外計局の訳あり男とロスカリファ   作:Bestmeever

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今回は、今後の方向性を考える参考としてオリジナルストーリー寄りの話になります。

原作ストーリーをなぞる形ではなく、アステルと各キャラクターの関係を中心にした場合、こんな雰囲気になるという一例として読んでもらえればと思います。

読んだうえで、原作沿いとオリジナル中心のどちらが好みかアンケートにも答えてもらえると嬉しいです。


オリジナルストーリー編
距離感がおかしい


リンの治療のため、俺は付き添いで算枢局に来ていた。

 

「なぁ、ドラキナ。座りづらくない?」

 

俺の膝の上に座ったまま、ドラキナが少しだけ振り返る。

 

「大丈夫よ」

 

「やっぱり距離感おかしいよ!!」

 

向かいにいたリンが、とうとう我慢できなくなったらしい。

 

俺とドラキナは顔を見合わせる。それから、揃ってリンの方を見た。

 

「……そうか?」

 

「……そうかしら?」

 

「そこからなの!?」

 

リンが額を押さえる。

 

「ドラキナ様って、ほかの人にもそんな感じなの!?」

 

「……いや?」

 

聞かれて少し考えてみたものの、少なくとも俺の記憶にはない。

 

「ドラキナが誰かの膝に乗ってるところなんて、見たことないな」

 

「ええ。だって、あなただけだもの」

 

「らしいっすよ?」

 

「じゃあおかしいのは君だよね!?アステル!?」

 

なぜ俺に飛び火した。

 

息を荒げながら指を差してくるリンを見ながら、改めて膝の上のドラキナを見る。

 

言われてみれば、確かに距離は近いのかもしれない。

 

「でも、ずっとこんな感じだよな?」

 

「そうね。だって、あなたって妙に他人って感じがしないのよ」

 

ドラキナは当然のようにそう答える。

 

それが余計に分からないらしく、リンはしばらく俺たちを交互に見てから尋ねた。

 

「……二人って、会った時からそんな感じなの?」

 

「いや。初対面の頃は、もうちょっと距離あった気がするけど」

 

「そうかしら?」

 

ドラキナが頬に指を当てる。

 

「でも、初めて会った時はいろいろあったわね?」

 

「いろいろ……あった、のか?」

 

思い返してみる。

 

あれはまだ、俺が外計局に入ったばかりの頃。

 

百年後の今にもサンブリンガーが存在していると知って、一度会ってみたいとヴェリナたちに頼んだ時のことだった。

 

◇

 

「なぁ、ヴェリナ。俺、サンブリンガーに会いたいんだけど、何とかできない?」

 

唐突なお願いだったせいか、ヴェリナが珍しく面食らった顔をした。

 

「アステル?あなた、自分が何をお願いしているのか分かっている?」

 

ヴェリナは口元に扇子を添え、少し呆れたように俺を見る。

 

「あなたはまだ外計局に入って間もないから実感がないのかもしれないけれど、そう簡単にお会いできる方ではないのよ」

 

「そうかもしれないけど、俺は確かめたいことがあるんだよ」

 

「確かめたいこと?」

 

「そのサンブリンガーが、俺の知ってるサンブリンガーなのかを確かめたい」

 

俺が真顔でそう言うと、ヴェリナはしばらく何も言わなかった。

 

普段ならまた変なことを言い出したと流されてもおかしくない。けれど今回は、俺が冗談で言っているわけではないと分かってくれたらしい。

 

少し考えたあと、ヴェリナが口を開いた。

 

「算枢局を統括しているドラキナ様なら、治療という名目でお会いできるかもしれないわ。私から少し掛け合ってみましょう」

 

「マジ!?ありがとう、ヴェリナ!」

 

「お礼ならそうね。早く仕事を覚えて返してもらえるかしら?」

 

立ち上がりながら返された言葉が、思い切り痛いところに刺さった。

 

これまで書類仕事なんてほとんどやってこなかったせいで、外計局に入ってから覚えることが多い。いまだにヴェリナやノルムーに聞かないと分からないものも少なくなかった。

 

「が、頑張ります……」

 

「そうなのだ!早く仕事を覚えて、ノルムーの仕事も押し付け――任せてやりたいのだ!」

 

正面から余計なことを言ってきたノルムーを睨む。

 

「お前はサボりたいだけだろ!」

 

「人聞きの悪いこと言うんじゃねーのだ!!」

 

「二人とも?」

 

