スパイダーマンのなく頃に   作:晃晃

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キャプテン・トミタケ誕生!

昭和五十八年、五月。

 

雛見沢の山々に囲まれたダム湖の傍らに、一つの研究施設があった。

 

鹿骨総合生体科学研究所。

 

再生医療、生体材料、神経科学、そして難治性疾患の治療。そこで行われている研究は多岐にわたり、その成果は国内の研究機関からも注目を集めていた。ダム建設に伴って整備された道路や電力設備を利用し、国内でも有数の研究環境を備えた施設として、近年は研究者の往来も増えている。

 

研究所の所長を務める鷹野三四にとって、それは長年追い求めてきた夢が現実になったことを意味していた。

 

かつて、高野一二三が唱えた学説は、学界から認められなかった。

 

人間の精神に影響を及ぼす未知の寄生体。

 

それによって引き起こされる、雛見沢特有の症候群。鷹野が幼い頃から聞かされてきたその研究は、長らく正当な評価を受けることがなかった。祖父の死後、研究を継承した鷹野もまた、十分な理解を得られずにいた。

 

しかし、ある時を境に状況は一変した。政府や防衛関係者に独自の人脈を持つ、非公式の研究推進組織。

 

通称、『東京』。

 

その内部では、雛見沢症候群の研究を巡って複数の思惑が対立していた。症候群を医学的に解明し、治療法の確立を優先すべきだという穏健派。一方、神経や行動に影響を及ぼす未知の生体現象には、国家の安全保障に利用できる可能性があると考える強硬派。

 

その両者の力関係が変化したのは、ダム計画の修正と、それに伴う地域開発が本格化した頃だった。『東京』の内部で主導権を握ったのは、後者のタカ派である。彼らは高野一二三の研究に、従来の医学とは異なる価値を見出した。

 

もし人間の神経活動を制御できるならば。

 

もし肉体の能力を、通常の限界を超えて引き出せるならば。

 

もし未知の生体現象を応用し、従来の技術では実現できなかった能力を人間に与えられるならば。

 

それは、軍事技術のあり方さえ変える可能性を秘めている。タカ派はそう判断した。そして、鷹野三四へ莫大な研究予算と人員を提供したのである。無論、それは無償の善意ではなかった。鷹野が求めていたのは、祖父の研究を完成させ、その正しさを証明すること。

 

一方、『東京』が求めていたのは、研究の成果を国家の力として利用することだった。両者の目的は異なっていた。それでも、利害は一致していた。そして、何より重要なことがあった。タカ派が研究を支援しなければ、雛見沢症候群の研究は、とうに縮小されていた可能性が高い。

 

研究費の削減。

 

設備の不足。

 

研究計画そのものの見直し。鷹野がそれらを免れ、今日まで研究を続けられたのは、紛れもなく彼らのおかげだった。その事実を、鷹野自身が誰よりも理解していた。

 

だからこそ、研究成果を要求された時、簡単には拒めなかったのである。

 

§

 

「……また、ですか」

 

地下研究区画の会議室。

 

鷹野は机に置かれた書類を見下ろし、小さく溜息をついた。

 

正面には、研究所の第二研究部門を統括する黒瀬俊明が座っていた。その隣には、『東京』から派遣され、今に仕える小此木の姿もある。

 

「先日も申し上げたはずですが、現段階での大規模な実用化は時期尚早です」

 

鷹野がそう告げると、小此木はは表情一つ変えずに答えた。

 

「承知しております。しかし、本部としても、これ以上の延期は認められないという判断です」

 

「……あら。随分と厳しいのね」

 

「これまで研究所へ投入された予算を考えれば、当然の要求かと」

 

鷹野の笑みが、ほんの僅かに薄れた。

 

「それで? 今度は何をお望みなのかしら?」

 

「安定した人体強化技術の実証です」

 

小此木は書類を一枚取り出した。

 

そこには、これまでの研究成果が簡潔にまとめられていた。

 

人工筋肉による身体能力の増強。外部装甲を用いた運動機能の補助。生体組織の再生能力の向上。神経伝達の調整による反応速度の改善。いずれも一定の成果を上げている。

 

しかし、問題も少なくなかった。能力が安定しない被験者。精神面への影響。身体能力の向上に、他の機能が追いつかない例。

 

そして何より、研究所の管理下から外れた被験者が、市街地で騒動を起こした事件。

 

北条鉄平。

 

あの男の名も、報告書には記されていた。

 

「……北条鉄平の件は、こちらでも問題視しています」

 

鷹野は資料を閉じた。

 

「あれは本来、指定された条件下での能力評価に留めるべき事例でした。本人が無断で行動した以上、研究結果としても参考にできる部分は限られています」

 

「だからこそです」

 

小此木は答えた。

 

「本部が求めているのは、単に強い人間ではありません。命令を理解し、自らの判断で行動し、能力を安定して発揮できる人間です」

 

黒瀬が腕を組んだ。

 

「……要するに、制御可能な強化兵士ということですな」

 

「その通りです」

 

小此木は頷いた。

 

「本部は、第三次人体機能強化計画の実施を正式に要請します」

 

