織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

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はじめまして。処女作です。生暖かい目で見守って下さい。


序章 ぬらりひょんと九尾の狐
0‐1


 俺の名前は、いや言わないでおこう大した問題じゃない。

 年は二十歳を少し過ぎたぐらいだ。仕事は興信所勤め、まあ、ありていに言えば探偵だ。

 探偵と言っても皆が想像する様な物とは少し違う。

 格好付けた言い方をすれば本の探偵と言う事になる。

 簡単に説明すれば、歴史家や民俗学の教授などが本や論文を執筆する際、資料などを日本全国から探し出して来る仕事だ。

 そんなの探偵じゃ無いって?

 俺もそう思うが、俺の上司、つまりは探偵事務所の所長がそのほうがカッコいいと言い、事務所の名前を~探偵事務所としているため、職業は探偵と言う事になっている。

 日々、埋もれた古文書などを探していた我が社にある日一軒の依頼が来た。

 所長の大学時代の先輩、確か苗字は相良だったか、その夫妻から家出をした息子を探して欲しいと言う依頼だった。

 その家出息子は歴史が好きで、特に戦国時代マニアだそうだ。

 だから俺達の本業の途中で戦国武将縁の地に行った時、片手間で良いから注意を払ってほしいと言うことらしい。

 警察の方の捜索手続きは済ましてあるらしいので、ウチへの依頼はあくまで保険のような物らしい。

 所長はその依頼を快く承諾し俺にも出先でそれとなく注意してやってくれとの事だ。

 そんな俺が目を覚ました時トンデモナイ事に遭遇していた。

 

「ここは何処だ」

 

 混乱していた。

 それはそうだろう、俺の記憶ではついさっきまでわりと賑やかな街の中を歩いていたからだ。それなのに此処は山の中。

 管理された山ではない、原生林の中だった。

 

「落ち着いて考えてみるか。」

 

 誰も聞いてはいないのに、そんな独り言をいってしまうぐらいは動揺していた。

 

「たしか昨日から仕事で清洲に…」

 

「その後、時間があったから清洲城に行って…」

 

「門前の橋を渡った…」

 

 などと、ゆっくり時間をかけて思い出していた。 だが、そこまで思い出したとき背中に冷たい物が走った。

 

“そこまでしか記憶がない”

 

“俺は橋を渡り切ったのか?”

 

“わからない。記憶がない。”

 

 頭から血の気が引きながら強引に答えをだした。

 

「清洲城の橋を渡って山の中。」

 

 そうだった。

 そんな風にしか記憶がつながらない。

 

「だいたいここは何処なんだ。」

 

 そんな事を毒つきながら立ち上がろうとした時だった。

 

 

“ガサッ”

 

 

 後ろの方で何かが動く音がした。

 

「なんだ?誰かいるのか?」

 

 ほんの少しの希望と大きな不安の中音がする方へゆっくりと歩いていった。

 ガサガサと草木をわけながら音のする場所へ近づいた。

 そこには当然人などはいなかった。

 そのかわり、そこに居たものは

 

「狐?」

 

 そう、狐が一匹罠に掛かっていた。

 

「なんだ捕まっちまったのか?」

 

 そう声をかけられた狐は不安と興味深そうな目をして俺をジィと見ていた。

 

「んーと、これが罠だな。縄で捕まえるやつか。トラバサミじゃなくて良かったな。」

 

 そんな事を話しかけながら右前足に絡まった縄を解いていった。

 解きながら、ふと頭をよぎたことがあった。

 

 

“しかし、今どき縄の罠?えらく古臭い罠を仕掛けたものだな。”

 

 

 考えていた事が顔に出たのか狐が不安そうな声で鳴いた。

 

「ああ、すまんな。もう大丈夫だ。」

 

 狐にむかってクスリと笑ってみせる。

 

 その顔が意外だったのか狐は“クゥ”と唸った。

 

「ん?怪我をしている様だな。」

 

 ポケットからハンカチを出して狐の右前足あたりに巻き付けてやった。

 

「このままじゃすぐに解けちまうな、なんか紐があれば…」

 

 などと言いながら体中を探った。

 そんな俺を狐は不思議そうな顔をして見ていた。

 

「仕方無いか。」

 

 そんな事をつぶやきながら俺は首に巻いたチョーカーをはずした。

 チョーカーの先には俺の名前・生年月日・血液型そんな所がローマ字で刻印したプレートがあった。

 このチョーカーは十七歳の時旅に出たときになにが起きてもいいよにと祖母が持たせてくれた物だ。

 今、俺が俺だと示してくれる唯一の物だ。“だけど”いいよな。

 なぜかそんな気がした。

 

「ほら、もうすぐ終わるからな。」

 

 そう言いながら俺はチョーカーの紐でハンカチを固定した。

 

「もう大丈夫だぞ。ほら、もう行っていいぞ。」

 

 だが目の前にいる狐は不思議そうな恥ずかしそうな顔をしてじっとしていた。

 心なしか顔が赤くなって眼がうるんでいるようにも見える。

 

「じゃあな。もう捕まるなよ。」

 

 そう言って東西南北さっぱりわからない山を下山しはじめた。

 

「どうしたもんか」

 

 そんな事を思いながら歩いていると後ろから“ガサガサガサ”と大きな音を立てながら黄金色の物体が俺めがけて突っ込んできた。

 

『なんだ?』

 

 その一言も言えない瞬間に俺にむかって黄金色の物体が飛びついた。

 

「みゃー。みゃみゃみゃー。」

 

 黄金色の物体が俺の顔面に張り付いてさわいでいた。

 その物体を猫つかみにして顔から引き剥がす。

 狐だった。

 

「なんだお前か。」

 

「みゃー。」

 

「怒ってんのか?」

 

「みゃうー。」

 

 なんか解らんが違うらしい。

 

「一緒に来るのか?」

 

「みゃうん。」

 

 そうらしい。

 

「あ!女の子だ。」

 

「みゃーーーーー。」

 

 噛まれた・ひっかかれた・蹴られた・とどめの尻尾ビンタ。

 

「すまん。」

 

 あやまってみた、狐に。

 

「むー。」

 

 まだ怒っているらしい。

 どうしたものか頭をひねる。

 しょーがない最後の手段か。いいか狐だし。

 

「わかった。嫁さんにしてやる。だからもう怒るな。な。」

 

「みゃ、みゃみゃみゃみゃ。」

 

「そうだ、いまからお前は俺の嫁さんだ。」

 

「みゃーー。」

 

 すごく幸せそうな顔だった。

 頭にお花が咲きまくったような狐を抱き抱えながら話しかけた。

 

「おい嫁さん。」

 

「みゃうーーん。」

 

 まだ咲き誇っていた。

 らちがあかないので眉間にデコピン一発、強制的に意識を回復させる。

 

「みゃ!」

 

「戻って来たか?」

 

「みゃん。」

 

「街へ出たいんだが方角は解るか?」

 

「みゃ?」

 

 首をかしげる狐、やはり無理があったか。

 もう一度だけ聞いてみる。

「人がいる方向わかるか?」

 

「みゃ!」

 

 狐の左手?が俺の真っ直ぐ前をむいていた。

 どうやらこのまま進めと言っているらしい。

 なかなか賢い狐だ、ほんとか?

 騙されたと思って真っ直ぐ進むとホントに道に出た。

真面目に賢い狐だった。

 




次回はもう少し動き始めます。あの人達も登場します。
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