躍動する身体と世界を震わせて。赤と青を含んだスーツは宙を舞っていた。いや、振り子運動のように男は自在に宙を操る。男の名は前原圭一。つい最近、雛見沢という寒村にやって来たごく普通の少年のはずだった。
町は月明かりと、住まいの明かりだけが礫のように照っている。そんな暗闇と小さな光を優雅にも、野生に満ちた体使いで飛び回っていた。人気はない。あるとしても、みんなこんな夜の空は見ようともしなかった。
摩天楼に及ぶ鉄塔、ビル、高層の建物はまるで木々が林立しているかのようであった。町は興宮という。ただの地方都市、その中でも田舎都市だったはずの町。どういうわけか、ここ数年で高層ビルが忽ち建設され始めた。新築で綺麗な街、そして美しい自然。そこに人々は惹かれて、移り住んだようだった。それからか、あるいはそれまでもあったことなのか。新参者の前原圭一は知る由もなく、町は徘徊していく。それを自在に糸を出して、掴んで、放す。その繰り返し。けど、この男、スパイダーマンと名乗るこの人物は汗一つかかず、身体に染みついた日常動作のように動いていた。
甲高いサイレンが唸る。スパイダーマンはそれのタイミングを待っていたかのように、音の場所へと方向を変えた。
「また事件かよ。ったく...明日も寝坊コースかな」
軽口を挟み、右へ左へ。サイレンはだんだんと大きくなり、パトカーの群れが見えた。
パトカーは、興宮の中心部にある大通りを塞ぐように停車していた。
その向こうには、黒煙が幾筋も立ち昇っている。
建設途中の高層ビル。その一階部分が、無残に抉り取られていた。ガラスは砕け、鉄骨は飴細工のようにひしゃげ、路上には散乱した資材が転がっている。
その中央に、一人の女が立っていた。
最初は人間をギリギリ保っていたが、だんだんと変貌を遂げていく。
乱れた衣服。いや、衣服がその巨大な身体に見合っていない。ミチミチと服が悲鳴を上げて、敗れていく。肌は緑翠を帯びていき、材質は爬虫類の甲殻を纏う。
その姿は怪物と言っていい。なぜならば、全身が膨張し、骨格が爬虫類のまるでトカゲになっているからだ。そして、異様なほど静かな表情。
「……」
警官の一人が呟いた。
女はゆっくりと顔を上げる。
「....は……どこ?」
低い声ような唸る声。警官は通報されて到着したばかりなのか、震えて一歩も動けない。
怒鳴っているわけでもない。それなのに、その場にいた全員が一歩退いた。
次の瞬間だった。女の姿が消えた。
いや――消えたように見えただけだった。
地面を蹴った。ただそれだけで突風が巻き起こる。
しかし、その一歩で舗装された道路が蜘蛛の巣状に砕け散る。
「な――」
警官が声を上げるより早く、女の拳がパトカーの側面を捉えた。鈍い轟音。一台の車体が横転し、道路を滑っていく。
悲鳴が上がる。
女はその光景を見つめていた。
その瞳には、恐怖も興奮もなかった。
あるのは、ただ一つの感情だけだった。
憎悪。
「園崎……」
彼女の拳が、微かに震える。
その腕には、注射痕がいくつも残っていた。
研究所で投与された薬品。DNAを変貌させて、超人へと生物的な格を引き上げる代物。
人間の筋肉繊維を強制的に活性化させ、神経伝達速度を引き上げ、身体が本来持っている限界を一時的に解除する。
それは薬というより、むしろ兵器に近かった。薬という言葉が本来含んでいる治癒や鎮静という穏やかな意味から、それはあまりにも遠いところにあった。投与された瞬間から、それは人間の肉体を一個の消耗品へと変えてしまう。筋肉は限界を越えて収縮し、神経は焼けるような信号を絶え間なく送り、血管を流れる血液さえ、もはや生命を養うためのものではなく、戦闘という一時的な目的へ身体を駆り立てるための燃料に近くなる。痛みは消えるのではない。ただ、痛みを感じるという人間本来の感覚そのものが、過剰な刺激によって麻痺していくのだ。普通の人間ならば、数分も耐えられない。