それは、これまでの生体改造とは異なる方針に基づく研究だった。筋肉を外部から補強するのでも、身体の構造そのものを大きく変化させるのでもない。人間が本来持つ身体能力を、限界まで引き出すことを目的としていた。

 

その鍵となったのが、雛見沢症候群である。

 

雛見沢に特有の風土病として知られるこの症候群は、数年前からの莫大な資金投下と研究によって、既に治療薬と発症を誘導する薬剤の開発に成功していた。しかし、それでも『東京』のタカ派は満足しなかった。

 

彼らが着目したのは、症候群の末期段階であるL5の特異な反応だった。

 

L5に至った患者は精神状態が著しく不安定になる一方、通常では考えられないほどの身体能力を発揮することがあった。筋力や反射神経、持久力などが一時的に向上する現象は、研究所の記録にも残されていた。

 

ならば、その身体機能の向上だけを再現し、精神への悪影響を取り除くことはできないか。

 

その発想から生まれたのが、第三次人体機能強化計画だった。

 

研究所では数年前から開発が進められ、近年になって一定の成果を示す試験用血清が完成していた。人格や知性を維持したまま、人間の身体能力を飛躍的に高めること。それが、この計画の最終目標である。

 

もっとも、血清はまだ安全な完成品とは言い難く、長期的な影響についても十分には解明されていなかった。

 

「……被験者は?」

 

鷹野が尋ねた。

 

「適性候補者の選定を進めていただきたい」

 

「簡単におっしゃるのねぇ」

 

鷹野は皮肉を込めて笑った。

 

「健康で、身体能力に優れ、精神的にも安定していて、おまけに危険を承知で実験に参加してくれる人間。そんな都合のいい人、そうそう見つかるものではないわ」

 

「候補者については、こちらでも検討しております」

 

小此木は言葉を切った。

 

「富竹ジロウ二等陸尉などは、いかがでしょうか」

 

鷹野の表情が消えた。

 

「……何ですって?」

 

「身体的な適性は申し分ありません。自衛官としての訓練経験もあり、研究所の監査業務を通じて計画の一部を把握している。本人の同意さえ得られれば、有力な候補になるかと」

 

「……」

 

「鷹野所長?」

 

「お断りするわ」

 

その声は、驚くほど冷たかった。会議室が静まり返る。黒瀬は眼鏡の奥から、鷹野の顔を見つめた。

 

「……所長。まだ正式な候補者の選定段階ですが」

 

「承知しているわ。それでも、お断りすると申し上げたの」

 

鷹野は椅子の背へ身体を預けた。

 

「ジロウさんは研究所の監査担当者でしょう。研究計画の適正を確認する立場の人間を、その計画の被験者にするなんて、利益相反もいいところじゃない」

 

「その点については、監査担当の変更を含めて――」

 

「そういう問題ではないわ」

 

鷹野は言葉を遮った。

 

小此木が、僅かに眉を寄せる。

 

「……所長。ご理解いただきたい。これは本部の意向です」

 

「ええ、分かっているわ」

 

「研究計画の継続についても、今回の成果が重要な判断材料になります」

 

鷹野は答えなかった。その言葉の意味を、説明されるまでもなく理解していた。成果を示せなければ、予算は削減される。

 

研究内容は見直され、場合によっては研究所の運営体制そのものが変更される。祖父の研究を完成させるために、ようやく手に入れた環境。長い年月をかけ、築き上げてきた研究体制。

 

それらが失われる可能性がある。そして、自分が研究を続けられているのは、目の前の男が代表する勢力のおかげなのだ。

 

鷹野は、その事実から目を背けることができなかった。

 

「……検討はするわ」

 

しばらくして、鷹野はそう答えた。

 

「ただし、被験者の最終決定はこちらに任せていただきたいの。それから、監査体制の変更については正式な手続きを踏んでもらうわ」

 

小此木は頷いた。

 

「了解しました」

 

会議は、それで終わった。

 

その日の夕方。鷹野は、研究所の屋外通路で富竹ジロウと顔を合わせた。

 

「やあ、鷹野さん!」

 

富竹はいつものように穏やかな笑みを浮かべていた。首からはカメラを下げ、片手には研究所の資料が入った鞄を持っている。

 

「今日は随分と忙しそうだね。何かあったのかい?」

 

「……あら、ジロウさん」

 

鷹野は微笑んだ。

 

「何でもないわ。ちょっと面倒な会議があっただけ」

 

「ははは。君がそう言う時は、大抵かなり面倒な話なんだよね」

 

「失礼しちゃうわねぇ」

 

鷹野は笑った。いつも通りの会話。それだけのはずだった。しかし、富竹の顔を見ていると、先ほどの会議で聞いた言葉が頭から離れなかった。富竹ジロウ二等陸尉。身体的な適性は申し分ない。研究所の事情にもある程度は通じている。そして、危険を承知で協力してくれる可能性がある。少なくとも、会議に出席した研究者たちは、そう判断していた。

 

「……ねえ、ジロウさん」

 

「ん?」

 

「もしも、よ」

 

鷹野は少し考えてから、口を開いた。

 

「人間が、今よりずっと強くなれるとしたら……あなたは、どう思う?」

 

富竹は目を瞬かせた。

 

