ながら泣くこと、恐れることもできない。それはすでに奉げてしまった。

 

「な、何言って…」

 

「まあ、落ち着けよ」

 

赤いヘルメットをかぶった生徒がなだめるように声をかける。

 

「こんなこと言ってられるのも今だけさ。あとは場所を移してゆっくり——」

 

 

 

「店長、来たよ!」

 

「ちょ、ちょっとお姉ちゃんもっと静かに」

 

またもや乱暴にドアを開くものが現れた。

 

ミレニアムのゲーム開発部、モモイとミドリがそこにはいた。

 

 

◇◇◇

 

今日はいつもより授業が早く終わった。『ちょうどいいから、店長にアリスを紹介しに行こう!』という提案に賛成した私たちは今、パンドラに向かっている。

 

「ふーんふふーん♪」

 

「お姉ちゃんうるさい」

 

モモイちゃんのテンションがいつもより高い。

…私も同じ、はやる気持ちが抑えられない。

 

「だってお店に行けるのなんて久しぶりだよ!前行ったときは人が多すぎては入れなかったんだから!」

 

「それはそうだけど…」

 

確かに今の時間ならそんなに混んではいないと思う。もしかしたら私たちだけかもしれない。だったら嬉しいな、きっと沢山お話できる。

 

「アリスも楽しみです!」

 

「ユズが出てくるんですからいい店に決まっています!」

 

「…そうだね。とってもいいお店だよ」

 

今も、外に出ることは怖い。でも、店長さんに会いにいくためなら少しだけ勇気が湧いてくる。

 

「ほら着いたよ!」

 

「おお!さあ早くいきましょう!」

 

こんなにワクワクしているアリスちゃんは久しぶりに見たかもしれない。ずっと会いたがってたから。

 

「待ってアリス」

 

なぜかモモイちゃんが呼び止める。

 

「私に名案があるの」

 

「どうせ余計なことでしょ…」

 

ミドリちゃんがぼそりと呟く。

 

モモイちゃんの名案、過去にそれでユウカさんから怒られたことがある。あの時は怖かった…

 

「もう、ミドリは黙ってて!」

 

「ハァ…」

 

「話だけでも聞いてみよう?」

 

何も聞かずに否定するのはさすがにかわいそうだ。それに今まで提案全部が悪いものだったわけじゃない。アリスちゃんもモモイちゃんのおかげでゲーム開発部になれたようなものだし。

 

「いい?アリス。店長はTSCのファン…それにアリスがTSC2を作ったことも知ってる。つまりアリスのファンだって言っても過言じゃない!」

 

「おお…」

 

アリスちゃんの目がキラキラと輝き始める。

 

「憧れの相手と普通に会うなんてロマンがないよ、するでしょサプライズ!」

 

私たちと会った時もすごく喜んでくれた。多分その時のことを覚えているんだろう。

 

「私たちに任せて、アリスはここで待ってて!最高のタイミングを作ってあげる!」

 

「これがファンサ、というやつですね!任せてください」

 

とてもモモイちゃんらしい提案だ。

 

「これなら大丈夫かな…?」

 

「うん。きっと喜んでくれるよ」

 

少なくとも怒られることはない。だって怒った姿なんて見たことがない。

 

「ほら行くよ」

 

モモイちゃんがミドリちゃんの手を引いてドアを開ける。私は少し出遅れてしまった。

 

「来たよ!店長!」

 

「ちょ、ちょっとお姉ちゃんもっと静かに…」

 

ピタリと二人の動きが止まった。

 

「二人ともどうしたの…?」

 

私の呼びかけにも返事がない。

 

背中から店の中を覗き込む。そこには

 

「…え?」

 

「んだよ、てめぇら」

 

血まみれになって倒れる店長がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『このゲームに一番足りないのは正気』

 

『私がやってきたゲームの中で断トツで『絶望的』なRPG』

 

「…」

 

全部私たちが作ったゲームについた評価。

 

楽しんでほしい、そんな思いを込めて作った。ただそれだけなのに…なんでこんなことになっちゃったんだろう。

 

ピコン

 

この音を聞いて肩が跳ねるようになったのはいつからだったか、もう覚えていない。

 

