透き通る世界でシャーマンは愛の物語を紡げるか。 作:UMC OGASOU
絶望の影が荒野を黒く塗り潰していた。
四方を埋め尽くす過激派連合の大軍勢。数千を超える無法者たちが放つ怒号と殺気、そして重装甲トラックや自走迫撃砲の無機質な重低音が、荒野の空気を物理的な圧力となって押し潰している。
ゲヘナ学園風紀委員会の護衛部隊は、すでに壊滅寸前だった。前後の警備車は激しい炎と黒煙を上げて沈黙し、残された中央の重装甲兵員輸送車も、降り注ぐ曲射砲撃と集中砲火によって装甲を削り取られ、煙を吹き上げている。
「クソッ……! 弾が……残弾がない……っ!」
装甲車のハッチから上半身を出し、愛用のライフルを構えていた遊撃隊長、銀鏡イオリは、歯が折れんばかりに噛み締めながら叫んだ。引き金を引くが、返ってくるのは虚しい金属音――カチリ、というドライボレーの響きだけだった。
制服は焦げ付き、褐色の肌には無数の擦り傷と煤がこびりついている。ヘイローを浮かべた頑丈な生徒の肉体をもってしても、数千の銃口と容赦ない砲撃の暴風を前にしては、残された体力も限界に近かった。
「ははは! 風紀委員のチビ、弾切れか!?」
「生け捕りにしろ! 万魔殿に突き出せば莫大な懸賞金だぞ!」
無法者たちの下品な笑い声が、地響きのように迫ってくる。
車内では、行政官の天雨アコが激しいショックと罪悪感に打ちひしがれ、座席に膝をついていた。膝の上に置いたタクティカルタブレットの画面には、護衛部隊の弾薬残量がすべて【0%】を示している。
「そんな……こんなところで……。ヒナ委員長……申し訳ありません……。私は……風紀委員会を、ヒナ委員長の誇りを守れませんでした……」
アコの美しい瞳から、大きな涙の粒がポロポロと溢れ落ち、床の金属板に小さなシミを作っていく。自分たちの無力さ、油断、そして何よりも、信頼して任務を任せてくれた風紀委員長・空崎ヒナへの申し訳なさに、胸が引き裂かれそうだった。
その、誰もが死と敗北を覚悟した極限の絶望の中で。
「――やれやれ」
あまりにも場違いな、拍子抜けするほど脱力した声が、狭い車内に響いた。
アコが涙に濡れた目を上げると、そこには手首に重厚な特殊抑制具を嵌められたまま、面倒くさそうに首を回している青年――勝川ソウキの姿があった。
「助けてやるか」
ソウキはだらしなく頭をポリポリと掻きながら、膝を折ってアコのすぐ目の前にかがみ込んだ。
「な……何なのですか……不純物……。今さら何を出しゃばって……! 状況が見えないのですか!? 私たちはもう包囲されて、弾薬も底を突いて……!」
「声がデカいって、アコちゃん。泣いてるとせっかくの綺麗な顔が台無しだぞ」
ソウキは呆れたように笑うと、拘束された両手を強引に伸ばし、アコの腰に下げられていた大きめのレザー製「押収品保管バッグ」へと迷いなく指を突っ込んだ。
「きゃっ!? な、何を……勝手に触らないでください! そこは本日押収した危険物や、貴方から没収した物品が入って――」
「これこれ。探してたのはこれなんだよ」
ソウキの指先が引っ張り出したのは、無骨な金属の塊だった。
それは、アコがソウキを拘束した際に「ヘイローも持たない不審者が所持していた危険物」として没収した物品であった。しかし、危険物とは名ばかりの、およそ兵器とすら呼べない代物だった。
全体が赤黒い錆に覆われ、フレームのあちこちにはヒビが入り、スライドすら固着して動かない。現代のキヴォトスで流通している精密かつ高性能な銃器とは比較にもならない、どこかのゴミ捨て場から拾ってきたような、数十センチ程度のサビサビのジャンク拳銃。骨董品の出来損ない以下の、ただの鉄くずだった。
ソウキはそのサビサビのジャンク銃を、手錠の嵌められた右手で愛おしそうに握り締めると、満足そうに頷いた。
「よしよし。ちゃんと残ってて良かったぜ」
アコは涙を拭うのも忘れ、呆然とソウキの手元を見つめた。
「……は? 貴方……正気なのですか……? そんな……そんなただのガラクタ、骨董品以下の錆びた鉄くずで、何ができるというのですか!? 外には数百人の無法者と、重装甲車が控えているのですよ!? そんなオモチャで何が……!」
「オモチャじゃねえよ。俺にとっては、立派な『媒介』なんだからさ」
ソウキはへらりと笑うと、手錠の嵌められた両手でジャンク銃を胸の前に構えた。
(ヘクトゥーパおじさん。準備はいいか?)
