依頼を受けて、荷物を運び届けて、報酬を貰う。
それだけで充分、それだけが私の役目で私の仕事。
荷物を運ぶ、時には足で、時には車両で如何なる手段を用いて必ず依頼人の所へ届ける。
今回の依頼は毛色が少し異なり既に依頼を受けたのではなく今から依頼内容を聞きに行くという物。
ゲヘナ学園──以下ゲヘナ──の生徒会である
奴との付き合いは長い訳では無いが短い訳でも無い、メッセージや通信ではなく直接依頼内容を話すという事は相当な案件と見て良い。
そして私の予想が正しければそれはゲヘナの先代生徒会長の案件だろうな、まだ到着してないのに私はこれから待つ仕事に対して深いため息を一つ吐かざるを得なかった。
ゲヘナに到着すると風紀委員会に形式上だけでも挨拶は済ませておく、一応仕事とはいえ他所の学校に入ってはいる事だし。
風紀委員会委員長の空崎ヒナ、文句無しにゲヘナの最強戦力ではあるが同時にゲヘナ生にしては生真面目が──いやゲヘナの校風からするなら却って不真面目……なのか?
とにかく責任感と極めて高い善性の持ち主、自身の身の丈にも迫ろうという銃を自由自在に操りその上で本人が冗談じゃない程に硬い、戦車もかくやと言わんばかりの頑丈さだ、絶対に戦いを仕掛けてはいけない。
「……依頼を入れた覚えは無いのだけど」
「
そう言うとヒナは苦虫を噛み潰したような顔をして無言になってしまった、どうやら情報の共有等はされていないらしい、組織がそれで良いのか。
「あまり面倒な
「そちらこそ一人で背負い過ぎない事だ」
そう言い残し私はマコトの元へと急いだ、まだ定刻より早いが遅く着くと何を言われるか分かった物じゃ無い。
会議室に到着すると羽沼マコトを筆頭とした首脳陣が勢揃い──まぁこれはいつもの事だが──しており、丹花イブキは手を振って元気よく挨拶してくれた、良い子過ぎる。
反面マコトは不遜な笑みを浮かべてよく来たなの一言だけだった、隣の一年生を見習ってほしい。
「いいや時間通りだ、とても仕事直後とは思えん」
仮にも相手は三大校の生徒会長なのだが私とマコトの付き合いはヒナよりちょっと長い、なのでこれくらいの軽口は許されてるんだ、何気に同い年だしな。
世間話もそこそこに私はマコトから今回の依頼内容を聞き出そうとした、しかしそれに待ったを掛けたのが他ならぬマコトだった。
「すまないが私とパスの二人を残して他は外してくれ」
マコトがそう言うと皆は部屋を後にし──イブキだけは手を振っていたが──部屋には私とマコトだけとなった。
暫く時間を置きドア付近にも誰も居ないことを確認し、盗聴の類も一切ない事が確認された後、漸くマコトが本題について口を開いた。
「……薄々勘付いているとは思うが、お前にしか頼めない依頼がある」
「大方先代の件だろう、私達以外を外したのが良い証拠だ」
「話が早くて助かる、雷帝の遺産……それが存在するかもしれないと思われる場所を特定した、そこに向かって現物の確認、あるいはその情報を記された物があれば持ち帰ってきて欲しい」
やはり雷帝の遺産関連だったか。
ゲヘナの先代生徒会長、キヴォトスではゲヘナの雷帝とも称された彼女は一言で言うなら暴君の類だ、そして同時に類を見ない天才でもあった。
あの女が作った物は非人道的な物が多い、その癖影響力も並々ならぬ物が多数なので放置もできないという悪循環だ、見つけ次第処分する事が今のゲヘナの方針だ。
「場所の特定まで済ませているなら兵隊を動かして処理すれば良い、お前の事だ、どうせエデン条約の事を気にする性格ではないだろう」
マコトは馬鹿だが決して無能ではない、特に雷帝関連になると即断即決を絵に描いたような形になる、そのマコトが今自分たちの勢力ではなく私に頼るというのは少し妙な話だった。
「……雷帝の影響を受けた生徒は多い、我々が大掛かりに動けばそれだけでその位置が雷帝関連の物と紐付けされてしまうだろう、その分お前ならどの時間でどの場所に居ても不自然ではない」
「その上でかもしれないという不確定な場所への捜査依頼か、これは配送依頼の範疇を超えている、この仕事は高くつくぞ」
「構わんさ、それで不安材料が一つ消えるなら良し、実際に情報があるなら後日確実に消せば良い」
「交渉成立だな、では早速向かうとしよう」
今回の仕事は配送依頼というよりは潜入任務に近いな……
マコトに示された座標の位置に向かい周囲を探索する、そしたらいかにもな建物があったので中に入らせてもらう、どう考えても不法侵入だが見るからに廃墟なので何も問題無い筈……筈だよな?
