1つ、みちるが商店街のくじ引きにて温泉旅行を引き当てる
2つ、獅音への嫉妬に狂う立希が連行される
そして3つ、波乱が予想される温泉旅行が始まった
あれから数日後。
みちるが引き当てた温泉旅行に向かうメンバーを無事選定した勇たちは準備と計画を立ててその日を迎えた。
まず、一行はバスに乗って温泉施設まで向かう事になった。そして千歌の提案により当日は出発の30分前に集合して、待ってる間に各々直前の買い物があれば済ませる用に計画していた。
その目的通りに集まり、準備で足りなかった物などは近くのコンビニや雑貨店で買い足し、今はバス発車まで後15分となったのだった。
しかし、ここで……いや、その15分前から1つの問題が起きていた。
「……遅い」
千歌は珍しく苛立ちを露わにしていた。
「千歌さん? そんなにイライラしなくても……」
「そ、そうですよ! 今颯樹さんが迎えに行ってるところですし……」
「それが問題なんですよ!!!」
勇と優希の宥めにすら苛立ちの声をあげる始末である。
「先田さんですらちゃんと時間通りに来てるというのにあの子と来たら……」
尚、遅刻常習犯であるみちるだが今回は勇と千歌のモーニングコールにより無事起きて時間内に現地に到着している。
「まあ……今ホットドッグ食べながら寝てるけどね……」
勇が視線を向けた先のみちるはベンチに座って朝ごはんのホットドッグを口に咥えたまま夢の世界に入っていた。
「まあ……まさかこんな事になるとはね」
「間に合うと良いんですけど……」
「厳密に言うともう間に合ってないんですけどね」
呆然、心配、怒り、三者三様に言葉を漏らしていた時、視線の先から見慣れた黒い車がこちらへ向かってきた。
「来たか」
車が駐車スペースに収まると運転席側から颯樹、後部座席から希美が降りてきた。
「ごめーん! 遅くなっちゃっt」
「希美」
降りてから真っ先に駆け寄り謝罪をした希美だが、その言葉を即切り捨てて千歌は冷たい声を発した。
「あれほど言いましたよね? この日はバスで行くから絶対に遅刻しないでくださいって」
「え……えっと……ごめんね?」
「『ごめんね?』じゃありませんよ。そもそも迎えに行くって言ったのを断ったのは貴女ですよ? 『もう子供じゃないし自分の力で起きれるもん!』って意気揚々と言い張ったのは誰ですか?」
「……わ、私だよ……?」
「一応念の為に集合の30分前に電話しましたけどその時は何してました?」
「……寝てました」
「起きたのは何時です?」
「8時です……」
「思いっきり出発時間じゃないですか!! ……まさかとは思いますが夜更かししてたんですか?」
「ち、違うよ! ちゃんと22時には布団に入ったよ!!」
「……正直に言ってください」
「入ったのはホントだよ。でも……」
そうして希美は昨日の夜のことを話し始めた。
前日の夜
22:00
「明日も早いし……、そろそろ寝るかな〜。遅れると千歌に怒られるし……」
23:00
「寝れない……。ホットミルク飲んだら寝れるはず……」
23:30
「あれ? モバイルバッテリーの充電してたっけ? ついでに荷物もう1回確認しとこ……」
0:00
「とりあえず明日の予定だけ確認して……。ちょっといいパックしちゃお」
1:00
「……ソシャゲのスタミナ消費だけ」
2:00
「あーん!! 勝てないよーー!?」
↑そのまま対戦ゲーム始めてムキになる
3:00
「嘘!!? 狙ってたカード高騰してる!!? 何で!!?」
↑ゲームに飽きたけど寝れなくてネットサーフィン
4:00
「ZZZ……」
↑寝落ち
7:00
「……むにゃむにゃ」
ジリリリリ………
8:30
「………はい?」
↑起きた
「……と、いうわけです」
「……希美」
「貴女は遠足前の小学生ですか!!!!」
千歌の渾身の怒りがその場に木霊した。
「とりあえず寝れなくても布団で目を瞑っとけばこんなことにはなりませんよね!?」
「だって〜、眠れないのに布団でじっとしてるの落ち着かなくて」
「だから貴女はもう少し落ち着きを……」
「あ、あの……千歌さん……」
「なんですか!?」
「……バス、行っちゃいましたけど」
千歌が希美へのお説教に熱くなっていたこともあってか、その間にバスは出発してしまい。一同はその場で唖然とせざるを得なかった。
「……」
「……千歌、やっちゃったね……」
「も・と・は・と言えば! 貴女のせいですけどね!!!」
その時の希美の発言が火に油を注ぐ形となり、千歌の眉間には更にシワがよった。
