「助けていただき、ありがとうございました」
不良生徒達を追っ払うと、栗色の髪をサイドにまとめたトリニティ生は俺たちに頭を下げ、礼を述べる。
「なにかお礼を...あ、私、トリニティ総合学園2年、阿慈谷ヒフミって言います!!よろしくお願いします!!」
「...アビドス高校3年、黄泉之ライセだ。」
「同じく3年、小鳥遊ホシノだよ〜」
「2年、十六夜ノノミです♢」
「砂狼シロコ。よろしく」
「1年、黒見セリカよ」
「奥空アヤネです」
「私はシャーレの先生だよ。よろしくねヒフミ」
「...えっと、ヒフミさん..でいいか?俺たちも偶然通りかかって、目に付いたから助けただけだ。気にしないでくれ」
俺たちがそれぞれ自己紹介を終え俺がそう言ってヒフミさんに頭をあげさせる。
助けたとはいえ、すぐに感謝の言葉や礼を尽くすという判断に繋がる当たり、とてもしっかりしている子に思うが...何故こんな子がこんな場所に...?
「それで、ヒフミさんはどうしてこんなところにいらっしゃったんですか?」
「なにか探してるの〜?もしかして、違法な武器〜?」
「ん、製造終了した化学薬品とか」
「いえ、私はペロロ様をさがしていて...」
「ペロロ様?」
首を傾げるセリカに対し、俺は少し前のノノミとの会話を思い出す。
「前にノノミが言ってたモモフレンズ?だがのキャラクターだったか」
振り向きながら問いかけるとうれしそうに大きく頷き、ノノミがそうです!!と返事を返してくる。
それに呼応するようにヒフミさんがグイッと距離を詰めてくる
「知ってるんですか!!?」
「い、いや。俺はあまり詳しくないんだ。前にノノミに聞いたから少し調べた程度で...」
「それでも知ってるんですよね!?私、周りにモモフレンズを知ってる人が少なくて..!!!お2人はどの方が好きなんですか!?私は断っ然ペロロ様で...!!このおとぼけな表情とかがとっても可愛くて...!!あ、ヒフミさんなんてさん付けしないで構いませんよ!!同士とわかった以上私たちはもうお友達も同然!!そんな同士の方からの敬称など不要です!!」
「ちょ、わかった!!わかったから落ち着いて――」
「分かりますよヒフミさん!!私もモモフレンズ大好きです!!特に――」
「あー!!分かります!!あの表情とか最高ですよねっ!!!そう、それに――」
巻き込まれる形でモモフレンズトークに混ざってしまったが、ノノミに勧められてしばらくはモモフレンズのグッズやら作品やらを見てたせいか意外と会話できてしまったのも災いしかなりの時間3人でモモフレンズ談議に花を咲かせる結果になってしまった。
...意外とこういうのも悪くないと思ってしまった俺がいたのは内緒だ。
「す、すみません私ったらつい話し込んでしまって...!!」
「いえいえ、とっても楽しかったです!!♤」
「あぁ、気にしないで大丈夫だ。どの道この後どうするか悩んでたところだしな。」
「...そういえば、みなさんはこんな所で一体何を...?」
「あ〜...話すと長くなるんだが...」
俺はヒフミからの質問に答えるため、先日のセリカ誘拐事件及び現在のアビドスの状況について話した。
すると、むむむ...とヒフミは唸るようにして頭を抱え始めた。
「...?どうかした?」
「いえ...おかしいですよ、それ。」
「おかしい?」
セリカが首を傾げると、ヒフミは大きく頷いてブラックマーケットについて説明を始める。
「はい。ブラックマーケットでは、どの企業もわざわざそこまでルートや契約を隠しません。違法とされているブラックマーケットでのそういった行為自体がアウトになる以上、そこを隠しても意味がないからです。」
「まぁ確かに...?」
ヒフミの意見に先生おも首を傾げる中、俺はヒフミの意見を聞いて自分の中の意見をまとめていた。
たしかに、そこは俺も違和感を感じていた。
とはいえ、ヘルメット団や便利屋のような誰でも依頼できそうな連中に依頼を出す以上、金はあってもそこまで大きな会社が動いているとは思ってなかったが...随分と話がきな臭くなってきやがった。
「話を聞く限り、既にかなりの聞き込みや調査を行っているのに見つからないというのはいささか不自然です。」
「...同意見だ。正直、これ以上は聞き込みも無駄だと思ってる。だからそろそろ場所を広げて...ん?...ヒフミ、あれなんだ?」
話をまとめようとしたとき、俺はふと視界の端に写り込んだ車に違和感を覚えヒフミに質問を投げかける。
黒いバンに、数台のバイクが護衛のように四方を囲んでいるその車にはどこか見覚えがありつい聞いてしまったのだが...
