【登場人物紹介】
■ウラガン・ガルド
担当:船長
武器:大太刀・荒凪
能力:自然系アラアラの実
本作の主人公。前世で働きすぎて死んだ転生者。今世では自分の人生を大切にしようと思い、育ててくれた父への恩返しと島の平和のために鍛え始めた。ここまでは大変立派な話である。問題は、その結果として海賊船を掴んで投げる生き物が完成したこと。
十八歳で身長四メートル五十六センチ。大きく育ってほしいという親の願いにも限度がある。
自然系アラアラの実の能力者で、暴風や雷雨を操る。食べた当初は小さな竜巻を出して「ちょっとしょっぱくね?」と思っていたが、しょっぱかったのは能力ではなく本人の理解力。現在は本人がちょっと張り切るだけで、周辺海域の天気予報が全部やり直しになる。
基本的には仲間思いの気のいい兄ちゃん。ただし、思いついたことを口に出す速度に、周囲への配慮が追いつかない。身体能力はあれほど高いのに、なぜ発言だけ制御できないのか。
なお、雷を発生させるのは船長だが、船上で一番よく雷を落とされているのも船長である。
■ワカバ
担当:ガルドの養父・島の自警団長
元の肩書:海軍大将「白羊」
戦闘:守りの剣
ガルドを育てた父親。その正体は、元海軍大将「白羊」のワカバ。
息子が長年「うちの親父、なんか強くね?」と思っていた件について、あまりにも明快な答えが出てしまった。なんか強いどころの話ではない。島の自警団に置いていい人材の上限を大幅に超えている。
天竜人の振る舞いを目の当たりにし、海軍の掲げる正義と自らの信念との間で苦悩した末、海軍を去った。その決断に賛同した海兵たちと共に暮らしを築き、今は島の人々を守っている。本人は肩書を下ろしたつもりでも、強さまで返却したわけではなかった。
四メートル級の身体に筋肉と渋さを詰め込んだ、守りの剣の達人。規格外に育ったガルドとの勝負でも、最後には父親の威厳を守り切る。守りの剣豪なので、その辺りも守備範囲らしい。
ガルドの強さに対する自己評価を狂わせた最大の原因でもある。「親父に勝てないから、まだまだ」という息子の謙虚さは立派だが、比較対象が元大将。初めての山登りで頂上に置かれていたのが世界最高峰だった。
世界の理不尽を知ってなお、人を守ることを選んだ男。そんな父の背中を見て育った息子は、立派に人を守れるようになった。ついでに船も投げるようになった。そこまで教えたかどうかは、別途確認が必要。
■ダグ・ハーケン
担当:副船長・戦闘指揮
武器:巨大な船錨と極太の鎖
島にいた頃からガルドの懐刀を自任していた男。本人の中では揺るぎない忠義が育っていたが、ガルドの認識は「いつも一緒にいる頼れるダグ」。片方だけ任命式を済ませている。
巨大な錨と極太の鎖を振り回す豪腕で、個人の戦闘能力も非常に高い。さらに、戦場では敵味方の配置、動き、退路、攻め時を見極め、仲間を的確に動かす。乱戦が複雑になるほど、その指揮能力が光る。
ただし、賢いのは基本的に戦っている時だけ。
戦場では三手先まで読めるのに、普段は目の前の話を途中で見失う。敵の包囲は見抜くが、船長のしょうもない思いつきには普通に引っかかる。頭脳が戦闘開始の合図と一緒に出勤する仕組みになっているらしい。
ガルドの無茶を止める立場に見えて、話を聞いているうちに「それは面白そうだな」と隣に立っていることがある。副船長が船長側に回った瞬間、ミラの仕事が二倍になる。
戦闘中は頼れる指揮官。平時はでっかい錨を持ったもう一人の問題児。敵からすると恐ろしく、仲間からすると惜しい男。
■ミラ・ヴェイン
担当:航海士・船長たちへの説教
武器:風見鶏を思わせる槍
風と海を読み、一味を目的地へ導く航海士。そして、船長とその周辺に雷を落とす役。
ガルドの雷が自然現象なら、こちらの雷は生活指導。前者には武装色で耐えようとする者がいても、後者の前ではだいたい全員が姿勢を正す。
赤い髪と青緑のコートが目印。航路を考え、天候を読み、船長の思いつきを聞き、副船長がなぜか賛同しているのを見て、まとめて叱る。航海士として乗ったはずなのに、いつの間にか引率まで任されている。
「嵐を操れる船長がいるなら航海は楽だろう」と思うかもしれないが、その船長が一番の不確定要素。予測するべきものが天候だけなら、もう少し仕事は簡単だった。
面倒を見るから頼られ、頼られるから目を離せず、目を離せないから新たな馬鹿を目撃する。非常によろしくない循環が成立している。
一味の進路を修正するのが仕事。船の進路も、馬鹿どもの行動も、どちらも担当している。
■ゴルド・ベル
担当:船大工・鍛冶
武器:巨大な鍛冶槌
船と武器を作り、直し、整える巨漢の職人。大きな槌を持っているが、基本的には物作りのための道具である。敵を殴る時は、少々荒い加工が始まる。
