織田信奈の野望〜ぬらりひょんと狐の嫁入り〜   作:海野入鹿

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井ノ口編終了です

この井ノ口編、登場人物が店主とか職人とかで「」で話すかんじでも無かったので、こんなかんじです。
少々読みづらい感じではありますが、始まりです。


井ノ口の街 其の二

 いざ俺が料金を払おうとしたら先代店主が『今回はこちらがご迷惑をおかけしたしだい、お代は金物の分と交換の代金だけで結構』 『息子の勉強代だと思えば安い物』と言ってくれた。

 俺は『そうかい、すまないな』と礼を言い雫に『良い物はあったか?』と声をかけた。

 すると『うむ、これじゃな』と緻密に編みこまれた竹籠とこれまた見事な縫製の皮細工を持って現れた。

 その二つを手に取りマジマジと見つめ俺は先代ではなく今の店主に声をかけた。

 

「店主。」

 

 呼ばれて少し驚いた様だがすぐに『はい、何でしょう』と答えて来る。

 

 「この二つを作った職人を教えては貰えないか?」

 

 と頼みこんだ。 店主は何のためにと考えたようだが『少々お待ちを』と言い奥へと引っ込んだ。

 店主が引っ込んだため店には先代・俺・雫の三人が残される。

 すると先代が

 

「息子の顔を立てて頂きかたじけない。」

 

 バレてたのか。

 

「しかし職人を調べてどうなさるんですか旦那様?」

 

 と探りを入れて来た。

 俺は素直に

 

「いや、旅に必要な物を作って貰う傍らで少しの金儲けかな。」

 

 そう言って笑いあった。

 そんな会話が終わる頃丁度店主が戻って来て職人二人の住まいを教えてくれる。

 お代は商品と引き換えと言う事だったのでまた来ると言い店をでる。

 店を出る時に先代が『儲かりそうなら一口乗らせて下さいませ』と言って来たので『清洲にでも俺が店を出す時その店の店主として呼ばせてもらうよ』と答える、すると『楽しみにしていますよ旦那様』と言ってくれた。

 なかなか気持ちの良い人物だ。

 その後は主人に教えて貰った職人二人に会いに行きこちらの指示通りの物を作ってくれるよう頼み雫と俺は旅籠へと連れ立って帰った。

 

 

 

 井ノ口の街に着いてから一週間ほど経った頃、俺達に客が来たと女中が知らせに来た。

 旅籠の玄関に出ると男の子が三人並んでいる。

 俺は何事だ?と思いはしたがその男の子達に『何用だい?』と尋ねた。

 三人は少し躊躇したのち『自分は使いの者です×3』と元気な声で返事をした。

『文殊屋さんと竹細工職人と革細工職人さんのかい?』そう俺が問いかけると『はい』とこれまた元気良く返事を返して来た。

 用事は頼んでいた物が出来たので取りに来て欲しいとの事だった。

 男の子三人に僅かばかりの駄賃をあげ俺は二階に向けて少し大きめの声で呼び掛けた。

 その声を聞いて二階からとてもおしとやかと言えないスピードで雫が降りて来た。

 それを確かめて男の子達にすぐに行くとそれぞれの親方に伝えてくれと頼み俺と雫も出かける旨を旅籠の主人に伝え準備をする。

 道を歩いている時不意に雫が聞いてきた。

 

「お前様よ、どこから回るのかや?」

 

 俺は少し考えてから

 

「お前が一番不満を持っている物からかな。」

 

 そんな事を言いながら連れ立って目的地へ向かった。

 

「ここは竹細工職人の住まいじゃな。」

 

 言う雫に頷いて表戸を開け声をかける。

 

「大将!出来たらしいな。」

 

 そう声をかけると、少しやせ気味で目付きの鋭い中年の男が『おお!大将待ってたぜ』と立ち上がり注文の品を見せてくれた。

 俺はそれを手に取りぐるりと一周見回した後ノックをするように軽く叩いたりしてから一言

 

「いい出来だ。やっぱり大将の腕は見込み通りだったな。」

 

 そう言っていつもの悪党の笑みではない笑顔をみせた。

 

「いやあ、凄いのはあんたの方だ大将。かまどの燃料ぐらいにしか使い用の無かったあれでこんな物を考えるなんてな。」

 

 俺は手の中にある物“麦わら帽子”を眺めながら『そんなもんか?』と思わずにはいられなかった。

 少し多めに代金を払いしっかりと礼を述べ俺達は次の目的地に向かった。

 その道中、人目が無い路地に入り雫の頭から帽子を取り代わりに出来たての麦わら帽子をポンと被せた後『どうだ?』と聞いてみた。

 雫は麦わら帽子のつばを掴んで角度をいろいろと変えながら

 

「ばっちぐーじゃ!気に入ったぞお前様。」

 

