IS回帰譚〜零れ落ち続けた少年〜   作:聖命蓮

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新作始まります


終わりの始まり

 

 

 

痛い━━━━━━━

 

 

敵から放たれた攻撃が、絶対防御を貫いて肌をジリジリと灼いていく。

 

 

自身の持つ、唯一の武器である身の丈程ある大型の盾を構え防御に徹するも、その姿を嘲笑うかのように敵の攻撃は盾を躱し、次々と着弾していく。

 

 

「ぐぅぅぅぅっっ━━━━━」

 

 

歯を食いしばり、痛みに耐えるように盾を構え続ける。

攻撃を凌いだら、付かず離れずの距離を極力維持し、敵の意識をコチラに向け続ける。

 

 

『━━━━━もう少しで織斑達の避難が完了する。それまでの辛抱だ』

 

 

状況を知らせる通信が入るが、それに応えられるだけの余裕はもう無い。

乗っている専用機は既にボロボロ、装甲のあちこちが激しい攻撃によって凹み、ヒビ割れ、破損しており、くっ付いているだけのガラクタに成り果てていた。

スラスターの燃料もガス欠寸前、着ていたISスーツもあちこちが破れ顕になった素肌には軽度の火傷と切り傷が出来ていた。

 

 

 

『━━━ケンジ君!あと少しで増援部隊が到着します!━━━━━頑張って!』

 

 

学園で唯一ヒ(・)ト(・)として接してくれた人からの声に反応したのか、フラフラになりながらも攻撃に耐え続ける。

それでも長時間に渡る稼働故か、脳を酷使した結果か、ツーっと鼻血が流れ落ちていく。血が足りなくなって来ているのか徐々に視界の端から白んでいき、まともに前が見えていなくなってきている。

 

 

「La━━━━━━━♪」

 

 

薄ぼんやりと見える銀色の機体からピンク色の玉がコチラに向かって放たれる。

再三にわたり盾を構える━━━が、光弾の悉くが大きく弧を描く様な軌道を取り、盾に当たることなく満身創痍の本体に命中していく。

 

 

「━━━━━━━━━━━」

 

 

 

━━━━━━限界だった。

 

今のダメージで残り少なかったSEが完全に底を尽き、衝撃が一切緩和されないまま本体を襲う。

 

割れた装甲の破片が生身の身体に突き刺さり血が流れる。或いは、刺さらなかった破片が身体に打撲痕を残していく。

 

 

 

そんな状態の彼の胸中にあったのは━━━━━

 

 

 

 

 

 

(━━━━━━━ごめんなさい)

 

 

 

謝罪の言葉だけだった。

 

 

 

(ごめんなさい真耶センセー・・・『約束』守れなくて・・・。)

 

 

学園に来てから、侮蔑と差別と暴力に塗れた生活の中で、唯一と言ってもいい、安心をくれた人。

過去2度にわたり文字通り死にかけ、目を覚ました(生き残ってしまった)時に、心配し泣いてくれた人と交わした『約束』。

 

 

『絶対に無理をしないで』

 

 

━━━その約束を果たすことが出来ないことに・・・。

 

 

(ごめんよ・・・『黒星(くろぼし)』・・・。キミをソラまで連れて行ってあげられなくて・・・)

 

 

霞む瞳でボロボロの機体に目を向ける。

 

武器を全く持てないことが理由で『解体』予定だった機体を、動物同然に扱われた自分に充てがわれたコトが出会いのきっかけだった。

 

痛い思い出の方が多いが、それでもすぐ傍に居続けてくれた『相棒』と交わした━━━一方的な『約束』

 

 

『いつか『黒星(キミ)』と一緒にソラを飛びたい』

 

 

それが果たせなくなることに対しての謝罪。

 

 

 

『━━━━━見えました!ケンジ君!後は私達に任せてください!』

 

「━━━━━━━━━━━ぁぃ」

 

 

待ちに待った増援部隊が到着する知らせが入ったことでほんの少しだけ目に光が戻る。

 

半ば無意識に増援部隊と合流するポイントに向けて身体の向きを変え━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━ドシュッ

