過重労働系学院長 作:いみて
この国には、世にも珍しいことに労働基準法と呼ばれるような法律がある。
内容としては、一日に一定以上の時間を超えるような過重労働をしたらダメというものだ。
中興の祖とも呼ばれる三百年ほど昔を生きていた賢王が作った、現代にも受け継がれるほどのと〜っても大事なルールである。
なんでそんなどうでも良さそうな話をしてるのかって?
すごく悲しいけど、僕の働いている職場にはそのルールを守らずに、埒外なほど長い時間働いている人がいるからだね。
あっ、でも大丈夫。
監督責任なんてものは発生しないからさ。
なんでって?
過重労働をしてるのが、組織のトップである僕だからだよ(憤怒)!!
先代の学院長が老齢のために、トップの座を退いたのがだいたい一年と少し前。
その後継者として抜擢された…されてしまったのが、当時十八歳にして学院の教授を務めていた僕であった。
いやなんでよ?
僕以外にもたっくさん候補はいたでしょ。
なのになんで教授になったばかりの、若年教師筆頭たるこの僕を後継者に指名したの?
自分で言うのもアレだけど、僕はとんでもない天才だから当時の学院長の職務量くらいなら簡単にこなせた。
それでもさぁ……ハァ、副学院長とかがいたじゃない。
僕を学院長にするにしても、五年…いや、三年は早いよ。
いくら僕が王立魔術学院を十歳で、飛び級卒業した天才だといっても限度というものがある…いや、なかったからこうなってんのか。
んんっ、話を戻そう。
僕が学院長の座についたばかりの頃は、ほんとうに穏やかな生活だった。
労働基準法を今にも破りそうな雰囲気など微塵もないほどに。
問題が起きるようになり出したのは、だいたい一ヶ月ほど前のこと。
僕が学院長になって一年が過ぎ、新入生たちが入ってきた頃である。
なんでだろうね。
今年度の新入生たちは家柄的にも、性格的にもほんとにクセが強かったのだ。
ほんとに、いやマジで………アァァ!!
マジで少しは自重して、他者を尊重してくれませんかね…いやしろ、ガキどもが。
もし学院の入試科目に面接があったのなら、問答無用で叩き落としてやったってのによォォ!!
自分の名前が平民に知られてなかったら、貴族としての誇りが傷つけられたと考えて決闘?
頭おかしいんじゃねぇの?
親の金で学院に通ってるガキが、他人に知られてるはずねぇだろうがァ!!
なにか偉業を成し遂げたわけでもねぇのなら、平民が貴族子息の名前を知ることは塵芥ほどにないの!!
というか、最近の貴族の子どもはどんだけ自己評価が高いんだよ!?
まぁとにかく、これはそんな僕…ユグリナーヴァ・アーストルのいつも通りな日常を綴った物語である。
貯金とストレスばかりが溜まっていき、労働時間とトラブルの数は微塵も減らないという最低最悪な日常を。
嗚呼……今にでも仕事を辞めたいなぁ。