イカレポンチは意地でも勝ち逃げをし続ける。 作:永く輪
俺は新しく買ったマントを靡かせながら、暗い寒空のもと訪れた街を歩く。
ここは王国北端の街ヒラリヤ。
王都近隣の街から出て2ヶ月。改めて考えると北の方にいるとしか知らない相手を探して王国の端まで来てしまった。
どうやら俺が旅の足も兼ねてなんとか漕ぎ着けた一商人の護衛は王国を北に進んで遍在している村々を巡るらしい。
王国の端に来て一度、護衛を継続するかどうか問われたがこの街を出るまでは保留にしてもらった。
このまま北に進んで標的を見つけられるのだろうか、まぁ道中の街々で
こうしてみるとどーにも金蔓が多い。居ない街とか村もあるがそれにしたって、組織だったものが点在しているのは異常なのではないか?
まぁよい日銭になるからいいけど。
ここら辺りは寒いのでマントを買った時に一応犯罪者扱いされてるかも知れないという事に気がついて、買って以降はフードを深めに被っている。頭髪くらいは隠せるはずだ。
旅路は順調で、同じ護衛依頼に着いた'エクセリニカの天翼'の方々とはなるべく離れた距離感を維持している。
陽の気に殺されかねない。
依頼主である商人とはよく話す仲となった。ゆく先々の街や村の情勢だとか特色とか歴史を話してくれる。
記憶喪失らしい俺にとっては初耳な訳でそことなく移動時間の娯楽となった。
気になったこととかを質問してみると、ああそれは、と丁寧に教えてくれる。
何でこんな良くしてくれるんだろうな。金蔓の回収が目的である俺にとっては、由来の判らない善意は少し惑う。
一度聞いてみたところ、生きてれば俺くらいの息子がいたんだとか。それで北への足に困っていた俺に護衛の依頼をかけてくれたらしい。
人の温かみっていいなぁ。
「……お前らとは違って。」
回顧から戻った先には人間が紅い花弁と共に散らばっている。
いつものゴミ処理だ。何でこんなに人間の醜いところを見ると不快感と憎悪がこみ上げてくるのかはよくわからないが、手段はともかくいいことはしてると思うからいいだろ。
いつも通りのはずだった。
いや、いつも通りが異常だったのかも知れない。
俺の仕事?趣味は人を攫ったり手籠めにしたりして、性奴隷を供給、享受する奴等をナイナイして綺麗にすることだ。
大体俺が熟すときは、連れ去り後か暴行前だ。それを現行犯と見做して処す。
いつも現行犯だった。まだ大事なものは奪われる前だった。既に奪われた人もいたが、直面……はしたな。
まぁでも奴隷に貶めれる前に助けた人物のついでに助けたようなものだった。そことなく逞しかったのもあるのだろう、特に気にしてはいなかった。
いつも通り、ナイナイした奴等の拠点を漁って日銭を得る。そのはずだった。
奴等の拠点を漁り、開けた一つの扉から漏れ出す悪臭は眉を顰めるものだった。噎せ返るような余ったるい花の匂いに吐き気がした。
その先の光景を見て吐き気がする。
裸の少女がベッドの上で仰向けになっていた。
その瞳には何の光も映してなかった。
汚い、汚い白濁が撒き散らされていた。
最悪だ、これは現行犯の成れの果てだろう。処理が遅すぎた。
悔やむ必要は無い。そもそも俺が来なければこのまま…………………………チッ
一歩踏み込む。べちゃりと音がした。考えたくもない。
少女のそばまで来た。わざと足音を立てて近づいてそのたびに不快音を伴ったが、少女からは微塵も反応がない。微かに息をしているだけ。
白く濁らされた茶髪。少し開いた口。その瞳は何を映してきたのか。
「……なぁ」
その先に続ける言葉が見つからなかった。
少女の薄い瞳はゆっくりと俺の方へ動いた。
「……奴等は殺した。」
「…、……、…………、」
少し瞳孔が開いた、気がした。何か呟いている。耳を貸す。
「ころして」
「…ッ!」
既に生きる希望なんて奪われてしまっただろうに。
……仕方ないか。それもまた救いだ。
徐ろに片手の剣を逆手に両手で持ち掲げる。せめて一息に。
喉元へ一直線に振り降ろそうとした。目眩がした。
ーーーーーー ーーーー ーーー ーー
眼下には赤髪の女性が仰向けになっている。瞳には何も映っておらず、常に何か言葉にもならぬ譫言を垂れ流していた。
最後の言葉は"
どうにも出来なかった。どうしてもどうしようもなく最愛の人は壊れてしまっていた。
だから、愛しているよ、最愛の人、アル■■・■ラ■シド■■___
___ずっとずっとあの日の手の感触が消えない。
幾らでも殺してきた筈だ。この手で。
でもあの人を殺した感触だけはずっとずっとこの手にこびりついている。これで、これがいいと思った。一生忘れることはないだろうから。一生あの人を思い続けられるだろうから。
__本当に?
本当に殺すしか無かったのか?俺では確かにどうしようもなかった、でも、ほかの人なら?
