異世界から帰還した勇者、ダンジョンに挑む   作:くろい

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第2話異世界帰りは伊達じゃない

 俺が異世界に飛ばされてから10年。

 俺が生まれ育った地球では、モンスターが蔓延るダンジョンが出現したらしい。

 

 ダンジョンは資源という恩恵を与えてくれたが、大きな欠陥を抱えている。

 

 ダンジョン内のモンスターを間引いたり、ダンジョンを完全攻略して消滅させないと、モンスターがダンジョン外に発生して多大なる問題を引き起こすのだ。

 

 それを防ぐために生まれた職業がある。

 その名も――冒険者。

 

 とまぁ、そんな冒険者とやらになるために、俺は冒険者協会へやってきた。

 冒険者というのは稼げることは稼げるが死亡事故が絶えないこともあり、非常に不人気な職業である。

 冒険者協会にやってきたカモである俺を逃がさないためか、あっという間に俺は冒険者資格の仮免許を受け取っていた。

 

「これが冒険者免許か……。これでダンジョンに潜ってもいいんですか?」

「研修を受けた後であれば可能ですよ。本日14時から研修がありますので参加しますか?」

「それじゃあ、今日の研修に参加させてください」

「かしこまりました。開始時刻まで時間がありますので、当施設には冒険者専用ラウンジ等がありますし、そこでお待ちになるのがお勧めですよ」

 

 受付さんがそういうので、俺は冒険者専用ラウンジへと向かった。

 そして、俺は冒険者という職業がいかに人手不足なのかを実感する。

 

「無料の食事、トレーニングジム、仮眠室って……。ここに住もうと思えば住めるな……」

 

 命を懸ける職業だ。これくらい優遇されていなきゃ割に合わないんだろうな。

 研修まで1時間ちょっとある。

 俺は面白そうな機械が置かれているトレーニングジムの方へ向かった。

 

「魔力測定器だな。向こうの世界にも似たのがあったけど、こっちのは科学技術も使われてるみたいだしかなり使い勝手が良さそうだ」

 

 物は試しだ。

 俺は魔力を測定する機械を利用してみる。

 

「壊れないように慎重にっと」

 

 異世界転移するまえで読んだマンガや見たアニメでは、強いやつが手加減をできずに機械を壊して、『あれ?なんかやっちゃいました?』みたいなことをしていた。

 でも、あんな初歩的なミスを俺はしない。

 俺は手加減して機械に魔力を注入していくのだが……

 

 

 ボンッ! 

 プシュゥゥ……。

 

 

 機械が爆発して、煙がモクモクと立ち昇る。

 俺は『あれ? なんかやっちゃいました?』なんて言葉がお似合いな初歩的なミスをしない。そう、ミスを……

 

 はい、マジですみません。普通にミスしました。

 てか、これどうしよ……。

 

 壊れた機械をどうするべきか考えていると、後ろから声を掛けられる。

 

「そこのお兄さん。もしかして、魔力測定器が壊れちゃった感じですか?」

 

 俺に声を掛けてきたのは、トレーニングジムを利用していたであろう冒険者? だ。

 年齢は女子大生くらいだと思われる。

 俺は情けなない笑みを浮かべて彼女に答えた。

 

「あはは……。そうみたいです」

「ここは監視カメラがあるので、何か問題があれば職員さんが見に来てくれるので待ってるだけで大丈夫ですよ」

「と、ところで弁償とかは……」

「ないですよ。こういう魔力測定器とかはまだまだ発展途上で、よく故障とかしますので」

「良かった……。つい最近まで無職で今のところ無一文なんで」

 

 10年ぶりに帰ってきた俺は金がない。それを恥ずかしながらも口にしたら、笑顔だった先輩冒険者の顔つきが一気に険しくなった。

 

「お金を稼ぐために無理だけはしないでください。よく金欠な冒険者が安全を軽視して、無理な攻略を行い命を落とすのはそう珍しくありませんので」

 

 先輩冒険者に険しい顔で注意される。

 気の緩みは大敵だな。俺は素直に助言を受け止めた。

 異世界帰りで強いとはいえ、しっかりと安全を意識してダンジョンに潜ろう。

 

