イカレポンチは意地でも勝ち逃げをし続ける。 作:永く輪
ブレスを吐かれたり、吹き飛ばされたり腕が折れたりしたが、概ね順調だ。折れた骨は針で固定して初級治癒(聖)すれば治る。聖属性耐性激弱だからな。普通なら出血が止まる程度だ。
今は地に藻掻く青緑のデカ鳥を眺めつつ次のプランを考える。
救出目標はスカイバードの性質上まだ生きてるはずだが(雛の鳴き声が聞こえないので食われてないはず)
崖の上に巣があるからな…たどり着く道がない。
そういえば思ったんだが、動きが鈍くなるほどハリネズミにした上で追い針したらどうなんだろ、何か上手いこと行く気がするんだよね。
スキルの新しい使い道かなぁ?
端から見ると、トドメを刺さずにただ手を翳して棒立ちしているだけの変人だ。もしかしたらテイマーが魔物を従えようとしているように見えるかも知れない。
半分くらいは合ってる事になると思う。
暫くして、藻掻くだけだったスカイバードが動き出す。
その様はさながら墓より這い出る腐敗死体のようだ。
要はぎこちない動きってこと。俺が操っている。
勘が当たり、操れるのはいいんだがこれは飛べるのか?
コイツを飛ばして攫われた子供を救出しようと思ったけれどコレじゃ巣につく前に不時着しかねないな。
ああ、ごめん木に頭を打ち付けるつもりじゃ無かったんだ。終わったら殺すけど許して。
…どうやら気絶させたほうが滑らかに動くっぽい。
練習して上手く飛べるようにしてみるか。
暫く弄んでいると、ウルフが何頭か襲ってきたので、スカイバードを操って追い払う。
上手く飛ばせるようになったので、首に縋りつきながら飛ばしてみる。あっ地面が……
下は見ない。徐々に上昇していき、巣まで着いた。
巣には人間の子供とそのサイズの卵3つ、ゴブリンにウルフがいた。皆卵が孵ったときの生き餌だ。
子供をバードに掴ませて降下する。
卵も欲しいがあまり悪役みたいなことをすると反逆されるかも知れない。親に子を手放させるとかまさにそれだろ。まぁ親子諸共殺すんだけどね。
子供に解毒魔法を何度か掛けて様子見をする、できれば自力で歩いてくれればスカイバードを荷車に載せて村に戻れる。戻れた。もう夕方なので村に泊まらせてもらおう。
村の方は何か騒がしかったが、緊急性のある騒がしさでなかったから問題ないだろう、焼き鳥とサラダと硬いパンを食べてその日は寝た。
______。
………目が覚めた。
夜中だ。暗い。
何だろうか今日は寝付きが悪い日なのかな?
街に帰るか。
外に出ると霧が出ていた。月明かりが霧を照らして月光が見える。
目鼻の先しか見えない。これは……いや、街に帰るか。
ここらで危険な魔物は居ないし、目立った賊も居ない。
問題ないだろう。
こういう怖いような非日常は何だか面白い。
走って行こうか、足元に気をつけて。
少し湿った冷たい風が心地よい。
腰に付けた盾と剣がガシャガシャと煩いので手で押さえながら走る。
両手でやってると何か変だな。見られたくない。真夜中、(いや明朝だな。)なので見る人は居ないが。
盾と剣を右腰?に掛ける。こうなら片手で済むし見た目も悪くないだろう。多分。続行だ。えっほ、はっほ
早朝くらいになって街リンドネシアに着いた。自分の拠点の一つ西隣の街だ。はー疲れた。朝っぱらから何してんだろ?身体拭きたい。
飯屋と駅を探すか。
人気が無い、またかよ。まぁ早朝だしな。
歩いているとガラの悪いお兄さん方が路地裏で騒いでいたので、旅費を工面してもらった。既にボロボロだった貫頭衣の少年からは感謝もされた。いえいえこちらこそ!
食堂で朝餉をもらい、宿を取って身体を拭ってひと休憩。人の金で得たものは何とも言えない感じだな。
貸してもらった部屋の花瓶に挿さった花は萎れていた。
ギルドで討伐報酬を貰いたいが、村からの依頼報酬で2日くらいは行けるだろ。今日はもう休みでいいや。
ベッドで横になる。………いや、この街には魔導書店があった気がする。今の所持金では厳しいかもだが、一つくらいは買えるんじゃなかろうか。
せっかく氷属性の適性があるのに、駆け出しでは魔導書は高すぎて、今となっては無くてもやっていけてたから、宝の持ち腐れとなっていた。
火力不足を補ういい機会だ。店を探そう。
ここの宿屋のおばちゃんに聞いてみる。
「アンタ魔導書買うの〜?
