依頼を受けて、荷物を運び届けて、報酬を貰う。
それだけで充分、それだけが私の役目で私の仕事。
荷物を運ぶ、時には足で、時には車両で如何なる手段を用いて必ず依頼人の所へ届ける。
本日の依頼はトリニティ総合学園──以下トリニティ──からの依頼となっている。
トリニティからの依頼内容は主に歴史ある茶器や美術品、書物と言った超貴重品が主で極めて取り扱い注意な品物ばかりとなっている、その為追加料金も発生しているのだがそこはキヴォトス屈指のセレブ校でもあるトリニティ、巨額の資金がポンと出てくる。
後トリニティはお茶を嗜む生徒が多いのか百鬼夜行や山海経の茶葉の類も依頼される、私はお茶の良し悪しなんて分からない、マテ茶で充分だ。
話を戻し今回は美術品の類なので割れ物注意という訳で徒歩での配送となっている、車両では咄嗟の事故に対応しにくい為致し方ないが。
それに今回はウタハが言っていたアシストスーツ──
まだまだ試作段階な為か速度は時速20km程だが電動アシストの為に肉体疲労が極めて僅かと考えるならばこれはかなり有用となるだろう、まぁそれで肉体を鍛えない理由にはならないが。
とかなんとかやってるうちにトリニティの検問所に到着した、例によって例の如く正義実現委員会のお出ましだ、剣先ツルギが控えてる、怖い怖い。
まぁ怖いのは外見と一見の雰囲気だけで少し話すとかなり冷静沈着で気配りも出来る良い人物である、最も極度の人見知りな為話し合う段階が極めて高いのだが。
ツルギが荷物を睨み殺さんとばかりに検品を行う、もし視線に物理的影響があるのならあの荷物達は今頃針鼠となっているだろう。
検品を行うその間も此方への警戒は微塵も怠っていない辺りトリニティの最高戦力として起用されるのも頷ける、まぁ戦おうなんてのは天地がひっくり返ろうともあり得ない事だが。
「異常は、無い……通って良い」
「どうも」
「それから、暫くは三大校間の──特に
「例の条約か……政治問題は私には荷が重い話だ、何せ配達人な物でね。出来る事は荷物を運ぶ事だけだ」
「……分かった」
例の条約──エデン条約、簡単に言うならトリニティとゲヘナの友好条約な訳だが、果たして長年確執があった両校が手を組んだとて平和が築かれるかどうかは定かではない、少なくとも条約の名にある
納品完了、ここはかなり厳重な警備になっているのかティーパーティー専属の生徒が受け取り再度中身を改めた上で漸く依頼人の元へ荷物が届く、まぁ爆発物とかあったら困るとか言うレベルじゃないしな。
「はい、確かに確認致しました、それから……ナギサ様がお話を伺いたいそうです」
ティーパーティー──トリニティに於ける生徒会の役割──のトップが一人、桐藤ナギサが私に話ね……何かやらかした記憶はないんだがな。
「今回も素晴らしいお仕事でした、見事な状態での配送ありがとうございます」
「まぁそれが仕事だからな……しかし何故毎回私なんだ、アンタの所なら専属の配達人くらい準備できそうな物だが」
人財と資金は潤沢にある事だしな──とは敢えて言わなかった、嫌味と取られても面倒だ。
席に着いているナギサは紅茶を飲み一息入れていた、記憶違いで無ければトリニティの生徒会長は三人いてホストを交代制で回していた筈、それで今の時期は百合園セイアがホスト……つまりは組織運営のトップを務めていた筈だが。
「いえ、どの様な依頼であれ迅速に且つ破損も無く配達が可能なのはキヴォトス広しと言えどもあなただけでしょう。
加えて、今の時期は特に人を動かすのは慎重にならなくてはいけません、本来ならば信用と信頼を積み重ねたあなたであっても不用意に学園内に入れる訳にはいかなかったのですが……」
「他の二人が不在な事と関係しているのか?」
そう、今この場には桐藤ナギサ一人しかいない、百合園セイアは勿論な事、お転婆を絵に描いたような聖園ミカまで居ないのは流石に異常事態と言える。
「ええ……お二人には席を外す様に伝えておきました、あなたと二人でお話をしたかったので。
単刀直入に聞きます、トリニティとゲヘナの間で結ばれる条約──
ふむ、例の条約についてか。
「特に興味は無いな、条約が締結されるのは良い事だがそれに私が首を突っ込む事もない、従って邪魔する気もない、そもそも一配達人に政治問題を解決させる妨害させるってのが土台無理な話だ、文字通り荷が勝ち過ぎる問題だからな」
「……分かりました、本日はありがとうございました、また何かあればご依頼させて頂きます」
そうして私は解放された、一気に肩の荷が降りた気分だ、空気が重過ぎるんだよ。
後はこのまま帰路に着くだけなのだがふとパトロール中の自警団の姿が目に入った、確かあれは……
「トリニティの走る閃光弾、だったか」
「何ですかその異名は」
私が呟いた事に隣にいた羽川ハスミが指摘した、ツルギは正義実現委員会の業務に移ったので監視交代という訳だ。
「自警団には
そう言うとハスミは黙り込んでしまった。
「
「色々あったのです」
「そうか、なら良い」
暗に聞くなと釘を刺されて、まあ私自身もそこまで興味があったわけでもなし話はそれきりになった。
「……既に言うまでもないと思いますがあなたの動向は色々な方が警戒しています、ご注意下さい」
「そっちが勝手に警戒してるだけだ、私はただ仕事をしているだけ……世間の状況がどうなろうと配送依頼が途絶える事は無いからな、だがその忠告は有り難く頂いておこう」
そう言い残して私はトリニティを後にする、荷物よりも別の事で肩が重い仕事だったな……まあ疑われる様な事してるから仕方がないんだが。
溜め息を一つ入れると私の個人端末に通知が来る、もう次の依頼か……送り主はゲヘナの万魔殿か。
書き始めるまではスズミとも絡ませようと思ったが蛇足感が出たので泣く泣く没に。
使ってる装備の関係で二人はそこまで相性悪くない。
パズが滅茶苦茶警戒されてますが依頼さえあればキヴォトスの端から端まで走破する存在とか警戒するなって方が無理な話、各校を頻繁に出入りしてたら尚更。