ソウキの脳裏に、深く重厚な声が波紋のように広がる。
(くくく……言われずとも。久方ぶりの現世での大立ち回りだ。ソウキよ、存分に我が霊威を振るうがいい。あの愚か者どもに、幽世の理とシャーマンの真髄を刻み込んでやれ)
(あいよ。派手にいくとしますかね)
次の瞬間――車内の空気が、根底から変質した。
『――ゴオッ!!』
突然の突風が、密閉された車内を吹き抜けた。
物理的な風ではない。それは、常人には知覚できないはずの、圧倒的な密度を持った「霊的な波動」――巫力(ふりょく)の激流であった。
「な……なになに!? なんですのこの圧は……!? 空気が……重い……!?」
アコは息を詰まらせ、両腕で自分の身体を抱きしめた。全身の皮膚が粟立ち、心臓が警鐘を鳴らす。
ソウキの身体を中心に、眩いばかりの金色の光が溢れ出し始めた。それはキヴォトスの生徒たちが頭上に戴く「ヘイロー」の神秘的な光とは似て非なるものだった。もっと原始的で、禍々しくも神聖な、太古の神威を思わせる金色と黒の濁流。
ハッチから外を伺っていたイオリも、異変に気づいて車内を見下ろした。
「なっ……!? 不審者……お前、体から光が……!? 待て、なんだその巨大な気配は!?」
イオリの眼前に広がっていたのは、ソウキの背後に重なるようにして現れた、巨大な古の英霊の幻影だった。
何メートルにも及ぶ巨躯。黒く重厚な鎧を纏い、角を生やした異形の大霊――持霊『ヘクトゥーパ』の姿が、揺らめく金色の霊光の中で実体化しかけていた。その圧倒的な霊圧に、車内の金属壁がみしみしと音を立てて歪み始める。
「ヘクトゥーパおじさん、霊威全開だ!」
「おおおぉぉぉぉ――――――――ッっ!!」
ヘクトゥーパの地鳴りのような咆哮が、物理的な音波を超えてアコとイオリの魂に直接響き渡った。
そして、ソウキが握り締めていたサビサビのジャンク拳銃に、凄まじい密度の巫力が一気に流し込まれた。
『カァァァァァァァァッ!!』
眩惑的な金色の閃光が、狭い車内を完全に塗り潰した。
「目が……っ! 目が開けられません……っ!」
アコが叫び、腕で顔を覆う。
その光の中で、信じがたい現象が起きていた。
ソウキの手の中にあった錆び付いた鉄くずが、まるで生き物のように蠢き始めたのだ。
赤黒い錆が金色に焼失し、歪んだスライドとフレームが流動的な液体のように溶解・変形していく。物理法則、質量保存の法則、機械工学の概念――そのすべてを嘲笑うかのような現象。
数十センチしかなかったショボいジャンク拳銃の骨格が、ぐにゃりと伸び、厚みを増し、幾何学的な意匠を刻み込みながら急激に巨大化していく。
金属が軋む音ではない。神聖な弦楽器が奏でるような高音とともに、流体となった鉄が新たな形へと再構成されていく。
バレル(銃身)は二重に重なり合い、冷酷な冷却フィンが刻まれる。レシーバー(機関部)は重厚かつ流線型の幾何学構造へとモーフィングし、グリップには古の神話に登場する刻印が黄金の光を放って浮き上がる。マガジンが存在するはずの場所には、実弾を装填するためのスロットではなく、超高密度の巫力を収束させるための「霊力核」が輝いていた。
ただの錆びた拳銃が、わずか数秒の間に――凶暴極まりない、しかし芸術品のように美しい大型サブマシンガンへと変貌を遂げたのだ。
光が収まり、ソウキが手にしていたのは、もはやキヴォトスの如何なるメーカー(ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ)の技術をもってしても説明のつかない、未知の概念兵器であった。