だが――
「……私には、これしかないんだよ」
女は笑った。その笑みは笑顔とは呼べなかった。口元だけが笑いの形を作りながら、その眼の奥では、何かが既に崩壊しはじめていた。夜の街はその異様な光景を理解することもなく、ただ無関心な明かりを路面に落としていた。そのときだった。夜空から一本の白い糸が伸びてきた。街灯に絡みついた糸は、月明かりを吸ったように一瞬だけ白く輝き、次の瞬間、赤と青の影がビルの壁面から滑り降りてきた。
「はいはい、そこまで!」
軽薄な声が夜気を裂いた。その声に、警官たちの視線が一斉に動く。女もまた振り返った。ビルの奥から糸をつるして降りてきた少年は、そのままパトカーの屋根へと可憐なほど軽やかに着地した。赤と青のスーツ。白い目をしたマスク。そして胸元には、蜘蛛を模した黒い意匠があった。街灯の下では、その姿はどこか滑稽ですらあった。だが、その軽薄な外見とは裏腹に、彼の視線だけは笑っていなかった。
「……蜘蛛男。あんたが、あいつが言っていた蜘蛛男ね」
女が呟いた。
「どうも。最近その名前で呼ばれてます。なんというか...お肌がとんでもないことになってますよ?」
圭一は片手を上げた。女はずっと睨み続ける。
「いやいや、こっちは明日学校なんだよ。夜中にパトカーひっくり返してる奴を見つけたら、そりゃ止めるだろ」
女の眉が動いた。
「学校……?」
「そう。健全な学生です」
その瞬間、女の顔から僅かな笑いが消えた。
「……ふざけるな!」
声と同時に、女の姿が消えた。否、消えたように見えただけだった。圭一がそれを認識したときには、既に眼前に拳があった。反射的に身体を捻る。拳がマスクの横を掠め、空気そのものが爆ぜたような風圧が頬を打った。
「うおっ!」
圭一の身体が横へ流れる。だが、その瞬間にはもう次の攻撃が来ていた。肘。拳。蹴り。女の動きには、格闘技として整えられた美しさがなかった。むしろその逆だった。そこには一切の躊躇がなく、ただ破壊するという目的だけがあった。圭一は身を屈め、拳をかわし、路面へ手をついて身体を回転させる。頭上を蹴りが通り過ぎた。髪の毛一本分の距離だった。
「速っ……!」
圭一は転がるように距離を取った。女は追ってくる。速い。予想していた以上だった。しかも速いだけではない。踏み込むたびにアスファルトが微かに沈み、靴底が地面を捉える音には、普通の人間には到底出せない重量が混じっている。圭一は一歩後退しながら、女の身体を見た。肩。肘。腰。膝。足首。視線。呼吸。どれもばらばらに見えて、その実、一つの動作へ収束している。
「……なるほど」
圭一が呟いた。
「こいつ、力任せってわけじゃないな」
女の拳が唸りを上げて飛んできた。圭一は咄嗟に上体を逸らす。拳はそのまま背後の外壁へ叩きつけられた。鈍い破砕音。コンクリートの表面に蜘蛛の巣のような亀裂が一気に走る。
「おいおい……それ、人間のパンチじゃねえだろ!」
返事の代わりに、今度は女の膝が真っ直ぐ腹へ迫った。圭一は両腕を交差して受ける。受けた瞬間、骨の芯まで響くような衝撃が走った。圭一の身体は数メートルも吹き飛び、停車中の車のボンネットへ背中から叩きつけられる。金属が鈍くへこみ、息が詰まった。
「ぐっ……!」
だが、寝転がっている余裕はない。圭一はボンネットを蹴って跳ね起きると、右手首を前へ向けた。白い糸が走る。糸は頭上の街灯へ絡みつき、そのまま圭一の身体を一気に引っ張り上げた。