「強く?」

 

「ええ。例えば、普通の人間では持ち上げられないようなものを持ち上げたり、誰よりも速く走れたり。そんな能力を手に入れられるとしたら」

 

「……そうだなぁ」

 

富竹は腕を組んだ。しばらく考え、それから笑った。

 

「悪くない話だと思うよ」

 

「……へえ?」

 

「もしそんな力があれば、助けられる人も増えるだろうからね」

 

鷹野は、僅かに目を見開いた。

 

「……人を助けるため?」

 

「もちろん」

 

富竹は当然のように頷いた。

 

「災害現場なんかでも役に立つだろうし、危険な場所に取り残された人を助けられるかもしれない。そういう力なら、ぜひとも活用すべきだと思うな」

 

「……ふふっ」

 

鷹野は小さく笑った。

 

「ジロウさんらしい答えね」

 

「そうかい?」

 

「ええ、とっても」

 

富竹は照れ臭そうに笑った。しかし、鷹野はすぐに視線を逸らした。富竹は知らない。その力を得ることが、どれほど危険なことなのか。研究所で何が行われてきたのか。どれだけの失敗が積み重ねられてきたのか。そして、鷹野自身がどれほど多くのことを隠しているのか。

 

「……でもね、ジロウさん」

 

鷹野は静かに言った。

 

「力を手に入れるというのは、そんなに簡単なことじゃないのよ」

 

「……そうだろうね」

 

「場合によっては、取り返しのつかないことになるかもしれない」

 

富竹は鷹野の顔を見た。彼女の声音が、普段とは少し違っていたからだ。

 

「……何か、僕に話したいことがあるのかい?」

 

鷹野は答えなかった。ほんの少し、唇が動いた。しかし、言葉にはならなかった。富竹に話しておかなければならないことは、確かにあった。実験のことも、その危険性についても、いずれ説明しなければならない。だが、今はまだ、その時ではない。少なくとも、研究所の方針さえ定まっていない段階で、富竹を巻き込むわけにはいかなかった。

 

「……いいえ。何でもないわ」

 

鷹野は、いつものように微笑んだ。

 

「ちょっと、考え事をしていただけ」

 

「……そうかい?」

 

「ええ」

 

「ならいいんだけどね」

 

富竹は、それ以上追及しなかった。鷹野は、そんな富竹の横顔を眺めた。この男は、いつもそうだった。研究所の人間たちは、鷹野に何かを求めてくる。研究成果を、実績を、そして次の計画を。鷹野自身も、それに応えることを望んでいた。かつて否定されていた研究が、今では多くの人々から期待されている。それは、鷹野にとって何よりも誇らしいことだった。しかし、富竹は違った。難しい研究の話をしても、分からないところは素直に尋ねてくる。鷹野が疲れていれば、こうして声を掛けてくる。研究成果を褒めることはあっても、それだけが目的で近づいてくるわけではなかった。

 

「…………」

 

鷹野は、ふと足を止めた。

 

「……ねえ、ジロウさん」

 

「ん? どうしたんだい?」

 

「……一つ、お願いしてもいいかしら?」

 

「お願い?」

 

富竹は不思議そうに首を傾げた。

 

「ははは。何だい、改まって」

 

「……大したことじゃないんだけど」

 

鷹野は少し言い淀んだ。そして、わずかに視線を逸らした。

 

「……その、鷹野さんって呼ぶの、やめてくれない?」

 

「……え?」

 

富竹は目を瞬かせた。

 

「……どうしてだい?」

 

「別に、嫌ってわけじゃないのよ?」

 

鷹野は慌てて付け加えた。

 

「ただ……ほら。研究所じゃ、誰も彼も鷹野所長だの、鷹野先生だのって呼ぶでしょう?」

 

「……ああ、そうだね」

 

「だから、ジロウさんまで同じように呼ばなくてもいいんじゃないかしらって」

 

鷹野は小さく笑った。

 

「……たまには、名前で呼んでほしいなと思っただけよ」

 

「……名前?」

 

「ええ」

 

そして、ほんの少しだけ、甘えるような声で続けた。

 

「……三四、って」

 

富竹は、しばらく鷹野を見つめていた。鷹野自身も、どうして急にそんなことを口にしたのか、よく分からなかった。ただ、今は研究所の所長でも、雛見沢症候群の研究者でもなく、一人の人間として富竹と話していたかった。それだけだった。

 

「……ははっ」

 

やがて、富竹は穏やかに笑った。

 

「そういうことなら、もちろん構わないよ」

 

「……本当?」

 

「ああ。じゃあ……」

 

富竹は少し考えた。

 

「……三四さん、でいいかな?」

 

「…………」

 

鷹野は、一瞬だけ目を瞬かせた。そして。

 

「……ふふっ」

 

小さく笑った。

 

「……ええ。もちろん」

 

「ははは! それじゃあ、これからはそう呼ばせてもらうよ。三四さん」

 

「……もう」

 

鷹野は、少し照れ臭そうに顔を背けた。

 

「そんなに何度も呼ばなくたっていいわよ」

 

「おや? 名前で呼んでほしいって言ったのは君じゃないか」

 

「それはそうだけど……」

 