ヴェリナの声が一段低くなった。

 

「口だけではなく、手も動かしてもらえると嬉しいのだけど?」

 

「「はい……」」

 

◇

 

俺がサンブリンガーに会える機会は、思っていたよりずっと早く訪れた。

 

ヴェリナが算枢局へ掛け合い、かなり融通を利かせてくれたらしい。

 

「アステル?分かっているでしょうけど、相手はこの国のトップの一人よ。くれぐれも粗相がないようにね?」

 

「分かってるよ」

 

「本当に分かってるのだ?」

 

横からノルムーが疑わしそうに覗き込んでくる。

 

「お前にだけは言われたくないんだけど!?」

 

「あなたもよ、ノルムー?」

 

「今日のヴェリナは手厳しいのだ!」

 

そんなやり取りをしながら、俺たちは算枢局へ向かった。

 

案内に従って建物の奥へ進み、やがて一つの執務室の前で足を止める。

 

この扉の向こうに、サンブリンガーがいる。

 

そう思うと、さすがに少しだけ緊張した。

 

俺は一度だけ息を整えてから扉をノックする。

 

「入ってちょうだい」

 

返ってきた声に、胸の奥がわずかに沈んだ。

 

違う。俺が知っている声とは、似ても似つかない。

 

それでも、もしかすると、百年前に知っていたあいつの何かが、まだここに残っているかもしれない。

 

そんな期待を完全には捨てきれないまま、俺は扉を開いた。

 

「失礼しま……す?」

 

中に入ったものの、想像していた姿がどこにも見当たらない。

 

思わず視線を下げる。

 

そこにいたのは――

 

「初めまして、かしら?サンブリンガーのドラキナよ」

 

俺の知っているサンブリンガーより、ずいぶん縮んでいた。

 

「サン……ブリンガー?」

 

「ええ、そうよ?」

 

全然違う。

 

俺の知っているサンブリンガーは、もう少し大人の女性だった。少なくとも、目の前にいるこんな小さな少女じゃなかったはずだ。

 

「あなたがアステル?」

 

名前を呼ばれて、ようやく我に返る。

 

「は、はい!」

 

「何か聞きたいことがあるって聞いたのだけど?」

 

俺はドラキナをまっすぐ見た。

 

「……俺のこと、覚えてますか?」

 

「……もしかして、あたし今ナンパされてるのかしら?」

 

「ぶっ!」

 

横でノルムーが盛大に噴き出した。

 

「ヴェリナ!やっぱこいつやべー奴なのだ!」

 

「アステル?」

 

ヴェリナまで目を細める。

 

「い、いや!そういう意味じゃないんですけど!!」

 

慌てて否定すると、ドラキナは口元を緩めた。

 

「冗談よ?」

 

そういう場が凍る冗談はやめてほしい。

 

「そうね。あなたの問いに答えるなら――あたしは、あなたを知らないわ」

 

「……そうですか」

 

分かっていたはずなのに、その言葉は思っていたより重かった。

 

百年も経っている。姿も声も違う。そもそも同じ相手だなんて保証はどこにもなかった。

 

それでも、少しくらいは期待していたらしい。

 

「でも」

 

俯きかけた俺に、ドラキナの声が続いた。

 

「不思議なのよね。あなたのことは知らないはずなのに、どうしてか他人って感じがしないの」

 

「……え?」

 

ドラキナが首を傾げる。

 

「あなたは何か心当たりがある?」

 

そう聞かれて、俺は無意識に胸元へ手を当てていた。

 

俺の仕草を見たドラキナが椅子から降り、こちらへ歩いてくる。

 

そして俺のすぐ前まで来ると、胸元へそっと手を添えた。

 

「……」

 

ドラキナの表情が、ほんの少しだけ変わる。

 

俺にも、その理由は何となく分かった。

 

……そこまで分かるのか。

 

「ドラキナ様?」

 

後ろからヴェリナの声が飛んでくる。

 

ドラキナは俺を見る。

 

俺も何も言わずに見返した。

 

「……いいえ。少し気になることがあっただけよ」

 

「気になること?」

 

ノルムーが首を傾げる。

 

「今はまだ、気にしなくていいわ」

 

それ以上、ドラキナは説明しなかった。

 

俺も口を挟まない。

 

今ここで話すようなことでもない。

 

ドラキナは胸元から手を離すと机へ戻り、電話を手に取る。

 

「エルダとリンドヴェルヌを呼んでちょうだい。ええ、できれば急ぎで」

 