圭一の身体が宙へ浮く。地上では女が首だけを上げ、その動きを追っていた。圭一は空中で半回転すると、今度は左手から別の糸を射出する。白い糸は道路の反対側にある雑居ビルの外壁へ突き刺さった。
一本目の糸で上昇し、二本目の糸で軌道を変える。圭一の身体は空中で大きく弧を描き、女の側面へ回り込んだ。
「捕まえた!」
三本目の糸が放たれる。今度は街灯でも建物でもない。狙いは女自身だ。白い糸が女の右腕へぐるりと巻きついた。
圭一の狙いは単純だった。空中へ逃げた勢いそのままに、上方と横方向の両方から引っ張る。そうすれば、いくら怪力でも体勢は崩れる。少なくとも一瞬は止まる。
実際、女の身体はほんのわずかによろめいた。
「今度こそ!」
圭一が両腕へ力を込める。だが次の瞬間、異変が起きた。引いているはずの糸が、逆に張り返してきたのだ。
「……え?」
女は腕に絡んだ糸を見下ろし、そのまま力ずくで腕を引いた。ぎりっ、と嫌な音が鳴る。空中にいた圭一の身体がぴたりと止まった。次の瞬間には、綱引きの勝敗が決していた。
ぶちっ。
白い糸が千切れる。一本、二本、三本。まるで濡れた紙でも裂くみたいに、呆気なく。
「嘘だろ!?」
圭一は慌てて追加の糸を撃つ。だが、女はそれすら腕力だけで引きちぎった。さらに、腕に残った糸を掴んだまま大きく身体を捻る。
「しまっ――」
遅かった。女が身体を回した遠心力で、今度は圭一の方が一気に引き寄せられる。空中の身体が制御を失い、弾丸みたいな勢いで地上へ叩き落とされた。
「うわっ!」
次の瞬間、圭一の身体は道路脇の標識へ激突した。金属の支柱がひしゃげ、視界が一瞬だけ真っ白になる。
だが、その直後だった。頭の奥で、蜘蛛の感覚が鋭く警鐘を鳴らした。圭一は反射だけで身体を横へ転がす。直後、さっきまで自分がいた場所へ女の拳が振り下ろされる。標識は根元からへし折れ、火花を散らしながら道路へ倒れ込んだ。
「……冗談じゃねえぞ」
圭一は起き上がった。マスク越しでも、自分の呼吸が乱れているのが分かる。女は追ってくる。その表情には怒りがある。だが、それだけではない。圭一は気づいた。呼吸が荒い。さっきより明らかに荒い。肩の上下が大きくなっている。そして右腕を振った直後、ほんの僅かに左足が遅れる。
「……へえ」
圭一は笑った。
「そういうことか」
女が睨む。
「何が可笑しい」
「君、見た目ほど無敵じゃないらしい」
「……となると、僕にも勝ち目がある。いやー、よかったよかった。明日の一限、ちゃんと間に合いそうだ」
圭一は両手を上げた。
「たださ。君、最初よりちょっとだけ遅くなってない?」
女の顔が険しくなる。
「黙れ!」
再び突進してくる。今度は圭一も逃げなかった。正面から迎え撃つ。拳。右。圭一は左へ避ける。左。身体を沈める。蹴り。跳ぶ。女の足が頭上を通過する。圭一は空中で身体を捻り、糸をビルの壁へ射出した。引かれる力を利用して方向を変える。そのまま女の背後へ回り込んだ。
「そこだ!」
糸を射出する。女が振り向く。しかし遅い。足首へ糸が絡みついた。圭一は一気に引いた。女の身体が傾く。だが倒れない。片手を地面につき、そのまま身体を支えた。
「うそ……」
圭一の声が漏れた。女は片腕だけで身体を起こした。圭一の背筋を冷たいものが走る。
「……どんな身体してんだよ、」
女は答えない。ただ、息をしていた。荒々しく、苦しそうに。そして圭一は、その呼吸の間隔を数えた。一つ。二つ。三つ。四つ。
「……やっぱりだ」
女が顔を上げる。
「何?」
「最初より、攻撃の間隔が長い」
圭一は一歩下がった。
