雨宮さんの「教えてあーげない!」がついに聞けました。
キャー飛龍さーんイケメン!
アルフレッドお前最後それでシャイ〇ングの……? って思ったけど、見直すと思ったより似てなかった。
最初に感じたのは、温かさだった。
右手が誰かの手に包まれている。ゆっくりと瞼を持ち上げると、見知らぬ天井がぼんやりと目に映った。薄い布越しに、柔らかな光が差し込んでいる。
生きている、と思った。
腹に手をやろうとして、鈍い痛みに眉を寄せる。けれど、あの熱い感触はもうなかった。異形の腕に貫かれたはずの傷は、今は薄い皮膚に覆われて塞がっている。
顔を横に向けると、寝台のそばで誰かが椅子に座ったまま眠っていた。ツムギの右手を両手で握りしめたまま、こくりこくりと舟を漕いでいる。
マリーだった。
その目の下には、うっすらと隈が浮かんでいた。どれほどの時間、こうしていたのだろう。
ツムギが指先をわずかに動かすと、マリーの肩がびくりと跳ねた。顔を上げ、寝ぼけ眼でツムギを見る。その目がみるみる大きく見開かれていった。
「……ツムギ、姉」
「……おはよう、マリー」
かすれた声でそう言うと、マリーの顔がくしゃりと歪んだ。握った手に、ぎゅっと力がこもる。何かを言おうとして、言葉にならないまま、マリーはツムギの手に額を押しつけて泣き出した。
ツムギは空いている左手を伸ばし、その髪をそっと撫でた。十年前、怖い夢を見て泣きついてきた夜と、同じように。
やがて、部屋の入口に人の気配がした。
振り向くと、背の高い青年が顔をのぞかせていた。目が合った瞬間、その顔がぱっと明るくなる。
「あっ、起きた! よかったあ、ほんとによかった! ツムギ姉、ボクのこと分かる? ヴァンだよ、ヴァン!」
ヴァンは寝台のそばまで駆け寄ってくると、ツムギの腹のあたりにそっと手をかざした。温かな気配が、傷の奥にじんわりと染み込んでいく。そのあいだも、口は止まらない。
「いやあ、焦ったよ。運ばれてきたとき、ほんとにギリギリでさ。なかなか目を覚まさないし、マリーは全然寝ないし。あ、痛いとこない? お腹すいてない? 甘いものならいっぱいあるよ」
「……ヴァンが、治してくれたの」
マリーが、涙声のまま言った。
「ずっと、つきっきりで」
ツムギは、しばらくぽかんとヴァンの顔を見つめていた。
鍋の前で黙って火加減を見ていた、あの無口な子。何を考えているのか分からない顔で、指先でそっと示すだけだった子が、今、目の前でこんなにも喋っている。
十年という時間の長さを、ツムギは初めて実感した気がした。それでも、手当てを終えて照れくさそうに笑うその顔には、確かにあの子の面影があった。
「あ、そうだ! みんなに知らせてこなきゃ!」
ヴァンはそう言うなり、来たとき以上の勢いで部屋を飛び出していった。起きたよー、と廊下に響く声が、どんどん遠ざかっていく。
「……あれから、どうなったの」
水を少しだけ口に含んでから、ツムギは尋ねた。
マリーは、握った手に視線を落としたまま、ぽつりぽつりと話し始めた。
ミスラが崩れ落ちたあと、ツムギが気を失ったこと。シャオが背負って、W.I.S.Eの拠点から運び出してくれたこと。そのあいだ、あの男の子――カブトが、ツムギを気に掛けていたこと。
「何か、言いたそうにしてたの。ツムギ姉の顔を、何度も見て」
けれど、外へ出て落ち着く間もなく、カブトの姿は消えていたという。ほかの、過去から来た人たちも同じだったらしい。みんな、元いた時代へ戻されたのだろう、とマリーは言った。
ツムギは、天井を見上げた。
――その声。あんた、あのときの……。
少年の張りつめた顔が、脳裏に浮かぶ。あれは、何のことだったのだろう。自分は、あの少年に会ったことなどないはずだ。それなのに、あの少年は、まるでずっと前から自分を知っていたような目をしていた。
確かめる術は、もうない。
それでも、あの少年が最後まで自分の前に立ちはだかってくれたことだけは、はっきりと覚えていた。
マリーは、少しだけ表情を和らげて続けた。
「それから、みんなでここに戻ってきたの」
***
「ツムギ姉! 起きたって本当か!」
静けさを破って、廊下を駆けてくる足音が響いた。
部屋に飛び込んできたのは、髪の跳ねた青年だった。その後ろから、気の強そうな女性が、青年の襟首をつかまんばかりの勢いで追いかけてくる。