 と実に朗らかに笑う。

 気に入ってくれてなによりだ。

 雫がルンルンと気分良さそうに歩いていると二つ目の目的地に着いた。

 革細工職人の仕事場だ。

 先ほどと同じ様に声をかけ仕事場に入る。

 ここの親方は寡黙であまり話さない男だった。

 目の端に俺達を見つけ無言で立ち上がり注文の品二つを目の前に置いた。

 その一つを前に雫は『おおー』と声を挙げる。

 こちらも気に入ったようだ。

 

「背負って見てもいいかや?」

 

 と怖気づきもせず雫は親方に話しかける。

 親方は少し表情を緩め首を縦に振った。

『うんしょ』と小さな声を出して雫は赤い色をした背のうを背負い

 

「うおー!ぴったりじゃ。すごいぞお前様!おやじもすごいぞ褒めてつかわす!」

 

『きゃっほー』などと言いながら決して広くない仕事場を赤い背のうを背負った雫が駆け回っていた。

 その様子を見ていた親方が『なあお前さん、あれは何と言う物だ?』と質問してくる。

 俺は少しポカンとした顔になり『ああ、そうか』と思いなおし『あれはランドセルと言う物だ』と親方に告げる。

『らんどせる?また珍味な』と親方は唸っていた。

 もう一つの品を、俺用のリュックサックの様な物も受け取り先ほどと同じように少し多めに代金を払って仕事場を後にした。

 

「残りはあと一軒じゃな。」

 

 と気分良さそうに雫が俺の前を歩く。

 だが雫の恰好は俺の予想よりもかなり風変わりであった。

 麦わら帽子をかぶった巫女服の金髪幼女が赤いランドセルを背負ってルンタッタと道のど真ん中を我が物顔で歩く……かなり濃いキャラになった。

 目立ちに目立ちまくってようやく三件目の目的地、文殊屋にたどり着く。

 

『ごめんよ』と声をかけようとした処テンションアゲアゲマックス状態の雫が

 

「たのもー!長五郎のじい様はおるかー!」

 

 などと、とてつもなく失礼なあいさつで店の門をくぐる。

 それを聞きつけ店の奥から先代店主長五郎が俺を出した。

 

「おお、おお、これまた元気なお嬢様のご指名だ。」

 

 あんな失礼な呼び出しにも関わらずニコニコとした様子だ。

 出来たじい様だ。

『煙管は出来ておりまぞ』と棚から桐箱を取出し『どうぞ』と俺に渡してくれる。

 次の瞬間、雫の奇天烈な恰好を垣間見た先代店主は『これは!旦那様がこの間お聞きなったあれは』と相当驚いたような顔をして俺に問いかけて来た。

 俺はクスリと笑って『ああ、そうだ』と頷く。

 箱を開け仕上がった煙管を眺める俺の横で先代店主とその奉公人達は雫を囲み『ほうー・これまた珍味な、でもかわいい』などと概ね良好な感想をのべていた。

 代金は現店主に苦笑いしながら払い『騒がしくて済まんな』と謝っておいた。

 意外だったのは『いいえ、私も善き勉強が出来ました』と言ってくれた事だった。

 何時までもいい気になってファッションショーをしている雫に『帰るぞ』と声をかけ店を出ようとした時、先代店主が『旦那様のお名前をお教え願えませぬか?』と問われたので『俺の名かい?』と返したところ『いえ、お二人の』との事だった。

 どうしようか思案している内にウチのやんちゃ姫が

 

「わらわの名は雫。雫じゃ!」

 

 と堂々と名乗り挙げたので仕方なく俺も

 

「八房美津里(やつふさ みずり)と申します。」

 

 と一応名乗っておいた。

 まあ、偽名だが。

 

「八房殿に雫殿か。またお会い出来る事を願っておりますぞ。」

 

 などと嬉しい声を言ってくれる先代店主だったが、店を出る時に『清洲での店の話し楽しみにしていますぞ』と釘をさされた。

 ホントに店を出さないとダメかな?

 旅籠に帰る道すがら雫が

 

「なあお前様、これからどうするんじゃ?」

 

 と聞いてくる。

 俺は考える事無く

 

「今日はこの街に泊まって、明日は朝から清洲に向けて出発だ。」

 

 プランとも言えないプランを雫に聞かせた。

 

「あい解った。」

 

 ホントか?と思いながら納得しているならまあいいかと思う事にした。

 翌朝は旅立ちに相応しい感じの晴天だった。

 

「さて、行くか。」

 

「おー!サイコロの旅、二回目の結果は清洲!れっつ・ごー!」

 




どうでしたか?

次回は清洲編です。
織田信奈及び家臣団は出て来ません。かわりに、あの子達が出て来ます。

今回登場した主人公の名前ですが偽名の一つです。
この物語中、主人公は四つの名前を使い分けます。

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