イカレポンチは意地でも勝ち逃げをし続ける。 作:永く輪
奴隷さん達を解放して、隠し部屋の中身を確認してある程度分け合った。
途中、解放しようとした奴隷さんに殺されかけたが、魔力枯渇以外に自分の殺し方が分からなくなっていたので些事だ。
元奴隷さん達が去って静かになった隠し部屋を歩く。
大半が女性というのもあるんだろうが、肩身が狭かった。
臆するような目といつ気が変わって殺しに来るのかと怯える目、まぁ仕方がないぜ!
静かになった隠し部屋を歩き回る。
眼帯のおっさんは地下室がどうの言ってた。元奴隷さんはここを地下1階と言ってた。2階もあるのかも知れない。特に行く様子もなかったからない可能性もあるが、ある可能性が高い。
元奴隷さん達はそこには金目のものはないと見ていたのかも知れない。
部屋を探して、物をどかしてみるが特に下への通路は見当たらない。
まぁ十分に報酬は確保したしいいかと部屋を出ようとして
なぜか胸騒ぎがする。何かが叫んでいる。まだだと。
なんだ?何を見落としている?取り敢えずこの部屋破壊する。
破壊、破壊破壊破壊破壊!
手から魔力が零れ出て溢れて弾けて飛ぶ。
土砂が露出し土が舞い上がり、淀む。
こんなに魔力あったっけ?
そんな疑問は床の一箇所が魔力を弾いたことで消える。そこだな。
魔力による建造物破壊を止めると、所々土が見え岩が見える壁床、散らばる書類に散り散りになった絨毯。割れた何か。その中で唯一無事な床の一部がある。こそに詰め寄る。
手を伸ばすと弾かれた。針だ。
針で滅多刺しにしてみると保護は解けたようで無事触れた。
針って幾つまで出せるのだろうか?
床をいじっていると戸のように動いた。下につながっているな?
戸を開くと、大人2人分位下に石畳が見えた。飛び降りる。
着いた先はひんやりとした空間で鉄格子が伸びて細長い廊下を作っている。
牢屋だ。周囲を見渡すと人と目が合った。
……居た。
赤髪の肩ほどまでで伸ばされた下ろされた髪に、ルビーのように綺麗な瞳。
身長は中の上ほど、年齢は少し上。
今は装備を着ていなく、装備前提故か少し肌の露出が多い。困るな。
回収した報酬の中に装備があった筈だ。
なぜか酷く安心した。まるで今までは何一つ落ち着いていなかったかのように。酷く胸がうるさい今まで拍動していたのか怪しいくらいに。
もはや胸が痛い、握り締めても静かにはならなかった。
手を伸ばそうとした。
石畳には死神の赤黒い足跡が見えた。
俺の手は赤黒いのがねっとりと纏わりついている。汚い。
檻の中の少女は俺を警戒しているように見える。
肩には焼印があった。チッあれのせいでッ!
頭に血が上りそのままの勢いで手を翳し邪魔な檻は全て破壊する。そのまま少女の肩の焼印を魔力刃で斬り落とす。
次いで急いで肩に治癒魔法を集める。多重展開すればD級治癒魔法でも跡形もなく治る。
少女は衝撃と痛みとでわけがわからないような顔をしていた。
これでもう、大丈夫だろう。
端的に見て血塗れの少年は化け物に見える。魔力で鉄の檻を壊し人を切り治す、十分化物だ。
もう去ったほうがいい俺は必要ない、彼女なら上手くやれるだろう。
背を向けて赤黒い足跡を辿って来た道を戻る。そういえば飛び降りてきたんだっけ?どうやって上に登ろう......
上を見上げると四角い枠の向こうに梁が見える。
どうしようか
「ねぇ、」
思わず肩が跳ねる。ゆっくりと振り向く
「ちょっと助けてくれないかしら…?」
少女の睫毛が揺れていた。
「………………………………わかった」
「ありがとう!リア様をここから助けたいのよね!」
相変わらず元気だ。囚われていて不安だっただろうに。
相変わらず眩しい。こんな血みどろのガキ相手に笑顔なんて。さっき肩を切られたじゃないか。
「案内するわ!」
胸が温かくて苦しくなる。何でだ意味が判らない、俺はいったいどういう思考回路をしたらこうなるんだ。第一俺はこの人をしら、な…………。
その先はいえなかった。いや、思いたくなかった。
もう、なんか、ごちゃごちゃして泣きたくなってきた。
安心からなのか遅れて来た恐怖からなのかも判らない。そもそも筋すら通らない。よく分かんない、分かんない、分かんないよ......。
ふと少女を探す。
かの少女は牢の奥へと走っていて此方に背を向けていた。
よかった、こんな意味不明なぐしゃぐしゃした醜い顔は見られずに済んだ。
さっさと直さないと見られてしまう。気味悪がられるだろうか?いや、既に気味悪いか。
何だか頭が痛いおかげで落ち着いて来た。振り返られる前に追いつこう。まだ囚われている人の救出と言ってたな。
牢下の突き当たりの牢屋は他の牢と違って家具があった。牢の中に家具って何?チグハグ過ぎないか?
