常夏の海、広がる青空、澄み切った空気。
そよぐ潮風は優しく体を包み込み、真夏の猛暑を感じさせない太平洋のど真ん中。
「来たな…俺の独壇場、夏の特別試験が」
俺は展望台で一人サングラスを掛けてカッコつけていた。
それにしてもこの船ヤバいな、シアターからスパまでなんでもある。これを2週間楽しめるとか高育さまさますぎるな。
まあ実際この船にいるのは1週間ぐらいなんだけどね…
不意打ちのサバイバルとかほんと止めてほしいわ。
『生徒の皆様にお知らせします』
お、もうそんな時間か。
『まもなく島が見えてまいります。しばらくの間、非常に意義のある景色をご覧いただけるでしょう』
でたな遠回りすぎる放送。これで無人島で試験があると気づけるやつなんか一人もいないだろ。
とりあえず買っておいた望遠鏡で川や洞窟や畑がある場所を確認しておこう。
「テメェなにしやがる!!!」
うおっ、なんだなんだ?ちょっと見に行ってみるか。
あー、Aクラスの生徒と須藤がトラブってるみたいですね。なんかこんなのもあった気がする。
巻き込まれる前にさっさと部屋に戻って水を飲んでおきましょう。
『生徒たちは全員ジャージに着替えて携帯を忘れずに持ちデッキに集合してください』
はいはいさっさと行きましょう。
お、一之瀬ちゃんと神崎くんだ。
今回の試験では俺が活躍させてもらうから、もしかしたら立場奪っちゃうかもよーん。覚悟しとき!
「よ、2人共。今回は協力してこうぜ、あくまでも俺等の敵はAクラス何だからな」
「木透くん…何の話かな?」
「そのうち分かるぜ、それじゃあな」
そう、俺達はほとんど敵対しているが、完全には敵じゃない。学校からしたら同じBクラスだしね。協力すればお互いに利益があるからせいぜい利害関係に基づいた関わりをやってこうぜ。
無人島に降り立ったら真嶋先生が話し始めた。
どうやら坂柳さんが病欠なのを遠回しに愚痴っているようだ。
まあしょうがない理由での欠席なのにポイントが減るとなったら担任からしてみれば不満よね。
「ではこれより、本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
みんな動揺してるね。別に俺も動揺していないだけで憂鬱だわ。何が楽しくてバカンス気分だったのにそのままサバイバルしなきゃいけないんだよ。
真嶋先生が説明し始めた。
・クラスごとに集団生活をする
・期間は1週間。8月7日の正午に終了
・各クラスに支給される試験用の300ポイントを使い、カタログから必要な物資を購入できる
・体調管理や緊急連絡の機能があるスマートウォッチを着用する
・脱落、暴力行為、点呼時の不在、環境破壊はペナルティを受ける
などなど
色々複雑なのですぐに理解するのは難しいかもしれないが、俺は既に予習してるんだよ!
「は〜い、みんな腕時計とってってね〜」
星之宮先生…なんかこんな近くで見たの久しぶりな気がするな。
「木透く〜ん、最近大変そうだね〜」
「…まあうまくやってますよ」
「ふ~ん…裏でコソコソ何をやってるのかな?」
そういうのBクラスの前で言わないでくれ!聞こえてたらまた誤解されちゃうよ!
「先生は俺に味方してくださいよ。その年齢でAクラスコンプなんだから茶柱先生に復讐できるってなったら俺に味方しない理由ないでしょう?」
「ふ~ん、言うね〜」
「アンタのせいでだいぶ不利益被ってんだよこっちは」
教師からの大巻き上げ言いふらしまくったのまだ許してねえからなぁ…(怒)
「ふふふ〜、それはそれとして、追加ルールがあるよ〜」
来たな、スポットとリーダー当ての説明だろう。
まあ全部完璧に把握してるけど、一応確認しておくか。
・島の各所にスポットと呼ばれる場所があり、占有したクラスが8時間そこを使用できる
・スポットを一度占有するごとに、試験後に1ポイントもらえる
・スポットの占有にはキーカードが必要
・キーカードを使用できるのはリーダーだけ
・正当な理由なくリーダーの変更はできない
・最終日の点呼で他クラスのリーダーを当てられたら50ポイント
…あれ?キーカードを使用できるのはリーダーだけ?