「ははは!」

 

富竹は楽しそうに笑った。鷹野も、つられて笑った。何とも他愛のない会話だった。けれど、不思議なことに、先ほどまで胸の奥に残っていた重苦しさが、少しだけ和らいでいた。

 

「……ありがとう、ジロウさん」

 

「ん? 何がだい?」

 

「……何でもないわ」

 

鷹野は微笑んだ。

 

「それより、今日はもう帰るんでしょう?」

 

「ああ。せっかくだから、帰りに少し写真でも撮ろうかと思ってね。夕方の山は、なかなか綺麗なんだ」

 

「……相変わらずねぇ」

 

「ははは! こればっかりは、やめられなくてね」

 

富竹は首から下げたカメラを軽く持ち上げた。

 

「……そうだ、三四さん」

 

「……なあに?」

 

「今度、君の写真も撮らせてくれないかな?」

 

「……私の?」

 

「ああ。研究所の中じゃ、いつも難しい顔をしてるだろう? たまには、こうして笑っているところを撮りたいと思ってね」

 

「……ふふっ」

 

鷹野は、少しだけ目を細めた。

 

「……考えておくわ」

 

「ははは! 楽しみにしてるよ」

 

富竹はそう言って、朗らかに笑った。鷹野は、その笑顔を静かに見つめていた。研究所に戻れば、また仕事が待っている。終わりの見えない研究。

 

次々と持ち込まれる計画。そして、人間の身体そのものを変えてしまうかもしれない、新しい実験。富竹が、その候補者として名前を挙げられていることも、変わらない。いずれ、彼に話さなければならない日が来るのだろう。その時、富竹は何と答えるのだろうか。鷹野には、まだ分からなかった。

 

ただ。

 

「……それじゃあ、また明日。三四さん」

 

富竹が手を振った。

 

「……ええ。また明日、ジロウさん」

 

鷹野も、静かに手を振り返した。その呼び方が、少しだけ嬉しかった。

 

§

 

三日後。富竹ジロウは、再び研究所の地下区画を訪れていた。

 

ただし、今回は監査役としてではなかった。目の前の机には、人体機能強化計画に関する資料が並べられている。

 

実験の目的。予想される身体機能の変化。確認されている危険性。

 

そして、長期的な影響については未解明の部分が残るという記述。

 

富竹は一枚ずつ目を通していた。正面には鷹野と黒瀬。少し離れた場所には、医療上の評価を担当する医者も同席していた。

 

「……富竹さん」

 

医師は真剣な顔で口を開いた。

 

「正直に申し上げます。この計画について、安全だと保証することができません」

 

「……そうですか」

 

「現在得られているデータは限定的です。短期的に成功したとしても、その後にどういった影響が現れるのか、まだ十分に分かっていないんです」

 

富竹は静かに頷いた。

 

「説明していただき、ありがとうございます」

 

「ですから、私としては、現段階での投与には反対です」

 

担当医師はそう言い切った。

 

鷹野は黙っていた。彼女自身も、富竹を被験者にすることには反対していた。少なくとも、最初は。

 

しかし、『東京』の要求は変わらなかった。

 

研究計画の継続には、早期の成果が必要とされていた。富竹はその事情を知った。

 

そして、鷹野がどれほど追い詰められているのかも理解した。

 

「……三四さん」

 

富竹は彼女へ声を掛けた。

 

「僕は、君がこの研究をどれほど大切にしてきたか知っているよ」

 

鷹野は顔を上げた。

 

「……」

 

「もちろん、研究のためなら何をしてもいい、なんて思っていない。もし間違ったことをしているなら、僕は止めなければならない」

 

その言葉に、鷹野の表情が僅かに強張った。

 

「……でもね」

 

富竹は続けた。

 

「君がこれまで積み重ねてきた研究の中には、本当に人の役に立つものもあるはずなんだ」

 

「……ジロウさん」

 

「だから、その可能性まで失われてほしくない」

 

富竹は資料へ目を落とした。

 

「それに、研究所が無理に被験者を探し始めたら、今度はどんな人が選ばれるか分からない。だったら、危険を理解している僕が、自分の意思で参加した方がいいと思ったんだ」

 

「……それは違うわ」

 

鷹野は即座に答えた。

 

「あなたが背負う必要なんてないのよ」

 

「三四さん」

 

「私は、あなたにそんなことをしてほしくない」

 

いつもの鷹野なら、研究計画の説明に私情を挟むことはなかった。

 

しかし、その時ばかりは違った。彼女は富竹を見つめていた。研究者としてではなく、一人の女性として。

 

「……もし、失敗したらどうするの?」

 

富竹は少しだけ困ったように笑った。

 

「……怖くないと言えば、嘘になるよ」

 

「だったら……!」

 

「でも、僕は自分で決めたんだ」

 

鷹野は言葉を失った。富竹は、改めて担当医師の方へ向き直った。

 

「危険性について、もう一度詳しく教えていただけますか。納得できない部分があれば、僕も同意するつもりはありません」

 

担当医師はしばらく富竹を見つめていた。

 

それから、静かに頷いた。

 

「……分かりました」

 

§

 

「……始めます」

 

