天職、皇帝。現職、TS巫女。 作:アリエ
ガラガラと音を立てて、ガチャの中から一つのカプセルが出てきた。
そのカプセルには、まばゆい光を纏っている黄金の塗装が施されている。
「パンパカパーン、あなたの天職は皇帝になりました!!!」
「は?」
カプセルを開けて、その中身を見た自称女神が満面の笑みでそう告げる。
「転生する世界によってはなれるか分からないですけど、頑張ってくださいね〜。」
「は?」
まったくもってこの状況について行くことができない。
けれど、自称女神が待ってくれることはなく、俺の意識はそこでプツリと途切れたのであった。
✚✚✚×✚✚✚
太陽が地平線の向こうから顔を出したばかりの時間帯。
小鳥もまだ寝静まっているころに、私こと
この神社に引き取られたばかりのころはまだこの生活習慣に慣れなかったけれど、今でははぶくことのできない大事な習慣と化している。
それにしても……まさかこんなことになるとは、前世では少したりとも思わなかった。
そう。
男から女へとTS転生し、神社で巫女の職をやることになるだなんて。
最初のころは私を転生させた女神に文句を言ってやりたい気持ちもあった。
けれど、十九年も生きていれば、嫌でもいろいろなことに慣れてくる。
今生の私の性別が女であるということも。
己に植え付けられたであろう、この才能も。
ある程度は割り切れるようになるのだ。
というか、嫌でも割り切らなければならない機会が多すぎた。
具体的に言うのなら、体育の前の着替えの時間とかである。
「おはよーさん、夜束。」
「おはよう、宗介。」
完全に開ききっていない眼をこすりながらそう話しかけてくるのは、この神社の宮司の息子…
「今日は起きるのがだいぶ早いが……なにかあるのか?」
「いや。俺は単に目が覚めちまっただけ。てか、夜束は毎日こんな早く起きるとかすげぇな。俺だったら、一週間もできないだろうし。」
「そうだろうか?まぁ、私は十年近くこの生活を続けているからな。いつも通りと言ってしまえば、それで終わりだろう。」
慣れてしまえば、こんなもの苦痛でもなんでもない。
何言か言葉を交わすと、無言の時間がやってくる。
私はなにも感じないが、宗介はどこか気まずそうな表情だ。
なにか話題を提供したほうがいいだろうか?
「あー……そういや今日はいつもと服装が違うんだな。」
なんとか話題をひねり出したみたいだな。
「お前も気づいたか。お前のお父さん…宮司いわく、新しい巫女服のサンプルらしい。少しばかりサイズが小さく感じるが……気にするほどの問題ではないな。」
ところで……なぜ宗介はこちらから時々視線を外すのだろうか?
どこか顔が赤いような気もするし、ちょっと変だ。
早く起きすぎて、本調子じゃないのかもしれん。
「そうなのか。」
「あぁ、そうだ。」
「「………。」」
……また沈黙か。
「で、どうだ?似合っていると思うか?」
「え?」
「服装の話だ。新しい巫女服だが、私に似合っているか?」
「あ、あぁ!似合ってると思うぞ。うん、めっちゃ似合ってる!!」
焦ったように勢いよくまくし立てる宗介。
やはり変だな。
まぁ体調が悪いわけではなさそうだし、気にする必要はないか。
「そうか、似合っているか。そう言ってもらえると、安心できる。」
まぁ私に似合わない服はほとんどないと思うが。
なにせ、私はとんでもないレベルの美人なのだから。
別に、私がナルシストというわけではない。
ただ、誰もが思う客観的な事実を述べただけだ。
銀髪緑目ゆえに、浮世離れしているという点はあるが、美しくないわけではない。
むしろ神々しいと言えるだろう。
「では、そろそろ日も昇ってきたし私は戻る。宗介はどうする?もう少しここにいるか?」
「もう少しここに残らせてもらうよ。」
「分かった。身体が冷えないように気をつけろ。」
そうして、私はその場を去っていくのであった。