腰に着けてる武器はなんなんだい?」
「いや、ちょっとトドメを刺すのに苦労してまして。」
「ふーん、まぁ出来ることが多いと便利なのは確かだね。
確か、表通りの商業ギルド(支部)の真向かいにあったかしらねぇ。戻ってくるんかい?」
「ありがとうございます。今日はこの街で過ごそうと思ってるので、戻ってきますよ。」
「はいよ、いってきな」
中々強そうなおばちゃんである。
魔術書店を探す道中はそこそこ栄えていた。石畳な上に馬車や獣車が街を走っている。
多分拠点にしている街、レガシアの方が栄えていると思うが。こちらの商業ギルドは支部らしい。
風と羽根ペンの看板に商業ギルド支部と書かれていた。
真向かいだったか、真向かいの建物は……合掌造りの木造建築物、重厚な両開きの大きな扉が聳え立っていた。
コレかな?
「たのもー!」
入ってみた。あっやべ人いた。
入り口正面にある、カウンターの向こうで本を読んでいた。
「いらっしゃいませ、認可証はお持ちでしょうか?」
なんともなしの表情で。
耳が熱い、勝手に熱くなるなよ。
「認可証…?」
「お持ちではないですね。では、」
強い風が顔に当たる感じがしたのでまばたきしたら、両開きの扉の前にいた。
コレが魔法か?
俺はこの建物に入ったよな…?
少し扉を開けて中の様子を見てみる。
正面にカウンターがあり、見覚えのある店員さんがこちらを見ている。
閉めた。
どうやら資格が必要なタイプの店らしい。
認可証とは何だろうか、宿屋のおばちゃんは特に言ってなかったし、知らないよな。
冒険者ギルドに戻ったら受付の人に聞いてみるか。
いや、商業ギルドの方の受付の人に聞いてみるか、少なくともカウンターの向こうの人は教えてくれそうな感じじゃない。
「失礼します」
商業ギルドの方は、賑やかだ。
聞くとところによると、魔法についてある程度の知見を持っていると見做された者に与えられる物が認可証らしい。魔法の師を取るか、学園とやらに入学すると貰えるらしい。
要は俺には無理ってことだ。滅茶苦茶に金かかるじゃねぇか。
コレはあれだ、氷魔法を使う冒険者を観察して見様見真似でやるのが現実的だな。
一応、魔力を練っての身体強化は年齢の割には上手いらしいから、コレを属性化させられればどうにか…
宿に帰って試行錯誤していると身体が凍った。
そりゃ身体に纏う魔力の氷属性を強めようとしたらそうなるわな。
だが、これで属性の発現はできるようになった。
後はこれを槍なりなんなりにして、飛ばせるようになれば、使えるだろ!
最悪、自分諸共凍結させればいい。俺には耐性がある。
魔法というのは不思議なもので、俺ごと凍った氷は解けなかった。助けてくれ。
全身氷に覆われて全く身動きできず、助けを呼ぼうにも声が出ない、
呼吸は?
全身が悪寒に包まれ取り返しのつかないことをやらかしたのだと悟る。
息、いきができな?は、ハァ、こ、このまま?くる、し、し、ぬ?
…何故か息は出来た。
少しパニクりすぎだ馬鹿。
このまま氷像となって死ぬのだろうか、できれば見世物にせず砕いてくれ…脳裏にマッドな貴族の屋敷に置かれている氷漬けの自分が浮かぶ。
どうしようどうしようどうしよう、見世物になるのは嫌だ。消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ、なんとか阻止しろ、消せ消せ消せ消せ消せ消せ。消えて!
………氷が溶けていく。
なんとかなったようだ。
「フーゥ、…ハーーァ、ヒー……」
深呼吸、一旦深呼吸。落ち着こう。
……落ち着いている。良し。
多分身体強化を解いたから解けたんだと思う。
左手を部分身体強化して、属性を顕現してみる。凍った。コレはこれで上手くすれば咄嗟の武器になるな。
身体強化を解除してみる。
溶けない。氷が溶けない。
いや、暫くすると溶け始めた。大体十分くらいか?
解除して十分くらいで溶け始める。
成る程、じゃあ次は全身身体強化しつつ、左手だけより強く強化して、左手だけ属性を顕現する。
……全身が凍った。
魔法で出した氷は消えることはなく、氷状態の維持に魔力が使われています。
魔力を込めると溶けるまでの時間を長くすることも、強度を上げることもできます。