「……そんな……」
アコは目を見開いたまま、開いた口が塞がらなかった。
「銃が……変形した……? いいえ、増殖した……!? 質量も、構造も……何もかもがおかしいわ! 火薬も、弾倉も、薬室すらないじゃないですか! そんなものが……銃であるはずがない……!」
「構造なんてどうでもいいんだよ」
ソウキは新しく生まれ変わったサブマシンガンの重みを確かめるように軽く一振りした。
巫力がソウキの全身の細胞へ巡り、神経系が爆発的に活性化していく。動体視力は跳ね上がり、周囲の空気の流れ、迫ってくる敵の息遣い、銃弾の軌道すらもが、まるで止まった時間の静止画のように鮮明に知覚できた。
ソウキは手首の特殊抑制具に軽く巫力を通した。
『パキンッ!』
霊力を封じるはずだった重厚な鋼鉄の手錠が、ソウキが少し力を込めただけで、まるで乾燥した小枝のように脆く砕け散り、床に転がった。
「なっ……抑制具を力任せに破砕した……!?」
アコが悲鳴を上げる。
ソウキは手首をぶらぶらと回すと、驚愕に固まっているイオリの脇をすり抜け、ハッチから一気に車上の天井へと躍り出た。
「おい不審者! 待てって――」
イオリの制止の声が届く前に、ソウキの姿は車上から消えていた。
いや、消えたのではない。超人的な踏み込みによって、天高く跳躍したのだ。
十メートル、二十メートル。
重力を無視して荒野の上空へと飛び上がったソウキは、青空と黒煙が交錯する全景を見下ろした。
眼下に広がるのは、街道を埋め尽くす数千の過激派連合、迫撃砲の陣地、そして無数の重装甲車。彼らは一斉に上空を見上げ、呆気にとられた顔を向けていた。
「ハハッ! なんだあの不審者! 空に飛んでどうするつもりだ! 撃ち落とせ!」
「蜂の巣にしてやれ!」
過激派たちが一斉に銃口を上空のソウキへと向け、引き金を引こうとした。
しかし――それよりも速く、ソウキは空中で右手のサブマシンガンを構え、だらしなく、けれど絶対の威圧感を込めて口を開いた。
「持霊・大霊ヘクトゥーパ。……オーバーソウル」
ソウキの瞳が、黄金の光を放つ。
「『チャカサブマシンガン』」
技名が静かに提示された瞬間、サブマシンガンの銃口――そして側面に刻まれた無数の冷却孔から、溢れんばかりの霊威が開放された。
『ドガァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!』
それは、「射撃」という言葉で表現できる現象ではなかった。
サブマシンガンというコンパクトな火器から放たれたとは到底信じられない、巨大な「光の暴風」が天空から解き放たれたのだ。
実弾の弾丸など存在しない。放たれたのは、ヘクトゥーパの圧倒的な破壊力と、ソウキの極限まで高められた巫力が融合した、数千、数万の「黄金の光弾」の激流であった。
『ズバババババババババババババババババババババババババババッッ!!!!』
荒野全体を揺るがす、耳を裂くような連射音。
いや、連射音が重なりすぎて、もはや一本の巨大な光の太刀が天空から振り下ろされているかのような、連続した轟音となって世界を支配した。
「ヒッ……!? なんだあれはぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ひ、光が――っ!?」
過激派たちの悲鳴は、一瞬で光の濁流の中に飲み込まれた。