「……はい。気を付けます」

「それにしても、雰囲気からして冒険者になったばかりですよね?」

「今日なりました。研修時間まで時間があるので少し暇つぶしを~って感じで測定器を使ったら……、こうです」

「あははは……。それは災難でしたね」

 

 などと話していたら、冒険者協会の職員さんがやってきた。

 

「お怪我はありませんか? 今、片付けちゃいますね~」

 

 あ、ほんとによく故障するんだな。

 やってきた職員さんは慣れた手つきで、壊れた魔力測定器の修理を始めた。

 

「あちゃ~、内部がボロボロですね。これは全とっかえした方が早いか……。いや、この部品は無事そうだし……。あ、すみません。もう別の場所行っても構いませんよ。あとは私の方でなんとかしますので」

 

 というので、俺は故障した魔力測定器の場所から離れようとする。

 そしたら、職員さんが来る前に俺を心配してくれた先輩冒険者が声を掛けてきた。

 

 

「あの~、良かったら少しだけ一緒にトレーニングしませんか?」

 

 

 こ、これはナンパってやつか?

 なんて思いかけるも、たぶんこれはあれだ。

 俺がお金に困っていることもあり、無理な冒険をしそうで心配でちょっとした稽古をつけてくれようとしてくれているだけだな。

 

「お言葉に甘えさせてください。っと、自己紹介がまだでしたね。神宮寺《じんぐうじ》晃《あきら》って言います。今日から冒険者になりました」

 

 握手を求めながら俺はそう言った。

 すると、先輩冒険者は俺が差し出した手をしっかりと握ってくれる。

 

「私は桜庭《さくらば》雅《みやび》って言います。気軽に雅って呼んでくださいね。桜庭って呼ばれるのはちょっと苦手なので……」

「わかりました。じゃあ、雅さんって呼びますね」

「はい。ありがとうございます。ちなみにこう見えて、Bランク冒険者してます」

「Bランク?」

「あ、まだ新米さんでしたね。冒険者には等級が存在していて、上からS~Fランクまであるんですよ」

 

 そう言えばさっきそんな話を聞いた気がする。

 てか、確か冒険者のBランクって……

 

「えっと、Bランクって上位10%くらいですよね?」

「はい。こう見えて、私って意外と強いんです!」

 

 改めて俺は雅さんの方を見た。

 さらさらとしたボブヘアーが似合っていて、優しげな顔つきをしている。

 けれども、どこかまだあどけなさが残っている。

 そんな彼女が、まさかBランク冒険者だったとは本当に驚きだ。

 

「っと、じろじろ見ちゃってすみません」

「いえいえ、若いわりにランクが高いんで自己紹介をすると、いつも顔を二度見されるのには慣れっこですので」

「こういう質問をするのもアレなんですけど、ミヤビさんもお金に困って冒険者を?」

「義務期間中なだけですよ。といっても、Bランクになりましたし、普通に今後も冒険者として活動しようかな~って感じですけど。Bランクからは一気に死亡率が下がって1%以下になりますし」

 

 国の方針で15歳から25歳の間に5年間の冒険者活動が義務づけられた。

 どうやら、雅さんはその期間中らしい。

 

「雅さんの年齢って聞いてもいい感じですか?」

「大学1年生の18歳です! 去年から大学に通いながら冒険者やってます」

 

 普通にすごいな。

 1年足らずで冒険者として上位10%になるなんて。

 

「俺は27歳です。まだ法律が出来てなかったことで、冒険者として活動した経験はない、本当の本当に初心者です」

 

 冒険者活動義務の法律が制定されたのは2年前。

 俺は27歳だけども、義務化される前に対象年齢を過ぎてしまっていることもあり、冒険者活動をしたことがないのは不自然ではないはずだ。

 

 

「では、おしゃべりはこのくらいにしておいて、今日は初心者さんにおすすめなトレーニング方法を私がお教えしますね!」

 

 

 どこか張り切った様子の雅さん。

 そんな彼女に俺はトレーニングの方法を教えてもらうのであった。

 

 

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