奴隷、それはこの大陸において認められた存在である。
誰が認めたのか?
大陸の中心たるアカネイアが、だ。
だからこそアカネイアの中心たるパレスに最も近いノルダに奴隷市場が存在する。
原作でもマルスが訪問した時、売れ残ったガキしかいない。と発言しており、それに怒ったマルスが子供達を解放させている。
実に素晴らしい話だ。
その近くの住民が受け入れるか
帰る場所があり、帰る事が出来るならばだが。
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そもそも奴隷が産業として成り立つには幾つかの条件を満たさねばならない。
奴隷を確保する方法。販売する方法。そして、奴隷売買を合法化する事だ。
この三つを最低限満たさねば奴隷を売る商売は成り立たない。
大陸、正確にはアカネイアとその友好国は未だ混乱の中にあり乱れた治安を回復する者は現れない。
結果としてアカネイアの民は生きる為に選ばねばならなかった。
皆で死ぬか
或いは誰かを切り捨て生き延びるか?
本来ならば若い労働力は将来の事を考えれば必要だ。
しかし、一方で成長する為に多くの食料を必要とし成長したとしてもそれが使い物になるかは未知数。
そして買い手としても余りに幼い者は論外だが、若いと言うのは寧ろ売る時には好材料となる。
マルスは気付いていないだろうが、薄汚い子供が町に複数解き放たれた所で良い事などありはしない。
それこそ、闘技場で見世物の様に殺されて消費される可能性すらある。
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ワーレン近くの砦群と城を制圧したマルス達。
マケドニアの天馬騎士カチュアが接触して、マケドニアの王女マリアの救出を要請してきたが、ジュリアンはそれより話があるとマルスに声をかけた。
はっきり言えば、敵であるマケドニアのミネルバ王女を助けたいと思うのはマルスの感傷によるものでしかない。
加えて、騎士カチュアが同道して向かうならばともかくこの場に居ないのもよろしく無かった。
敵でありながら、レフカンディでは敵前逃亡し味方であるマケドニアの騎士を見殺しとし
その上ドルーアに対して反乱したいから、マケドニアのマリア王女を助けて欲しい。しかし協力はしない。
そんな自分勝手な連中の都合に好んで付き合いたいと思う者はいない。
しかも、相手の罠である可能性も捨てきれないとくれば尚更。
マルスはミネルバに自分の姉エリスを重ねていたが
「アホか。
自分で戦えないのに弟を逃がしたエリスと国王の妹でありながら、今の今まで不満だけ溜め込み結果友軍を何度も裏切ってきたミネルバを同一視するなよ。」
とゲレタならば吐き捨てるだろう。
「マルス王子。確かに貴殿が敵であるマケドニアの王女を助けようとするのは立派な事だろう。
だが、私も部下の命を預かっている身。死地になるかも知れぬ所に送り込むならば納得させたい。」
マルス達にとってはそうでないが、オレルアンのハーディン達にとってマケドニアは国に攻め寄せた明確な敵。
ましてや正面から戦ったマケドニアの者ならばマチスの様な者であろうと割り切るが、ひたすら戦線から離脱するミネルバ達に好意など持てる筈もない。
マチスは積極的に戦いこそしなかったが、戦場から逃げる事はしなかった。
しかも一兵卒のマチスと部隊を率いる事もあるミネルバでは負うべき責任がまるで違う。
ハーディンはミネルバやその騎士であるカチュアに微塵も好意など持っていないのだ。
それはビラク達も同じであり、如何に恩のあるマルス王子の意であろうとそれは受け入れ難い。
それよりも、ジュリアンが懸念するサムシアン残党の方が遥かに重要と見ていた。
「正直なところ、我々が敵であるマケドニア王女の都合で動く理由は無いように思える。
仮に助けて欲しいならば、先のカチュアとやらが我等に同道するのが筋ではないか?」
ああいった態度や行動こそが不信の元であるとハーディンは半ば確信していた。
義務を果たさぬ者に権利を主張する事は出来ぬ。
主張する事は出来たとしても、それを受け入れようと思うのは難しい。
それが人なのだ。
「しかし、ハーディン殿。
我等は未だ寡兵。味方を増やす事はすべきではありませぬか?」
「それは否定しないが、問題は信頼して背中を預けられるのか。ではあるまいか?ジェイガン殿。」
ニーナの意向でもない以上、マルスのやり方に不満を部下達が持つのは避けられない。
裏切りは唾棄すべきものだが、それでも通さねばならぬものもある。
オレルアンで此方についたマチスはマケドニア相手でも槍を振るい、元サムシアンのジュリアンも嘗ての仲間と戦う決意はしている。
だが、ミネルバ王女らはそうではない。
祖国マケドニアの兵達を結果としてオレルアンで見捨て、友軍であるグルニア軍やマケドニア騎士をレフカンディで見捨てた。
これではマケドニアにおいて居場所などあろう筈もなく、たかだか数名程度此方についたとして如何ばかりの効果があろうか?
