織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

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里に到着、何がおこる事やら。


其の二

~雫里の里~

 

「到着。」

 

 そう言って犬千代は歩みを止める。

 雑木林の細い幅二メートルほどだろうか、道を抜けると里は姿を現す。

 その光景を見て勝家は言葉を失っていた。

 簡単に言えば驚いていた。

 初めて里を訪れる勝家の眼下にあったのは………………………普通の農村風景であった。

 だが、田畑は奇麗に整えられ、治水は行き届き未来ならば美しい農村百選に選ばれても不思議では無い美しさを持っていたが、この時代ではごく普通の農村風景であった。

 しかし一つだけ違う所があった。

 それは清州の街からさほど離れてもいないのに、この里の存在を知る者が極端に少ないと言う事だ。

 街道からは小高い丘と雑木林に隠され、里の近くを流れる川は大きく湾曲している為、川上、川下そのどちらから眺めても里は見えない。

 こんな独特な立地条件の為、この以前はただ村としか呼ばれていなかった雫里の里は非常に利便性の良い隠れ里となっていた。

 ボーゼンとする勝家の袖を犬千代がひっぱりながら声をかける。

 

「大丈夫?」

 

「ん?あっ!ああ、ごめん。ちょっとびっくりしてた。こんな所に里があるなんて。」

 

 勝家は犬千代にもう大丈夫と声をかけ二人揃って里の中心部へと歩みを進めた。

 里の中央通り、と言っても他より少しばかり広いだけの道なのだが、その道を揃って歩く。

 その道の先に人だかりがあるのが見えた。

 一人の大人の周りに二十人ほどの子供達が群がっている。

 人だかりに近づいた時、二人は真逆のリアクションを取る。

 犬千代は平然とその大人に向かい

 

「こんにちは。」

 

 言ってペコリと頭を下げる。

 勝家の反応は

 

「………で、でかい!」

 

 驚きの反応であった。

 件の大人は畑仕事の帰りなのか、肌をほとんど隠す様な野良着に鍬を担ぎ、頭からすっぽりと手ぬぐいを被り、顔には白い面をつけていた。

 初めて見る者には異様に見えるが群がっている子供達は口々に「仕事おわったのー?」「遊ぼうよ~」となついている。

 その大人は手で子供達の頭を一撫でずつし「チョット待ッテクダサイ」となだめた後、犬千代達の方へ向き

 

「コンニチハデス。犬千代サン。イラッシャイマセ、オ客様。ワタシ弥助イイマス。」

 

 丁寧に挨拶をする。

 挨拶を聞いた勝家は

 

「あっ!こ、こんにちは!あたし!柴田勝家って言います!」

 

 慌てて挨拶を返す。

 

「今日ハ何ノゴ用デ?」

 

 もっともな質問をする弥助。

 

「年寄りは?」

 

 犬千代は質問を質問で返す様につぶやいたが弥助は理解できた。

 

「旦那様ノオ屋敷デス。長五郎サント一緒デスヨ。イツモ大変デスネ。」

 

 そう言ってにこりと笑った………様な気がした。

 犬千代は丁寧に礼を言い勝家の手を引きながら歩きだしたが、思いだした様に振り向き

 

「もういっこあった。美奈都は?」

 

「美奈都サンナラ鍛冶場デス。」

 

 弥助も子供達に手を引かれながら振り返り答える。

 犬千代は「ありがとう」と再度礼を言い、今度こそ目的の場所へと歩き出した。

 

「なあ犬。」

 

「なに?」

 

 弥助と別れた後、無言だった犬千代に勝家は話しかける。

 

「あの人、弥助って言ったっけ?変わった人だよな。」

 

「何で?」

 

「だってさ、首筋とか足首とか服で隠れていない所に墨を塗っているんだぜ。新手の日焼け止めか?」

 

 勝家のすっとんきょうな質問…………ではなく、この時代の人間ならば誰もが勘違いする弥助の肌に関する質問に、最近里に良く出入りし弥助の素性を知っている犬千代は

 

「そう。弥助は肌が弱い。」

 

 本日の勝家との会話によほど疲れたのか完全に説明を放棄した。

 

「そっかぁ、今度あたしもやってみようかな?姫様や万千代にも教えてやったら喜ぶかな?どう思う?」

 

 無邪気に言う勝家に犬千代は表情をひきつらせながら

 

「それは止めたほうがいい。」

 

「そうかぁ。それで犬、どこへ向かっているんだ?」

 

「今?今は美奈都のところ。」

 

「あたしの相談の方か。お前の用事はいいのか?」

 

「いい。たぶんもう手遅れ。」

 