「力は落ちてない。でも、次の攻撃までの時間が伸びてる」
女の眼が僅かに揺れた。
「つまり――」
圭一は指を立てた。
「あんたの身体、力を出すほど壊れてるんじゃないか?」
女の顔から血の気が引いた。その一瞬を、圭一は見逃さなかった。
「図星か」
「……黙れ!」
女が吠える。そして、今まで以上の速度で踏み込んだ。圭一は咄嗟に横へ飛ぶ。しかし、今度の拳は完全には避けきれなかった。肩を掠めた。衝撃で身体が回転する。
「ぐっ!」
圭一は建物の壁へ激突する。そのまま落下しかけた身体を糸で支える。眼下では、警官たちがこちらを見上げている。だが圭一は彼らを見ていなかった。視線は女に固定されていた。
「……まだ動けるのかよ」
女は肩で息をしていた。顔には明らかな苦痛が浮かんでいる。それでも立っている。
「時間が……ない」
女が呟いた。
「何?」
「時間がないんだよ……!」
拳が握られる。
「園崎を……潰す」
その言葉を聞いた瞬間、圭一の中で何かが切り替わった。単なる暴漢ではない。彼女は何かを追っている。そして、その目的は園崎家そのものらしい。だが、それならばなぜこの場所なのか。なぜ警察の目の前で騒ぎを起こしたのか。なぜこれほどまでに身体を酷使しているのか。
「……あー、言い忘れてたけど、園崎はやめておいた方がいいよ。あの家に手を出すのは碌なことにならないって」
女の目が揺れた。ほんの一瞬だった。しかし圭一には十分だった。
「……」
「私は自分で――」
「じゃあ、その腕の注射痕は?整形でもした?最近流行ってるもんねー。でも、最近の整形はトカゲになるってそれなんか、面白いね!」
女の動きが止まった。怒りが限界までに溜まったのか。圭一は見逃さなかった。袖口から僅かに覗いた腕。その皮膚には、薬物を投与したと思われる痕跡がいくつも残されている。
「……知ったようなことを言うな!」
拳が振り下ろされる。圭一は横へ跳んだ。拳が道路を砕く。舗装された道路が陥没し、破片が周囲へ散った。圭一は息を呑んだ。――こいつ、本当に人間か?しかし、その疑問よりも先に、別の違和感が膨らんでいた。園崎を潰す。薬物。異常な身体能力。警察。夜中の市街地。そして、この場所。圭一は周囲を見渡した。道路。建設途中のビル。逃走経路。警察車両。街灯。交差点。すべてが妙に整っている。いや、整いすぎている。
「……待て」
圭一が呟いた。女が構える。
「何だ」
「あんた、ここに来たのは偶然じゃないだろ」
女の瞳が僅かに細くなる。
「……何を言ってる」
「警察が来ることを予想してたんじゃないか?」
圭一の声から、先ほどまでの軽口が消えた。
「この場所には逃げ道が多すぎる。建設途中のビル、路地、屋上。それに、俺みたいに上から来る奴がいてもおかしくない。なのにあんたは、最初からここで騒ぎを起こしてる」
女は黙っている。
「それに、園崎を狙ってるなら、もっと直接的な方法はいくらでもあるはずだ。なのに、わざわざ警察を巻き込んでる」
圭一は一歩進んだ。
「まるで――」
その瞬間、女が笑った。
「……随分と勘がいいんだね。でも大丈夫。そんな推理もここで死ねば無意味だから!」
圭一の身体に、蜘蛛の感覚が走った。今までのものとは違う。明確な”死”の形。またの名はスパイダーセンスと呼ばれるもの。これを感じて良かったことなど一つもない。
「……何だ?」
目を細める。さらに身体は身を震わせて、警鐘を鳴らす。
「お前はもう蜘蛛の巣の中なんだよ!!」
女は叫ぶ。同時に圭一は今の状況を理解していた。建築中の建物とは言え、この場所は囲まれている。同時に鋭い五感で感じていたのは、硝煙の匂い。しかし、それが火薬だと気付いたのは、すでに遅い頃合いだった。
