気づいたら投稿時間になってた...
遅れましたが投稿しました。
楽しんで貰えると嬉しいです
「お、覚えてろよ〜!!」
ヘルメット団アジトにて。
蜘蛛の子を散らすように、アジトに潜んでいたヘルメット団は残らず退散して行った。
結論からいうと、強襲作戦は見事に成功し、ここいらでいちばん大きかったらしいヘルメット団のアジトは壊滅。
逆にこちらは残された多くの弾薬と、売ればお金になりそうな銃器やしばらくは困らなそうな保存のきく食料などが手に入り、大収穫となった。
「うへ〜、何とか上手くいったね〜」
「あぁ。奴ら、こっちが攻めてくるとは思ってなかったのか罠の類いが一切なかったからな。攻め込むのは楽なもんだ」
「ん、それに狭い建物内だったおかげで味方同士で潰しあってくれた。」
「先生の的確な指示も助かりました!!♣︎」
「いや〜、私は何も...」
「謙遜すんなよ先生。事実いつもより敵の察知が素早いおかげで被弾も少ねぇ。助かった」
俺たちが戦場での話をしていると、少し離れたところにいるセリカと目が合った。
「...おう、お疲れさんセリカ。」
「...お疲れ、ライセ先輩」
隅の方からこちらに視線だけを飛ばすセリカに数歩近づき、声をかけるもいつもの元気な声はなく、どこか沈んだイラついたような声が帰ってくる。
「...どーしたよ。いつもなら一番喜んでるやつが、こんな端っこで」
「別に...ちょっと疲れただけよ」
理由を問えば、面倒くさそうに視線を逸らし、別の方へ目線をやる。
だが、俺は直前までセリカが先生を睨むように見ていたことに気がついていた。
「...先生が、どうかしたか?」
「...別に」
「なんもなかったら、んな顔しないだろ?」
逃げるように会話を打ち切るセリカに、決して責めているように聞こえない様、務めて優しく問いかける。
「何も無いなら、一番この作戦の成功を喜んでるのはお前のはずだ。」
「.........」
「...話しずらいなら、これ以上は聞かないが...何かあるなら、いつでも言ってくれ。モモトークでも、口頭でも」
「...うん」
少し気落ちした様子のセリカのことをそれとなくノノミに伝えると、俺は物資を運ぶために使えそうなものを探すため、シロコとホシノとともに1階に降りて行く。
あのままはまずいだろうということで、先生にも念の為着いてきてもらったが、結局あっさり荷車が見つかり俺たちのヘルメット団アジト襲撃は、こうして特に何事もなく終了した。
***
「それでは、定例会議を初めます」
それから学校に戻り、俺たち対策委員会は先生も含め、今後の方針等について話し合いの場を設けることにした。
...のだが...
「私は...認めないっ!!」
昨日の件に続き、セリカの疑心暗鬼は続いていた様で、会議の最中に先生から直々にシャーレもアビドスの問題解決に協力するという旨の会話が始まった後すぐ、セリカが今まで自分たちだけで頑張ってきたのにぽっと出の大人に頼るなんて嫌だと揉めてしまい、その日はそこで解散という流れになってしまった。
そうして、俺はいつも通り屋上で昼寝するホシノのそばで景色を眺めていた。
あんな事があったのにのんびり寝てるってのは頼もしいのか危機感がねぇのか...
とは少し思うが、そのマイペースさに、今は救われていた。
そんな時だった。
「はぁ...」
ガチャリ、と屋上の扉が開くと同時に、ため息を着きながら先生が入ってくるのを見かけ、咄嗟に体を隠す。
「.....」
何かするのかと物陰から見張っているも、ただ悲しげにぼんやりアビドスの街並みを眺めているだけの先生は何処か哀愁が漂っていた。
初めて会ってからまだ数日も経っていないが、俺たちの前では見せないどこか丸まった背中に、思わず俺は声をかけた。
「...こんなところで、何してんだ先生」
「うわっ!?」
思わず声をかけるとまるで暗闇で突然方を叩かれたような反応をする先生。
失礼だな。俺は怪異かっての。
「うわって...随分ご挨拶だな。声掛けちゃ不味かったか?」
「ライセ...いや、まさか居るとは思わなくて...も、もしかしてずっと見てた!?」
「はぁ...ってため息着きながらここに来て、寂しそ〜に景色見てたことについてか?」
「うっ...全部見てたんだね...」
俺が冗談交じりにそういうと、バツが悪そうな顔をして苦笑いを浮かべる。
それは、ここ数日で一番好感が持てる表情だった。
「いやぁ...情けないところを見せちゃったね。」
「なぁに言ってんだ。先生の情けねぇ所なら初日に遭難しかけの死にかけ状態でもう見てる」
「うっ...」
「...セリカに言われたことが効いたか?」
「...ライセはよく見てるね...うん。あそこまでストレートに言われたら、少しね。」
「...もしかして、あの後セリカのこと追っかけて行ったけどなんか言われたのか?」
「いやぁ...それが...」
先生から話を聞くと、何とか追いついては先回りして話題を振ってみたりしたらしいのだが...
