異世界から帰ってきた魔神ですが、ダンジョン攻略を始めます 作:Revak
翌日。
ディノクは丸の内のフロンティア本社で契約書にサインをした。
契約内容としては雇用契約で、扱いとしては一般的な社員に近い。
人間歳をとると戦闘力も当然下がる。その為歳を取って戦えなくなった場合は後続への支援に映って貰うという契約だ。
契約書にサインをした途端、部屋に女性がはいって来た。
鮮やかな赤髪のロングヘア。毛先は炎のような橙色をしている。
瞳は琥珀色で綺麗な色をしている。体形は引き締まっており健康的である。
「お、例の新人ちゃん見っけ! 今日歓迎会するんだけど来る?!」
そう女性──芸名紅蓮ヒバナ、本名日野朱音は言った。
「朱音さん。まずはノックをしてください」
苦笑しながら誠が言った。
「あ、ごめんなさい。ついテンション上がっちゃって……」
そう朱音は謝罪の言葉を言った。
「えーと、紅蓮さん……ですか?」
ディノクは一応初対面の相手なので敬語を使った。
一応元日本人として常識があるので一般人相手には敬語を使う。敵などには敬語など使わないが。
「気軽にヒバナでいいよ! 敬語も要らないから!」
そう朱音は笑顔でサムズアップした。
「……そうか? なら遠慮なく。俺は不破泰葉。芸名はディノクだ」
「ディノクさんだね! ディノクっちて呼んでいい?!」
「……まぁいいが。呼びにくくないか?」
「確かに! じゃあディノクって呼ぶね!」
初対面の相手にいきなり敬称なしで呼ぶ。
普通の人間なら嫌われそうだが、朱音の快活さによって嫌な感じはしない。
それにディノクとしては嬉しかった。
両親から貰った名で暴れてその名が嫌われ呪われるのを防ぐためにディノクと適当に名乗った名だが、当然異世界時代はあらゆる知的生命体にその名が呪われた。
だが地球ではこの名に恨みも呪いも抱いてない者がいるというだけで良い事だと思えるのだ。
「不破さん。今日のところはこれでおしまいです。ですが明後日また来てください。やることがあるので」
「やる事、ですか?」
ディノクは特に思いつかず問いかけた。
「はい。ダンライバーはその関係上戦います。グロ要素は良いんですが……うちはエロ売りをしていないので先日のように戦闘中服が無くなってしまう、などは困るんです」
苦笑しながら誠が言った。
その言葉に対しディノクは確かに。と思った。
今の体は乳首も生殖器もつけてるので普通にR18案件になる。
「ですのでダンジョン組合の販売所に行って装備を作ってもらいます。予約は取れているので、材木さんとディノクさん、私と神崎さん──黒羽レイさんの四人で装備について話し合います」
「わかりました。何時にどこに行けばいいですか?」
「朝の九時にダンジョン組合の発売所、現地集合でお願いします。あ、こちらが私の連絡先になります」
そう言って誠は電話番号を見せた。
ディノクもその番号を登録する。
「では本日はこれで終わりです……日野さん。はっちゃけないでくださいね」
「お任せあれ! 節度を守って楽しみます!」
そういうと朱音はディノクの手をとり「さぁ行きましょう!」と手を引っ張っていった。
ディノクはそれを受け入れた。己の何万何億という血を被った手を悍ましく思いながら。
■
ディノクと朱音は某有名焼き肉店に来ていた。
「お、おい。ここクソ高い焼肉じゃないか……?」
ディノクとしては最近電子眷属に株などをやらせて金が減って来ているのであまり無駄遣いはしたくない。
「大丈夫よ! 私のおごりだから!」
そう朱音は笑顔で言った。
「おごりで済ましていいのか……?」
ディノクの知る限りこの焼き肉屋は肉一人前で五千円程する高級焼き肉店である。
その店の前には六人の男女が居た。
「あ、泰葉さん!」
そこには当然莉子が居た。
「おう、来たぞ……そちらの方々は初めまして。不破泰葉、芸名ディノクです」
よろしく、とディノクは小さく頭を下げた。
「でっかいな!」
男の一人がそう呟いた。
男の名は中村亮介。芸名ガンマ、ダンジョンスキル【反発】を持っている男だ。
元気溌剌、と言った雰囲気の男でこの中では一番若い。二十歳でありまだ大学に通っている。
「まぁ、俺はでかいからな」
そうディノクはでかい胸を張った。
それに対し残る最後の女子、王子様系女子で売っている神崎蓮、芸名黒羽レイが己の胸と比べた。
蓮の胸も八十センチほどと巨乳だが、ディノクは百センチ越え爆乳おっぱいなので差は歴然だ。