「あ、あれはマーケットガードです!!」
「っ...!?全員そこの物陰に入れ!!」
ヒフミの声を聞いて、俺は咄嗟に対策委員会へ指示を飛ばす。
驚いたように一瞬みな固まったがすぐに動き出し、飛び込むようにして近くの路地裏に全員で隠れることに成功した。
「...ライセ、なんなのさあれ。」
「マーケットガード。いわゆるここの警察だ。厄介な連中だから、目をつけられたくはない。」
「そっちじゃないよ。最初気にしてたのあの車の方でしょ。あれがなんだってのさ」
「...あれ、今日私たちの学校に来た現金輸送車。」
ホシノの質問に答えようと意見を整理していると、シロコがボソリと、しかし皆に聞こえるようにはっきりと声に出す。
その話に、俺もようやく違和感の点と点が結びついた。
「...道理で見覚えがあるわけだ。...ブラックマーケットにいるような車をどっかで見たなんておかしいと思ったが...カイザーローンの車だったわけか...」
ギリッと、歯軋りしながら怒りを押さえ込む。
俺がここで飛び出したら、マーケットガードやらあの現金輸送車はぶっ壊せても後輩たちは、ホシノは誰が守る。
強く握りしめた右腕から、アーマーの軋む音が聞こえる。
その音に集中し、ゆっくり深呼吸をすると少しずつ気分が落ち着いてくる。
...大丈夫...大丈夫。ステイクール...だったか?とにかく落ち着け。
今はあの現金輸送車がどういう経緯でここにいるのかを調べるんだ。
俺が冷静になり振り返ると、セリカ達はなにやら揉めていた。
話を聞いてみれば、自分たちの集めた金が悪事に利用された可能性があることが許せない派と、わかるけど一旦落ち着け派で言い争いが起こっているみたいだ。
「全員落ち着け。気持ちはわかるが、まだそうと決まったわけじゃない。まずはあの車の経路や金の行方を確認しよう。もしかしたら俺達の集めた金は、別の場所に預けられてからこっちに別の金を運んでる可能性もある。」
「そうですね...」
「...ごめんなさい。ちょっと冷静じゃなかったわ..」
俺が皆を宥めると、1番冷静じゃなかったセリカと言い争いになっていたノノミのふたりは頭が冷えたのか、バツが悪そうに頭を下げてくる。
「落ち着いたならいいさ。俺も少し怒りに飲まれそうだったしな。...さて、アヤネ。悪いがあの現金輸送車のルートや取引の内容はわかるか?」
そんなふたりの頭に手を置き、褒める時のように頭を撫でる。
そうして2人がいつも通りに戻ったのを確認し、アビドス高校に残るアヤネに通信で現金輸送車のその後を調べてもらった...が。
「ダメですね。現金輸送車のルートは多少終えますが、カメラが少ないアビドスであることも災いして取引した場所や私たちのお金の行方までは分かりません...さらに、情報の暗号化が凄まじいので銀行のサーバーへのハッキングは、遠隔ではさすがに不可能です」
「...そうか。ありがとう。こっちでもなにか別の手を考えてみる。」
やっぱり、銀行なだけあってそこら辺は徹底してるか...ハッキングが不可能なら、最悪ブラックマーケットの外であの現金輸送車が出てくるのをまって襲撃って手も...いや、アビドスのメンバーであることが割れたら借金が嵩む可能性もある。迂闊なことは....
「すみません、お役に立てず...」
俺が思考を巡らせていると、申し訳なさそうに顔を俯かせるアヤネが俺たちに頭を下げてくる。
...まったくうちの後輩たちは、優秀なのに変なとこばっかホシノや俺に似やがって...困った後輩たちだ。
俺は内心の呆れや微笑ましさを出さないように、できるだけ笑顔を作る。
そしてホログラムでその場にいるアヤネに対して真っ直ぐに今の気持ちを伝える。
「なに言ってんだ。ルートが分かっただけ大収穫だ。最悪、そのルート上から導ける場所全部に聞き込みすりゃいい。そこのルートが絞れただけ万々歳だ。な?ホシノ」
「ルート上の全てに聞き込みってのは現実的じゃないし、おじさんみたいな年寄りには辛いものがあるけど...そうだね。アヤネちゃんはよくやってくれたよ〜。おかげで、もしライセの最終案が可決された時は楽できるよ〜ありがとうね、アヤネちゃん」
俺の返答に合わせるようにホシノもアヤネを褒め、感謝を述べる。
それに嬉しそうに、そして少し照れくさそうに返事をするアヤネは見ていて微笑ましいことこの上ないが...さて。これからどうしてモノか...
「...あの、集金記録はどうでしょうか...?現金輸送車には、現金を受け取り、受け渡しした際に記録をする集金記録があると聞いたことがあります。それを入手できれば...」
「...不可能じゃない...と、思う。だが、現金輸送車は今銀行に金を預けただろ?つまり、集金記録は既にあの闇銀行の中にある。さすがにそれを見せてくれっていって素直に見せるほど、警備はザルじゃないはずだ。それは仮にやるとしても来月の集金まで待たざるを得ない。」
ヒフミの案に対し、俺が反対意見を述べる。
正直、最も現実的な案ではある。
だが、先程も言ったように集金記録は既に厳重な闇銀行の中。
安全なルートで手に入れるのは至難だろう。
「..うへ、もう色々考えるのおじさん疲れちゃったよ〜。...ねぇ相棒。色々考えるのもいいけどさ。ここはシロコちゃんの意見に乗っからない?」
「シロコの案...ってお前まさか...」
「あれですね!!」
「あれって...まさか!?あれ!?本当にやるつもり!?」
「え、え...?」
ホシノの案に納得した俺たちに対し、ヒフミは終始理解できないように焦ってキョロキョロと俺たちの顔を覗き込んでいる。
...まぁ、シロコはここに来てから迂闊なことは行ってないからな...とはいえ、シロコの案は...
...だが、もう有効作がないのも事実...ここは、やるだけやるしかないか...
「...やるにしても、先生の許可ありきだ。」
「うへ、だってさ先生〜。どうする〜?」
「...よし、わかった。やろう!!全責任は私が追う!!」
「...ん、それじゃあ...今から、銀行を襲う」
「え...えぇ!?!??」