用件だけ告げて電話を切ると、ドラキナはもう一度こちらを向いた。

 

「たぶん、ほかの二人もあなたを覚えてはいないと思うわ」

 

「……ですよね」

 

「でも、あたしと同じものを感じるなら、何か手がかりにはなるかもしれないでしょう?」

 

ドラキナはそう言って、小さく笑った。

 

◇

 

しばらく待っていると、廊下の向こうから話し声が近づいてきた。

 

やがて扉が開き、二人の女性が部屋へ入ってくる。

 

一人には確かにサンブリンガーの面影があった。けれど、俺の記憶にいる彼女とは何かが違う。

 

そして、もう一人を見た瞬間――

 

「……サンブリンガー?」

 

思わず声が漏れた。

 

百年前、共に戦って、何度も話して、同じ時間を過ごしたサンブリンガー。

 

その姿と瓜二つの女が、そこに立っていた。

 

一瞬、本当に百年前へ戻ったんじゃないかと思うほどだった。

 

けれど、向こうから俺を見る目には、懐かしさも驚きもない。

 

俺を知らない人間の目だった。

 

「ドラちゃんに呼ばれて来てみたけど……お前が例のアステル?」

 

声を掛けてきたのは、もう一人の方だった。

 

こっちもサンブリンガーらしいが、ドラキナほど小さくもなければ、隣の彼女ほど俺の知る姿に近くもない。

 

……中ブリンガーとでも呼んでおこうか。

 

そんな失礼極まりないことを考えているとも知らず、彼女は俺の顔から足元まで遠慮なく眺めている。

 

その視線が、一瞬だけ俺の胸元で止まった。

 

隣の女も同じだった。

 

……やっぱりか。

 

二人は一度だけ視線を交わしたものの、何も言わなかった。

 

「確かに、妙に懐かしい感じはするわね」

 

「ああ。だが、私たちは彼を知らない」

 

俺の知っているサンブリンガーと瓜二つの女が、静かに答えた。

 

覚えていないこと自体は予想していた。それでも、あの顔で「知らない」と言われるのは少し堪えた。

 

「お前、名前は?」

 

中ブリンガーがこちらを覗き込んでくる。

 

「アステルです」

 

「アステル!」

 

名前を聞いた途端、彼女は人懐っこい笑みを浮かべた。

 

「わたしはリンドヴェルヌ・サンブリンガー!お前もいちいち『様』なんてつけなくていいから!」

 

「分かりました、リンドヴェルヌさん」

 

「もう、だから堅苦しいって言ってるってば!」

 

「いきなり呼び捨てはハードル高くない?」

 

「そう?まあ、そのうち慣れればいいけど」

 

なんだろう。

 

初対面のはずなのに、もう普通に話せている。

 

リンドヴェルヌもそれを気にした様子はなく、むしろ面白そうに俺を眺めていた。

 

その隣で、俺の知っているサンブリンガーと瓜二つの女も、静かにこちらを見ている。

 

「私はエルダだ。エルダ・サンブリンガー」

 

「……エルダ」

 

口にしてみても、当然その名前に覚えはない。

 

姿だけなら、間違えるほど似ているのに。

 

「どうした?」

 

「いや……すみません。知ってる人に、あまりにも似てたんで」

 

俺がそう答えると、エルダは少しだけ目を細めた。

 

「その人物が、百年前のサンブリンガーか?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

それ以上は聞かなかった。

 

ただ、エルダの視線だけがしばらく俺から離れなかった。

 

ドラキナがぱん、と手を叩く。

 

自然と全員の視線が彼女へ集まった。

 

「二人も、アステルからなんだか懐かしい感じがするんじゃないかしら?」

 

「ああ」

 

「するわね。会ったことないはずなのに、不思議なくらい」

 

二人が揃って頷く。

 

どうやらドラキナだけが感じていたものではないらしい。

 

「せっかくだし、あなたの身体を少し調べてみてもいいかもしれないわね」

 

ドラキナがそう口にした途端、ヴェリナとノルムーの様子が変わった。

 

さっきまで黙っていたヴェリナが、すぐに口を開く。

 

「ドラキナ様。アステルの身体については、その……あまり外部に情報を出したくない事情があるんです」

 

ヴェリナの声は穏やかだったが、表情は真剣だった。

 

「普通ではない身体だと知られれば、興味本位で近づいてくる者もいるでしょうし、場合によっては研究対象として扱われかねませんから」

 

