織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

24 / 80
新たな旅へ。
怪異譚の収拾?
いえ、慰安旅行です。


第三話 主と姫と異邦人
3‐1


〜姫路城 城下町 百間長屋〜

 

「ねえ、おちび。」

 

「なんじゃ色黒。」

 

「日焼けだって言ってるじゃんか!」

 

「何用じゃ、色黒。早よう申せ。わらわは勝負で忙しい。」

 

「勝負ってなんじゃんよう?」

 

「うん?幻灯館、製造販売の“人生すごろく”じゃ!」

 

 雫は無い胸を張り自慢げに言う。

 

「今回の勝負はボクの勝ちだ!むふー!」

 

「まだ判らぬわ!この色黒小坊主が!」

 

 すごろくの前でムキになる雫と黒田万吉。

 

「で、お前達は何をしてるじゃんよ?」

 

 花梨は横ですごろくを眺めている芽衣と又兵衛に問いかける。

 

「僕と芽衣ちゃんは、もう上がっているから見学です。」

 

「わたしがいちばんで、又ちゃんがにばんなの。」

 

 芽衣はさも嬉しそうに花梨に告げる。

 

「と言う事はじゃんよ。」

 

「最下位争いです。」

 

「そだよー。」

 

 それを聞いた花梨の目付きが変わる。

 

「それならあたしの話の方が重要じゃんか!おい!おちび!」

 

「何じゃぁもう、さっきからうるさいのう。早よう申して見よ。」

 

 雫の言い様に憤慨しながら

 

「何じゃんようその態度!まあいいじゃん、さっきから五十鈴さんがおかしいじゃんよ。」

 

「我が旦那様は何時でもおかしいぞ。」

 

「そうじゃ無いじゃんよう!なんか違うじゃんよう!」

 

 花梨は心底心配そうに言葉をつなげる。

 

「どれどれ?あー、あれならば問題無い。ほっておけ。」

 

 雫は何時もの事だとでも言う様な態度で応じる。

 

「でも、なんか悩みでもあるようじゃんか。」

 

 花梨の言葉を聞いた雫は、花梨をなだめる様に口をひらく。

 

「あれはな色黒、なにか良からぬ事を企んでおる顔じゃ。」

 

 雫が失礼な事をほざいているが、まあ、いつもの事だ。

 花梨が心配してくれるだけ良しとしよう。

 煙管をポンッと縁側に打ちつけ雫達の方へ振り返る。

 そして

 

「温泉に行くぞ。慰安旅行だ。」

 

「温泉かや!お前様!」

 

「たっのしそー!」

 

「えっ?温泉?いきなりじゃんよ!」

 

「え?え?え?え?」

 

 雫と芽衣はすぐにのって来たが、花梨と又兵衛は混乱している。

 源内と美奈都はこの場にはいない、近くの鍛冶場で何やら制作中との事だ。

 ちなみに兼相は…………雫のパシリで饅頭を買いに行っている。

 

「お主ら、このくらいで驚いていたらこの先もたんぞ。」

 

「そうだよ色黒ちゃん、ご主人さまはこんなんばっかだよ。」

 

 なぜか今日は失礼な事を言うヤツが多い。

「出かけて来る」と言う俺に「どこへじゃ?」と言う雫。

 

「源内と美奈都の所だ。あと堺にじい様を迎えに行く船が要るから四号の所だな。」

 

 俺の言葉を聞いて少し考えた後、雫が。

 

 

「ほう、らいだーまんの所かや。」

 

 

「「らいだーまん?」」

 

 全員の頭に?マークが浮かぶ。

 なんだそれ。

 

「雫ちゃん、らいだーまんってなに?」

 

 全員を代表する様に芽衣が質問する。

 

「四号じゃから“らいだーまん”じゃ。」

 

 雫は堂々と、さも当たり前だと言い切る。

 

「なんで?なんで?」と言う芽衣をほっておいて花梨が口をひらく。

 

「じゃあ一号から三号は何じゃんよう。」

 

「うむ、一号が猛で、二号が隼人で、三号がV3じゃ。」

 

「ちょっと待て雫。」

 

「なんじゃお前様。」

 

「なんで三号がV3なんだ?」

 