担当研究員の声が、静まり返った室内に響いた。富竹は検査台の背もたれに身体を預け、ゆっくりと息を吐いた。上腕には測定用の器具が取り付けられ、胸元には心臓の状態を記録するための電極が並んでいる。傍らでは担当研究員が試験用血清の入った注射器を手に取った。

 

「……富竹さん。準備はよろしいですか?」

 

「ああ。いつでもいいよ」

 

富竹はいつものように笑った。しかし、その笑顔はどこかぎこちなかった。いくら覚悟を決めてきたとはいえ、未知の薬剤を身体へ投与されるのである。まったく緊張しないと言えば嘘になるだろう。富竹は一度だけ、ガラスの向こうへ目を向けた。そこには鷹野が立っていた。普段なら、こんな実験を前にすれば誰よりも興奮しているはずの女性である。しかし、今の鷹野は口を固く結び、富竹の姿を見つめていた。富竹は小さく頷いた。それを見届けた黒瀬が、研究員へ合図を送る。

 

「……投与を開始してください」

 

研究員が富竹の腕に注射針を当てた。わずかな刺激の後、針が皮膚を通る。富竹は眉一つ動かさなかった。注射器の中に収められていた試験用血清が、ゆっくりと彼の体内へ送り込まれていく。最初は何も起こらなかった。ただ、測定器が規則正しい電子音を響かせている。富竹は天井を見上げながら、静かに呼吸を続けた。

 

「……どうですか?」

 

「……うん。今のところは、特に変わらないかな」

 

「分かりました。少しでも異変を感じたら、すぐに知らせてください」

 

「ああ。もちろんさ」

 

富竹は頷いた。しかし、その直後だった。

 

「……ん?」

 

富竹は不思議そうに自分の胸元へ目を落とした。身体の奥に、何かが広がっていく。最初は、ほんのわずかな熱だった。運動をした後のような、身体の芯が温まる感覚。だが、それは次第に強くなっていった。

 

「……あれ?」

 

富竹の眉が寄った。

 

「……何だろう。急に、身体が……」

 

そこで言葉が途切れた。胸の奥が強く脈打つ。心臓が、先ほどまでとは明らかに違う速さで鼓動を打ち始めていた。

 

「心拍数、上昇しています!」

 

研究員の声が上がった。

 

「神経系にも反応が出ています。筋活動の指標が急激に変化しています!」

 

「……数値は?」

 

鷹野が画面へ向き直った。

 

「予測値を超えています。現在も上昇中です!」

 

鷹野は目を見開いた。予測を超える反応。それ自体は、研究者として期待していたものだった。しかし。

 

「……ぐっ!」

 

富竹が小さく呻いた。その声に、鷹野は弾かれたように顔を上げた。

 

「……ジロウさん?」

 

富竹は答えなかった。背もたれに預けていた身体を起こそうとして、途中で動きを止める。肩が震えていた。額には、早くも汗が浮かんでいる。

 

「……くっ、あ……!」

 

富竹は奥歯を噛みしめた。身体の内側から、全身が強く締めつけられるような感覚が押し寄せてくる。腕も、脚も、胸も。普段なら何の苦もなく動かせるはずの筋肉が、まるで自分のものではなくなったかのようだった。

 

「……富竹さん!」

 

担当医が駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!? 聞こえますか!」

 

「……あ、ああ……!」

 

富竹は辛うじて頷いた。しかし、次の瞬間。

 

「う……あああああっ!!」

 

富竹の叫び声が、室内に響き渡った。検査台の上で身体が大きく強張る。腕に力が入り、握りしめた拳が震えた。

 

「筋活動、急上昇!」

 

「循環系の数値も変動しています!」

 

 

研究員たちが次々と声を上げた。黒瀬は富竹の状態を確かめながら、厳しい表情で測定器へ目を向けた。

 

「……いけません。このままでは負荷が大きすぎます!」

 

「……そんな」

 

ガラスの向こうで、鷹野が小さく呟いた。画面には、次々と変化する数値が表示されている。人体の能力を示す複数の指標。それらは確かに、これまでの予測を大きく上回っていた。成功するかもしれない。これまで誰も実現できなかった、人体機能の飛躍的な強化。長年追い求めてきた研究の成果が、今まさに目の前で生まれようとしている。

 

本来なら、鷹野はその光景に歓喜していたはずだった。

 

けれど────

 

「……あああっ! ぐ、ううっ……!」

 

富竹が再び声を上げた。その瞬間、鷹野の頭から研究のことが消えた。

 

「……もういいわ」

 

鷹野は震える声で呟いた。黒瀬が振り返る。

 

「……所長?」

 

「……もう、いい」

 

鷹野は操作卓へ歩み寄った。

 

「中止して。直ちに投与を止めて!」

 

研究員たちが顔を上げた。

 

「……しかし、所長。反応はまだ継続しています」

 

「そんなことは分かってるわ!」

 

鷹野の声が室内に響いた。普段の彼女からは想像もできないほど、切迫した声だった。

 

「これ以上続けたら、どうなるか分からないでしょう!? 中止よ! すぐに!」

 

「……三四さん」

 