ベッドの天蓋から透けて恐らく人影が見える。うずくまっていた。
彼女が跪いたので俺も真似する。
「リア様、迎えに参りました!」
「………遅かったじゃないの。」
「ッ…申し訳ありません。でも今からお助けしますこちらの方が。
どうかお願いします。」
彼女が此方に目配せをする、了解。
すっくと立ち上がって手を檻に翳して魔力を練って張らせて線で放出する。
いつの間にか出来るようになった魔力の刃の射出はいとも容易く鋼鉄の檻を根元から四角く切る。
「感謝するわ、少年!
リア様、ここから出ましょう!」
「………。」
リア様と呼ばれた人物は天蓋の中で多分此方を見ている。何だ?
ああ、そうだった血みどろなんだった。怖いよね、護衛である彼女は装備も武器も足りてないし。
じゃああれだ、梯子作って脱出しよう。落ち着いて考えればそこら辺の鉄格子の残骸を針で刺して固定すればいいだけだった。スキルって便利〜。
鉄格子を拾いつつ、出口の天井まで歩く。
「あ、ちょっと待______」
何か聞こえた気がしない。気の所為気の所為。
無事に地下二階から脱出して、隠し部屋へと戻る。確保した報酬のうち幾つかを残して回収する。
しれっとスキルの針を出すための半透明な箱に入れたら入ってしまった。………取り出せるよな?
もー良くない。良くない良くない良くない。己がどういう思考回路を持って行動しているのかときより分からなくなっている。記憶喪失由来の何処から来たのか判らない知識も相まって最悪だ。
大丈夫か?気づいたら人を殺してないか?……殺してたな。大丈ばないぜ!
壁に凭れ目を瞑る。大分人を殺した、けど意外と大丈夫そうだな。いや、大丈ばないが?
一旦あれだ、撤退しよう。スキル使用の弊害か?視野が振れると大部キている気がする。あれも多分スキルだろ。
意外と多機能だったスキル:おもちゃ箱は今後要検証だな。相変わらずふざけた名前してやがる。
愉悦殺戮はスキルの弊害だとして、あの少女も大問題だ恐らく以前の俺の記憶に纏わる人物なのだろうが、感情の揺さぶられ具合が酷い、これは俺の沽券に関わる、醜態を晒しかねないからな。
離れた今でさえこれだ、醜態を晒して見限られるのを恐れている。
あの人は危険だ、今の俺にとってもはや毒物と言って過言ではないだろう。最悪従順な犬にでもなりかねない。
魅了系のスキルの持ち主かも知れないな。
となると、以前の俺の記憶に纏わる人物という評価は検討の余地があるな。
休憩終わり、撤退を敢行す、......る。
白だか黒だか曖昧な瞼の裏から切り替わり、赤い前髪が目に留まる。少し屈んで俺に目線を合わせている。
「のわァッ」
非常に心臓に悪い。
目の前に件の少女の顔があった。
「ふふ、あなた、ちゃんと年齢相応なのね」
そう言って笑う貴方は齢不相応に慈愛に満ちていた。
お前も俺と然程変わらないだろうに。
そう言おうかと思ったが喉がどもって言う機会を失った。
「………なんですか?」
「ちゃんとお礼を言ってなかったと思って。」
「そうですか」
「ええ、少年が居なかったらあたしは牢屋から出ることもリア様をお守りする事も出来なかったもの。
あたしはミナ、あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
ミナさんと言うらしい。
「アルハトです。」
「そう、アルハト君いい名前ねあなたのおかげで無事にここから出られそうだわ!ありがとう!」
その笑顔はちとこの老骨には眩しすぎる、ちょっとどころでも老骨でもないが。心臓がうるさい、爆発するんじゃなかろうか。顔も熱い、まずいな早く撤退せねば!死ぬ!
「どうも、ではさよ
[少しの浮遊感]
なら…………?!」
出たよ謎の転移、現在位置はアジトの前。ちょうど1回目の視界の振れが起きたところの少し後ろだ、今は扉が閉じている。
外はまだ暗く、夜風がとても涼しかった。熱が冷まされる。
うし、帰…る前にベタついた赤黒をどうにかしないとな。
す。