一味の装備を任される腕利きだが、使用者側の要求が厳しい。巨大な錨を振り回す男、巨大な斧を持った双子、そして船を握る船長。普通の耐久試験に合格したくらいでは話にならない。
特に「ガルドが普通に使えるように」という注文は難しい。その普通を決めたのは誰だ。連れてこい。本人だった。話が進まない。
職人として丈夫な物を作るほど、仲間が安心して無茶をする。無茶に耐えるよう改良すると、さらに安心される。技術の進歩と破損の規模が競争している。
頼れる作り手であり、修理担当であり、一味の暴れた痕跡を最も身近に見ている男。戦闘が終わって皆が勝利を喜ぶ頃、彼だけは甲板を見て次の仕事を確認している。
■ネネ・クイル
担当:船医
武器:注射器を思わせる槍
黒いボブヘアと白衣が目印の船医。一味の命と健康を預かる重要人物だが、患者側の協力体制には大いに問題がある。
「まだ動く」
「血は止まった」
「ガルドなら平気」
どれも診断ではない。最後に至っては別人の話である。
船長の身体を基準にすると、ほとんどの人間が寝たきり判定になりかねないため、そこはきっちり分けて考えなければならない。一味の皆さんにも、そろそろ同じ理解を持っていただきたいところ。
注射器を思わせる槍を携えており、医者だと分かってから見ても少し落ち着かない。治療道具に似た武器を持つことで、診察への心理的な敷居を自ら上げている気もする。
傷ついた仲間を治し、また旅へ送り出す一味の命綱。その直後に同じような無茶をされても仕事を投げない辺り、身体より先に精神の頑丈さを褒めるべきかもしれない。
■バオ・ケトル
担当:料理人
武器:二振りの大包丁
大柄な身体と人懐っこい笑顔を持つ料理人。一味の胃袋を支える存在だが、その胃袋の総容量がなかなか笑えない。
船長がでかい。仲間もでかい。よく動く。よく食う。料理人として食べてもらえる喜びはあるだろうが、喜びだけで食材は増えない。ゼンとは食費を通じて深く関わることになる。
二振りの大包丁を携え、戦いにも参加する。本人としては料理人らしい得物かもしれないが、敵から見ると完全に大型の刃物。食材ではないと主張したところで、襲ってきた事実は変わらない。
嵐を起こせる船長でも、晩飯は作ってもらう側。海を揺るがす力も、空腹時には厨房へ向かう。そう考えると、船内におけるバオの影響力はかなり大きい。
人のよさそうな笑顔で、とんでもない量の飯を用意する男。船の食卓が賑やかなのは結構なことだが、「おかわり」の声が一斉に飛ぶと、たぶん厨房から見える景色が変わる。
■キット・ノクト
担当:狙撃手
武器:長大な銃
眠たげな目つきと黒い外套が特徴の狙撃手。一味の中では比較的静かな見た目をしている。周囲が全体的に騒がしすぎるので、ただ黙っているだけで知的な雰囲気まで付いてくる。お得な立ち位置。
長大な銃を使い、遠距離から仲間を援護する。目立つ前衛が多いため、敵の注意がそちらへ向いている間に仕事をしやすい。ただし、前衛が大きすぎて敵そのものが見えなくなる可能性もある。
船長は特に大きい。副船長の錨も大きい。仲間の背中が頼もしいという言葉にも、射線を確保できる限度がある。
眠そうな顔をしているからといって、本当に寝ていると思ってはいけない。逆に、起きていると断言する前には一度確認したくなる。本人の実力とは別に、目つきが少し損をしている。
敵には狙いを定め、味方には場所を空けてほしいと思う。狙撃手にも狙撃手の苦労がある。
■ガロ・マンタ
担当:操舵手
種族:マンタの魚人
武器:巨大な櫂
青い巨体と横に張り出した頭部が特徴の魚人。存在感があり、見つけやすく、覚えやすい。狭い場所だけは、存在感を少し控えめにできると助かる。
一味の船を操る操舵手。ミラの指示を受けて舵を取り、荒れた海でも進む道を支える。その荒れた海を船長本人が作っている場合もあるので、職場環境については少々複雑。
巨大な櫂を武器として扱うが、この一味には錨や鍛冶槌や包丁で戦う者もいる。船用品を持っているだけなのか、臨戦態勢なのか、外部の人間には判別しづらい。
櫂で殴る姿は豪快だが、本来の担当は船を無事に運ぶこと。敵を吹き飛ばすより、味方を落とさないようにする方が気を遣う場面もありそうである。
魚人だからといって、海に落ちた物を全部拾う係ではない。特に船長は重い。助けるにしても、落ちる前に少しは踏みとどまってほしい。
■ゼン・レジャー
担当:会計・物資調達
武器:鉄製算盤型トンファー
眼鏡と緑のベストが目印の会計役。一味における金と物資の管理を担う。「何とかなる」と「金がある」は別の話だと理解している、非常に貴重な人材。