オドラデクのセンサーにも何も反応が無いから誰も居ないのは確定、とはいえ悠々と探索して誰かが来られても面倒なのでさっさと用を済ませるに限る。
廃棄されてそれなりに経つのか内部は荒れ放題で手入れもされていない、埃まみれで蜘蛛の巣が薄らと張られてすら居る、念の為と思いマスクをしてきていたのが功を制した、欲を言えばガスマスクの類をつけておくんだったな、終わったら風呂に入ろう。
オドラデクをライトモードにして周囲を照らし施設の隅々まで探索する、決して掃除をしにきたわけではないが部屋の隅のゴミすら見逃さない徹底振りだ。
そしてその捜査の甲斐あって奥に鎮座するかのようにソレがあった。
資料内容は……二種類の超遠距離砲撃機構と二種の統一プランか、そして目の前のこのガラクタはその設計途中の物……だったんだろうな、途中で投げたか或いは別の物で代用出来たかだろうな。
資料の中身は気になるが一応依頼物だからな、勝手に弄るのは業務的に駄目だろう、どうせ碌な事は記されていないだろうし。
帰り道も特に何かある訳でもなく、依頼開始時の心配が嘘のように何事もなく依頼を終える事が出来た、これでは潜入任務というよりは落し物回収依頼だが、配達人の仕事内容は落し物を届ける事も含まれる*1ので、何も問題は無い。
マコトの元へ戻り依頼物を渡す、本来なら荷物の検品等の手続きが必要なのだが今回は物が物なのもあり省略──というよりはその検品作業をマコト自身が行う事になる。
資料に目を通して行くうちに表情を険しい物に変わって行く辺り、本当にヤバい物ではあったらしい、そして一通り目を通し終えたのか漸くマコトが口を開いた。
「……貴様はこの資料に目を通したのか?」
「依頼品だぞ、勝手に開封するなんて真似出来るか」
「そうか、なら良い」
「そこまで念押しする辺り相当な代物ではあるらしいな、私は兵器には興味無いが……だが砲撃機構だったか?それを形にしようとして何にもならなかったガラクタが放置されていた、恐らく計画自体が放棄されたか代用品を見つけたのだろう、一応頭の片隅にでも入れておいてくれ」
「わかった、今回も良い仕事をしてくれた」
「報酬はいつもの口座に頼むよ」
私はそう言って部屋を後にする──前にマコトが口を開いた。
「お前は──まだ何処にも属さないのか」
「いろんな所で聞かれるなそれ……私は何処にも所属するつもりはないよ、組織という檻は少しばかり窮屈だからな」
そう言い残して、私は今度こそ部屋を出た。
トリニティへの配送から続き今日は長い1日だった、風呂に入ってぐっすりと眠ろう、もうヘトヘトなんだ私は。
猫は蛇への擬態を好む物だ
今回出てきた捏造した雷帝の遺産は説明すると長くなるので
《シャゴホッド》
《メタルギアREX》
《声帯虫》
《愛国者達の代理A.I》
で各々検索下さい、概ねこれなので。