「千歌、気持ちはわかるけどストップだ。何時までも怒ってても埒が明かない」
「それに周りの人、すごい視線むけてるよ?」
颯樹がストップに入り、勇が千歌に周りを見るように促す。行き交う人達は「この人達は何をしてるの?」と言わんばかりの視線を向けていたことを知ると千歌も頭を抱え俯いた。
「すみません。少し熱くなりすぎました……」
「まあ希美へのお仕置は旅行が終わった後にして……。今はこの状況を何とかすべきだね」
「そーそー! ……ってお仕置? 今お仕置って言った?」
「そりゃそうでしょ。皆に迷惑をかけてる以上お咎めなしには出来ないし」
「そんなーーー!?」
とりあえず騒ぎ始めた希美を無視して一同は対策をすることになったのだった。
そんなこんなで一同は目的地へと到着。
因みにあの後全員で話し合った結果、颯樹と千歌の運転する車で目的地へと向かうことになった。
「ようやく……」
「着きましたね」
運転席から運転手の2人が降り、他の面々は各自車から荷物を下ろしていた。
「うーん、空気が澄んでておいしーー!」
「そういうのはいいので早くチェックインを済ませますよ」
「えー、雰囲気でないなぁ……」
「元々貴女が遅刻したせいスケジュールがだいぶ押してるんですよ。その上、道路も渋滞気味だったので本来のチェックインから30分遅れてるんです」
千歌に釘を刺された希美は渋々彼女の言う通り荷物を下ろし始めた。
「それにしても……商店街のくじ引きの景品にしてはデカい旅館だな……」
「これ……宿泊費とか大丈夫なのかしら……」
「あー、その辺は今回のプランに全部入ってるから問題ないんだとさ」
「勇……、あなた意外と驚いてないわね」
「んー、誰かさんのお家に何度も呼ばれてたら慣れた」
「……誰かさんって誰よ」
京介と咲恋も目の前にそびえ立つ旅館に圧倒されていたがとりあえず中に入ることに。
そしてフロントに入ると中はライトブラウンを基調とした明るい雰囲気に天井にはシャンデリア、床には赤い記事に金色の刺繍が施されてるカーペットの空間が広がっており、休憩用のソファーやお土産コーナーの売店などほんとにいい所の旅館といった感じだった。
とりあえずまずはチェックインを行う必要があるという事で代表として勇、みちる、千歌の3人がチェックインの為にカウンターに向かっていた頃、他のメンバーは近くのソファーに座って待機していた。
「……」
「どうした優希、落ち着かない様子だけど」
お行儀よく座ってはいるものの、周りを気にしてるのか周囲を見渡してる優希に颯樹が話しかけた。
「いえ、ご好意に甘えられてるのは良いんですが……。この旅行、10人分となると商店街の方が赤字なんじゃないかと思いまして……」
「いや、商店街の会長が密かに貯めてた資産が余りすぎて使い道が無いし、100周年近くのお祭りみたいな感じだから気にせず使ってくれとの事らしい。こんなに出したからと言って本人も生活が苦しくなってる様子も無かったしな」
「会長さん……一体何者なんですか……?」
優希の問いに颯樹も「それは流石に僕にも分からない」と言うしか無かった。
「まあ優希の気持ちも分からなくは無いけど今はそれを気にしても仕方ないじゃない? とりあえず一旦忘れて満喫しなさい。はい、そこでお団子買ってきたからお裾分け」
「あ、ありがとうございます」
それでも優希落ちかないことに気づいた咲恋は優希に団子を1串渡していた。
「……あれ? 颯樹さん?」
そんな光景を見てひとまずは落ち着いていた颯樹だがそんな彼に声をかけた人物がいた。
「やっぱり! 颯樹さんですよね!?」
彼が担当を務めているアイドル《純田まな》であった。
「こんな所でお会いできるなんて、奇遇ですね!」
「……まな、なんでここに」
「あれ? 今日のロケ地ここですよ? 聞いていなかったんですか?」
まなに言われるも、颯樹は今日は非番であったが故に知らされていなかったようだ。
「今日来れないって聞いてたんですけど……、もしかしてロケに参加できるようになったんですか!?」
「あー、いや、今日は……」
「嬉しいです! やっぱり颯樹さんがいてくれた方が心強いですから!」
颯樹が弁明しようにもまなは勘違いをしたまま話を進めてしまった。これを見ていた優希と咲恋もどうすべきか…….と困惑しながら目を見合わせていた。
「善は急げです! 早速スタッフの皆さんの元に行きましょう!」
そのまま颯樹の腕を掴んで連れていこうとしたまな。