「カイル! けが人の前で走らない!」
「うるせえ、フー!」
ツムギは、思わず目を瞬かせた。
背も伸びた。声も変わった。顔つきも、すっかり大人のものになっている。それなのに、交わされるやりとりは、あの朝の台所と何ひとつ変わっていなかった。
こらえきれずに、小さく笑い声が漏れた。
カイルとフレデリカが、同時にツムギを振り返る。二人とも、一瞬、どんな顔をすればいいのか分からないという顔をした。
先に口を開いたのは、カイルだった。
「……なんだよ。なんで、黙って……」
言いかけて、カイルは言葉を切った。その目が、みるみる赤くなっていく。
「ごめんね」
ツムギがそう言うと、カイルは乱暴に目元をこすって、そっぽを向いた。
「……謝んなよ。そういうの、あとでいいんだよ」
「そうよ」
フレデリカが腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。けれど、その声もかすかに震えている。
「文句なら、これから十年分、山ほど言ってあげるんだから。覚悟しておきなさいよね」
いつの間にか、部屋にはシャオとヴァンも顔をそろえていた。狭い部屋に、大人になった五人がひしめき合っている。
それからは、もう止まらなかった。
カイルがこの十年でどれだけ強くなったかを得意げに語り、フレデリカがそれをいちいち訂正する。シャオが淡々と補足を入れ、ヴァンはその隙間を縫うように、誰よりも楽しそうに喋り続けている。マリーは、ツムギの手を握ったまま離そうとしなかった。
話したいことが、次から次へとあふれてくる。十年分の空白を、一晩で埋めようとするように、みんなが一斉に喋っていた。誰も、あの日のことを問いただそうとはしなかった。
「ねえ、ツムギ姉」
ふと、マリーが言った。
「元気になったら、また卵焼き作って。甘いの」
ツムギは、その顔を見つめた。ぬいぐるみを抱いて眠っていた小さな女の子が、今、目の前で笑っている。
「……うん。マリーの分だけ、ちょっと甘くしてあげる」
マリーが、嬉しそうに笑った。
話が途切れた、ほんのわずかな間だった。フレデリカが、少しためらうように視線を落とした。
「……ツムギ姉。ババ様のこと、話しておかなきゃね」
部屋が、静かになった。
「ババ様はね、もういないの。最期に、あたしたちに、マリーのことを頼むって言ったあとね。少しだけ黙って、それから、こう言ったの。『お前たちには分からんかもしれないが、ツムギのことも』って」
フレデリカの声が、かすかに震えた。
「ツムギって誰のことなのか、誰にも分からなかった。……でも、今なら分かる」
カイルが乱暴に目元をこすり、シャオが静かに目を伏せる。あれほど喋っていたヴァンでさえ、このときばかりは口をつぐんでいた。
ツムギは、何も言えなかった。
もう、会えない。十年前、許しなく踏み込んだあの人の心。確かめもせずに思い込んで、何も告げずに家を出た。謝りたかった。行き場のなかった自分を迎え入れてくれたことに、ありがとうと言いたかった。そのどちらも、もう届かない。
あの人は、覚えていてくれた。子どもたちの中から消えた自分のことを、最期の最期まで、あの子たちに託そうとしてくれていた。
涙が、頬を伝った。止めようとしても、止められなかった。マリーが、その肩をそっと抱き寄せた。
***
十年のあいだ、ツムギの居場所は、誰かの記憶の中にしかなかった。
本当の自分を覚えている者は、どこにもいなかった。末端の構成員たちの記憶に縫い込んだ、ありもしない自分。それだけが、ツムギのすべてだった。
けれど今、ここには本当の自分を知っている人たちがいる。名前を呼んで、笑って、怒って、泣いてくれる人たちがいる。
外はまだ荒れ果てた世界だ。明日のことは、誰にも分からない。
それでも。
「……ただいま」
小さくつぶやいた声に、五つの声が重なった。
「おかえり」
以上で本編終わりですありがとうございました。
AI調教大変でした。文章や構成もまだまだ雑なので大規模な手入れが欠かせない。
二次創作だとなおさらですね。
まともなAI文章書いている人(および自らの手で執筆している人)には頭上がりません。
あとアニメ1クールくらいのところでアニメの感想を書くために1話投稿します。
そのあとはまだ未定。放送形態とか聞いたら、盛り上げるためにおまけ投稿はする予定。