依頼を受けて、荷物を運び届けて、報酬を貰う。
それだけで充分、それだけが私の役目で私の仕事。
荷物を運ぶ、時には足で、時には車両で如何なる手段を用いて必ず依頼人の所へ届ける。
本日の依頼は大物でミレニアムサイエンススクール──以下ミレニアム──だ。
ミレニアムからの依頼は主に機材の部品やらが多く、偶に高負荷の運動器具やエナジードリンクの類の箱を纏めての注文が入る、業者か私は。
まぁそんな事もあり三大校の中でもミレニアムへの配送は重量個数共に大型になりがちなので私としてもトラックでの配送を用いている。
ミレニアム──基大きな学校に到着するとまず行われるのは検品だ、中身に異常はないか、危険物は持ち込まれていないか等々隅々までチェックされるのだが、この学校に関しては
検品にはC&Cの面々と数々のドローンにて執り行われた、ドローンで物を検知させて危険物が発見された場合はC&Cの面々が即座に取り押さえる。
美甘ネルが控えてる辺り相当警戒されている、買い被りも甚だしいな、私は唯の配達人だと言うのに。
等と愚痴ったら何を言っているのか理解出来ない様な顔をされた、失礼な、私はこの仕事に誇りと信念を持ってだな……何?各学園を渡り歩く様な奴が唯の配達人な訳ない?そうか……。
それはそうと今回は配達以外にも個人的にミレニアムに用があったのだ、納品作業を終えてからでも顔を出すとしよう。
『荷物検品:完了。危険物該当:無し。異常ありません』
「それじゃ通らせてもらうよ、お仕事ご苦労様」
「おう、偶には仕事以外でも面出せよ」
納品の確認はここの生徒会のセミナーを筆頭に各部活の部長達が各々執り行う、ヴェリタスだけは副部長の方が出てきてたが。
「これだけの数を完璧な状態で運んでくるなんて……いつもながらに流石だね」
「それだけが取り柄なんでね、報酬はいつもの口座に振り込んでおいてくれ」
はいはいと返事を頂いて私はエンジニア部へと足を運ぶ、本来なら無関係の人間は立ち入り禁止なのだが荷物配達で常連になった私はある程度の融通が効く。
エンジニア部部長の白石ウタハ、彼女が制作する物は日常的に使うには癖が強い物が多いが性能は折り紙付きだ、そしてそう言うものとは得てして配達業には役に立つ事が多い、備えあればなんとやらだ。
今使っているワイヤーを水平に飛ばす銃──ボーラガンと呼ばれる代物は他ならぬ彼女の発明だ、なんでも銃弾以外を飛ばす銃を作りたかったとかなんとか、動機はどうあれこの銃は相手を無力化させる事に特化した物で、射程は20-30mそこそこと言った感じだがワイヤーに引っかける事で相手を転倒させたり首辺りを狙えばそのまま気絶させる事も出来る、優れた一品と言えるだろう。
後今履いているブーツもエンジニア部製だ、軽く丈夫で長持ちする、悪路や山岳すら走破する私にとっては市販品よりもめっきりオーダーメイドの方が安心出来る、無論値段は相応に張るがそこは報酬分から引き渡せば良い。
「あ、そうそう要望にあった武器の製作が終わったよ、今度は粘着性のワイヤーを射出して引き寄せる、君の要望通りだ」
ウタハから渡され手に持つとボーラガンよりは重量がある。
「射出と巻き取りの機構でどうしても重くなってしまったね、それでも使用には支障が出ないとはおもうけど」
試運転も兼ねて試し撃ちをさせてもらいその性能を確かめる。
「射程は60m前後って所か」
「それ以上伸ばそうとするとサイズは二回りほど大きくなる事を伝えておくよ」
「いいや充分だ、
そうだったねと軽口を返されてしまった、本当にわかってるんだろうなこの女……
「あ、そうだ。今度君のアシストスーツを作ろうか?より重い荷物を持てたりより早く走れたりする様な奴さ」
「高くつくだろうそれは」
「なに、君がテスターとしてデータを提供してくれればいいんだよ、これまでの通りね」
そう、ミレニアムの生徒との関係はある種かなり深い、偶に彼女達の発明品のテスターとして私が使われているのだ、今使っている衝撃吸収に特化した荷物ケースや左肩のセンサー──
そんな訳もあって互いにお得意様という訳だ。
「それじゃデータは渡したからな、また何かあったら頼む」
次はヴェリタスだ、オドラデクのデータを提供しないと。
オドラデク──これはヴェリタスが開発した傑作と言っても過言ではないだろう、起動するとその方向に向けて距離100mの90度程の扇状に地形情報や生体・物体反応を検知させる、今のミレニアムのドローンセンサーの基盤となった物だ。
五枚羽なのは人の指の数に合わせたからだとか、そうする事でサムズアップ機能もあるらしい、使わん。
因みにキヴォトスの地理データも入れられてるのでセミナーから直々にキヴォトスの地形データを測っておいて欲しいという依頼が出されている、何に使うかまでは聞く気がなかった、深入りし過ぎだからな。
「はい、終わったよ。いつもご苦労様」
ヴェリタスの副部長である各務チヒロがデータの読み取りを終えたらしくオドラデクを返却してくる、部長の明星ヒマリはいつもの事ながら留守を決め込んでるのだろう。
因みにエナドリの注文個数はここがダントツだ、あんまり常飲する物でもないんだがな、ソレ。
「相変わらずフリーでやってるんだね、何処かに所属すればいいのに、アンタなら雇う人多いでしょ?」
「選り取り見取りだ、スカウトしてくる奴は後を絶たないよ」
私の発言にチヒロはやっぱりねと言わんばかりの表情を浮かべている、だが私はどこの誰にも付く気は無いし何処かに所属するつもりもない。
「ある程度自由にやれる今の環境で充分だ、それに無所属だからこそ見える景色、扱える融通って物もある」
「いつもの方便じゃんそれ」
呆れた様に返すチヒロに私もそうだなと笑みを浮かべ返した、此処での仕事は終わった、次の依頼に向かわなくてはな。
「それじゃあな、次の依頼がある」
行ってらっしゃいと声をかけてくれたチヒロにオドラデクでサムズアップを返しておいた、初めて使ったなこれ。
ミレニアムの外れ、誰もいないその場所に
「ここに置いておくぞ、あとはそっちでなんとかしろ」
『ええ、いつも通り完璧な仕事感謝するわ』
そう思うなら姿を見せて欲しい物だが敢えて口には出さない、というのも向こうの通信相手の事を私は知っているしこうやってやり取りするのも何度目って話だ。
あの女の事だからミレニアムの連中に秘密にしてまで何かしら建造中らしいが……まぁそこまで深く踏み込むつもりもない。
・ボーラガン
水平状に拘束ワイヤーを射出する銃、ウタハが作った玩具的立ち位置だったが主人公の手により見事無力化に特化した武器に変貌した
・スティッキーガン
↑の評価を得て新しく作られた物、本家では激流に流されていようが重さが60kg超だろうが難無く引き寄せる代物、車両は無理
・オドラデク
ヴェリタス製、本家のBT検知彼方が無い代わりに地面にオドラデクの手を当てると地中まで検知出来る様になってる、セミナーが地形データを取ってほしいって依頼はこの機能の所為