しかし……
「コラーーーー!!?」
突如として怒りの大声と共に2人の間に割って入った希美により、まなは颯樹から引き離された。
「な、なんですか貴女!?」
「それはこっちのセリフ!! ちょっと目離した隙に何してるの!?」
希美は颯樹を守るかのようにまなの前に立ち塞がる。しかし、まなも彼女に怪訝な顔を向けていた。
「そ、そもそも貴女は颯樹さんのなんなんですか!?」
「愛川希美。颯樹くんの幼なじみだよ」
「幼なじみ……? 聞いた事ありませんけど!? どういうことですか颯樹さん!?」
「あー、いや……まあ聞かれなかったからな……」
そんな颯樹に対してまなは不満そうな視線を向けた。
「颯樹くん、この子一体何なの!?」
「……純田まな。僕が今担当を務めてるアイドルだよ」
「純田……? どっかで聞いたような……」
「普段はういちゃんと《Sumimi》ってユニットを組んでまーす。よろしく〜」
そんな希美に対してまなは若干棒読みめで自己紹介をした。
「……って、そんなことはどうでも良くて! まなちゃんだっけ? 颯樹くんは今日から3日は完全オフなの! だからお仕事の話はしないでくれるかな?」
「オフ……? そんなの聞いてませんよ!!?」
まなに詰め寄られた颯樹だが、彼は内心で「あのスタッフ達全く報連相してないな……」と天を仰いでいたのだった。
「とにかく! 私は聞いてませーん! だからこっちで納得のいく説明をしてください!」
「だーかーら! 話聞いてた!? 颯樹くんは今オフなの!!」
そして彼の右腕をまな、左腕を希美がガッチリとホールドし、まるで奪い合っているかのような構図が出来上がってしまった。
「颯樹さんは私の《専属》マネージャーですよね? だったら私がお仕事してる時は一緒に来てくれるのが筋なんじゃないですか?」
まなの表情はニコニコしているものの、声がまったく笑っていなかった。
「理由はどうあれ今日の颯樹くんは完全プライベートモードなんだよね〜? 人の休日に無理矢理お仕事組み込もうするのはどうなのかな〜?」
「私は今颯樹さんとお話してるんですよ? その腕を話して貰えませんか?」
「うーん、まなちゃんは人の話を聞くってことを知らないのかな? 今颯樹くんはプライベートなの。だから、颯樹くんのことに関しては《幼なじみ》である私を挟んで貰わなきゃね?」
一触即発。その言葉を体現したかのように2人は颯樹を挟んで笑顔で火花を散らしていた。
「……なんか、とんでもない事になってるわね」
「ですね……」
「……兎に角、一刻も早く何とかして欲しいのだけどね」
そんな光景を見ながら呆気にとられていた咲恋と優希。そして、そこに《衛宮 晴也》という青年が現れたのだが……
「晴也、ここで何してるのよ」
「さっき希美さんに急に
「なるほど」
「そろそろ溶けそうだから早く終わらせて欲しいんだけどねぇ」
「……それは叶わぬ願いってモノね」
晴也の呟きに咲恋が返す。
「こういう恋愛事情は縺れれば縺れる程厄介なのよ」
「ですね……。颯樹さん周りは特にって感じですから……」
「そうね。ま、これもなんかの縁って事であの人は1回痛い目見ても良いんじゃないかしら?」
「ちょっと無常かもしれませんが……、一理ありますね」
「……随分と辛辣だけど2人も颯樹に」
「「あ、それは無いです(無いわね)」」
晴也の言葉に食い気味で否定する優希と咲恋。その圧に晴也は後退りしそうになっていた。
一方で颯樹を挟み睨み合ってる希美とまな。その様子はまさにマングースとヘビといった気迫だった。
「(やばいなコレ)」
挟まれてる颯樹も色んな意味で命の危険を感じていた。
少しでも口を開けばこの場で即爆発しそうな張り詰めた雰囲気。
はたしてどうなる……。
こんにちは。かなです。
今回も読んでくださりありがとうございました。
こんな感じで好き勝手やっていくので今後ともついてこれるやつは、ついてこい!
P.S.
本日は《ヴァンガード DIVINEZ》の完結編である《運命星戦編》の放送開始日です。劇場先行上映は見たんですがやっぱりテレビでも見たいということで毎週リアタイしていこうと思います。
そして本日は私の推しのライブ当日ということでね(一応名前出すと何かしらに引っかかりそうで怖いので気になる人は各自調べてください)。現地が遠すぎるのとお金ないので、私は配信から応援いたします。
ちなみにこれで一発でわかった方々。おめでとうございます、同士です。
それでは次回まで夢で会いましょう。