蓮は二十二歳で成長期も当然終わっているので成長の余地はない。
「自己紹介は店に入ってからしようか……一応聞くけど不破さんは成人してますか?」
「二十歳なんで飲酒可能です」
「それはよかった。じゃあ行こうか」
そして七人は店の中に入る。
待つことはなく広い部屋に案内される。
卓上ロースターも三つ付いている。
男女に別れて向かい合うように座る。
ディノクのは莉子の隣に座った。端だ。
「それじゃあ飲み物は……最初は生で統一する?」
「それでいこっか。不破さんはビール飲める?」
「飲めますよ」
正直に言えばビールは苦手──というか炭酸が苦手だが魔神となってからは飲めるようになった。
と言っても舌の機能を停止させることで無理矢理飲んでいるが。
だがこう言う場で飲めないというのは空気が読めていないので言わなかった。
「苦手な肉とか野菜とかある?」
「特にはないです。何でも食べれます」
「おっけー。じゃあメニュー全部頼むね」
「?!」
ディノクは大胆な注文に驚いた。
一皿五千円するような焼き肉屋でメニュー全て頼もうものなら数万円は軽く吹っ飛ぶだろう。それを事も無さげに言う。
これがプロのダンライバーか、とディノクは戦慄した。
そして肉が運ばれてくる。
どれも上等な肉であり、元のディノクでは一生口にするどころか目にすることすらなかった高級食材である。
余談だがダンジョンからは多種多様な素材が手に入り、それはモンスターの肉──食材なども例外ではない。
だがダンジョン食材を使った料理店は幾つかあるもののそれらは高級料理店であると同時に個人店しかない。
この焼き肉屋のようにチェーン店は存在しないのだ。
理由は単純で食材の供給が安定しないからである。
ダンジョンは気まぐれでどのモンスターが出るかは一定の法則があるが、必ずそれに従うという訳ではない。
そのためオークの肉を得ようと潜っても一匹も会えませんでした、なんてこともあるのだ。
だから今のところダンジョン食材の殆どは好事家が買い取って自宅で料理するぐらいでとどまっているのが現状だ。
だが、ダンジョンスキルの持ち主は違う。
中には【ご飯】というそのまま料理を創り出せるスキルの持ち主も居る。
更に鍛え方次第では食べ物を食べた者にバフ──筋力増強や運の強化などを施せるためそう言ったバフ料理店として売っている店が日本にもある。
ダンジョンスキルはローコスト、あるいはゼロコストで結果を引き起こせる異能であるがゆえに。
ディノクが焼く事はなく朔が焼き全員に平等に配る。
ディノクはこれが焼肉奉行か、と謎の感心をしながらビールを飲んだ。
「それで、泰葉はどんなダンジョンスキル持ってるの?」
そう問いかけたのは亮介だ。
続いて朔が言う。
「私達相手に敬語は不要だ。共にダンジョンに潜る同胞なのだから」
「……そう言う事なら気楽にいかせてもらう。俺のダンジョンスキルは【全意思疎通】でどんな相手とも意思の疎通を可能にし、俺が意思を伝える事で相手にそれを強制できる能力だ」
「強制? 具体的には?」
蓮が興味深そうに問いかけて来た。
「まぁ、端的に言えば死ねって言えば死ぬし、消えろって言ったら消える。そういうスキルだ」
「つっよ」
質問者である亮介がすげーと感心しながら肉を食った。
「けど体大分鍛えているようだね。ダンジョンスキル以外の戦闘も期待していいのかな?」
そう蓮が問いかけて来た。
「まぁ身体能力と魔法はこの世界の誰にも負けない自信はある。超人が来ても負ける事はないかと」
ダンジョンに潜った人間──あるいは異世界に渡った人間は基礎能力として相手と対峙しただけで戦闘力をある程度測る、という能力を得る事が出来る。
これは詳しく言うと面倒なことになるので割愛するが兎も角そういうものでディノクも習得している。
だからこそこの場のフロンティアの者たちはディノクが発するオーラを目にし、それは嘘ではないと感じとることが出来た。
更にディノクの【全意思疎通】は己の言葉が正直に相手に伝わる。真実を言えばそれが真実だとわかるのだ。逆に嘘を言えばそれは嘘だとバレてしまうが。
「それじゃあさ──」
この後めちゃくちゃ飲み食いした。
■
数日後。
飲みすぎで二日酔いになるなんてことはく優れた体調のまま日々を過ごした日。
ディノクは七人で焼肉で飲み食いしたことによる金額に戦慄しつつ何れは自分もあれだけ稼げるのかと夢見ていた。
そしてその夢を現実にすべく、ディノクは新宿に来ていた。
ダンジョン組合本部から少し離れたところにその店はある。