富竹の声が聞こえた。鷹野は振り返った。ガラスの向こう。富竹は検査台の上で、苦しそうに息をしていた。額から汗が流れ、肩が小さく上下している。それでも彼は、鷹野を見ていた。

 

「……ジロウさん!」

 

鷹野はガラスへ駆け寄った。

 

「もう十分よ! これ以上は危険だわ!」

 

「……は、はは……」

 

富竹はかすかに笑った。

 

「……三四さん……」

 

その声に、鷹野は動きを止めた。富竹は大きく息を吸った。苦痛に顔を歪めながら、それでも声を張り上げる。

 

「僕は……大丈夫! だから……止めないで!」

 

「……っ!」

 

鷹野は息を呑んだ。

 

「……何を言ってるの、ジロウさん!」

 

「……まだ……終わってないんだろう?」

 

「そんなこと、どうでもいいでしょう!」

 

鷹野は思わず叫んだ。

 

「研究なんて、またやり直せばいいじゃない! でも、あなたに何かあったら……!」

 

そこで言葉が詰まった。富竹は、そんな鷹野をじっと見つめた。

 

「……三四さん」

 

その声は、先ほどよりも小さかった。

 

「……僕は、君の研究を信じてる」

 

「…………」

 

「……もちろん、怖くないわけじゃないよ」

 

富竹は苦笑した。

 

「……正直、今だって……かなり、きつい」

 

再び身体が強張り、富竹は小さく呻いた。しかし、呼吸を整えると、もう一度顔を上げた。

 

「……でも、僕は……自分で決めたんだ」

 

鷹野は何も言えなかった。富竹は続けた。

 

「……この力が、本当に誰かを守るために使えるなら……僕は、その可能性に賭けてみたい」

 

「……ジロウさん……」

 

「だから……お願いだ」

 

富竹は震える手を持ち上げた。いつものように、親指を立てようとする。しかし、その指先は上手く動かなかった。それでも彼は笑おうとした。

 

「……もう少しだけ……僕を信じてくれないかな」

 

鷹野は唇を噛んだ。目の前の男は、どこまでも馬鹿だった。どうして、こんな時まで他人のことを考えていられるのか。どうして、こんなに苦しんでいるのに、笑おうとするのか。そして何より。どうして、自分の研究をそこまで信じてくれるのか。

 

「…………投薬、すべて終わりました!」

 

研究員は声を上げる。

 

鷹野は画面へ目を向けた。研究員たちは既に投与を停止し、富竹の状態を監視していた。しかし、数値の変化は止まっていない。投与された血清による反応は、体内でなお続いているのだ。

 

「……所長」

 

黒瀬が口を開いた。

 

「ここから先は、我々にも予測できません」

 

鷹野は答えなかった。ただ、富竹を見つめていた。富竹は検査台の上で、なおも荒い息を繰り返している。しかし、やがて。

 

「……変化が……」

 

研究員の一人が呟いた。

 

「……数値の上昇が緩やかになっています」

 

鷹野は振り返った。

 

「……本当?」

 

「はい。循環系の変動も、少しずつ落ち着き始めています」

 

「……まだ安心はできません。監視を続けてください」

 

「はい!」

 

室内では、研究員たちが次々と記録を更新していた。数分前まで激しく変動していた指標が、徐々に落ち着きを取り戻していく。富竹の肩の震えも、少しずつ収まり始めた。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

富竹は大きく息を吐いた。全身に重い疲労感が残っている。しかし、先ほどまで押し寄せていた激しい苦痛は、いつの間にか和らいでいた。

 

「……ジロウさん?聞こえる?」

 

「……ああ」

 

富竹は目を開けた。

 

「……聞こえているよ」

 

その声は、弱々しくはあったが、確かにいつもの富竹だった。

 

「……よかった」

 

富竹は苦笑した。そして、ガラスの向こうへ目を向ける。そこには鷹野が立っていた。

 

「……三四さん」

 

鷹野は答えなかった。ただ、じっと富竹を見つめていた。

 

「……心配、かけちゃったね」

 

富竹は申し訳なさそうに笑った。その瞬間。

 

「……馬鹿」

 

鷹野の口から、小さな言葉が漏れた。

 

「……え?」

 

「……本当に、馬鹿なんだから」

 

鷹野は俯いた。

 

「……あんなに苦しんでいたくせに……どうして……」

 

富竹は何も言わなかった。しばらくして、鷹野は顔を上げた。

 

「……ジロウさん」

 

「……うん?」

 

「……二度と、あんな無茶はしないで」

 

富竹は少しだけ困ったように笑った。

 

「……努力するよ」

 

「……そこは、約束するって言うところでしょう?」

 

「……ははは。参ったなぁ」

 

富竹は笑った。その笑顔を見て、鷹野はようやく息を吐いた。研究は成功したのか。本当に超人的な身体能力が得られたのか。長期的な影響はないのか。まだ、何一つ確定していない。しかし、少なくとも富竹は生きていた。今の鷹野にとって、それ以上に大切なことなどなかった。

 

それから数日間、富竹には複数の検査が行われた。

 

筋力。反射速度。持久力。平衡感覚。

 