空から降り注ぐ金の光弾は、一発一発が重戦車の主砲弾に匹敵する威力を秘めていた。街道に隙間なく並んでいた敵の重装甲トラックが、光線に触れた瞬間、紙細工のように爆砕・蒸発していく。
自走迫撃砲の厚い装甲も、何重にも展開されていた過激派の防衛陣地も、何の意味もなさなかった。
光の弾幕は、ただ直進するだけではない。ソウキの圧倒的な動体視力と霊的知覚によって完璧に誘導され、荒野に散らばる数千の敵一人ひとりの足元や兵器だけを寸分違わず一閃し、正確無比に粉砕・無力化していく。
岩山が削れ、大地が抉れ、爆煙と炎の柱が次々と立ち上る。
『チュドォォォォン! ドガァァァン! ズバババババババッ!』
たった一人の人間が、たった一丁のサブマシンガンを射出しているだけなのだ。
それなのに、そこに発生していたのは、連邦生徒会の大規模師団が一斉砲撃を開始したかのような、あるいは巨大な戦略兵器が着弾したかのような、破滅的な威力の行使であった。
荒野の地形そのものが、数秒の間に書き換えられていく。
「うああああああっ!?」
「助けてくれぇぇぇぇっ!」
過激派たちは戦意など一瞬で吹き飛び、銃を捨てて逃げ惑おうとしたが、逃げる隙すら与えられない。黄金の弾幕は荒野全体を包み込み、すべての兵器を破壊し、無法者たちを爆風で吹き飛ばして気絶させていった。
そして――
『シュゥゥゥゥゥ……』
唐突に、静寂が訪れた。
天空でクルリと一回転したソウキは、軽やかな動作で煙を上げる風紀委員会の重装甲車の屋根の上へと着地した。
黒の短パンと半袖シャツ。その姿は、戦う前の何ひとつ変わらない「ただの不審者」のままであった。
ソウキは手に持った黄金のサブマシンガンを肩に担ぎ、ふぅと小さく息を吐いた。
「ふぅ……こんなもんか。ひさしぶりにO.S.(オーバーソウル)使ったから、ちょっと力加減間違えちゃったな」
ソウキの足元――そして、周囲数百メートルに渡って広がっていた光景は、もはや絶句するほかないものであった。
数千を誇っていた過激派連合の大軍勢は、完膚なきまでに壊滅していた。
街道を埋め尽くしていた重装甲車やトラックは、すべてフレームを残して原型をとどめないほど砕け散り、黒煙を上げて転がっている。自走迫撃砲陣地があった岩山は、山ごと綺麗に削り取られて平地と化していた。
数千人の無法者たちは、誰一人として命を落としてはいないものの(ソウキが急所を外して巫力の衝撃波だけで気絶させたため)、全員が白目を剥いて荒野に転がり、ピクピクと痙攣している。
街道を埋め尽くしていた「絶望的な敵の波」が、たった数十秒の一撃によって、文字通り「蒸発」して消え去っていたのだ。
「……あ……」
装甲車のハッチから上半身を出し、一部始終を目撃していたイオリは、開いた口が塞がらないまま、金縛りに遭ったように固まっていた。
手に握られた、弾切れのライフルが滑り落ちそうになる。
「な……なに……? 今の……なに……?」
イオリの頭脳は、今起きた現象を処理することを完全に拒絶していた。
風紀委員会屈指の戦闘力を誇る自分が、命がけで戦っても防ぎきれなかった大軍勢。弾薬が尽き、絶体絶命だと思っていた敵の包囲網。
それを、ヘイローすら持たないこの男が。
錆びた鉄くずから変化させた、謎の変形銃一丁で。
たった一人で、一瞬で、残らず粉砕してしまったのだ。