 俺の質問に、なぜ判らんと言う態度で雫は

 

「三号が志郎(しろう)ではややこしいじゃろ。」

 

「まあな。字は違うが、し、四が入っているからな。でも四号がライダーマンってお前、名前あったろう。」

 

「らいだーまんの名前かや?………………………………忘れた。お前様は覚えておるかや?」

 

「………………………………忘れた。」

 

「じゃろ。」

 

 雫はニヤリと笑い俺に言う。

 

「じゃあ行って来る。」

 

「うむ、気を付けてのう。」

 

 すかさず話題を変える俺と雫。

 表戸をくぐる俺の後ろで「雫ちゃん、らいだーまんってなに?」と言う芽衣、「無茶苦茶じゃんよう」と呆れる花梨、「お話に加われ無かったです」と泣き崩れる又兵衛の声が聞こえた。

 長屋を出てしばらく歩く、だがまだ長屋の前だ。

 姫路と言う所はほったて小屋と長屋しか無いのではないかと思ってしまう。

 長屋の端で足を止め「ここか?」と確認し、一息ついた後表戸を開ける。

「お疲れさん」と声をかけ一歩、鍛冶場の中に入る。

 入り口近くで饅頭を頬張っていた源内は俺の突然の来訪に驚き

 

「はう!ひゃんなしゃま!おひゅかれしゃまへす!」

 

 正しく言葉を紡ぐ事が出来ない様であった。

 源内の口から饅頭を取り上げ「美奈都は?」と問いかける。

「美奈都なら作品を洗いに外へ」と言いかけた所で裏口から美奈都が顔を出した。

 

「あ!五十鈴さんだ!何か御用?」

 

「ああ、御用だ」と源内から取り上げた饅頭を口に放り込みながら答える。

「なんですか?なんですか?」と楽しそうな美奈都と「あっ!」と声を漏らし顔を赤らめる源内。

 間接キスみたいだが……………。

 その事は、まぁいい。

 そんな事より本題だ。

 

「温泉に行くぞ。慰安旅行だ。」

 

「温泉!ホントに!」

 

「温泉ですか?」

 

 美奈都は素直に喜んでいるが、源内は少し戸惑っているようだ。

 

「どうした源内、温泉だぞ。何か問題でもあるのか?」

 

「いえ、そうでは無いんです。」

 

「ならどうした?」

 

 源内は困った顔をしながら恥ずかしながらと口を開く。

 

「温泉って初めてで……。」

 

「私も初めてだよ。たぶん芽衣も。」

 

 美奈都は何も気にする事は無いと源内に語りかける。

 

「そうか、なら存分に楽しむ事だ。」

 

 俺の言葉で何か吹っ切れたのか源内は

 

「はい。」

 

 笑みを漏らしながら返事を返して来た。

 

「それで温泉行きの面子は?」

 

「姫路に居る俺達と長五朗のじい様だな。清洲は遠すぎるし、店を閉めるわけにもいくまい。清洲組は別の機会だな。」

 

「そうですね。で、義父さまはどうやって姫路まで?」

 

 源内は最近癖になりつつある、あごに人差し指を付けながら首を傾げる。

 

「ライダーマン……いや、四号に迎えに行ってもらおうと思っているんだが?」

 

『らいだーまん?』と一瞬二人の頭に?マークが浮かんだ様だが

 

「じゃぁ。私、行って来ます。」

 

 源内が名乗り出る。

 

「頼めるか?」

 

「はい。任せて下さい。旦那様、美奈都、行って来ます。」

 

「「行ってらっしゃい。」」

 

 源内は出て行き、俺と美奈都はそれを見送る。

 

「ところで美奈都。」

 

「なんですか?五十鈴さん。」

 

「何を造っていたんだ?」

 

 美奈都は「それはですねー」と自慢げにたわわに実った胸を張ってから「これです!」と作品を差し出す。

 

「鉄面か?」

 

 般若の様な鬼を形どった面であった。

 

「はい。でも改良形なんですよ。」

 

 そう言って美奈都は鬼を形どった鉄面の口の部分をいじる。

 カチャッと小さな音がして鉄面の口の部分が外れた。

 美奈都はドヤ顔で「どうです?」と感想を求めて来る。

 

「で。外れるが、これがなんだと?」

 