見なければ傷つかなくていいのはわかってる。それでも確認するのをやめられないのは、心のどこかでまだあきらめきれていないから。恐る恐るコメントの内容を確認する。

 

『発売前から楽しみにしてました。とても面白かったです!思わず一気に最後までプレイしてしまいました。次回作も期待しています!』

 

これを見たときの喜びを忘れることはない。

 

ずっと待ち望んでいたもの。私たちのゲームを楽しいって言ってくれる人。嬉しかった、このゲームが初めて認められた気がした。

 

コメントしてくれたのは「 」@パンドラの店主、さん。

 

聞き覚えのある名前だったから、それがだれなのかはすぐに分かった。たびたび話題に出る喫茶店の名前だ。

 

…会ってみたい。外は怖いけど、それでも頑張ってみようとそう思った。

 

普段私が出歩かないような夜遅い時間に向かう。できるだけ人が少ない時間を選んだ。そんな時間にも関わらず二人も嫌な顔せずについてきてくれた。

 

『いらっしゃい。』

 

優しい声がかけられる。お店なんだから当たり前、という人もいるかもしれない。でも、なんて言ったらいいのか⋯私たちに対する特別な配慮のようなものが感じられた。

 

『へぇ君たちが作ったんだ!すごい頑張ったんだね』

 

勇気を出して製作者だと伝えたときも、沢山ほめてくれた。

 

おいしい料理を何度も作ってくれた。

 

優しい言葉を何度もかけてくれた。

 

わざわざ私たちの部室まで来てくれたこともあった。

 

世間の評価に傷つけられて、卑屈になっていた私を救ってくれた。

 

そんな優しい店主さんが

 

「なんだお前ら」

 

目の前で血を流し、暴行を受けている。

 

気づけば体が動いていた。

 

店長とその人の間に体を割り込ませる。

 

「やめて、ください」

 

自分の中で精いっぱいの力をもって睨みつける。

 

「ハァ?いきなり何言ってんだよ、お前」

 

しかし、そんなものは意にも介していない。それどころか逆に怒らせてしまった。怖い。その感情が私の心を支配する。

 

体の震えを抑えられない。涙が目じりからあふれていくのが分かる。

 

「ぷ、あはははは。見ろよ震えてるぜこいつ」

 

「いいねぇ、昔のこいつみてぇだ」

 

うまく思考が回らない。それでもここは譲っちゃいけないのだけはわかる。

 

「ほら、どけよ。それとも無理やりの方がいいか?」

 

目の前に銃が突き付けられる。

 

「ユズにも店長にも手は出させないよ!」

 

「お姉ちゃんの言う通りです」

 

ミドリちゃんとモモイちゃんも二人が私のそばに立つ。

 

それだけなのに私の震えは収まった。

 

「チッ、メンドクセエ」

 

「まあいいだろ?サンドバッグが増えただけさ」

 

不良たちも銃を構え、臨戦態勢に入った。

 

戦うことは避けてきた。怖かったから。…でも今は大丈夫。後ろの店長を守るためにも戦うと決めた。

 

一触即発の空気があたりを支配する。

 

「ちょーいちょいちょい。ストップスットプ!」

 

その空気を壊したのはほかならぬ店長さんだった。

 

私たちをかばうように前に出る。

 

「て、店長さん動かない方が…」

 

傷は当然治っていない。現に、今も血が流れている。動けば悪化してしまう。

 

「ごめんね、誤解させちゃって。これは…そう!昔の友達と久しぶりに会ってテンションが上がっちゃっただけだから。」

 

誰にでもわかるような嘘をつく。なんでそうまでして加害者をかばうのかはわからない。

 

「ね、そうで——」

 

「ふざけてんじゃねぇよ」

 

店長を気遣いを一笑に付すように、銃声が響く。

 

銃弾が店長の脇腹を貫通する。

 

「へらへら、笑いやがって…!ムカつくんだよ!お前はただ黙って震えてればいいんだよ、昔みたいにな」

 

「ッ大丈夫ですか!?」

 

私は蹲うずくまる店長に駆け寄った。

 

血がドクドクと流れづつけている。

 