『や、やぁセリカ!!今帰り?』
『.....』
『やぁセリカ、ちょっとカフェにでも言って話さない?』
『嫌』
『やぁセリカ!!ちょっと話を...』
『しつこいわよストーカー!!!』
「....てな感じに怒られてね...」
「そりゃ、セリカじゃなくても怒るだろ...」
聞けば、なんだか頑張ったようだが逆にセリカの怒りを逆撫でしただけのようだ。
「しゃーねぇなぁ...セリカは基本夜にしかモモトークも帰ってこねぇからな。今夜聞ける範囲で聞いといてやるよ。だからこれ以上下手な事はやめときな」
「うぅ...」
ちょっと言いすぎたか?
なんかさっきから先生の方からうぅ...だのうっ...だのダメージでも受けてんのかって声しかしねぇ。
といっても、まだ先生になりたてなのかこの人の生徒に対する当たり方?接し方?にはなんとも言えないところがあるのは事実だ。
ここは3年生としても、少しは助け舟を出してやるべきだろう。
「少し、話題は変わるんだけど...いくつか質問してもいいかな?」
そんなことを考えていると、先生は表情を変え、俺に語りかけてくる。
真剣な表情に、俺も少しだけ背筋を伸ばす。
「...いきなりだな。どうした?先生」
「...アビドス高校に来て直ぐに、ヘルメット団の襲撃があった時に気になったことがあったんだ。」
「....」
「彼女たちは、君を『死に損ない』と呼んだ。アビドス高校の生徒たちじゃなくて、君個人を。それはなんでなのか...聞いてもいいかな」
先生からの思わぬ質問に、俺は思わず肩を竦めると、咄嗟にすぐ動ける姿勢を取ってしまう。
...だが、真っ直ぐな先生の目を見て1つため息をつき呼吸を整え体制を戻すと、ゆっくりと口を開いた。
「...俺が周りをよく見てるって発言。そっくりそのまま返させてもらうぜ、先生。...でも、そいつはまだ話すには早いな。俺と先生は、それを話せるほどまだ親しくねぇ。...俺の返答は、気に食わねぇかい」
軽口を交えながらとはいえ、明確な拒絶。
アビドスに来るような大人なら、こんな回答には鉛玉が飛んでくることもしばしばある。
だから、俺は少し緊張しながらも答えを待つ。
「...いや。十分だよ。だって、もっと親しくなれば教えてくれるんだろう?」
「...ぷっ...ははは!あぁ。そのうちな。」
...だが、身構えていた俺とは裏腹に、あまりにあっさりとした回答が帰ってきて俺は思わず吹き出した。
「は〜...久々に笑った。やっぱ、アビドスに来るだけあってちょっと狂ってんな。先生」
「そうかな?」
「少なくとも俺なら、廃校間近の荒廃した砂漠地帯なんか初業務で赴くのはごめんだね」
「あはは...まぁ、たしかにそう言われたら私も大概おかしいかもね...」
久々に笑わされたお返しに軽口を叩くも、先生も軽い感じに返してくれる。
今まで同性の友人や近しい人は居なかったので、なんだかこんな空気が新鮮だった。
「...それで?いくつかって言ってたあたり、それだけじゃないんだろ。質問」
「うん。...と言っても、さっきの質問に比べたらそこまで重たい質問でもないけどね。」
「今ならそれなりにゃ答えるぜ。気分もいいしな」
「それなら...ヘルメット団との戦いの時、砂煙の中で何してたの?煙が晴れたあと、校庭の一部が盛り上がってたけど...」
「...あぁ、こいつのことか」
先生の質問の意図を察し、俺は右腕につけているアーマーを上げる。
すると、俺のアーマーは音を立てながら手首のすぐそばを変形させ、そこから太く、鋭い金属の杭が少しだけ顔を覗かせる。
