のんびり行きますよぉ
大陸最強とも謳われるグルニア騎士団。
規模が小さいとは言え、その様な存在と好き好んで戦いたいと思う物好きはそうはいまい。
⋯だが、山賊達は退けない。
逃げればどうなるか、明らかなのだから。
山賊の指揮をとるフードの男。
男はサムシアンの中では新参であるが、頭目であるハイマンに対する忠誠は間違いなく
ハイマンもその従順さには一目置いており目をかけていた。
それこそ、本来手に入りにくいものを男の為に用意する程度には。
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フードの男は異邦人だ。
気が付けば山の中であり、最初にしたのが襲ってきた獣を手近な石で殴殺した事。
難を逃れたと
窮地を脱したと安心したのも束の間、殺して扱いに困っていた獣の死体と向き合っているうちに他の獣が群がってきた。
男は理解した。
血の臭いに誘われたのだ、と。
そんな男は見慣れぬ山の中を懸命に歩き回った。
幸いにも男はそれなりに奇矯な生活を送っていた為か山中を歩き回る事
が、見ず知らずの山の中にあってあるべき方向感覚などあろう筈もなく
道標も地図もなければ己の居場所すら見失いかねぬ。
努めて冷静たろうとしたものの、生死をかけた極限状況ともなれば冷静にはなりきれず
結果として、法の外の存在であるハイマンの部下に収まった。
勿論、山賊としての経験は元よりマトモな狩猟経験も斧を使う機会もない男。
ハイマンは当初こそ期待したが、余りの有り様に期待する事を半ば諦めていた。
だが
だがそれでも男は懸命であり、ハイマンに対して忠実ではあった。
(⋯最悪、連中の不満のはけ口にでもするか。)
そうも思いはしたが、男はサムシアンの他の連中と違いサムシアンの今後についてもそれなりの考えを持っていた。
利用価値が無いわけではない。
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ハイマンと言う男は己でも思う様にそこまで能力に秀でている訳では無い。
偶然に偶然を重ねた結果、この集団の頭目となったに過ぎず
それとて他の連中が何をするか分かったものでは無い。
周りから思われている程にサムシアンとは統率の取れた組織ではなく、寧ろ寄り合い所帯でありながら皆の意見が辛うじて合っているからこそ存在している。
少なくともハイマンは男が自身に忠実である事は疑っておらず、他の連中よりも目をかけていた所は確かにあった。
⋯⋯まぁ、獣にやられた奴を突然
だが、結果として男は周りから恐怖の目で見られる事となり、それはハイマンの指示を聞かない連中に対する無言の威圧となったのは嬉しくもあるが。
「魔道書は高え。
だが、アイツにやるには構わんだろうよ。」
集団の引き締めと統率。
アレはそれをこなせる存在なのだから。
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グルニアの騎士達は目を疑い、そしてある種の戦慄さえ覚えた。
仮にも賊が自分達に真っ向から挑んでくるなど、祖国グルニアでは考えもしなかった事。
だが逡巡もほんの僅かな間のみ。
敵対するのであれば、容赦する理由などありはしないのだから。
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「くそ、痛え。」
「バカ、下がれ!」
サムシアン達は必死で生き残る為に奮闘していた。
正面には騎士
しかし、後ろにはもっと恐ろしい存在がいるのだから。
気狂いのゲレタ
仲間内でそう呼ぼれている
そして冷酷な味方。
彼等はゲレタが動くのを待てはしない。
確かにゲレタが動けば
だが、そうなると自分達の働きが悪いと見做される。
そうなればどうなるのか?
考えたくも無かった。
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「⋯ジュリアン、連中の手当だ。」
「あ、ああ。分かった。」
盗賊であるジュリアンは後方にゲレタと共にいた。
「⋯マトモにダメージを与えられないテメェが前線に出てどうする気だ?
守りも薄いテメェでは盾にもならん。」
ゲレタからそう言われ、ジュリアンはゲレタと共に後方待機となっている。
が、前線に出ていた者達は寧ろジュリアンにこそ同情した。
「⋯⋯潮時か。」
ゲレタがそう呟き、腕を軽く振るう。
そして、グルニア騎士は全滅した。