 

 

 

「━━━━━━━━━━━?」

 

 

 

た、明確な隙を銀の機体は見逃してくれなかった。

 

 

「・・・・・・ゴフッ」

 

 

腹からせり上がってきた紅い塊を吐き出し、霞む目で熱く感じる自身の腹部を見る。

 

腹から飛び出しているのは紅く濡れた機械の指。そして、自身のすぐ後ろで何かが動く気配を感じた。

 

 

「La━━━━」

 

 

 

まるで子守唄の様なキレイな音を出す背後にいる機体。

そして悟る。腹を貫手で貫かれたのだと。

 

 

 

『ケン・・・ジ・・・・・・君?』

 

 

見えてしまったのだろう、現着した山田先生の掠れるように名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

「━━━━━━━━━━ぁ」

 

 

次いで襲ってきたのは強烈な虚脱感。

自分の中の決定的な『ナニカ』が急速に失われていくような感覚とともに瞼がまるで鉛のように重く感じる。

目を瞑って仕舞えば二度と起きれなくなるという漠然とした考えがよぎり、抗うように目を開けるが━━━もってあと数秒だろう。

 

 

 

「La━━━━━」

 

「いや━━━━━いやッ━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

先生の絶叫が鼓膜を微かに震わせる。

銀の機体が身体を貫いた指を抜こうとしたのが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

ダカラ━━━━━━━

 

 

 

 

━━━━━ガッ!!

 

 

「━━━━!?」

 

 

抜こうとする手を残されたありったけの力で掴み、抜けないように抑えた。

 

腹から伝わる振動から相手の動揺伝わって来るようだった。

 

 

「・・・・・・よ、ようやぐ・・・・・・・・づがまえ・・・だ。」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

 

 

血を吐きながらそう言うと、銀の機体はまるで恐ろしいものでも見たかのように掴まれた腕を振り回し、逃れようとする。

それでも、ガッチリと掴んだ手を離してなるものかとつかみ続ける。

 

 

 

「・・・・・・1人は・・・寂しいからさ・・・・一緒に・・・・・・来てもらうよ」

 

 

そう言って、拡張領域からあるモノを取り出す

 

 

「ッ!?━━━Laaaaa!!!」

 

 

至近距離でそのモノを確認した銀の機体が逃れようとより一層もがき始める。

 

 

「━━━ッ!ダメッ!!ケンジ君!!」

 

 

それに遅れて先生も視認し(見え)たのか

静止する様に声を出し、コチラに向かって来ようとするが

 

 

「駄目よ!山田先生!」

 

「山田先生ッ抑えて!!」

 

「貴方まで巻き込まれるわッ!!」

 

 

その周りにいた他の人達に羽交い締めにして抑えられる。

 

 

「離してッ!!離して下さいッ!!ケンジ君が!ケンジ君がぁ!!!」

 

 

それでも助けようと手を伸ばし続ける山田先生が見えた気がした。

 

 

 

『━━━━━━━真耶先生』

 

「!ケンジ君!!」

 

 

プライベートチャンネルで先生に語りかける。声を出そうにも口からは血しか出てこなくなり、呼吸をしようにも「ヒューヒュー」とか細く空気の漏れるような音しか出てこない。

今この時だけは、思考だけで会話が成り立つこの機能に感謝するしかなかった。

 

 

『━━━今までありがとうございました。

僕を、『人』として見て━━━扱ってくれて・・・。

 

先生のお陰でこれまで頑張ってこれました。』

 

「そんなこと━━━━━━!!」

 

『そして━━━ごめんなさい。

 

『約束』破るようなコトになっちゃって・・・。』

 

「ケンジ君!!!」

 

『━━━━━もうコレくらいしかできそうにないから・・・』

 

 

 

 

━━━━━━━━後は、お願いします

 

 

「待っ━━━━━━━━━━━!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッ━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━ドカァァァァン!!!