「これは...?」
「あ〜...アビドスの郊外で見つけたオンボロアーマーに、俺が1年の時からあれやこれやで組み上げたオリジナルの装備だ。んで、先生の言ってるのをやったのはこいつに着いた小型のパイルバンカーの効果だな。」
そういうと、俺は右腕を誰もいない方向へ向け、パイルバンカーを作動させる。
すると金属の杭が勢いよく突き出され、破裂音とともに踏み込んでいた俺が右肩ごと吹き飛びかけ、数歩後退する。
「...すごい威力だね。必殺技?」
「まさか。こんなん打ち込む距離まで詰めてる間に蜂の巣だよ。」
そういうと俺はパイルバンカーを再装填しながら、先生の方向に向き直る。
装填が終わったパイルバンカーは再び音を立てながらアーマーの内部に仕舞い込まれ、何も無かったかのようにアーマーは元の形にもどる。
「建物内じゃ使えねぇけど、屋外ならこいつで地面を撃てば地面を隆起させて即席の障壁を作れるって寸法だ。アビドスは砂漠地帯だからな。ホシノみたいにシールドのねぇ俺はこうしねぇと戦えなかったんだ。」
「じゃああの時銃声に混じって聞こえなかった声は...」
「俺がパイルバンカー使う時はだいたい地面に対してだからな。周りに人がいると地面を隆起させた時吹っ飛んじまうんだよ。だから、それ対策で毎度叫んでんだ。多分それだな。」
どうやら気になってたのは砂煙の中での出来事もそうだが、俺があの時パイルバンカー使用時の掛け声を叫んだのにも引っかかっていたらしく、納得といった感じに先生は首を縦に振ると、今までとは違い昨日見た何気ない表情に変わった。
「話してくれてありがとうライセ。」
「別に大したこと話ちゃいねぇがな。力になれたなら良かったよ」
先生は俺に対してお礼を言うと、ポンポンと頭を撫でてくる。
正直、この年で頭撫でられるというのはなんとも恥ずかしいが...
でも、なんだか悪くない気分なので文句はまた今度された時にしとこう。
「それじゃあ、私はしばらくみんなが用意してくれた部屋で仕事するから何かあったらモモトークでも直接でも連絡してね。」
「あぁ。アビドスの夜は冷えるから、仕事中と寝る時は暖かくして寝ろよ」
「うん、じゃあまた明日。」
そういうと、先生は俺の頭から手を離し少し錆び付き嫌な音を立てながら開く屋外の扉を開け、この場を後にした。
「うへへ、随分楽しそうだったね〜」
「なんだ、起きてたのか。」
「まぁ、あんなに近くで会話されればね。どうだった?先生は」
「...さぁな。まだよくわかんねぇ。何考えてんのかもさっぱり。」
「その割にはパイルバンカーのことまで教えるなんて、随分心を開くのが早いんじゃない〜?」
屋外の入口の屋根に敷いたマットから飛び降りると、俺の隣までスタスタと歩いてきて肘でグイグイと押してくるホシノの肘を抑えながら俺は言葉を返す。
「どうせいずれバレるんだし、遅かれ早かれの問題だろ?」
「でも、対策委員会のみんな以外には言ったことないじゃん」
「......」
「うへへ、気引き締めてよ〜?」
「...わーってるよ。心配どーも。」
「うへ〜。別におじさんは心配はしてないよ〜。ただ、相棒にこういうこと言うほうが相棒っぽいじゃ〜ん?」
「そうか?」
「そ〜だよ〜」
そんな軽口を叩きながら、俺たちも屋外を後にする。
今夜、もしくは明日にはセリカを説得もしねぇといけねぇし、しばらくは大変になりそうだ。
そうして俺とホシノは2人、のんびり談笑しながら家路に着いた。