うわー、俺の透明化スポット占有祭りルール違反だったのか…
まあいいや、リーダー当てのほうがポイント圧倒的に高いし、すでに洞窟とか川の位置把握してるからそれで我慢しよう。
Bクラスがもう作戦会議しだしました。やっぱ団結力は高いね。
「一之瀬、神崎、使えそうな畑や川…とりあえず有利になりそうな場所位置はもう確認済みだ。取り得ずそこを先に確保したほうがいい。作戦会議はお前らで頑張れ」
スポットとかポイント節約の作戦とかは2人に丸投げしちゃうからヨロピク☆
居心地悪いからさっさと去ろうとした俺に神崎が声をかけてきた。
「木透…俺達Bクラスはお前とほとんど敵対状態だ。正直言って南雲副会長に向けたあの容赦の無さがいつ俺達に襲いかかるかわからない以上、お前から距離を置くのは間違いだとは今も思っていない。だが今のクラスの雰囲気は少々行き過ぎだ。これから何が起きるかもわからない、いつBクラスに危険が及ぶかもわからない現状でDクラスまで助けるのははっきり言ってお人好しすぎる。一之瀬も少しは問題意識を持っているが周りに流されている。お前に不義理を働いているこんな俺達を、なぜ助ける」
神崎くん…真面目だね。俺の仲間になってくれても良かったのに!
まあ俺には仲間がいなすぎるから仕方ないね。
「神崎、俺は自分の利害のために手を貸しているだけだ。自分のクラスが上の地位にいたほうがいいし、いま一番勢いがあるのはBクラスとそれに支援されているDクラスだろうからな。」
Dクラスの勢いがあるのは綾小路くんのおかげもあるだろうね。
どうやったか知らんが今のDクラスはまじでものすごい活気がある。
「そういうことだから、お互いに利益のある関係にしてこうぜ。普通の作業とか手伝うから、必要なら呼んでくれ」
というわけで俺はしばらく待機ですね。他クラスがリーダー決めたぐらいの時間になったらリーダーカードを盗み見に行きましょう。
普通に原作通りだろうけど、変わってたら大変だからね。
はい、少し時間が立ちました。俺達は王道のポイント節約スタイルで行くらしいですね。
リーダー誰になったんだろ?
「木透、リーダー決まったよ」
「お、姫野じゃん。リーダー誰?」
「私だったよ。それで、何すればいい?」
申し訳ない、俺のガバで君のやることがなくなってしまった…
「悪いけど、特にすることはないかな。けどそのカードは絶対に誰にも見せないで」
「え、やることないの?…まあいいや、じゃあ私がカード持ってること知ってるのは一之瀬さんと神崎くんだけだから、その人達以外の前ではカード出さなければいいね」
「マジでそれだけは徹底してほしい。できれば下着の中とかに入れておいて。そのレベル」
「おっけ」
話がわかる娘だぜ!
「あとこれは一之瀬神崎も言うかもしれないけど、スポットの占有には2人を連れてって。最悪占有の時を見られてたとしても運ゲーに持ってける」
「じゃああんたも来たほうがいいんじゃない」
「いや、あの2人は俺がリーダーを知ってることを知らないから」
「あーね、じゃあ二人と行ってくる」
もし俺もついていくことになったらどうなるんだろ。まじで空気終わる気しかしないわ。
「それじゃ急げ姫野!さっさと洞窟とか川とかのめちゃツヨスポットを占有してくるのだ!畑とかも優先的にな!」
「はいはい、それじゃ行ってきまーす」
じゃあ俺も動くか。そろそろ他のクラスもリーダー決まってるだろうし、探索とか地形の確認とかで侵入者対策が不十分なうちにリーダーカードを盗み見に行っちゃいましょう。
てなわけで透明化した俺は森の中を歩きまわっていた。
まずはDクラスから行ったりますか。
ん?あれは高円寺!なんだかんだで入学の時のバスからろくに見てなかったんだよなー。
「そこの幽霊ボーイ!でてきたまえ!」
なんか誰かに話しかけてますね。誰もいないのに何してるんだろう。
「聞こえないのかい?君に行っているんだぞ幽霊ボーイ」
幽霊ボーイって誰でしょうね、なんでこっち見てるんでしょうか?
