悪しからずご了承下さい。
ディール要塞に到着したミネルバ。
彼女は要塞部隊の指揮官であるジューコフ将軍に人質として囚われている妹マリアと会わせて貰うように頼み込んだ。
「それは出来ぬ話だ。
貴殿がレフカンディにおいて我等グルニア軍や貴国の部隊を見捨てて逃げたと報告を受けている。
その様な人物の願いを我等が聞く理由があるかね?」
「そ、それは。」
ミネルバは言葉に詰まった。
レフカンディ砦の指揮官であるハーマイン。
彼はマケドニアのミネルバ王女とその騎士達に怪しむべき所があると判断。
兵をマリアの幽閉しているディール要塞に出し、事の仔細をジューコフに伝えたのだ。
故にジューコフはミネルバやその配下の騎士たるパオラ達を信用しない。
「⋯己の役割を果たされよ。
なればマリア王女と会わせる機会もあろう。」
ジューコフはそう打ち切った。
ミネルバが配置に戻った直後、
「報告します。
此方に向かうマルス王子率いる反乱軍の姿を確認しました。」
との報告を受け
「⋯⋯なる程な。力づくで取り戻そうと言う腹か。
この様な僻地に、しかもこのタイミングで反乱軍が来たと言うのならば無関係と考えるのは楽観的に過ぎよう。
全部隊に迎撃指示を出せ。
それと」
ジューコフは矢継ぎ早に指示を出した。
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「報告!未だ反乱軍健在。」
「相手が全て騎馬でないのは確認していたな?
竜騎士や天馬騎士にミネルバまでも退けたか。」
「い、いえ。
ミネルバ王女は敵と戦闘をしておりません。」
「⋯⋯そうか。
直ぐに兵を出せ!」
この期に及んで戦闘を避けるミネルバの報告を受け、ジューコフは決断した。
「護送中のマリア王女を殺せ。
裏切りの代償としては安いものよ。」
と言い切った。
そう、ミネルバやその騎士の叛意が明らかとなった時点でジューコフはディールからマリアを移したのだ。
何せこのディール要塞は本来軍事的意味は殆ど無い場所。
そこに兵を置いているのはマケドニアのマリア王女を守る為であり、見張る為でもある。
故にディール要塞の役割そのものを否定するが如きジューコフのやり方であったが、彼なりにミネルバ達に対して見せた最大限の譲歩だった。
それも今裏切られたが。
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「どういう事だ?」
ハーディンは目を疑った。
かなりの守りを固めていた部屋に立ち入っても誰一人いない。
「やはり敵の罠だったのでは?」
ウルフはそう口にする。
目の前の光景を見るにそうとしか思えないのも事実。
何せ助けて欲しいと願う割には直接手を貸すわけでもなく
さりとて確かにミネルバ王女は此方との交戦を避けてはいた。
憎々しげにミネルバの方を最期に見たマケドニア騎士。
つまり、ミネルバ王女は個人で裏切るつもりなのだ。
あのカチュアとやらはミネルバ側なのだろうが、余りにも酷く自分勝手にハーディンには思えた。
「とにかくマルス王子に知らせる。
マルス王子達は敵の増援と戦っているのだから。」
ハーディンは意識を切り替え、戦場に戻った。
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「⋯マリアがいない。」
ハーディンからマルス。
マルスからミネルバに伝えられたその事実は彼女を強く打ちのめした。
流石にマルス王子やハーディンが偽りを言っているとは思えないが、そうなれば何処にいるのか皆目検討もつかない。
そもそも既に彼女はマケドニア軍内において孤立しており、彼女は知らない事であるが程なくミシェイルの元にも彼女の裏切りの話は伝わる事となるだろう。
グルニアやドルーア軍にも竜騎士や天馬騎士は少なからず配備されており、その者達がミシェイルへ報せに
元より友軍であるドルーアやグルニアとの折り合いの悪いミネルバだ。
唯一マトモに動けたのは黒騎士カミュであり、ミシェイルやメディウスはそれを怪しむ事となる。
それでももう動いてしまった。
今更戻れはしない。
ミネルバは気落ちしながらもアリティア軍の一人として戦う以外道はなかった。
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「裏切り者にかける情けも気遣いもない。
死ぬ程苦しむが良い。」
敵将ジューコフは何も語る事なく、斃れた。
それはつまりマリアに繋がる線が途切れたという事でもあり
またマリア王女を探す為に軍を動かすのは不可能だった。
今はまだミネルバの裏切りが露見していないが、時間が経てばそれは敵方に知らせる事となる。
ドルーアがマケドニアとグルニアを従え反撃すれば勝機はない。
マルス達に勝機があるとすれば、電光石火の各個撃破のみなのだから。
「どないなっとるゆーねん。」
「私にもわからないかなぁ。」
「マケドニアのマリア王女が何でこんな所で護送されてたのよ。」
新たな出会いまでもう少し