 犬千代の発言に勝家は?となるが黙ってついて行く事にした。

 しばらく無言のまま歩く二人。

 ほどなくしてリズム良く槌の音が響く一画に到着する。

 犬千代は迷うことなく一軒の鍛冶場と思われる小屋に向かい表戸を引き声をかける。

 

「美奈都、居る?」

 

「誰?あっ!犬千代ちゃんだぁ。どしたの?」

 

 小屋の奥で机に向かい何やら書物を開いていた人物、孫六美奈都が顔を上げ近寄って来る。

 小屋の中はさっきまで火を扱っていたのか外よりも温度が高かった。

 そのためか美奈都は膝上までのハーフパンツに腹がけと言ういでたちだった。

 解り易く言うと長めの半ズボンを穿いた金太郎と言う格好だ。

 したがって脇の辺りからたわわに実った彼女の素敵な物がはみ出しそうになっている。

 いや、三分の一ははみ出していた。

 そんな恰好で小走りで近寄って来る美奈都。

 当然の如く、三分の一はみ出していた素敵で柔らかな物は、たゆんたゆんとはみ出しの面積を変える。

 美奈都が一歩踏み出すごとに三分の一、二分の一、三分の一、二分の一、三分の一、二分の一、三分の一、二分の一、と。

 その光景を犬千代は黙って見つめて、いや、怨みがましく黙って見ていたが、慌てたのは巨乳仲間である勝家だ。

 

「お!おい!ちょ!ちょっと!お前!なんて恰好してんだよ!」

 

「なにが?」

 

 慌てる勝家の姿に首を傾げる美奈都。

 

「な、何がって、胸がこぼれそうじゃないか!」

 

 勝家の指摘を受け自分の胸部辺りをじっと見る美奈都。

 そして、あぁと一声発した後

 

「暑かったから。」

 

 と言って、二パリとほほ笑んだ。

 

「暑かったからって、お前、女の子だろ!はずかしく無いのか。」

 

 そう言ってまくし立てる勝家の腕を軽く叩きながら犬千代はなだめにかかる。

 勝家はそれに気づき何とか怒気を治める。

 かたや美奈都は「よく言われるんだよねぇ」となれっこの様子。

 本日何度目かの脱線話にウンザリしたのか犬千代は話を本題に戻す努力を開始する。

 

「おっぱいはもういい。お腹いっぱい、呪われろ。」

 

「何でだよ!」

「なんでぇ!」

 

 またもや本日二度目のステレオでの突っ込み。

 それに再度ウンザリした顔をしつつ犬千代は話を続ける。

 

「さっきのはウソ。背のちっちゃいおっぱい、背のおっきいおっぱいが相談があるって。」

 

「背のちっちゃいおっぱいってわたしですか!」

「背のおっきいおっぱいってあたしか!」

 

 またしてもステレオでの突っ込み。

 だがもはや弁明する気も無い犬千代は話を進める。

 

「うるさい。じゃあ言い直す。おっぱいがおっぱいにおっぱいの事で相談があるって。おっぱい。」

 

「最後のおっぱいはなんですか?」

 

「なんとなく。おっぱい。」

 

「なるほど、何と無くですか。おっぱい。」

 

「そう、なんとなく。おっぱい。」

 

「何と無くですね。おっぱい。何か楽しくなって来ましたね。おっぱい。」

 

「そう?おっぱい。」

 

「はい!おっぱい。」

 

 おっぱいの連呼が続く。

 

「おい!お前らいい加減にしろ!」

 

 やっとの突っ込み。

 この場に金髪のやんちゃ姫や白い腹黒お姉さんが居ればもっと早く決着がついていたが、勝家の突っ込みレベルではこれが限界の様だ。

 そしてやっと本代へ

 

「それで何の相談ですか?あっ!自己紹介がまだでしたね。私、孫六美奈都です。」

 

 言ってペコリと頭を下げる。

 

「あっ、あたしは柴田勝家。六って呼んでくれ。」

 

「はいっ。よろしくね六ちゃん。で、相談って?」

 

 勝家は清州の街で犬千代に話したのと同じ内容の話を美奈都に告げる。

 

「なるほど~。おっぱいが大きくて苦しいと。」

 

「ああ。そうなんだよ。」

 

 美奈都はパンッと両手を合わせ

 

「ちょうど良かったです。今読んでいた書物が役に立ちそうです。」

 

 ちょっとお待ちくださいと言い美奈都は小屋の奥に引っ込む。

 再び戸口に現われた美奈都の手には一冊の本が握られていた。

 本のタイトルは“あまぞねすの生態”だった。

 




いかがでしたか?

おっぱいおっぱい言ってますね(笑)。
勝家と美奈都が揃えばおっぱいです。

コメディはここまで。

次話では、驚愕の犬千代のお使いの内容が明らかに!

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