俺以外誰もいないってのに………え、俺?
「ふむ…幽霊というものは初めて見るな」
「え…は?お、俺が見えるのか?」
ま、まさかこいつは特殊能力が効かないのか!?
「いや、君の姿は見えない。だが私は君がいる場所の空気の揺らぎから何から何まで全てが視えている。それ以外が全て視えているのであれば、最早それは視えているも同義なのだよ」
ば…化物め!そんなのありか!
「ま…まて!俺に敵対の意思はない!」
死ぬのか?俺はこんなことで死ぬのか!?
「ふむ、嘘はないようだ。幽霊の君も気になるが、今はそれよりも面白い男がいるのでね。私はこれで失礼させてもらうよ」
た、助かったーーーーーー!!!心臓止まるかと思ったぜぇ。
透明人間の俺よりも面白い男って多分綾小路だよな?
透明人間よりも綾小路の方が興味ある高円寺は何なんだよ…
この時点では確か綾小路は高円寺に目をつけられてなかったはず。
俺の存在が原因で綾小路が早めに本気を出し始めたから今の俺が助かったんだろう。ありがとう、過去の俺。それと脅迫教師茶柱先生。
でもこれまずくないか?高円寺が気づくってことは綾小路も気づくってことだ。
…急に不安になってきたな。そういえばどっかのクラスに謎の隠密行動得意ウーマンもいた気がする。同業の人にも見破られるのでは?
考えれば考えるほど不安になってきた。多分あいつがおかしいだけでバレるわけ無いだろうけど、まじで怖くなってきた。
作戦のガバもそうだけど今日の俺まじで調子悪いな。
とりあえず綾小路がいるからDクラスにだけはいかないようにしよう。どうせ俺への被害は最小限なんだから、ギャンブルで姫野ちゃんに綾小路指名させよ。
その後俺はガチでビビりながらAC両クラスのリーダーカードを盗み見て、原作通りなことに安心しながらBクラスに戻った。
ってか拠点充実しすぎじゃね?
原作通り無制限でもらえるビニールを活用したりもしていたが、原作以上に豪華になっている。
川と畑があるから食料は十分、それに加え洞窟もあるから無駄にテントを用意する必要もない。
だから浮いたポイントで仮設トイレとかシャワーとかを設置していた。
これは断じて無駄遣いではない。精神衛生というものはまじで大事なのだ。
やっぱリーダーの素質あるよ一之瀬さん。綾小路くんに改造してもらったら完璧になるけど、どう?
まじでやることがなくそのへんを散歩していたところ、Cクラスの生徒が話しかけてきた。
「な、なあそこの君!僕はCクラスの生徒でさ、龍園っていうやつの方針に意見しただけで顔を殴られて追い出されたんだ!だから匿ってほしい!」
あ、こいつあれじゃん。内通者。
ポイントのために追い返しますか。
「テメェ内通者だろ」
「え、ええ!?違うよ!信じてくれ!」
「なあ、おい、なんで敵のテメェなんかを信じてやるギリがある?」
「ほ、本当なんだ!ほら、ここに殴られたあとがあるだろう!」
「…お前は本当に追い出されたんだな?」
「そ、その通りだよ!」
「この味は!……ウソをついている味だぜ!」
「あ、味?一体何を言っているんだい!?」
このセリフ一回言ってみたかったのよ。
「とにかくお前を受け入れる気はない。龍園によろしくな」
そう言うとあいつは渋々帰っていった。まあすぐにCのみんなと一緒にリタイアするだろう。
これにて高育の初めての特別試験、そのめちゃくちゃ濃い1日目が終了したのである。
高円寺がすでに木透くんと接触していて、孤高タイプじゃなかったらこの時点で木透くんは詰んでいました。