要するに、下手なところに知られたらモルモットにされかねない、という話だ。

 

ノルムーも珍しく茶化さず、ヴェリナの隣でドラキナを見ている。

 

ドラキナは二人の様子を見て、すぐに事情を察したらしい。

 

「そういうことね」

 

それから俺へ視線を移し、柔らかく笑った。

 

「安心してちょうだい。あなたが望まない限り、検査の内容も結果も外には出さないわ。ここにいるあたしたちだけの秘密にしましょう」

 

「……それなら、お願いします」

 

「ドラキナ様、ありがとうございます」

 

ヴェリナの表情からわずかに力が抜ける。

 

ノルムーも隣で小さく息を吐いていた。

 

「まあ、詳しいことは分からないけどさ」

 

リンドヴェルヌが俺の肩を軽く叩く。

 

「お前のこと、別に嫌な感じはしないんだよね」

 

「あたしもよ」

 

ドラキナが続き、エルダも静かに頷いた。

 

「……私も同意見だ」

 

三人揃ってそんなことを言われても困る。

 

どうやら向こうにとっても、俺は完全な他人というわけではないらしい。

 

◇

 

「――って感じ!」

 

一通り話し終えて、俺は膝の上のドラキナを見る。

 

「懐かしいわね」

 

ドラキナも楽しそうに笑った。

 

「待って待って!!」

 

リンが勢いよく割って入ってくる。

 

「アステルが三人のサンブリンガー様と知り合った経緯は分かったんだけど!」

 

一度大きく息を吸う。

 

それから、俺の膝の上を指差した。

 

「結局なんでドラキナ様は膝の上なの!?」

 

俺とドラキナは顔を見合わせる。

 

改めて聞かれると、なんでだろう。

 

「さぁ?」

 

「そうねぇ……いつからだったかしら?」

 

「そこを思い出してよ!!一番重要なところなんだけど!!」

 

そんな話をしていると、執務室の扉が開いた。

 

入ってきたのはリンドヴェルヌとエルダだった。

 

「おっ!珍しいな、二人が来るなんて!」

 

俺が声を掛けると、リンドヴェルヌもぱっと笑顔になる。

 

けれど、その視線が俺の膝の上へ落ちた瞬間、ほんの一瞬だけ表情が曇った。

 

「……ドラちゃん?」

 

「なあに?」

 

「一応サンブリンガーなんだから、もうちょっと威厳とか気にした方がよくない?膝の上ってどうなのよ」

 

「そうかしら?」

 

ドラキナはまったく気にした様子もない。

 

それどころか、何かを思いついたように笑う。

 

「リンドヴェルヌも昔みたいに肩でも組めばいいじゃない。よくやってたでしょう?」

 

「ドラちゃん!?」

 

リンドヴェルヌの顔が一気に赤くなった。

 

なんだか二人だけで盛り上がっている。

 

昔は確かにリンドヴェルヌも、今よりずっと距離が近かった気がするけど、最近はそうでもない。

 

なんでだろうな。

 

二人を眺めていると、今度はエルダが俺の方へ近づいてきた。

 

「アステル。体調は問題ないか?」

 

「おかげさまで問題ないよ。休みもちゃんと取れてるし」

 

「一昨日休んだばかりだからな。無理はするな」

 

「なーんで俺の休みの日まで把握されてるの!?」

 

思わず声が出た。

 

エルダは表情一つ変えない。

 

「必要な範囲で把握している」

 

「俺の休みまで必要?」

 

「お前が無理をしないのなら、確認する必要もない」

 

「…………」

 

反論できない。

 

というか、そこまで見られてると思ってなかった。

 

「……いつも気にかけていただきありがとうございます」

 

「分かればいい」

 

淡々と返して、エルダはそれ以上何も言わない。

 

本当に、興味があるのかないのか、よく分からない人だ。

 

「……やっぱりみんな距離感おかしいよ!!」

 

とうとう耐えきれなくなったリンの声が、執務室いっぱいに響き渡った。

今後の展開についてアンケートです。 現在は原作ストーリーに沿って進めていますが、今後はどちらが読みたいでしょうか? ①原作沿いの展開を続けてほしい ②原作は必要な部分だけ取り入れ、オリジナル中心にしてほしい ②になった場合、現在の第13・14話と投稿予定の第15話は削除し、第13話から書き直す予定です。

  • 原作ストーリーに沿った展開
  • アステルたちのオリジナルストーリーを中心
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