そして、複雑な判断を必要とする課題。どの項目においても、従来の数値を大きく上回る結果が記録された。特に、身体能力の向上と精神状態の安定が両立していることは、研究所の関係者を驚かせた。もっとも、富竹本人がその変化を実感したのは、検査を終えて初めて自由に身体を動かした時だった。

 

「……これは」

 

富竹は自分の手を見つめた。握る。開く。ただそれだけの動作が、以前とはまるで違って感じられる。身体が驚くほど軽い。腕を動かそうとすれば、思った通りに動く。足を踏み出せば、これまで以上に滑らかに身体が前へ進む。まるで、長年身につけていた重い装備を、ようやく脱ぎ捨てたかのようだった。

 

「……すごい」

 

富竹は小さく呟いた。

 

「本当に……すごい力だ」

 

黒瀬が感嘆の声を上げる。

 

「……富竹さん。まだ無理は禁物ですよ」

 

「ああ。分かっているよ」

 

富竹は頷いた。そして、ふとガラスの向こうへ目を向けた。そこには鷹野が立っていた。富竹はいつものように笑った。

 

「……三四さん!」

 

鷹野が顔を上げる。富竹は大きく親指を立てた。

 

「……どうやら、上手くいったみたいだね!」

 

「…………」

 

鷹野はしばらく黙っていた。やがて、小さく笑う。

 

「……そうね」

 

彼女は静かに頷いた。

 

「……本当に、よかった」

 

しかし、その声には、研究の成功を喜ぶ研究者としての興奮よりも、目の前の男が無事でいてくれたことへの安堵が強く滲んでいた。長年追い求めてきた研究成果。人間の能力を、従来の限界から解き放つ技術。その可能性が、ついに実証された。

 

しかし、鷹野三四がこの日のことを思い返す時、真っ先に浮かぶのは、測定器に表示された数値でも、研究員たちの歓声でもないだろう。苦痛に顔を歪めながら、それでも自分の研究を信じると言った、一人の男の姿だった。そして、その男が最後に見せた、いつもの人懐っこい笑顔だった。

 

そして、その成果を最も喜んだのは、意外にも第二研究部門の黒瀬だった。

 

「……まさか、本当に成功させるとは」

 

黒瀬は資料を眺めながら呟いた。

 

「所長の研究も、捨てたものではありませんな」

 

「あら。今まで捨てるつもりだったのかしら?」

 

鷹野が笑う。

 

「いえいえ。そういう意味ではありませんよ」

 

黒瀬は肩を竦めた。

 

「ただ、これなら話は別です」

 

「……何の話?」

 

「以前、お見せした試作品のことですよ」

 

黒瀬は机の引き出しから、一枚の設計図を取り出した。

 

そこには、円形の防護装備が描かれていた。

 

「通常の人間では、これを十分に使いこなすことが難しい。しかし、富竹二尉ほどの身体能力があれば……」

 

「……なるほどね」

 

鷹野は設計図を見つめた。

 

「使いこなせる、というわけね」

 

「ええ」

 

黒瀬は僅かに笑った。

 

「それも、単に持ち運ぶだけではありません。彼なら、従来の防護装備とはまったく異なる使い方ができるかもしれない」

 

鷹野はその言葉を聞きながら、以前見た銀色の円盤を思い出した。あの時は、単なる試作品に過ぎなかった。

 

しかし今は違う。

 

それを使いこなせる人間が、現実に存在している。

 

「……面白そうね」

 

鷹野は微笑んだ。そして、ふと尋ねた。

 

「でも、ジロウさんはどう思うかしら?」

 

「……はい?」

 

「あの人、そんな大袈裟な装備を渡されたら、困ってしまうんじゃない?」

 

黒瀬は一瞬考え、それから小さく笑った。

 

「……そうですな。本人に聞いてみるとしましょう」

 

 

数日後。

 

研究所の試験施設に、一人の男が立っていた。黒に近い濃紺を基調とした特殊戦闘服。身体に合わせて調整された防護装備には、銀と赤の装飾が控えめに施されている。頭部には同じく濃紺のヘルメットを被り、その下からは見慣れた人懐っこい顔が覗いていた。

 

そして、左腕には一枚の円形シールド。盾の外周は艶を抑えた濃紺。その内側には鈍い銀色が広がり、中央には日の丸を思わせる深紅の円が配されていた。無駄な装飾を省いた三色の意匠は、軍用装備らしい堅牢さと、英雄の象徴としての存在感を兼ね備えている。

 

富竹ジロウは、手元の盾を見下ろした。

 

「……いやぁ。随分と立派なものを作ってもらったね」

 

黒瀬が笑った。

 

「あなたの能力に合わせて設計したものです。遠慮なく使ってください」

 

「……しかし、これは目立つなぁ」

 

「目立つことも、今回の計画では重要なのですよ」

 

「……どういうことだい?」

 

黒瀬は、傍らに置かれた資料へ目を向けた。そこには、『東京』から送られてきた新たな計画の概要が記されていた。

 

超人兵士(スーパーソルジャー)の実用化。国内での試験運用。

 

そして、将来的な広報活動への活用。富竹は資料を読んで、少しだけ困ったように笑った。

 

「……僕は、あまり人前に出るのが得意じゃないんだけどね」

 