しかも、彼女達は飛行兵だ。
やろうと思えば戦場を勝手に離脱出来る。⋯レフカンディの様に
一度己の芯を曲げてしまうと、その芯は以前の様な硬さを持たぬ。
友軍を裏切り、祖国や兄を裏切り
どうしてその様な者が二度と裏切らぬと言えようか?
この辺りはオレルアン騎士団を率いて犠牲を出しながら抵抗したハーディンと友邦タリスで2年間守られてきたマルス達の決定的な違いだった。
「それでもマケドニアの王女を助けたいと言われるならば、我等は従おう。」
言いたい事は言った。
ハーディンはそう口を閉ざす。
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「さっきの戦闘後の異常な光景。
あれは間違いなくアイツがやった事だ。」
「⋯サムシアンの切り札、ですな?」
ジュリアンの言葉に険しい顔をしたモロドフが確認する様に問いかける。
「ああ。サムシアンの頭目ハイマンの信用する唯一の男ゲレタ。
俺がレナさんを逃がせたのはアイツが居なかったからと言い切っていい。」
「⋯確かに、あの男がいる時といない時で空気が違ったな。」
ジュリアンの言葉にナバールもそう呟く。
それはそうだろう。ゲレタがいる時に下手を打つと殺される可能性はあったのだから。
まぁゲレタ自身は
それを知らぬ山賊達はゲレタの言葉に従っていた。
ゲレタの言葉はそのままハイマンのそれであったのだから。
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「噂には聞いた事があります。
ガルダの町のグルニア遠征軍本隊を倒したのがその人物だとか。」
「だからサムスーフを早く抜けようとしたんだね。」
サムシアンの根城を制圧したマルス達はサムシアンの蓄えていたものを徴収している。
本来ならば10000ゴールドであったが、この世界ではそこまで調べる時間的余裕が無かった為に割と財政はギリギリだった。
それはジュリアンだけではなく、カシムもそう進言したからに他ならない。
タリス王国は確かに多少ガルダと繋がりがある。
しかし、だからとてタリス王国がガルダを完全に統治出来るかと言われたら難しい。
ガルダには凶悪な海賊も跋扈しており、だからこそガルダの町衆はサムシアンとの取引を良しとしたのだ。
とは言え、カシムもまたガルダの町の輪に入れていたとは言い難くサムシアンによるグルニア遠征軍の壊滅は噂話程度にしか聞こえてこなかったが。
更に心ならずとは言え、町に害を与える側に与したカシムだ。
当然町衆からの心情は良い筈もなく、それを味方につけたマルス達にも好意的とは言い難いものだったが。
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「はっきり言って相手にしようとするだけ命の無駄だ。
アイツがつけ回さない事を願うしかない。」
ジュリアンは分かる範囲でのゲレタの戦い方を説明し、最期に苦々しく口にする。
「どうだい、王子。
こんなケチな山賊崩れなんてさっさと追放した方が良いと思うけどね、俺は。」
「それはないよ、ジュリアン。
少なくとも、そのゲレタと言う人は理性的な人物なんだろう?
もし私達を殲滅する気なら、先の戦いの激戦に便乗すれば良い筈だ。」
ジュリアンの言葉をマルスは切って捨てる。
「ただ対策はすべきでしょうな。
⋯ウェンデル殿。どうでしょうか?」
モロドフはそれでも対策をすべしとカダインの魔道士にして、マリクの師であるウェンデルに水を向ける。
流石にマリクが対策出来るとモロドフは思っていないのだから。
「⋯⋯素直に言って考えた事もない魔力行使です。
するとなれば、それこそ途方もない努力や工夫。⋯⋯何より人体に対する深い理解が必要かと。」
だからこそ、裏切り者や獣を解体したのだゲレタは。
元々ゲレタは体内の器官を傷付け、効率よく殺傷する事を目論んでいた。
だが、適当にやってみると出血が思いの外酷く、それは獣という外敵を招き寄せる結果となってしまう。
更に対集団の場合、確かに混乱を引き起こす効果はあるだろうがそれも一時的なものとなろう。
そうではなく、生物の根源に与え得る恐怖を
理性では押し殺せぬ恐怖による混乱こそが対集団戦において必要であるとゲレタは自身の知識とこの大陸での経験から結論づけ。
ならば、血の一滴も流さぬ殺し方を追求すべき。
との結論に至った。
更にゲレタは拳銃のライフリングを参考とし、相手が魔力障壁を展開した場合にもある程度対応出来るよう研鑽している。
勿論、他の方法についても思考を巡らし、常に変化する体制を作るべく実践も交えていた。
ゲレタにとって幸いな事にカダインで学んだリンダという魔法に通じた者がいる為、この大陸の常識というゲレタにとってかけていた部分を早急に埋めんとしてもいる。
ヒトは必ずしも相容れるものではない。
だからこそ言葉を交わし理解を深める。
だが、それでも埋め難い溝があるのもまた事実なのだ。
豆知識
太田道灌
戦国期
その最期は湯殿から上がったところを暗殺され、死に間際「当方滅亡」と口にしたとされる。暗殺は主君