「ご機嫌斜、めだったか…」

 

「そんなこと言ってる場合じゃ…し、止血。止血、しないと」

 

救急車をよばなきゃ。その前に止血?でも、やり方が…

 

目の前の惨状に私は完全にパニックになっていた。

 

「なんで、こんなことをッ!」

 

ミドリちゃんがあの人たちに問う。

 

「そんなん面白いからにきまってんだろ」

 

何を言って…

 

「ヘイローもねぇ弱い人間だ。私らが少し力を加えたくらいで簡単に壊れる。いいストレス解消だったよ。」

 

「昔はもっと楽しかったのに…すっかり変わっちまって残念だ」

 

それぞれ三人の言葉だ。

 

人を傷つけておいて楽しい?彼女たちを何一つ理解できない。

 

「…そんなの間違ってるよ」

 

強い怒気をはらんだ声が響く。一瞬それがだれの声かわからなかった。

 

「店長はそんな理由で傷つけられていい人じゃない」

 

あのモモイちゃんが、天真爛漫なモモイちゃんが…怒っている。

 

「お姉ちゃん…」

 

「もうこれ以上は手出しさせない。ここからは私たちが相手だよ!」

 

そうだ、ただでさえ重傷なのにこれ以上ケガを増やさせるわけには行けない。一刻も早くこの人たちを倒して、助けを呼ばないと。

 

「はっ、私たちに勝てるわけねぇだろ」

 

「現実ってもんを教えてやるよ!」

 

再び戦闘態勢に入る私たち

 

そして

 

「サプラーイズ!」

 

「本日の主役、アリスの登場です!」

 

今度は私たち友達によってその空気は壊された。

 

「次から次へと…!なんだよお前は!」

 

一見ふざけているようにしか見えない。でもアリスちゃんは何も悪くない、知らなかったんだから。早く事情を話して手伝ってもらわなきゃ。

 

「これは…」

 

「不良撃退イベントですね!」

 

「は?」

 

あ、これはまずいかもしれない。

 

「アリスの得意分野です!任せてください」

 

「あ、アリスちゃん?ここ室内——」

 

ミドリちゃんの静止の声は届かない。

 

「光よ!!!!!!!!!!!」

 

巨大は光線が私たちの目の前を横切った。

 

ドンッ、というとても大きな音が響く。

 

「クエストクリアです!」

 

胸を張ってどや顔をするアリスちゃん。

 

「失敗だよ!お店半壊しちゃってるよ!」

 

「そんな…防衛イベントでしたか…」

 

不良の人たちはどこかに吹っ飛んでしまったようだ。少しだけスッキリしたのは勘違いだと思いたい。

 

少し頭が落ち着いてきたとき、脳裏に血まみれの店長の姿が浮かぶ。

 

「早くしないとッ…!」

 

再び店長の方へ向き直る。先ほどよりも顔は青白く、息も荒くなっている。

 

「い、今救急車呼びますから」

 

「それは大丈夫、こんなん自分で…ガ、ハッ」

 

店長さんが、多量の血を吐いてどさりと床に倒れこむ。

 

「店長さんッ!」

 

「店長!」

 

二人がこちらに駆け寄ってくる。

 

「?何かあったんですか」

 

まだ状況を把握できていないアリスちゃんを責めることはできない。

 

冷静になったはずの私はまたもやパニックに陥る

 

「おぇは…攻、撃を…う、けな……」

 

そんなつぶやきが聞こえた。

 

「しゃべっちゃだめだよ!今救急車呼んだから…!」

 

こんなにたくさんの血が流れるのを見たことがない。間に合わない、そんな考えが浮かぶ。

 

このままじゃ死んでしまう。いやだいやだいやだ。これでお別れなんて絶対に。

 

「嫌、嫌です…!起きて、ください。」

 

必死に呼びかけても何の反応も示さない。自分には何もできないという現実が突き付けられる。

 

私の心が砕けそうになった時

 

”あれ?みんなも来てたんだ。どうしたの?”

 

私たちを助けてくれた、先生の声が聞こえた。

 




先日ルーキーランキングにのることができました。これも読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。

誤字報告もありがとうございました。非常に助かりました。
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