「やべっ!」
バク天するかのように空高く飛翔し、糸を両手から出した。腕を全力で引き絞りさらに高くへと駆けていく。
ダンダン。建物の隙間からなる銃声。明確に第三者からの攻撃だった。それは鉄骨と鉄骨の隙間を縫うようにして配置された、プロの作戦。圭一は、罠だったと迅速に気づく。そして奇襲した相手たちも姿はまだ見えないが、プロだということも分かった。
けれど、紙一重に躱していた。地響きが轟く。飛翔していたのはスパイダーマンだけではない。あの爬虫類の女も脚力だけでスパイダーマンの高さへとたどり着く。
「捕まえーた」
女は笑みを浮かべて、スパイダーマンの小さな頭を握る。宙だが力強く、スパイダーマンを固定する。
「それは...どうかな」
圭一は自分の手首の内側に取り付けられた金属のようなものを取り出した。さっきまで糸を出していた発射装置の一部。両手に握り、圭一は反動を使って女の腹を両足で蹴り出した。
「ぐはっ...」
苦悶の顔を浮かべる女だが、圭一は先程まで持った一部を落とした。ボンっと衝撃音がなり、それは爆裂する。
ウェブグレネード。今日作ったばかりの試作品だったが、見事に蜘蛛糸が全体に広がる。もう一つのグレネードも鉄骨の隙間へと投げ込み、奇襲した相手も拘束していった。
かなりの高さを飛んだので、壁に張り付いてゆっくり降りていく。警官たちは唖然とその姿を見ていた。事が落ち着いたと同時に、刑事たちも現場へ入ってきた。
先頭にいたのは大石という刑事だった。
「これはまた……派手にやりましたねぇ」
大石は周囲に張り巡らされた蜘蛛の糸と、惨状と拘束された男たちを見回した。呆れるほどに異様な景色に頭を痛めたのか、そんな感想しか出ていない。その視線が、やがてスパイダーマンへ向く。
「あなたが、スパイダーマンですか?」
「……まあ、そういうこと」
「一体、何者なんでしょうねぇ」
圭一は一瞬だけ黙った。余計なことを話す必要はない。だから、いつものように笑ってみせる。
「スパイダーマン。親愛なる隣人ってとこかな」
そう言って、圭一は手首を前へ向けた。
「じゃ、俺はこれで!」
シュッ。
――出ない。
「……」
もう一度、手首を振る。
シュッ。
「…………」
圭一は自分の手首を見た。
そういえば、ウェブグレネードをさっき使ったのだった。糸の残量はない。
「……あ」
「どうしました?」
「いや、何でもない」
圭一は手首を下ろした。今日はもう、糸がない。
「……仕方ねぇな」
建物を見上げる。いつもなら、ここから一気に飛び移るところだ。だが今夜は――自分の足で帰るしかない。
「それじゃ!」
圭一は大石たちとは反対方向へ駆け出した。
「……走っていきましたねぇ」
大石が呟く。その声を背中に聞きながら、圭一は建設現場を抜け、裏手の道路へ出た。そこで、ヘッドライトが二つ灯る。
「圭ちゃん!」
「……詩音!」
路肩に停まっていた車の運転席から、詩音が身を乗り出していた。助手席には葛西がいる。後部座席のドアが開いた。
「早く乗って!」
「助かった!」
圭一が飛び込むと、すぐさまドアが閉まる。車が走り出した。
「圭ちゃん、遅いですよ!」
「しょうがねぇだろ! ウェブ使い切ったんだから!」
「……スパイダーマンが徒歩で逃げるとは思いませんでしたけどね」
葛西の言葉に、圭一はぐっと黙った。
「……それは俺も思ったよ」
車窓の向こうへ、現場の明かりが遠ざかっていく。
完全に思い付きで書き始めたので...更新は遅いです...えっと神楽舞や他のssで告知してた作品とは今作とは別のやつです、走り書きで拙い部分もありますが何卒。