あの魔術師に、かの薬師に頼み込めばどうにかはなったんじゃないか?
例え再び彼女が取られたとしても。
でもそれは、とてもとても耐えられない!
……そうだ、俺は選んだんだ彼女を殺す事を。どうしようもなかったんじゃない。したくなかったんだ。
俺は最愛の人を殺した。
なぁ、お前はどうだ?なぁ俺よ。殺すのか?どうしょうもないと言って。
まぁ別にそいつはいいか、何も関係ない。なんの関係性もない。ただの誤差だ。いてもいなくても変わらない、変わらなかった
俺みたいな奴だ。
______ __ _ _
ーーーーーーーーーーーーーーー
「かひゅっはァ゙」
激しく動悸がする。剣は首元寸前で止まっていた。
体がとてもとても冷たい。心底冷たい。辞めだ。
放り投げた元片刃刀は俺を非難するように音を立てた。
最愛の人何て知らない。何だ?今のは。
…『今の』ってなんだ?何かあったか?
少しの違和感を残しつつも、それはすぐに消えた。
それよりも目の前の少女だ。殺さないとしてどうする?到底生きていけるようには見えない。
少女はただただ紅く濁った俺を眺めていた。
殺されかけたのになんの反応も無しか。
ただ此方を見る、早く殺してとでも言わんばかりに。
その姿が、ひどく、心苦しい。
とにかくアレだ、ひとまずここから離れよう。この腐った匂いの中では気が滅入る。
ここの入口に投げたマントを回収しに戻って、マントでくるんで肩に背負う。
抵抗も何も無かった。俺を見る目が非難するように見えただけだった。
湯浴みさせたほうがいい。何処でさせるか。この街に銭湯はあったか?
まあいい、俺の大鍋を使うか。火は……宿屋に借りるか。となると俺の取った宿に帰るでいいな。
凍った腕の氷を砕いて大鍋に山盛り入れる。人一人入って余りある特大サイズだ。元は魔法薬精製用らしい。
鍋縁まで氷を入れてその中に火をつけたこぶし大の丸薬を入れる。
暫くしてボンッという大きな音と共に赤く光る。携帯用の水を温めるやつだ。それなりに高価だったがまぁまた買えばいいだろ。
宿屋の部屋を見やる。萎れた青く小さな花が生けてあった。その横に椅子に下ろした時のままの少女が身を包むマントを僅かに握っていた。
僅かな変化に期待を持ちつつも考える。毎度こうするのか?
俺はクソどものやることに首を突っ込んで阻止する。今までは今のような子は居なかったがこれからも続けるなら必ず出でくるだろう。
いちいちやっていては面倒だ。金は渡すから頑張って生きてくれ。そうやってきた。
でも、そうすればこの子はきっと死ぬだろう。この子には生きる気力がない。それでもなお、面倒を見るカスがいたから生きていたんだろうがソイツは殺した。
面倒だからいっそ
いや、良くない。
暫く沈黙が続いた、誰も動かない。少女はぼんやりと鍋を見て、俺を見ていた。
そろそろ頃合いか、火を消す。
「お前は湯に浸かれ」
……反応はない
「なぁ聞こえてるのか?」
きっと聞こえていても届いてないのだろうが。
「まぁいい、湯につけるぞ。」
マントを取ろうとして、少女がマントを握り締めるのが見えた。やめとくか。
そのまま湯に浸からせる。俺は部屋を出とくか。
「タオルは此処においておく、2枚あるから好きに使いなね。」
扉を閉める音は静かだった。
辺りは夜の帳が下りかけていた。心ともなく夕日が照らす。
ひんやりとした風が頬を擽る。グワグワする頭にとても心地よい。
ちょっと最近疲れてるのかもしれない。
…まぁ視界が2つもありゃ疲れるか。最近は自然と消えてた第二視点が消えなくなった。以前は出し方に手間取っていた事があったのだが、今はそれの逆だ。
………そのうち慣れるだろ。
それよりあれだ、拾った少女の独立スターターセットを集めなくては。
今はまさしく裸一貫状態だからな。衣服に住処、金は……日銭の稼ぎ方か…面倒だな。取り敢えず、衣服を入手するか。
まだ店やってるかな?
投稿時間って決めたほうがいいですかね?
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決めろ
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決めるな
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さっさとしろ
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遅い
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朝
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昼
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ばーん