 解らないと言う表情で美奈都の顔を見た。

 今度は、しょーがないなーと言う表情の美奈都が

 

「お口の部分が外れるんですよ。つまり!面を着けたままご飯が食べられるんです!」

 

 たわわな胸を揺らしながら自信満々に言い放つ。

 

「なるほど。一見バカバカしそうだし何に使うかは不明だが、最後まで仕上げてみな。」

 

 俺がそう言いと美奈都は元気よく「はい!」と返事を返して来た。

 その後、鉄面の塗装や装飾の事をいろいろ話していると源内が戻って来た。

 

「ただいま。あっ!旦那様、まだいらしたんですね。」

 

 この発言に、ムッとした振りをしながら

 

「いたらまずいのか?」

 

 源内は一瞬にして鋭い目つきになり

 

「そっ、そんな事ありません!断じてありません!お饅頭も買って来ましたし!」

 

 顔を近づけて叫ぶ様に言って来る。

 饅頭、関係あるのか?

 源内は面白く成長しているようだ。

 

「で、四号はなんて?」

 

「あっ、はい。明朝早くに出て下さるそうですよ。」

 

 と饅頭をもぐもぐ食べながら源内が言う。

 美奈都は隣で「おっまんじゅうー」と意味不明な歌を歌っていた。

 

「そうか。なら数日で合流出来るな。」

 

「はい、四号さんも海が荒れなければ、そのくらいだと仰ってました。」

 

 迎えの予定を聞き、俺は腰を浮かす。

 

「あ。旦那様、お帰りですか?」

 

「まあな。この後、村上衆に合わねばならんのでな。」

 

 俺の発言に二人は驚きの声を挙げる。

 

「村上衆ですか。何用で……?ま、まさか!花梨さんとの祝言の話ですか!」

 

「五十鈴あん!ほんほう!」

 

「バカ!そんな訳あるか。目的地までの移動の相談だ。あと……美奈都、取りあえず飲み込め。」

 

「そうですよね。」

 

 源内は安心した様に饅頭を頬張る。

 おちょくられた気分になった俺は源内の口から再度饅頭を奪い鍛冶場を出た。 屋内から源内の「もーー、旦那様!」と言う声が聞こえるが。

 ざまあ見ろだ。

 近くの漁村で漁を手伝いながら花梨が姫路を出るまではと待機している村上衆の下へ行き、今後の予定を調整し家路につく。

 その後の数日もにぎやかに過ぎて行く。

 

 

 

 

 長五朗のじい様も無事姫路に着き、皆と一緒に百間長屋でくつろいでいる。

 

「いやいや旦那様、驚きましたぞ。それにしても急ですな。」

 

 長五朗のじい様は開口一番そう告げて来た。

 

「足が見つかったんでな。ちょうど良いだろ?」

 

「足とは、私を迎えに来た者達ですかな?」

 

 じい様はあごに手をあて探る様に質問して来た。

 

「いや、別の者達だ。」

 

「ほう、して別の者達とは?」

 

「村上水軍の者だ。」

 

 しれっと真実を告げた。

 

「む、村上!海賊ではありませんか!」

 

「そうだ。ちなみにじい様を迎えに行ったのも小さいが海賊衆の者だ。そして、そこでウチのやんちゃ姫と口喧嘩しているのが村上武吉の娘だ。」

 

 再びしれっと真実を告げる。

 

「なっ!さすがは旦那様、海賊退治に赴いて海賊を仲間にしてしまうとは。長生きはするものですな。実に愉快。」

 

 じい様はホントに楽しそうに笑う。

 

「じい様、遠路はるばるご苦労だったな。今日はゆっくり休んでくれ、出発は明朝だ。皆、遅れるなよ。」

 

 言って長屋を出ようとする俺に長五朗のじい様が声をかけて来た。

 

「して旦那様、行き先はどちらで?」

 

 じい様の言葉に、皆はそう言えばそうだと俺に注目する。

 

「そう言えば言って無かったな。行き先は豊後の国、別府だ。」

 

 俺はニヤリと悪党の笑みをこぼした。

 




いかがでしたか?

それにしても相変わらず腰の重い連中ですね。
次話からは別府に場所を移してのお話しです。


感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。