オレルアンでニーナ王女を守っていたハーディン率いるオレルアン騎士団と合流したマルス達。
オレルアン城をマケドニア軍から解放し、マルス達はレフカンディの激闘を制しアカネイア解放の為、兵を進める事となる。
アカネイア屈指の貿易都市ワーレン。
マルス達はそこで装備を整える事とした。
ワーレンに到着したマルス達。
しかし、ワーレンの北の砦群にはグルニア軍が駐留しており、その軍量はガルダで遭遇したグルニア遠征部隊やレフカンディで交戦したグルニア軍。
オレルアンで交戦したマケドニア軍。
その何れよりも多いものだった。
今までのマルス達は敵の数をある程度絞って撃破するのを基本としていた。
だが、敵将カナリスは凡庸ではなく
機動力と火力に優れるソシアルナイト
機動力と間接火力を有するホースメン
機動力こそ欠くものの高い防御を誇るアーマーナイト
間接攻撃の可能なアーチャー
これら四つの兵科を同時に送り込む事とした。
兵達にとって未だ祖国グルニアに帰還出来ていないのは負担であり、また不満の元でもあった。
そこにアカネイアの王族たるニーナの生存が確認され、既にレフカンディが落とされたとなればその脅威は決して無視し得るものではない。
話によればオレルアンのマケドニア軍が壊滅したと言うに、マケドニアのミネルバ王女とその騎士は不穏な動きを見せているとも。
「此処で終わらさねばならぬ。
死んでいった者達の為にも。」
恐らくこの戦いでも多くの者が命を落とすだろう。
⋯それでも祖国を
グルニアの民を守る為に負けられないのだ。
----
「⋯あれグルニア軍、よね?」
「やれやれだ。
どうにもタイミングが良くなかったらしい。」
向こうに見える砦群から兵が出撃しているのを遠望したリンダは愕然とし
ゲレタはどうやらマルス王子達がワーレンに着いたと察する。
「とりあえず砦群は回避するとして、はてさて見逃してくれるかどうか。」
「望みは薄そうね。」
リンダはワーレンで買った魔道書を強く握りしめ
ゲレタは深く嘆息すると
「まぁ弾が補充出来た以上、負ける気はねぇがな。」
そう呟く。
グルニア軍指揮官カナリスは最善を尽くした。
マルス達は守備に優れるドーガを中心とし、ソシアルナイトとアーマーナイト。アーチャーの大軍を迎え撃った。
ホースメンはその移動力と間接攻撃が出来る事が災いし
「別に関わりたいとも助けたいとも思わんが
こっちに手を出すなら容赦しねぇぞ。」
----
リンダはその異質の極みとも思えるゲレタの魔力操作に目を奪われる。
あの寒村でゲレタが魔力を自分達のように使っていないのは理解していた。
しかし、改めて注視するとその異様さと精微さに驚かされる。
勿論、だからと言ってゲレタに危害を加える敵を見逃すつもりはないが。
原理や思い付いた経緯を聞きはしたが、正直良くもそんなやり方を考えたものと呆れ半分感心半分。複雑な気持ちになった。
しかも、その為に人を解体したと言うからそのやるからには徹底する姿勢にも呆れてしまう。
勿論多少顔を顰める事ではあるが
「それで?
真っ当なやり方で親父さんの仇とやらは討てるのか?
聞けばドルーアにいるんだろ?そいつだけを倒す事が出来ればそれで良いが、そうはならんやろうに。」
それを言われると何も言えない。
確かに今の自分でガーネフを倒せるとは思えなかった。
父の遺したオーラとて、使用にはアカネイア王家の許可が必要で
多少努力した程度で倒せるならば父も負けてはいないだろう。
「⋯そうやってアカネイアの歪な支配体制が維持されている訳か。
なる程な。」
ゲレタは心底軽蔑した様な表情だったが。
一応原理を説明されて、やってみようとした。
頭痛が酷く、直ぐに止めた。
曰く『空間把握能力』やある程度の予想をして情報を絞らねばならないらしい。
「幸いにも俺は数を殺れる。
お前さんは強い相手でも殺れる。役割分担出来て良いと思うがな。」
ゲレタは既に人を殺している。
殺人、それは現代日本に生きていたゲレタにとって耐え難い精神的傷を与えていた。
既に戻れない所に己が居るのをゲレタは嫌という程に理解している。
「俺も死にたくはないんだよ。
だからな、死ね。」
割り切れなければ、死ぬ。
それがこの世界の掟なのだから。
----
マルス達は知る由もない事だが、ゲレタとリンダはホースメン全騎とソシアルナイトをそれなりに引き付けていた。
だからこそ、マルス達の負担が減ったと言えよう。
尤も
「これは」
「⋯なんと」
マルス達がそれを知る事となったのは異常としか言えない光景を目にしたからだった。
多くの騎馬とその乗り手たる騎士。
其れ等が死体となっていたのだから。
「⋯⋯おいおい、マジかよ。」
その綺麗すぎる死体を見て、ジュリアンは顔を青くする。
「⋯⋯ジュリアン?」
レナが彼の異常に気が付き声をかけた。
「⋯ゲレタの奴だ。
こんな殺り方はアイツ以外に出来るとも思えない。」
それは恐怖でしかない。
しかも不幸な事にゲレタの特異性を自分であっても理解し切れているとは言えないのだから。
敵対は避けねばならない。
敵対したが最期、死のみなのだから。
だが、それでも己はレナを助ける為にああした。
ジュリアンはマルス達にゲレタの話をする事を決意する。
----
「何処もかしこも民心が荒んてやがるわ。」
「まさか武器を持ち込んだのに、奪おうとするなんてね。」
ゲレタとリンダは既にワーレン付近から離れ、とある集落で戦利品たる武器を売り払っていた。
まぁ、ゲレタの予想通り持ち込んだ数が多い事から目を奪われ判断を誤ったらしいが。
向こうは数が多いからとひと晩宿を取る事を提案。
案の定、ゲレタとリンダを引き離そうとしたのでゲレタは
どうせ
「とりあえず辛かったら早目に言ってくれ。
「もう歩けない」なんて言われたら面倒だからな。」
「そうね。
その時はお願いするわ。」
仮にも環境の整ったカダインで育ったリンダ。
山賊として活動していたゲレタ。
どちらが山道に慣れているのかなど、言うまでもないのだから。
ゲレタとしては親の仇であるガーネフを倒すならばマルス達へ合流するのが最善と思っていたので、付いてくるとは思わなかったが。
まぁリンダという華がいた方が気分的にも落ち込まないのも事実。
今でもハイマンの仇をうつべきか悩んでいる。
「ゲレタよぉ。
テメェが山賊やってるのが俺には不思議でならねぇ。
ま、ありがたくはあるがな。」
ハイマンから一度そう言われたものだ。
確かに
しかも、日本で有名な悪党
だが、それでも確かに自分を気にしてただけの善性もあった。
「さて、どうしたものかねぇ。」
目標がないのは辛い。
寄る辺もない。
あるのは隣りに居る少女とのか細い繋がりだけ。
それでも
「生きねぇとなぁ。」