 

 

 

 

 

一瞬の閃光の後に轟く轟音。

彼が拡張領域から取り出したのは、安全ピンの抜かれたIS用の手榴弾。

一つだけでは効果が薄いためにソレを『数珠』の様に複数個を纏めて括り付けたものだった。

ソレを自身の手に持ったまま、銀の機体━━━『銀の福音』を巻き込み自爆した。

 

 

 

「あ・・・・・・・あぁ・・・・・」

 

 

山田先生がよろよろと手を伸ばす。

その手の先には爆心地となっておびただしい程の煙をあげている空間があった。

 

その中から煙を纏い、海面に落ちていく様々な大きさの部品の数々。

 

 

 

『━━━━━『銀の福音』は!?反応確認急げ!』

 

 

作戦室からの通信が入り、山田先生を抑えていた人達は、福音の現状を確認するために散開していく。

 

 

「━━━━━━織斑先生。

 

・・・・・・ケンジ君の・・・『黒星』の反応は」

 

 

震える声で、モニタリングしているハズの作戦室に問いかける。

 

少しの沈黙の後、返ってきたのは━━━━━

 

 

 

 

『・・・・・・反応・・・消失(ロスト)だ』

 

 

 

 

 

━━━━━━━時代の流れに飲まれ、幾度の苦難と理不尽、死線に揉まれてきた少年の命が潰えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈

 

 

 

 

「━━━結局その後、少年の命懸けの特攻も虚しく、第二形態移行(セカンドシフト)しエネルギーを回復した福音が復活・・・。

仇討ちを目論んだ主要メンバーが挑むも返り討ち、そんな仲間の危機に華々しくパワーアップ、復活した織斑一夏(原作主人公)が福音を倒し、めでたしめでたしと・・・」

 

 

 

 

様々な物語が本として閲覧出来る世界。

そんな世界で1つの物語を読み終えた1人の女性は、パタンと本を閉じテーブルに置くと、虚空を見上げ━━━━━━

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

━━━━━バァァン!!(特大台パン)

 

「なぁ〜にがめでたしめでたしじゃボケナスぅ!!」

 

 

凄まじい台パンをかまし、思いの丈を叫ぶ。

 

 

「苦難に理不尽大いに結構!

じゃが、そういったものは乗り越えたコトで何かしらの見返り━━ご褒美があってこそじゃろ!?プラスの要素なくしてマイナスは際立たないじゃろ!!全くなかったぞ!?見返りが!ご褒美が!

 

 

何より━━━一番苦労していた『2番目』が全く報われていないではないか!!

 

いくら描写を細かく入れたとて只々可哀想なだけでは感情移入しきれんじゃろうが!!

 

我(わえ)は可哀想ではヌけんのじゃあ!!!」

 

 

それはそれはオタクもかくやと言わんばかりに早口で捲し立てる。

語尾が強くなる度にバンバンとテーブルを叩きまくった結果、テーブルに亀裂が入る程だった。

 

 

ある程度吐き出し終わったのか、女性は息を整える為に深く深呼吸を入れて━━━━━

 

 

 

 

 

━━━━あ、と何かの天啓じみたものが降りてきた。

 

 

 

「・・・そうじゃ・・・そうじゃよ。良いこと思いついたのじゃあ♪」

 

 

キヒヒ、とクセのある笑い声を出しながら、ポンッとどこからともなくペンを取り出す。

 

 

「我がこやつをプロデュースしてやるのじゃ!!」

 

 

 

 

 

 

斯くして━━━

 

 

 

 

神様プロデュース・・・ならぬ邪神様・・・否、邪龍様プロデュースの物語が幕を開けようとしていた。

 





作者です。
他の小説の息抜きで書いてみました。
神様チックな邪龍様が出てきましたが、登場はこれきりの予定です。

回帰譚とある様にこの話はある一定の出来事で時間が巻き戻るループものとなっております。
とはいえ、Reゼロみたいに何度もループするような感じではなく、基本的に最悪を回避する為だけの仕様にするつもりです。

次回で本作の主人公のフルネームを出す予定です。
まぁ、何時になるかは分かりませんが・・・。

気長にお待ちいただけると幸いです。
以上作者でした!
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