食料、弾薬、修理資材。どれも冒険に必要だが、必要だからといって無料にはならない。船長が海をどうにかできても、支払いまで風で吹き飛ばすわけにはいかないのである。
武器は鉄製の算盤型トンファー。勘定する道具をわざわざ殴れるようにした辺り、この男にも一味らしいところはある。数字で解決できない相手への備えが、少々直接的。
ダグには戦場の人数配置を任せられるが、普段の買い物まで同じ感覚で任せるのは危険。得意分野が明確な仲間に囲まれ、不得意分野の後始末が集まりやすい立場でもある。
誰かが豪快に何かを壊すたび、その光景を金額に変換しなければならない。皆が歓声を上げる横で黙っていても、感動していないとは限らない。計算が終わっていないだけかもしれない。
■ボンゴ・リード
担当:音楽家・鼓手
武器:大太鼓と二本の撥
華やかな衣装に豪快な笑顔、大太鼓まで抱えた音楽家。見た目も音量も自己紹介に積極的。遠くにいても存在が伝わるので、仲間としては探しやすい。静かにしてほしい時も探しやすい。
宴では場を盛り上げ、戦いでは仲間を鼓舞する。音楽の力で人を動かす担当だが、この一味は元々よく動く。必要以上に勢いづけてしまった場合の責任の所在は、まだ整理されていない。
仲間が騒ぐ。太鼓が鳴る。さらに仲間が騒ぐ。さらに太鼓が鳴る。ミラが来る。
一応、途中で止める機会はあったはずである。
大太鼓を抱えて戦場へ入っていくため、本人にも相応の度胸がある。演奏環境に文句を言うには、同行している船長が悪すぎる。暴風、雷鳴、砲声に負けず音を響かせようとすると、必然的に賑やかになる。
宴にいてくれると嬉しい男。翌朝、まだ眠りたい時については、その限りではない。
■トーマ・ボルト
担当:斬り込み役
武器:大型の斧
双子の斬り込み役、その赤い方。赤い髪と赤い衣装が目印。名前を覚える前でも「あの赤い方」で通じてしまうが、本人にはちゃんとトーマという名前がある。
大型の斧を担いで敵陣へ踏み込み、一味の突破口を開く。「道がないなら作ればいい」を実行できる男。ただし、通路を作っているのか建物を壊しているのかは、見る側の立場による。
トーラと並ぶと、敵にとっての困り事が二人分になる。一人を止めようとしたら、もう一人がいる。双子なので当然だが、実際に斧を持って来られると当然で済ませたくなくなる。
よく似た顔でよく似た武器を持っているため、初対面には親切とは言い難い。色を変えてくれているところだけはありがたい。夜間や砂煙の中でも見分けてくれという要求には、もう少し配慮が欲しい。
なお、赤いからという理由で先に名前を覚えてもらえるとは限らない。青い方とまとめて「双子」で処理される日もある。
■トーラ・ボルト
担当:斬り込み役
武器:大型の斧
双子の斬り込み役、その青い方。トーマとよく似た姿で前線に立つ。こちらも大型の斧を携えており、兄弟まとめて刃物の主張が強い。
トーマと共に敵へ迫り、一味の近接戦を担う。二人が揃った時の迫力は十分。ただし、敵が「さっき倒したはずでは」と混乱する以前に、そもそも一人目を倒せるかという問題がある。
赤い方がトーマで、青い方がトーラ。名前の最後まで似ているため、覚えようとしている側への追い打ちになっている。もう少し違う音でもよかったのではないか。
青いから冷静そう、と期待される可能性があるが、色だけで一味の常識人枠を押しつけるのはやめていただきたい。本人も大きな斧を担いで敵陣へ入っていく側である。
二人で一組として紹介されがちだが、食事も寝床も一人分ずつ必要。当然、食費も二人分。ゼンはその辺りを決してまとめて数えてくれない。
■イヴォ・クレイン
担当:交渉・外交
武器:仕込み杖とワイヤー
金髪をまとめ、クリーム色の上着を着こなす交渉役。一味の中では、初対面の相手が比較的安心して話しかけられそうな格好をしている。隣に巨大な錨を持った男がいると、その利点がさらに際立つ。
話し合い、取り引き、外部との関係作りを担当。力で勝つことと、その後も付き合えることは別であり、一味の冒険を長く続けるためには欠かせない存在。
ただし、本人が丁寧に話をまとめている横で、船長が余計なことを言う可能性がある。副船長がそれに乗る可能性もある。遠くで太鼓が鳴る可能性まである。交渉相手だけ見ていればいい仕事ではなかった。
仕込み杖とワイヤーを扱うため、装いが上品でも無防備ではない。一味の中では得物が控えめに見えるが、比較対象が錨や巨大な櫂なので、あまり参考にならない。
相手から「あの船長で大丈夫なのですか」と聞かれた時、どこまで正直に答え、どこから穏便にまとめるか。その腕前こそが外交担当の真価である。
なお、説明している途中で船長が新しい問題を起こした場合は、いったんミラに引き継ぎたい。