大きいとは言えないが、小さいとも言えない微妙なラインの店。二階建てだ。
「お、来たね」
「おはようございます、不破さん」
そこには黒羽レイ、神崎蓮と武内誠が居た。
「おはよう。今日は頼む」
「うむ。任せたまえ」
そう蓮は胸を張った。
これからディノクは配信用の装備を買う。
「しかし幾らするんだ? ていうかこういう場合経費で落ちるのか?」
ディノクは気になっていたことを問いかける。
「安くて五百万円ぐらいかな。これは経費で落ちるから問題ないよ」
「ごひゃくまんえん」
まさかの値段にディノクは一瞬固まった。
既にボスドロップを売却し二千万円得ているがそれでも充分な金が飛ぶアイテムである。
恐る恐るディノクは店の中に入っていった。
「いらっしゃいませー!」
そこは骨董屋のような雰囲気がある店だ。
店の中には様々なアイテムがある。
配信用ドローンに解体ナイフ。超容量バッグ。そのほかダンジョン攻略の手助けをしてくれるアイテムなどだ。
ポーションなども売っているが最低でも百万円するので買ったことはない。
当然このポーションも【制作】の円卓が作り出したアイテムだ。
店員は可愛らしい女であり、耳が尖っていた。
(エルフやんけ)
ディノクの魔眼で見れば普通に異世界人だった。異世界人こんなところで使っていいのかとディノクは疑問に思ったが言わないで置いた。
奥のカウンターに行くと其処には少しふくよかな男が居た。
眼鏡をかけたどこかオタクっぽい雰囲気の男で着ている服はニチアサ魔法少女アニメの敵ヒロインがプリントされている。
「材木さんどうも。防具の作成に来ました」
誠がそういうと男──材木直哉が立ち上がった。
「うっすどうも。そちらの褐色の姉ちゃんの装備ってことでいいんだよね?」
「そうです。デザインからお願いしますね」
「褐色肌に合うのだと……やっぱビキニアーマーかな」
そう言って直哉は謎の装置を操作した。
円形の台座だ。それに魔力を込める事で幻影が生じ、ビキニアーマーを装備したディノクの立体映像が出て来た。
サイズは一般的な人形より若干大きい程度だろう。
「ビキニアーマーはちょっと……エロ売りする気はないので……」
「そのドスケベボディでエロ売りはしないは無理があるだろ」
ぐうの音も出なかった。
「じゃあ何かコンセプトとかはあるか?」
直哉が問いかけた。
「それじゃあ……魔王っぽい感じで頼む」
魔神、ラスボスとしてそういう格好をした方が味が出るだろという思いだ。
「ラスボスっぽい格好……こうか?」
肩から羽織る、床近くまで届く漆黒の外套。
裏地は夜空のような深い青。動くと星屑のような光が浮かんでいる。
肩や襟元には、ルーン文字の刻印。
留め具は宝石ではなく、黒い金属で作られた歪な紋章。
フードも付いているが、映像では付いていない。
胸開きトップスである。上乳が見えてる。
「おお、凄いな。こういうの良いな」
ディノクの魔神時代は適当な魔獣の皮をそのまま纏っていたので獣臭と血の匂いが酷かった。
こんなカッコいい装備は着けたことがない。
唯一武器──解放の魔剣だけは遺跡から回収した武器でカッコいいが。
「他に要望は?」
「あー、俺背中から翼生やしたりするから背中は開けて置いてくれると助かる」
そこに蓮が意見を出す。
「下半身ももう少し決めた方が良いね。ズボンかドレスか……どっちがいい?」
「ならズボンで。ドレスだと動きにくそうだ」
「ならズボンで……こういうのでいいか?」
今度はズボンを履いた状態で幻影が生成された。
先ほどは外套で隠れていたところが見せられている。
カッコいい形の黒いズボンだ。
「おぉ、凄くいいな……これ防御力とかはどうなるんだ?」
「核が直撃しても無傷ぐらいには出来るぞ。後は自動サイズ調整と自動修復、手元に自動帰還を付けてお値段八百万円だ」
その値段の高さにディノクは固まった。
だがこれも仕方がない事である。制作系スキルなのでコストなしで量産できるがそんなことをしたら経済破壊になるので金を分捕る必要があるのだ。
「わかりました。現金でお願いします」
そう言って誠は超収納の効果を持つバッグから百万円の札束を八個だした。
「毎度。それじゃ作るねー」
そう言って直哉は装備を創り出した。
虚空からぽん、と先ほどの装備が創造された。
「それじゃあ、それ着て宣伝ツイートしようか!」
「お、おう」
ディノクは思ったより少しエッチだな、と思いつつ装備を受け取るのだった。