「ご心配なく。最初から全国へ発表するわけではありません」

 

黒瀬は答えた。

 

「ただ、本部としては、今回の成果を分かりやすい形で示したいのでしょう」

 

「……なるほど」

 

富竹は盾を構えた。その重さは、以前の自分なら長時間扱うことが難しかったはずだ。

 

しかし、今は違った。

 

腕にかかる負担は驚くほど小さい。まるで、身体の一部になったかのように自然に動かせる。

 

「……ふむ」

 

富竹は盾を見つめた。この力を、何のために使うのか。その問いに対する答えは、まだ変わっていなかった。人を守るため。危険な場所にいる誰かを助けるため。

 

そして、できることなら。自分の大切な人を守るため。

 

富竹は盾を胸の前へ構え、ゆっくりと笑った。

 

「……悪くないね」

 

§

 

研究所の管理室。鷹野三四は、ガラス越しに富竹の姿を見つめていた。そこには、もはや以前の彼とは異なる身体能力を持つ男がいた。

 

自分の研究によって、その力を得た人間。人間の限界を超えるという、長年の研究が生んだ成果。鷹野は、研究者としての誇りを感じていた。

 

しかし、それ以上に。富竹が無事に笑っていることが、嬉しかった。

 

「……ジロウさん」

 

鷹野は小さく呟いた。彼はまだ知らない。自分の力が、これからどれほど大きな意味を持つことになるのか。そして鷹野自身も、まだ知らなかった。この男が、やがて研究所の運命を大きく変える存在になることを。

 

研究成果の完成を告げる報告書には、次のように記されていた。

 

『第三次人体機能強化計画・適性被験者第一号 富竹ジロウ』

 

その下には、新たな識別名称が付け加えられていた。

 

『CAPTAIN TOMITAKE』

 

研究所が生み出した、一人の超人兵士(スーパーソルジャー)。

 

後に人々から『日本の生ける伝説』と呼ばれることになる男。

 

キャプテン・トミタケの誕生であった。




<雑談>

自分でキャプテン・トミタケなんてキャラクターを作っておきながら、その姿を頭の中でありありと思い浮かべてしまい、一人でツボっていた作者です(笑)。

さて、皆さんご存じ、雛見沢の名物カメラマンこと富竹ジロウ。

しかし、今作の富竹は一味違います。

その名も、キャプテン・トミタケ!

『ひぐらしのなく頃に』の富竹ジロウと、マーベルの『キャプテン・アメリカ』を組み合わせた、本作オリジナルのヒーローです。

実はこのキャプテン・トミタケ、最初の構想では圭一スパイダーマンよりも先に誕生していたキャラクターなんですよねぇ……。

しかも、考えているうちに設定がどんどん膨らんでしまい、「いや、こいつ一人でMCUの単独作品を張れるんじゃないか?」なんて思い始める始末。

……さすがに自重しました(笑)。

ちなみに、作者がMCUで一番好きなヒーローはキャプテン・アメリカです。なので、今回の富竹には少々思い入れがあったりします。

さて、原作では「僕は富竹。フリーのカメラマンさ」と自己紹介していた彼ですが、今作ではなんと、国家公認の超人ヒーローとして活躍しています。

その力の源は、鹿骨総合生体科学研究所が開発した特殊な超人血清。

筋力、反射神経、持久力、回復力など、人体のさまざまな機能が大幅に強化されており、常人を遥かに超える身体能力を発揮します。

特に純粋な筋力に関しては、なんと、あのスパイダーマンをも凌駕するほど!

そして、彼の象徴ともいえる装備が、特殊合金製のシールドです。

「え? そこはヴィブラニウムじゃないの?」

……いやいや、雛見沢にヴィブラニウムなんて存在したら、それこそ大事件でしょう!?(笑)

というわけで、今作では研究所が開発した特殊合金を採用しています。

※ヴィブラニウムとは、マーベル作品に登場する架空の金属。衝撃を吸収するなど、極めて特殊な性質を持っています。まさにロマン金属ですね。

このシールドは優れた防御性能を誇るだけでなく、投擲武器としても使用可能。富竹の超人的な身体能力と組み合わさることで、攻防一体の強力な装備となっています。

しかし、キャプテン・トミタケの真価は、単なる身体能力の高さだけではありません。

元自衛官として培ってきた豊富な経験、優れた射撃技術、的確な戦術判断、そして何より、困難な状況でも冷静さを失わない精神力。

超人血清が彼に与えたのは力ですが、その力を使いこなすための資質は、もともと富竹自身が持っていたものなのです。

一方、スパイダーマンこと前原圭一は、蜘蛛の能力と自作のウェブシューターを駆使して戦う、正体不明の非公認ヒーロー。

国家に認められた英雄と、街の片隅で人々を助ける謎の蜘蛛男。

立場も、経験も、戦い方も異なる二人のヒーローが、これからどのような関係を築いていくのか。

ぜひ、お楽しみに!

ちなみに、今作の富竹なら、自己紹介もこんな感じになるのかもしれません。

「僕はキャプテン・トミタケ。政府公認のヒーローさ!」

……うん。

国家公認になっても、やっぱり胡散臭さは健在ですね(笑)。
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