「サブマシンガン……? あれが……サブマシンガン……!? 冗談じゃないわよ……! あんな射程と火力と連射速度……戦略戦爆機の一斉砲撃より上じゃない……! 銃の概念が……あたしの知ってる火器のルールが……全部壊れる……っ!」
イオリは自分の頭を両手で抱え込み、ガタガタと震え出した。戦う者の「常識」や「経験」があればあるほど、ソウキが見せた芸当の異常さが、脳を直接破壊するほどの激痛となって襲いかかってくるのだ。
そして、車内から恐る恐る顔を出したアコもまた、同じように「脳バグ」を起こしていた。
アコはメガネの位置を何度も直し、目を擦り、惨状と化した荒野と、装甲車の上でだらしなく立っているソウキを交互に見つめた。
「あ……あり得ません……! こんなこと……あり得てたまるものですか……!」
アコの声はひっくり返っていた。
「火薬の燃焼反応すら感知できませんでした! 薬莢の排出もありません! 弾倉すら付いていないのですよ!? なのに……なぜあれほどのエネルギーが放出されるのですか!? 物理法則はどうなったのですか!? 質量保存の法則はどこへ行ったのですかーっっ!!」
アコは絶叫しながら、ソウキの足元へ駆け寄り、縋り付くようにして叫んだ。
「貴方! 一体何者なのですか!? あれは何の兵器なのですか!? ミレニアムの秘密兵器ですか!? それともトリニティの遺物ですか!? 説明しなさい! 風紀委員会行政官として、理解不能な存在を放置することなどできませんーっ!」
アコの叫びに対し、ソウキは「うわ、声デカ」と耳を塞ぎながら、ヘラヘラと笑った。
「だから言っただろ、アコちゃん。生きてりゃなんとかなるんだって」
ソウキが右手に持っていた黄金のサブマシンガン――オーバーソウル『チャカサブマシンガン』から、ふっと光が失われた。
シュウゥゥと密度の高い霊気が霧散していくと、幾何学的な黄金の意匠も、巨大なフレームも、流体のように収縮していき――
『コツン』
ソウキの手の中に残されたのは、最初と何も変わらない、全体が赤黒く錆びついた、数十センチのサビサビのジャンク拳銃であった。
「……あ……戻った……!?」
アコは目の前で起きたさらなる不条理に、ついに白目を剥きそうになった。
「構造どころか……存在そのものが可変している……!? ガラクタに戻った……!? 私たちの目の前で……物理法則が死んでいる……」
アコはガクガクと膝を震わせ、ついにその場にへたり込んだ。あまりの非日常、あまりの不条理の連続に、彼女の優秀な頭脳の処理能力(キャパシティ)は完全に限界を超え、焼き切れてしまったのだ。
「あはは……夢だわ……。私は疲れすぎて、変な夢を見ているのね……。ヒナ委員長に……温かい紅茶でも淹れて差し上げなきゃ……」
現実逃避の呟きを漏らすアコ。
イオリもまた、装甲車の屋根の上で座り込んだまま、遠くの削れた岩山を呆然と見つめていた。
「あたしたち……何を護送しようとしてたんだ……? 不審者……? 違う……あいつ、歩く人間兵器だ……いや、兵器ですらない……何なんだよ一体……」
二人の完全な崩壊(脳バグ)ぶりを前に、ソウキはサビサビのジャンク銃を自分のポケットへ適当に突っ込むと、頭の後ろで手を組んでのほほんと言い放った。
「さ、敵も片付いたことだしさ。ジャミングも消えたろ? シャーレの先生とやらのところへ行こうぜ。俺、お腹減っちゃったよ」
荒野に広がる破滅的な破壊の痕跡と、だらしなく笑う一人の青年。
ゲヘナ学園風紀委員会の最精鋭たちは、ただただ圧倒的な不条理の前に沈黙するしかなかった。